表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/265

神さま、お医者さんごっこをする。

ブックマーク登録してくださった方、ありがとうございます。




村の外との交流の機会が少なかっただけで、鎖国状態だった訳ではない。

一番近くの村で作物と必需品の物々交換をしがてら、世間話をして世情の情報収集をすることだってあった。


そういった日々のやり取りの中で奴隷の意味や末路を知っていた村人は、覚悟をしていた懲罰からかけ離れた俺の提案に困惑していた。


場所は移るものの、今とさほど変わらない暮らしが出来る。

その移動も安全が保証される。


罰と言うよりも、むしろご褒美なのでは?

そんな感覚だろう。


人によっては、自分を殺しかけた冒険者と一緒に旅をするなんて、と思うかもしれないが。

だが、俺が着けた首枷のお陰で、不快感はあるが生命を脅かされるような心配はいらない。



わだかまりが残っているとしたら、フリアン君が死んだ事実だねだろう。

治癒術を施し、外傷は治っているお陰で、眠っているだけなように見えるのだが。


……あれ?

傷が治ったのなら、死んでないよな??

なんで俺はあの時、死んだと判断したんだ???


遠隔で治癒術をほどこした後、呼吸が再開した音が拾えなかったからだ。

フリアン君を除いた重傷者と重体者、息を吹き返した呼吸音が風の精霊により俺の耳に届いた。

だが、フリアンくんの物だけは聞こえなかった。

だから助からなかったのだ、と判断したのだが……


場の空気を乱してはいけないと、一人静かに隅で泣いているヌリアさんの元へと走る。

カノンや冒険者のリーダーと細かい話を詰めていた所、突然思い至った俺の奇行に反応出来たのは彼女だけだ。


「な、なにを……」


「黙れ」


フリアンの手首や頸動脈に手を当てて脈を診てみる。

だが、俺を目の前にして震えているヌリアさんが手を離してくれないので微弱な振動を拾えない。


邪魔だから渡して欲しいんですケド。


仕方ないので薄く閉じられた目をガバッと人差し指と親指で無理矢理こじ開ける。

辺りがまだ薄暗いので、イマイチ確認がしづらい。


光の精霊ってルーメンを通さないと使えないんだっけ。

俺なら許可取らなくても使えるようになってるんだっけ。


なんかいちいち細かいこと考えながらするのは面倒臭いのでペン型の小さなライトを作って開いた眼球――正確に言えば、黒目に光を当てる。


あ、なんだよ。

瞳孔反射起こるじゃん。


つまり、生きてるってことだ!


煙を吸い込んだことにより一時的な仮死状態に陥っているのだろうか。

脈も手では測れないほどに微弱だし。


まだ死んではいないが、危うい状態であることには間違いない。

カノンがこの場に来た時点で最低五分は経過している。

くだらない話をしたりしてどれくらいの時間が経っただろうか。


一刻の猶予もない状態だったというのに。

なんでこの可能性に気付けなかったのか!



呼吸が止まっているということは脳に酸素が行っていないことになる。

蘇生できたとしても植物状態なんてあんまりだし、運が良くても後遺症は免れない。


この世界でそれはどうなんだ。

医療も発達していない。

補助器具がある訳でもない。

日々の生活を送るので手一杯なこの人たちに、介護生活が果たして出来るのだろうか。


イヤ、それは俺が考えることではない。

覚悟を決めなければいけないのは、俺ではない。


「ヌリアさん。

すぐ決めて。

身体に障害が残るかもしれなくてもフリアンを生き返らせるか、このまま「お願いします」


皆まで言わせず即答だった。

頑なに離そうとしなかったフリアン君の身体を俺に託し、その場で額を地面に擦り付けた。


「この子が生き返ってくれるなら、わたしはなんでもします。

お願いします。

どうか……どうか…………」


「その言葉、忘れないでね」


あ、威厳のある言葉遣い忘れてた。

まぁ、良いか。


そっか、その世界でも誠意を見せる時は土下座するんだ〜、とか考えてしまう俺はシリアスな展開が苦手なのだ。

そういう言葉遣いだって勿論苦手である。


必要な時は頑張るけどね。

今の頑張り所は別にあるので、そっちに全力投球しますよ。



心臓が微弱ながら動き続けていることと、ヌリアがフリアンの身体をさすったり揉んだりしていたせいもあって、肉体は温かかった。

それが予後経過にどれだけの影響を及ぼすかは、俺は専門じゃないから判断出来ない。


通常手術をする時って、身体を冷やしたり血圧低下させたり、他にも死んでいる状態に近付けるものなんだよな。

なのに温かい、生命活動をしている状態に近いこの状態で蘇生措置をして、本当に大丈夫なのだろうか。


だが、コレだけ生を望んでくれる母親がいるのだ。

是非、この世界に呼び戻してあげたい。

どんな形になったとしても、キミの母親はキミが戻ってきてくれることを願っている。


戻って来いと念じながら、酸素の吸入をする。

これは心室細動だろうか。

とりあえず心停止の状態だと確認できたので、同時進行で電気ショックを与え、その後心臓マッサージ。

血圧測れないのがシンドいな。


存在を忘れがちな鑑定眼で表示されないかな。

……あ、うん。

すんなり表示された。

さっきも瞳孔反射の確認しなくても心静止か心停止かコレで確認できたんじゃね?


もっと鑑定眼を有効活用出来るように、使うことを日常化しなければ。

不都合はあるが便利なのだし。


血圧は余裕で60mmHgを切っている。

こりゃアカン。


子供だし、大人よりも失血量のパーセンテージが低くても瀕死になるんだっけ。

血液型とかこの世界の住民にもあるの?

……あるのね。

母子の血液型は一緒なのね。


敗血症ショックとかGVHDとか起こさせたら嫌だけど、どうしたものか。

そうは悩んでも俺は医者じゃないし出来ることをとりあえずやるしかない。


ヌリアを手招きしてフリアンの血液が足らないこと。

ヌリアの血の一部を彼に渡したいことを伝える。


無菌状態にした被膜の中に彼女を招き入れ横になってもらい、ダイレクト輸血を開始する。

俺に出来るのは白血球さん、悪さをしないでねってお願いと、フリアンさっさと目ェ覚ませって祈ることだけだ。


ココで大事なのは医学的知識ではなくイメージ力!

フリアンが目を覚ますことだけを考えろ。

下手な想像は悪影響を及ぼしかねない。

ただひたすら、愚直なまでに奇跡を信じる。



治癒術や回復薬による治療を主としているこの世界では、手術も輸血も、なんなら救命措置すら未知の領域である。

もしかしたら、過去の地球みたいに禁止されている行為の可能性まである。


怪我をすれば回復薬を飲むか塗るかしかせず、傷口を洗うことすらしない。

そのせいでバイ菌が傷口から入ってしまい発熱することがざらにある。

それを回復薬が聞いている証拠だと思い込んでいるおバカさんがいると聞いた時には頭を抱えたものだ。


カノンは聖水で洗い流すようにしていると言っていた。

それは聖水の効果を期待しているのか、水で傷口に付着している雑菌を洗い流すのを目的としているのかどっちなんだ?


聞くのが怖いので聞いていない。


地球の常識がこの世界の常識に当てはまらないことは多々とある。

それは目を覚ましてからコッチ、嫌でも自覚せざるを得ないことが満載だったので骨身に染みている。


だが、この世界の非常識でも地球の常識が通用することも沢山ある。


先程の傷口は清潔な水で洗い流す、なんてものもそうだし。

仮死状態の人間でも、適切な処置をしたら息を吹き返す、なんてこともそうだと、今日、知ることが出来た。



はたから見たら、光の膜に覆われた中で結構な時間なんやかんやしてたと思ったら、その膜がなくなって、死んだはずのフリアンがヌリアに抱きついて二人が号泣してる姿が中から出てきたようにしか見えなかっただろう。

妨害されるのが嫌だったから中を見えないようにしていたし。


呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 的なエフェクト出した方が良かったかな。

感動シーンぶち壊しだから辞めといた方が良いか。

途端にギャグになりそう。


せっかく息を吹き返したのに感染症やら輸血後GVHDなんてなったら最悪だから、今後一週間はよくよく観察しないと。

バイ菌が入ってこないようにとか、拒絶反応が出ないようにだとか、イメージしたと言うよりは、そうならないようにお祈りしてたって方が正しいし。

どうなるか全く分からん。


……今の所、足に障害が出てるっぽいな。

うまく踏ん張れていない。

それが長期の栄養失調状態のせいなのか、低酸素脳症や蘇生後脳症によるものなのか判断出来ない。


心停止後症候群はこの際気にしなくて良いだろうか。

母親の顔はすぐに判別出来ていたが、言語障害や認知機能障害の範囲はどの程度まで及んでいるのか。

鑑定眼を使って診てみたが、貧血や栄養失調の表示はされていたが、機能障害とは特に書かれていないんだよね。

なら、今の所は安心して良いのかな。


鑑定眼がどこまで信頼出来るのかが分からないから、結局すべきなのは、結局予後観察か。


知識だけ詰め込んでもどうにもならない。

そういう疾患があることは知っていても、どんな症状が出たら危ないと判断すれば良いのか、問題ないと胸を撫で下ろして良いのか、ぜんぜん分からない。


施設にいた医師たちは凄いな。

こんなやり取りを毎日してたのか。



「レイム……君は、神か何かなのか……?」


ここで「そうで〜す」とか言っても信じないクセにそういう聞き方しちゃいけないと思うよ。

言うても、元・神様のなりそこないだから全面的に肯定したらダメだけど。

嘘つきになっちゃう。


「単に、あの子がまだ死んでなかったってだけだよ

んで、運が良かっただけ」


死亡と判断を下すには三つの条件全てが揃っていなければならない。

呼吸の停止。

脈拍の停止。

瞳孔の拡大。

この三つ。


フリアンの呼吸は止まり、脈拍も手首や頸動脈で測っても確実にあると判断出来なかった。

それに関しては、心停止はしていなかったし極々微弱ながら観測できたかもしれないが、少なくともあの状態では無理だった。


だが、瞳孔は開いていなかった。

なので蘇生措置を素人ながら行い、運良く息を吹き返してくれた。

ホント、運が良かっただけだよ。


脳死状態だったらどんなに手を尽くしても息を吹き返すことは無かった。

植物状態だったら大脳の機能が停止していたし、息を吹き返したとしても意識が回復する段階までいってくれるのか、正直厳しかった。


なにせ十分以上経過していたのだ。

それを医者でもない、専門知識がある訳でもない、ズブのド素人が治療に当たったのだ。

運が良かったとしか言いようがない。


もう、医者の真似事なんざこりごりだ。


コレで本当に、村人みんな仲良く移住計画が動き出すね。

ホントは名付けるのであれば、革命都市建造計画だけど。



フリアンは経過観察のために俺預かり。

フリアンが離れたがらないのでヌリアも同行することが決まった。


元々俺たちが向かう予定だった村は、俺たちの移動速度ならココから半日程度の距離になる。

そこよりは手前、川にほど近い開けているまとまった土地があるし、ソコに拠点を置くことにする。


村一個分の人数の大移動となると半日での到着は難しい。

そもそも、俺たちは終始走って移動するつもりだったのだし。

年寄りも子供もいるのにそんな無体は強いられない。


早くて二日はかかることを見越して最低限の食料を渡す。

確認したら冒険者の一人が水の精霊術を使えると言うし、川を素直に下って行った先を目的地に設定したので、飲水に困ることはない。

食べ物だって、村から持ち出したり道中魔物を狩ったり魚を釣ったりすればなんの問題もない。

あくまで兵糧丸は非常食としての扱いだ。


あとは、万が一の時のために通信機――まではいかないか。

非常時に壊すと俺が感知できる道具を渡した。

感知したタイミングが俺の方に問題なければ転移出来る仕組みにしておいたものだ。


因みに、ルーメンがカノンに似たようなものを渡していたお陰で、彼はこの村に瞬間的に移動出来たそうだ。

光の精霊であるルーメンらしい、光速で俺の元へと移動出来る道具だそうだ。

ソレ、身体にかかるGはどうなってんの?

そういう疑問は、この世界では必要ないんだよなぁ。

頭で理解しているつもりでも、違和感を覚える。


元々は俺が迷子になったとかはぐれたとか、そういう時に俺を迎えに行くための道具だったそうだが。


俺は幼児か。

完全に子供扱いである。


まぁ、そのおかげでカノンが駆けつけてくれて平和な形に事態が収拾したのだ。

良しとしよう。



くれぐれも逃亡しないこと。

村の人たちに危害を加えないこと。

無事俺たちと合流すること。

いのちだいじに。

その四つの約束を首枷で縛り付ける。


その上でカノンからの助言により、報酬の前払いとして硬貨も数枚渡した。

俺にはそれが如何程の価値を持つのかは分からないが、冒険者諸君は年甲斐もなくはしゃいでいた。


依頼が過不足なく無事完了したらその倍。

場合によっては追加報酬も出すと取り決めたら、宴会でも始まるんじゃないかというノリでいやさかを叫んでいた。


全くノリについていけないので……と言う訳ではないが、金の勉強をしなきゃだな。

人の文明が栄えた所にこそ、通貨と呼ばれる発明品が生まれるのだ。

金銭の価値を学ばなければ、人足り得ない。


サルと一緒だ。

イヤ、猿の方が人間よりも賢い時があるから一概に卑下す例えに出すのは失礼だが。


「それじゃあ、俺らも出発しますか」


魔物がねぐらにして繁殖地にしないように、また村人が戻ってこないように、既に半壊していた村を徹底的に破壊し終えたあと、冒険者と村人御一行を見送り、俺たちもこの場を後にする。


村人の同行者二人には目を閉じてもらい、俺とカノンが一旦別れたあの川沿い。

俺が一度訪れた場所なら瞬間移動が出来るので、あそこまで一足飛びで進む。


その後は……とりあえず、朝ごはんだな。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ