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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、悩む。

ブックマーク登録してくださった方、ありがとうございます!




俺が飛び出して行った後の五分の間、カノンは何をしていたのかと思えば、朝食の準備をしていたそうだ。

たった五分の間ではろくなことが出来ないだろうに。


それでも、手を動かしていないと落ち着かないし、どうせ五分では戻って来れる訳がないと思っていたので、カンタンな下ごしらえをしただけだそうだ。


それだけ心配してくれたのかと感動すれば良いのか、断定されたある種の信頼に憤れば良いのか。

実際戻って来れなかったんだから怒る権利はないけどさ。


テメェのその俺に対する偏見にいつか風穴空けてやるから覚悟しておけよ。

いつまでも子供な訳じゃないんだし。


この世界の常識を学んでいったら今回みたいなことは起こらないからね。

たぶん!



カノンが待ってた間に漬け込んでくれていた竜肉の味噌漬けを焼いてる間に、村から貰ってきた夏野菜を切る。

朝からバーベキューとかすんげぇ贅沢ね。

若者じゃないカノンには胃袋的にキツいんじゃないかしら。


年寄り扱いすんなと怒られたが、実際年齢が結構を通り過ぎて桁外れに年寄りなんだから仕方ないべ。

見た目は若者なのにねぇ。


「古くから伝わる唄だって言ってたけど、実際どんなもんなの?」


「わたしの婆さまが、婆さまに習ったと聞いてますが……」


「なんだ、やっぱジジィじゃん」


ヌリアさんに野菜の下ごしらえのやり方を教わりがてら尋ねたら、カノンに背後からチョップされた。


生肉触った手でヤメロ。

髪は洗えばいいけど、肉に雑菌が付着したらどうしてくれる。


まぁ、鑑定眼の扱いにまだ全然慣れてなかった時に見えた、見てはいけない気がするカノンの個人情報のうちのひとつだったので、別に俺にとっては今更な情報なんだよね。


何かの見間違いかも、とは思ったんだよ。

なにせ、見た目がコレだし。

全然現役バリバリの、若いイキった兄ぃちゃんだからねぇ。


年寄りぶった老害こじらせたような態度を取ることもない。

どちらかと言えば目新しいことに喜んで飛んでいく、未だに虫取り網振り回してるガキのイメージの方が強い。

実年齢と見た目と中身と全部伴っていないことから、年齢なんて些細なことだとスルーしてきた。


精霊の皆も、俺が知る姿形のまま何百年と生きていているようだったし、この世界では当たり前のことなのかと、割と早い段階で受け入れていたんだよ。

なにせつい最近まで、俺が知ってるこの世界の俺以外のヒトがみんなそうだったから。


それが普通なのかと思ったの。

違ったけど。


地球では生産性や有用性が落ちれば処分される場合が多かったので、平均寿命はあまり高くなかった。

だから、あまり年寄りを見たことがないから違和感を覚えなかった、と言う理由もある。


だが逆に言えば、どれだけ齢を重ねても、有用性を示し続けることが出来ればかなり長生きしている人もいた。

そう言う人は総じてお偉いさんで、性格も悪かったから、年齢が云々よりも役職についている人はシワが多いって認識だったんだ。


なので、俺は闇と時の精霊に会うのが少し楽しみなんだよね。

嫌は嫌なんだよ。

出来れば会いたいとは思わないんだよ。


なのだけど、ふたりは死ぬ時ジジィだったからさ。

他の精霊たちみたいに若々しい姿をしていないだろう。

そんな姿で永い時間を生きなきゃいけないんだもん。

プライドが高いヤツらだったから、さぞかし惨めな思いをしているだろうな〜。

人のこと散々いたぶってくれたのだから、それくらいの意地の悪さは許して欲しい。


いじり倒し過ぎて鉄槌下されないように注意しなきゃだけどね。

今のヤツらはこの世界の神の一柱なんだもん。

ずいぶん偉くなったものだ。



「あの……あなたはカノンさまのお小姓、なのですよね?」


「「……は?」

誰が言ったんだ、そんなこと」


疑問符がカノンの言葉と重なったが、その後に続く言葉は俺が引き継いだ。

どの程度の範囲の仕事を指しているかによっては全ての否定は出来ないが、カノンは俺の主人ではない。

前提からして間違っている。


カノンが誰かを付き従えて行動することが過去に無かったことや、随分気を許しているように見えたこと。

あとは俺が顔を隠し続けているのがカノンの独占欲の現れなのではないかと、おネエ様方が盛り上がっていたそうだ。


なんでいつの世でも、ある一定の人種は男二人並ぶと掛け算をしようとするのか。

げんなりする。


俺が村に戻ったのも、村の危機を察知したカノンが、その名代として派遣したのかと思ったのに、冒険者を討伐しない所か回復までさせてしまうし、保護するかのように集まった村人から隔離した。

伝説によればカノンは死者の蘇生も出来るのにしてくれない。

村人の保護目的で戻ってきたならそれくらいするのが付き人として当たり前じゃないのか。


そんな考えからあの糾弾コールに繋がったのだ、とあらためて謝罪をされた。


村の人たちからしてみれば、侵略者の味方をするような素振りを見せた時点で懐疑心が芽生える。

それを払拭するための行動も起こさない。

そりゃ怒りたくもなるか。

ヌリアさんは我が子が殺されたことで気が動転していたのもあっただろうし、余計にだ。


かなり理不尽なことには変わらないが。

自分たちは逃げ惑うばかりで戦いすらしなかったのに。


享受するのが当たり前になると、もっともっとと駄々をこねる子供以上に、大人はタチが悪くなる。

「コレくらいしても同然だよね?」

「前より質が下がるなんて有り得ない」

そういう考えが働くからね。

下手に知恵は付いてない子供の方が素直で可愛げがある。

幼い方が調教もしやすいし。


カノンからしてみれば、年々村に立ち寄った時の歓迎の質が明らかに落ち、しかも交換する品の要求がどんどんエスカレートしていった。

今回は同行者である俺がいて、失礼のないようにと釘を刺したのにも関わらず、全開よりも要求が増えていた。


見限るのには良い機会だと本気で思っていたそうだ。

俺が駆け付けなかったら戻るつもりなんて微塵もなかったのだから、レイムに感謝しろと冷たく言い放った。


あ、あの対応ってやっぱ塩だったんだ。

どう考えてもそうだよね。

失敗した料理なんかもあったし。


昔は日持ちするように加工した食材をカノンのために用意してあったり、子供たちが歓迎のために花冠を作ってくれたり、心を尽くして歓迎してくれていたそうだ。

物々交換だって最初は、申し訳なさそうに薬ひと瓶と村のひと月分の雑穀とを交換させて欲しいと低姿勢で願い出てきたのが始まりだった。

なのに今ではその日作った夕飯の残りと薬ひと瓶とか、薬草ひと袋とかと交換するのが普通になっている。

低姿勢でもなく、するのが当然の態度で。

しかも、失敗作だったり手抜きご飯だったりする訳だし。

泊まるところだってろくに手入れしていなかったもんな。


そりゃ怒る。

最初は心から善意でやっていた施しも、それだけ粗雑な扱いになった上要求がデカすぎたら誰だって嫌になるよ。

むしろ、よくここまで我慢したものだ。


俺がカノンと村人に対して被っていた猫を放り捨てたので呈した疑問だったそうだが、芋づる式にアレコレ出てきた村人の問題にヌリアさんは青ざめて謝罪した。


彼女は村の中でも若い方だし、昨日みたいな状態しか知らなかったそうだ。

なのに村人代表って言って頭を下げるとか、しっかりしてるね。

どの世代でそんなことになったんだろ。


今朝は激昂して人を責め立てていたが、善意に対するお返しを自分なりにしようとしてくれる性根を持っていることは理解した。

昨晩の美味しかったおかず、ヌリアさんが作ったヤツだし。

野菜の切り方で分かった。



ヌリアさんから普段のフリアン君の様子を聞き、今の肉体の状態と照らし合わせると、やはり左半身に多少後遺症が残っているようだ。

五歳って言ってたっけ。

リハビリって痛みも伴うし、幼いとその分癇癪を起こして適切な運動が出来ない場合がある。

まだ若いし、回復する余地はあるだろうけど、リハビリをどれだけ根気よく続けられるかが問題だな。


とりあえず、寝起きと寝る前にヌリアさんがフリアンにするべきマッサージやストレッチの方法は教えた。

コレでフリアンがリハビリをサボっても、ある程度の快復は見込める。



出来るだけ歩かせた方が良いのは重々承知しているが、今は先を急ぐ。

冒険者たちが到着するまでに、これから作る町をある程度形にしておかなきゃいけないからね。


後片付けを丸投げして、俺は移動手段の確保をしよう。


素材にするには小さすぎる竜の骨を砕き土と混ぜ合わせる。

竜の骨は飛翔の際に役立つ軽量や浮遊の効果があるんだって。

保存がきき強度も元からある木材に竜の性質を直接付与出来れば楽だったのだが、ここら辺に木材はないし。

仕方ないので重量に耐えられる強度を優先した、材料も豊富にある土で作ろう。


骨と土の混合物を圧縮して熱を加えまくって頑丈な一枚板を作る。

あっという間に空飛ぶ絨毯ならぬ、空飛ぶ石版完成。

これに風の精霊術を施せば――うん、ちゃんと浮くね。

焼いてあるし、水で崩れる心配はないかな。

もし雨が降って壊れてしまったら、残念だがその時は廃棄しよう。


結構石版そのものに重みがあるから、使う霊力を絞ると三〇cm程しか浮かないけど、砂利道で体力を削られることもないし、川を渡るのも楽になる。

荷物を担がなくても良いから身体に負担も掛からないし。

間に合わせで作った割には便利なものが出来たのではないだろうか。


こんな物を作れるなら、もっと早い段階で作ってくれれば良かったのに、とカノンは言うが、俺が「何でも願えば本当に叶えられる」ことを知ったのは、村に瞬間移動した時だし。

それまでは「スキル」を使わない限り、精霊術では有効範囲や制限があると思っていたからね。


霊力と言う純粋な未知のエネルギーを使えば、本当に何でもできる。

その上、精霊にお願いして適した属性の精霊術として霊力を変換して扱えば、石版を浮かせたみたいに効率よく霊力を使うこともできる。


俺が物を動かそうと考えると、どうしても燃料の燃焼だとか超伝導電磁石による駆動力だとか、なんか余計なことを考えてしまうから仕組みが複雑化したり、得られる運動エネルギー効果に制限が掛かってしまう。


地球で学んだ先入観がアダになるんだよね。

せっかく限りなく自由な、地球人が求めてやまなかったクリーンなエネルギーを使えるというのに勿体ない。


こういう、この世界の常識にも追い追い慣れていけば良いのだ。

とりあえず今は皆を手っ取り早く運ぶ手段が手に入ったのだから良しとしよう。



食後でなければもっと速さを出せたのに。


そうは思えども、ヌリアさんがコレ以上は怖いから無理だと泣き叫んだのもあり、速度を抑えてカノンが言っていた目的地に、おおよそ一時間程移動して到着した。

大きな岩は避けなければいけないが、道なき道も走れるし魔物も速度を出せば追ってこれない。

障害物がほぼ無いので一直線で進むことができた。


この板超便利。

普段使いするには大きすぎるが、このまま土塊に戻すのは惜しいな。

なんか用途がないか考えておこう。


轢き殺してしまった魔物がいたけど、アレは浄化しなくてよかったのかな。

それだけが心配だ。



目を回している親子を木陰で休ませ、俺とカノンはこの後の段取りを組む。


俺はこの場に残って町の建造。

インフラを整えるのに水路を引いたり、道路を作るのに穴掘ったり。

余裕があれば家も何軒か建てたい。


霊力や「スキル」を使ってどれくらいのスピードで着工できるかな。

ベースとなる部分と中心地は俺が全部作るとして、町の面積を拡大していくなら、その拡張部分は人の手によって作られることになる。


俺の手が加わっているのにブサイクな景観にはしたくない。

秩序のある町並みにしたいよね。

防犯面も考慮しなきゃだから、良い塩梅を見極めなくては。


スライムが居ないから下水をどうするかだよな。

家に残してきたスライムを取ってくる訳にはいかない。

俺たちが帰った時どうするの!? って話になるからね。


分裂期が良い具合に来ていたとしても、俺では程良いところでカットして持ってくるなんて芸当出来ないし。

異世界転移初日で襲われたから、少々怖いのも理由にある。

ダサいから言わんけど。


下肥も正しく使えば問題はない訳だし、肥溜めでも作っておくかな。

臭いが出るから町からはだいぶ離れた、農地にする開拓予定の荒地近くにでもデッカイのを作るか。


し尿処理として、ある程度の人数までなら農作物に堆肥としての利用するのに充分足りるだろう。

人口が増えてきたら、肥料としての消費量よりも排泄物が出る量の方が増えるから、それまでには誰かにスライムの確保をしてきて欲しいなぁ。

チラッチラッ。


川に流すのは論外だ。

環境汚染が進む。


っていうか、そんな川で獲れた魚、俺が食いたくない。



時間さえあれば他の村や町を見てから着工するんだけどな。

今日俺らが寝泊まりする場所すらないのはちょっとね。

急ごしらえの町では出来栄えが悪いと言うなら、壊すのなんて一瞬なんだし、文句が出た時点で更地に戻せば良い。


町の中央から外れた所にとりあえず一軒。

俺たちの仮住まいを建てる。

それを作り終えたら区画整理の道路を通して、家の基礎から作っていこう。


この世界の建築物はカノンの家をベースに考えれば良いのか、それとも村にあった民家を基本とすれば良いのか。

何階建てのものが多いのか。

人が訪れるような都市にはどんな商家が建ち並んでるのか。


カノンにある程度聞いて家の基本構造が分かるミニチュアと、町全体の概要が分かる模型を造って見せた。

頭を抱えられたが、考えるだけ無駄だと諦めてくれたようで、それを見て幾つかアドバイスを貰った。


写真や情報としてしか知らない俺と、いろんな街も都市も実際に見て来ているカノンとでは、やはり着眼点が違う。


道路ひとつとっても、馬車の幅は自動車と同じで二mない位なのだから、一般道と同じで三mも確保すれば良いだろうと考えていた。

だがこの世界では馬ではなく馬と似た性質を持つガタイの良い魔物が馬車を引く。

そうなると安全のため、魔物と徒歩の人間の距離がなるべく開くように最低四m、すれ違うようにするなら倍以上の幅が必要になる。

馬力――と言って良いのか不明だが、その魔物は馬よりも力があるから道路の素材も気を使わなければいけない。


降雨後水が溜まらないように道路に何パーセントか傾斜を付けたかったのだが、付けすぎるとスプリングが無い馬車のため車輪にダイレクトに負担がかかるし魔物も疲れてしまう。

川が近くにあるから、その川が氾濫した時のための地下貯水施設も欲しいし、そうなると排水設備をどうするか。


道路の問題がある程度クリアしたかと思えば、家屋に関して地震が来た時の安全面は確保出来るのか。

火災発生時の延焼をどうやって止めるのか。


話せば話すほど問題が山積みになっていく。

それを解決するための「知識」を総動員して模型を手直ししてはカノンと議論を重ねる。



カノンとしても、自分のテリトリーに一番近い人間の住処となる場所だ。

下手なものに仕上げたら自分の損に繋がるのだから、必死でダメ出しをしてくる。


着眼点を褒めてくれる場面もサラッとあったので、伊達に歳食ってねぇな、などと失礼なことを考えた。


そうしたら、心が読める訳でもないのに、とても良いタイミングでチョップを喰らった。

なんでや。




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