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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、ドラゴンを解体する。




貴重なナイフを投げて無くした事実を報告したら、竜の血を飲んでハイテンションになっているカノンにこっ酷く叱られた。

まさか、竜の血に麻薬のような効果があるとは。

過去一の勢いかもしれない。

正座で頭を垂れて、ひたすら耐えた。


俺が知らない単語でもののしられるのだが、意味は分からずとも「あ、今の言葉はけなし言葉だ」と分かるのが不思議な感じだ。

日本語を伝来させたのは地球からの移民だろうが、数百年の間に相手を悪く言う言葉が増えているというのが、少々物悲しい。

美しい言葉が数多くある中で、なんでそこだけ発展しちゃったんだよ。



抗老化物質のNMNとNADが、他の魔物に比べて多分に含まれているので、竜は長寿だし老化もしにくい。

その生の血を飲むことで、その他様々な栄養素をダイレクト吸収できる。


別名生命の泉と呼ばれているそうだ。

まさしくスッポンのような立ち位置にあるのが竜なのだろう。


決して美味しいものではないが、お貴族様なんかは若返りのために竜の血を大枚払って買い漁り、高濃度のアルコールで割って飲むのが日課になっているとか。

胃が強くないと無理だよね。


せっかく身体に良いからってマズイ血液を飲んでも、アルコールが身体に悪いしあまり意味をなさないのではないだろうか。

そう思ってしまうのは無粋であろうか。


今回カノンがやったみたいにジュースで割れば良いのにね。


あ、一口も飲まないのはテルモに悪いので、少しは飲んだよ。

生搾りのストレートジュースよりは少し濃いミックスジュースって感じで美味しかった。

カノンには血を割る用と口直し用と瓶を分けて渡しましたよ。

そこだけはとても感謝された。


消化吸収にかかる時間はどこに行った? と思いはするが、即効性があるようで、飲んで暫くしたら顔色も良くなったし活力にみなぎっていた。

土気色の血色が悪い顔は死体を彷彿とさせるので、口うるさくはなったが復活して良かったと心の底から思う。



一通りお説教が終わったあと、ナイフを生成して解体を始める。

地の精霊の力を借りて作れるのは楽で良いな。

ここら辺の地質が鉱物を多く含んでいるからこそ出来る芸当なのだろうが。


まぁ、キチンと鍛え上げられた刀身ではないので切れ味は随分落ちる。

若い個体でなければ竜皮に歯が立たず、泣く泣く放置することになっただろう。

泣くのはカノンだけだけど。

肉は普通に切れるから、俺の目的の肉の確保はできるもん。



身体が大きい分、内臓も当然大きくなるし体液だってかなりの量が取れる。


今回はカノンが飲んだ分の血の他は、ここまでの道中で使った既に空の瓶と、肝臓や胆嚢を取り出した時の洗浄に使った聖水の空き瓶に詰められるだけ詰めた。

腐らないように即冷凍処理もする。


内臓は乾燥処理さえすれば重量を減らせるので水分を抜く。

慣れているカノンに精霊術による処理が必要なものは丸投げする。

俺がやって貴重な資料とお薬の材料が無駄になったら勿体ないからね。


俺は鑑定眼に表示される指示通りに皮を剥ぎ取る作業をする。

あと、シッポの表面を幾つか切り取り串に刺して焼く。

遠火でじっくり焼いている間に、あらかたの解体が終わればいいなと思っている。


デカすぎて二人で全部解体して素材を持ち歩くのは無理だから、重要性の高い部位から取り出し、ある程度の時間になったら切り上げ、日が出ているうちに村に到着。

村で人手を確保し、明日また改めて来ようと言う話になった。

丸一日外に放置したら腐らないだろうか。


心配するが、そこはこの世界の霊力的な不思議パワーでなんとかなるようだ。

ただ、竜種の肉は魔物の餌にも当然なるので、魔物避けのお香は充分に焚き染めて行くそうだが。

お香を作るコストと、処理出来ずに残していく部位の価値を見比べて、お香の方が勝つようならその処置はしていかないほうだ。

貴重な素材だったとしても、何でもかんでもとっておいたら邪魔になるだけだもんね。



羽毛は場所によって大小様々な大きさで、しかも色が全然違う。

何故なのかと言えば、竜は全属性の状態で産まれてくるため、巣立った直後の幼体のうちはまだ属性が確定していないそうだ。

羽根が抜ける頃には、それまで過ごしてきた環境や使った技によって、水竜になったり地竜になったり、固有属性が分かれていくんだって。


へ〜。

鑑定眼さんは物知りだね。


全属性のままなら、どんな精霊術でも使いたい放題だろうに。

なんでわざわざひとつの属性専門に固定しちゃうんだろ。

定住する場所によっては、得意とする属性を伸ばさないと生きていけないってだけかもしれないけど。


火山帯にいると言われる火竜が地属性持ちだったら、マグマに飲み込まれてチーズみたいにとろけちゃいそうだもんね。

火属性持って耐性つけてないと、自分の身が危うくなる。

まぁ、だから大抵火竜を親に持てば子も火竜になる傾向はあるようだけど。

この幼体の竜は、なんで属性が変化する前に巣立ってしまったのだろうか。

親の住処をそのまま根城にすれば良いだけなのに。



綺麗に一箇所だけに穴が空いていたのなら、そこから剥ぎ取る加工が簡単に出来たのに。

どの魔物の皮も、剥ぎとる時はなるべく切り込みが少なく、面積の広いものに仕上がるようにと言われている。

多少肉が皮に付いてしまっても、手間ではあるが、あとからこ削ぎ落せばいい。


だが、途中で穴が空いたり裂けてしまっては使い物にならなくなる場合がある。

竜の皮は弾力も厚みもあるし、表面は結構な硬さがあるので今空いている以上の穴を開ける心配はしなくて良いだろう。


気をつけなければいけないのは、その硬い表皮で即席で作ったナイフを折らないようにすることだ。

「スキル」で頑丈で切れ味の良いナイフを作っても良かったんだけど、カノンにツッコミを喰らったらいけないし。

カノンが作った物と同程度の強度のナイフを作りましたよ。



シッポのグチャグチャになった断面は、先程串焼き用の肉を確保する時にある程度整えた。

水で洗い流したし、ミッチリと質の良い筋肉が締まった尾の筋繊維がしっかり見えた。

筋肉質なだけあり、白い筋が所狭しと並んでいる。


一部赤黒く変色してしまっているのが勿体ない。

うっ血した部分も、一応味見程度に串一本分の肉は取り分けたけど、どうかな。


うっ血してしまい、血が沁み込んでしまっているが、よく見ると、皮と身の間にうっすらと膜があるのが分かる。

その膜の間にナイフを突き刺し穴を開けた。


その穴から風の精霊術を少し強めに……訂正。

かなり強めに送り込む。

するとボスっと重い音と共に皮膜が外皮から剥がれる。

肉と外皮が分断されたので、シッポの先を引っ張れば、ツルンと外皮が肉から綺麗に離れてくれる。


規格外に大きいので、かなり力技でやったから、周りから見たらアッサリやってのけたように見えるだろうが、実際はかなり大変な作業だ。


皮膜に弾力がかなりあるので、一気に叩き込むように風を送らないと奥まで外皮を剥がせない。

剥がした後も、地面から少し浮かせてから引っ張らないと地面と表皮が擦れて、傷が付いてしまい価値が下がる。


当然、重量物なので浮かせるのにも、引っ張るのにもなかなかな霊力を使う。

底は見えないので霊力の自体の余力はあるだろう。


しかし小さい個体とはいえ、竜を二人で捌くのは正直無謀と言う他ない。

解体に集中しすぎて魔物の接近に気付けなかったら最悪だ。


カノンが個人的に欲しい部位を確保したら、早々に村に行くべきじゃなかろうか。


そう進言しようと、背後で作業をしているカノンを振り返ると、職人の目付きで既に大部分の解体を終えていた。


マジかよ。

素材は鮮度が命、と言って手早い作業が求められると教えてくれたが……今までは、俺のペースに合わせてくれていただけだったのか。


うん、この速度なら肉が焼ける頃には終わるわ。

すげぇ。

ただひたすらすげ〜。



中心にある立派な骨と、外側にも骨みたいな白く小さい硬い塊が先まで走っている。

背びれでもあったのかな。


その太い骨の周りには、霜降り肉のように、筋繊維の間を細かく白い脂が網目模様に入っている。


天然の生き物でここまで立派に霜降りになる生物っているんだな。

筋肉もかなり発達しているというのに。


牛なんかはこの霜降り状態にする為に牛舎であまり運動させないようにしつつ、餌も通常草食動物には与えない種類のものを与える。

肥えさせるために特別待遇をするのだ。


鎧牛の解体を見た時は、運動量が多い成体だったこともあり、かなり赤い引き締まった身をしていた。

脂肪が無いとは言わないが、今回の竜のように赤身の筋繊維の間ではなく、赤身の塊の周りを分厚い脂肪が固めてる感じだった。


アレはアレで美味しかったが、昨日の鹿の魔物みたいに若いと身はピンク色っぽいし、脂も塊ではなく全体にうっすらと走っていることが多い。

この竜も若いからこその、この霜降りなのだとしたら、即死させられなかったのが悔しすぎる。

この見た目で血なまぐさくて食べられなかったら辛い。



コレを見てグロいではなく美味そうと思えるあたり、随分俺も野性的な生活に慣れたものだとしみじみしてしまう。

大型動物から出てくる大量の血液も、生肉だってこの世界に来て初めて見たものだ。

食卓に並ぶ加工済みの食品しか殆ど見たことない人間には、結構生の状態の食材って気持ち悪く見える。

何も映していない虚ろな眼球なんか、その最たるもので、ギョロッと動かれた日には漏らしそうになるレベルで怖いし。

夢にも見たぞ。


臭いだって酷いもんだ。

鉄錆臭い血液の臭いもそうだが、解体する時に胃腸を含む内臓を取り出せば糞尿の臭いだって辺りに立ち込もる。

酸素ボンベとまでは言わなくても、マスクは切実に欲しくなる。


しないよりはマシだから、大きい布を逆三角の形にして鼻と口を覆う簡易マスクは毎度しているが。

ないよりマシ程度のものだ。

いずれキチンと作ろうと思っている。


竜は浄化せずとも生き血を飲める位だし大丈夫だが、他の魔物は浄化しなければ血液一滴が体内に入るだけで危ない。

瘴気と呼ばれる黒いモヤは、それだけ人間にとって劇物になるのだ。

戦闘中飛び散る血液だって、当然大量に浴び続ければ汚染される。

傷口から体内に侵入する恐れもあるし。


水の精霊術が使えない人は旅をするのはとても大変だろうなと思うよ。

飲み水の確保、戦闘中の洗浄、解体時の浄化、埋葬時の浄化etc……


あの遺跡の魔物で分かったが、魔物固有の属性が強い場合、精霊術でのダメージが全然通らない。

火属性の魔物を相手にする時なんかホント大変だろうなと思う。

弱点を攻められないと長期戦になるからね。



なんとか色合いごとに切り身を作り、尾先の繊維質な所は関節ごとに輪切りにしてシッポの解体作業を終えた。


筋が細かく入っている所は、なんか、鑑定眼曰く、筋にそってナイフやスプーンでこ削ぎ落とすとネギトロみたいで美味しいそうだよ。

竜、生で食べられるんだ。


串焼きも、少々香ばしさが混ざるいい感じの香りになってきたし、骨に残ってしまった肉もかき集めて、ネギトロみたいなたたきを作ろう。

生姜醤油でサッパリ頂きましょう。


大きいスジをまな板代わりにして骨と筋からこ削ぎ落とした肉を更に細かくするためナイフでたたく。

解体速度を見ると杞憂でしかないだろうが、カノンはまだ本調子じゃないかもしれない可能性を考えて、なるべく細かく咀嚼を必要としないレベルまでたたく。

生姜や香草を入れて更に叩いて盛り付けて、貴重な調味料は風の精霊術を使って肉全体に掛かるように霧吹きをする。


味見をしたけど、脂っぽさを香草が中和してくれ、その香草に負けないくらい自己主張の強い肉の味が口全体に広がった。

そのすぐあと、噛んでもいないのに口の中から消え失せてしまい、次から次へと食べたくなる魅力があった。

手が止まらなくなりそうだったので、二口目は死ぬ気で抑えた。


あともう一口だけ、と自分を甘やかしていたら、全部食べきってしまうのが目に見えていたからね。

がんばりました。



シッポの先肉は輪の形のままステーキにしようとしたのだが、あまりにも脂が落ちて煙が出るものだから、途中でスープに切り替えた。

匂いに誘われて魔物が来たら大変だ。


残滓のお陰なのか、全然寄ってくる気配はたいけどね。


あらかたの解体を終えたカノンに、本日二度目のダイナミックシャワーをぶちかまし食事にする。


やはり、肉を生で食べることに拒否感があるのか、最初は焼いた肉と尾出汁のスープにしか口を付けなかった。

その肉が、遠赤外線でじっくり焼いたおかげなのか、余分な脂がなく旨味がギュッと閉じ込められていて、咀嚼する度にヨダレが溢れ出てきて大変だった。

今まで食べた肉と全然違う。

柔らかいのに味が濃くて飽きが来ない。


うっ血してしまった箇所も、血なまぐさいなんてことはなく、血の割合が多いせいか、また違う味わいとホロホロ崩れていく食感で美味しい。

好みは分かれるだろうが、珍味として食べる分にはなんの問題もない。


ホント、もっと上手く仕留められていたのならば、どれだけ美味しい料理に化けていたのだろうか。

次は確実に即死させる。


スープもダシの自己主張が激しく、香草とバトルでもしてるんじゃないのかと思うくらいに旨味が濃かった。

コレでラーメン作ったら絶対美味い。

今回入っているのは麦団子だけど。


そんな二品を差し置いて、俺がうまい! うまい!! と言いながら堪能していたものだから、カノンもおずおずとネギトロに手を伸ばした。


俺は見ないフリして餌付け成功の瞬間を待つ。

……。

…………。

………………よしっ!!!


行儀悪くつついたり、臭いを嗅いだり、俺の様子を伺ったり。

散々してからようやく口に運び、驚いた表情でコチラをバッと見たのでひとつ頷いて見せたらその後はバクバクと勢いよく食べていた。


フフフフフ……

ニヤリ。

してやったりだぜ。


それにしても、竜を定期的に、イヤ、毎日食べたいと思う位にホントに美味しいわ、コレ。

竜を家畜化して養殖した方が良いんじゃなかろうか。


……ベースの竜の肉があれば、「スキル」で苦なく作り放題だよな。

どうにかこの肉持ち歩くことが出来ないだろうか。


過去一真剣に考えてしまった。





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