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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、撃ち落とす。




世のため人のため、なんて正直ガラじゃない。

地球丸ごと救おう計画だって、周りに言われたから行動を起こしただけだし。

その中で大切な人たちを生かすことに繋がるのなら、と決行しただけだし。


世界の人たち皆が幸せになれるなら命を投げ打ってでもどんなことでもします、なんて自己犠牲的な考えは本来、俺にはないものだ。


与えられた金銭で少しでも不幸な人を少なくしたい、幸せな人を増やしたいと、いくつのパンが買えるのか。

そんなこと聞くタイプの人間じゃないんだよ。

どっちかって言うと、んじゃこのお金で遊そぼうぜー! ってなるタイプ。


大切な人、ついでに余裕があれば手が届くなり目につくなりした範囲の人にしか、施しなんて与えられないって。

聖人君子じゃあるまいし。

そんな人間できていないもの。


……あ。

今の俺、この世界の人間全部見渡せるようになったんだわ。

ほんの、今さっき。



今の俺の名付けの由来となった、鎮魂のために余生を過ごす必要は、皆が赦してくれたおかげでなくなった。

だが、自分の好きなように生きれば良いと言われても、今まで抑圧されてきた自分の意思で行動をするのは、思いの外難しい。


持っているのは良くないことだと言われ続けて、押し退けられ棄てられてきたものを、今更、拾い集めて大事にしなさいと言われても。

行動も思考も自由を奪われてきたのに、突然今日から自由だからあとは好きなように生きなさい、と放り出されても。


正直、困る。



食べる行為は、本能に基づく行動だからか、結構すんなりアレがしたい、コレがしたいと欲があふれて出てきた。


美味しいものをお腹いっぱい食べたい。

野菜よりもお肉が好き。

時分が作ったものよりも、誰かが時分のために作ってくれたものの方が満足感が大きい。

そんな感じ。


知識欲も、そうだな。

データとして残されているものに限るが、知ることが出来ない事柄の方が少ない俺にとって、この世界のあらゆるものが知らないことだ。

知らないことがほぼゼロだった俺にとって、今の状況は度し難いと思う程度には受け入れたくない現実だ。

当然のように備わっていた、能力の基本値が転移により下がった訳なので。


うん、やっぱり嫌だな。

空と大地を指さして、天上天下唯我独尊と偉ぶるようなことはしないけれども。

培われたものか、俺の生来の気質なのかは分からないが、俺は負けず嫌いなのだ。

過去の自分に負けているのは悔しい。

この世界のあらゆる事柄を知る努力はし続けたいな。


そうなると手っ取り早いのは、先人の知恵を授かることだ。

なので、この世界で長生きしている精霊よりも博識なカノンと一緒にいることが、この世界を知る近道になるだろう。


肉体を作る精霊の頼みが叶えられた後も、理由をこじつけてでも付きまとってやる。

実は秘かに決めている。


誰かの腰巾着や金魚のフンになるのって今までしたことがなかったから、ちょっと憧れているし。


そのためにも恩は売っておくべきだよな。

今の所俺が借りを作りまくってる状態だし。

その借りを返して、沢山貸しを作らねば。



そのためにも食料確保だ。

俺にだって狩りくらいできると証明せねばならない。

いつまで経っても役立たずのままではカノンに俺の存在価値を認められないからな。


決していつまで経っても青白い顔のまま目を覚まさないのが心配だからではない。

断じて違う。

もっと俺が戦闘で上手く立ち回っていればとか、そんな罪悪感なんて感じてない。

ないからな。



川で魚を釣るか、丘向こうの四足獣を狩るか。

それとも、霊力を回復させる効果のある薬草でも探した方が良いだろうか。

考えあぐねいて空を見上げたら、遠くから大きな鳥が飛んで来るのが見えた。

軌道的に、ココの上空を通過しそうだ。


魔物だと変速的と言うか。

かなり物理法則を無視したトリッキーな動きをするから、飛んでる魔物を仕留めるなら、一撃必殺。

先手必勝だよな。


羽を撃ち抜いても、精霊術に似た力を使われたら逃げられる。


狙うは、頭……は無理だな。

射撃訓練の的と違うのだ。

あんな小さな動くシルエットに向かって狙えるもんじゃない。


なら、胴体になるべくデカい穴を開ける方向だな。


距離が開いている上、重力に反した動きをするから下手な物理攻撃だと届かないな。

空気抵抗も考慮しないと。

そんなことを考えている間にも、当然魔物はどんどんコチラに近づいてくる。


かなりの速度での攻撃が必要だな。

……レールガンの原理ってどんな感じだったっけ。

アレ、確か音速の何倍もの速度を出せたよな。


遠い空の向こうに見える影を撃ち落とすのだから、何メガジュールの運動エネルギーが必要だろうか。

ガスタービン発電機や原子力発電発電機を見たことはあるけど、イメージで何万アンペアもの電気を生み出すことが、果たしてできるのか。


ごちゃごちゃ考えても仕方ない。

自慢の妄想力でソコはカバーしよう。



重さ五百g程度のナイフを一本取り出し、砲身をイメージする。

砲身内部に左右に進む方向を定めるレールとして電極を設定。

電気回路を形成。


するとフレミング左手の法則に基づく駆動力が働く。

電流によって生じる磁場は、弾体となるナイフを超音速に加速。

発射。

時間を置かずに着弾。


意外とアッサリ、目標を貫いた。


タイミングが遅れてしまい、胴体ではなく下半身の尾に近い部分に被弾したため、シッポが千切れた。

あるはずのものがないせいでバランスを崩したためか、上手く飛べなくなった影に、もう一発お見舞する。


今度はしっかり胴体部分に着弾。

現在地から少し離れた場所へと落ちていくのが見える。


……見える、が。

ヤバい。


慌ててかまどを「破壊」し、遺跡の出口? 入口?

この際どっちでもいいよ!


走ってカノンを抱き抱え、荷物を手に取り、中へ中へと猛ダッシュする。

ぐえっとうめき声が聞こえたが、無視して通路の曲がり角の先へと進んだ。


ドシンッとズドンッと二回に分けて、重量物が落下する音が聞こえて数秒のタイムラグの後、土埃が襲ってきた。

中に避難してもコレかよ。

火事場の馬鹿力によりなんとか逃げおおせたが、外に居たらどれだけの被害が出ただろうか。

考えたくない。


「一体、なにがどうなったんだ……?」


抱えたままだったカノンを謝罪しながら下ろしたら、粉塵が落ち着かないせいで、お互いむせてしまった。


かくかくしかじか。

カノンに栄養摂ってもらおうと、飛んでた鳥を落としたら、思いの外その鳥が大きくて、出入口付近にいたら危ないと判断したので慌てて避難して今に至ります。

ごめんなさい。


「そんなデカい鳥、ここら辺を飛ぶ種類でいたかな……」


直前迄寝ていたため頭が動かないのか、カノンは難しい顔をしたまま唸っている。

安静に寝かせておこうと思って行動したのに、真逆の結果になってしまい申し訳ない。


少し寝たから大丈夫だと、ふらつきながら言われても説得力が微塵もないが、俺に任せてもなんだかろくなことにならないからと、鳥の落下現場に赴くことになった。

情けない話だが、実際、俺が一人で行動したせいで今こうなっている訳だし。


ぐうの音も出ないので大人しく後に続いた。



遺跡を出る直前で「落ちたのはどの辺だ?」と声を掛けられたのだが、答えようとしたら「あ、分かったからいい」と静止をかけられた。

そんな近くに落ちたのかと思えば、余りのデカさに存在感が溢れすぎていて、遠くではあるが見れば分かると言う状態だった。


全長、どれくらいの大きさだろうか。

水晶球の白滝付近にいる、珠獅子よりも余程デカい。


そのデカさに比例するかのような、深い、ふか〜いため息をついて、カノンは荷物を持って魔物の方へ歩いて行った。

イヤ、体調悪いんだから荷物くらい俺が持つよ。

手に持った荷物を奪い取り、左右の肩にそれぞれ担いだ。


軽量化の術を掛けたので全然重くないから出来る芸当だ。

あ、さっきカノン運んだ時も無意識に使っていたのかも。



「テルモ様が作ってくださった兵糧丸に、果物で作った甘い菓子のようなものがあったよな?」


「あぁ、キトロンだったかキトルスだったかと、メロンが入ってるって言ってたやつ?」


メロンと言って使っていたのがりんごだったので印象に残っている。

確か、美味しさを保ったまま水分を飛ばすことがなかなか出来なかったとかで、ひとつしか納得のいく仕上がりにならなかったから、くれぐれも俺に食べるように言っていたヤツだ。


「済まないが、くれ「いいよ」

……即答か」


俺とテルモのやり取りを見ていた、精霊様至上主義のカノンがわざわざ言ってくるのだ。

余程の理由があるのだろう。


あ、あと。

ほら、借りを返すため!

ドヤっ!!


「竜種は魔物の中でも珍しく、浄化を必要としない。

魔物ではなく、全く別の生物なのでないかと論じられているが、確認される個体数がとにかく少ない。

その身体は、頭のてっぺんから尾の先まで、捨てる所がないとされるくらいに様々な分野で重宝される。

その鋭い牙や爪は武器に、堅牢な皮膚は防具に。

旅の必需品は勿論、内臓や生き血は薬になる。

そのせいでなかなか資料に回される検体がなく、研究が進まない」


いやに饒舌だけど、どうした?

なんか変なスイッチ入っちゃった??

具合悪すぎて別世界に思考だけ飛んでイッちゃった???


と言うかですよ。

なんでこのタイミングで竜の話をするんだよ。

俺が落としたのは鳥だぞ。


「竜種は執念深く、その心臓を止めたあとでも時折復活し、自分を殺した相手を冥府へ道連れにしようとするそうだ。

油断するなよ」


え、何それ。

死後硬直の解硬とか反射反応とかその手の話?


イヤ、でもだから。

俺が落としたのは羽の生えた鳥だってば!!



近くで見ると、ホントでっかい。

羽根のひとつ取っても、俺の腕位の長さがある。

なぜかある、鱗も一枚一枚俺の掌サイズはある。

……逆鱗でも探した方が良いかしら。


「飛んでる姿見た時は鳥に見えたんだよ」


「若い個体のようだし、羽毛が成体よりも多いせいかもな」


なるほど。

鳥だと言って聞かない俺の言葉は否定せず、すんなり納得させてくれた。


竜って鱗に覆われたツルッとした見た目なのかと思っていたんだけど。

見た目もそうだし、恐竜みたいなんだな。


まだ死んでないのか、単なる死後の筋肉収縮によるものなのか。

ピクピクと痙攣している身体には不用意に近づこうとはせず、遠くから観察する。


肉体は見上げる大きさだし、千切れたシッポだけでも俺の体長をゆうに超える長さを持っている。

随分大きいとは思うが、コレでも幼体で、成体になるとこの倍以上の大きさまで成長するそうだ。


体表の色で竜の種類を特定するのだが、目の前の竜は様々な色合いの派手な羽毛に覆われているため、羽根を毟らないことには判断出来ない。

幼体は巣から出てこないとされているので非常に珍しい。

他の魔物でも幼体と成体で素材の効果が変わることがあるし、コレは研究のしがいがある。


まだ青白い顔をしているのにウキウキが伝わってくるテンションで饒舌になっている。

マッドなサイエンティストの雰囲気が隠れていなくてちょっと気色悪い。


「で、果物の兵糧丸は何に使うって?」


兵糧丸って言うか、濃縮還元した果汁の表面を無理矢理ペクチンで固めたものだけど。

香料や添加物が入っていないから、ちょっと酸味が強いかも、とは言われている。

他の兵糧丸のように齧るのではなく、水に溶かして飲むそうだ。

ビタミン補給が出来るなら別に良いよと言ったら、前世料理人のプライドが許せないのか渋い顔をしていた。


「竜の生き血が薬になると言っただろう?

癖があるから果汁と一緒に摂取すると良いとされているんだ」


あぁ、スッポンと同じか。

アレは生きてる個体の生首を落として、切り口から溢れてくる血をグラスにとるけど。

龍の場合はどうするんだろう。


「でも、近付かないと血はとれないですよ」


今もダラダラ傷口から流れ続けているし、コレでは生き血と言って良いのか分からなくなる。

早く採らなければ。


カノンは空の瓶を手に取り、嫌そうな顔をしながらソロソロと近付く。

この大きさでも、ビクンと一発派手に跳ねたシッポが当たっただけで人間には致命傷になり得るもんな。

慎重な行動は大切である。


いつでも防御術を発動できるように、数歩離れた後をついて行く。


死んだ後に食らいつくヘビみたいな行動をすると言っていたし、ATP反応によるエネルギー放出が起きるのだろうか。

もし、そうならマズったな。


肉はなるべくストレスを与えないように、即死・即放血が鉄則だ。

ATPは動物がうごくためのエネルギー源であると同時に、旨味の元となる成分でもある。

そしてソレはストレスを感じれば感じるほど体内から失われていく。


電気ショックを与えて気絶させてから屠殺するのは、心臓が動いている状態でも畜産動物にストレスをかける割合を少なく放血させることが出来、食肉をなるべく美味しくさせるためである。


だがこの竜の肉は、はるか上空からの落下に加えて、コレだけの巨体で痙攣をし続けているのだ。

肉体のアチコチを打撲し、内部でうっ血が起きているに違いない。


つまり。

体内の残留ATPが減少し、刻一刻とマズイ肉に変貌していっていると言うことだ。

コレは由々しき事態である。


お魚の活じめが良いとされているのと一緒なのだよ。

鮮度が命。

今から氷締めしたり血抜きしても遅いかな。


なんで考えに至らなかったのだろう。

それなら俺が竜の所へ跳んででも一撃必殺で首を落としたのに。


後悔しても遅いし、旅の目的に精霊の肉体の素材となる色んな竜種狩りがあるのだから、その時はしっかり殺ろう。



内臓がグッチャグチャにぶちまけられている所は避けて、動きが弱くなってきているシッポの方へと向かう。

生き血なんて飲んでも美味しくないし、クイッと一気飲み出来る程度の量があれば充分だろう。

なら切り口から絞り出せる分で事足りる。

それを生き血と定義して良いのかは微妙だが。


そう判断したが故の行動だったのだが、シッポの向こうに、目があった。

目があると言うことは、顔があるということ。

顔があるということは、つまり。


「っ!? 逃げろッッ!!!」


言葉を聞くのと同時に行動していた。

本日二度目のカノンを抱えての全速力の猛ダッシュ。


反射的に離れたが、噛まれる程度ならばここまで距離をとらなくても大丈夫な気がするのだが。

立ち止まろうとしたら小脇に抱えてるカノンから叱咤されたので更に走る。

まだまだ走る。


竜の首が追いかけてくる気配はないのだが。

どんたけ走れば良いんだよと、後ろを振り返る。


すると、大きく口を開けた状態の竜の喉の奥がなんだか輝いて見える。


「ドラゴン・ブレスが来るぞ」


何その心ときめくフレーズは。


幼き竜よ。

少年心をくすぐる必殺技を死んだ後にまで出そうとするな。

往生際が悪いにも程がある。


確かに「冥府へ道連れ」とは言ったけど、どうやって、の部分は聞いてなかったね。

ヘビと一緒か〜と考えてしまったせいで、先入観で噛み付いてくるのだと勘違いしてしまっていた。

確かにカノンは一言も噛み付いてくるなんて言ってなかったわ。


おとぎ話にも出てくるような、竜のとっておきの攻撃だ。

開けた土地のせいで身を隠す場所がないのなら、逃げるのを辞めて防御をするべきじゃなかろうか。


なんでも貫く矛はなんでも防ぐ盾に負けるのは有名な話だ。

つまり。

ダイヤモンドで作られた矛ですら防ぎ、ドラゴンの攻撃すら弾き返すイメージを具現化する。


どれだけの威力かも分からないのだ。

だが、百戦錬磨のカノンがヤバいと言うのだから相当の攻撃なのだろう。

カノンの手前控えていた「スキル」を使ってでも防がなければ、命が危ない。


クルッと方向転換し防護壁を展開。

まっすぐ正面から受けるのではなく、力を受け流すために少し角度をつける。

そうじゃないと弾き返したドラゴン・ブレスで、生き血を含めた素材全部燃えちゃうかもしれないからね。


熱による攻撃なのか衝撃波によるものなのかも判断出来ないので精霊術による防御の重ねがけも怠らない。

直接攻撃を防げたとしても、熱によって肺を焼かれたら終わりだし、衝撃波がぶつかったことで生じる爆音で鼓膜をやられたら大変だものね。


音を置き去りにして襲ってくる衝撃。


着弾と同時にゴリゴリ霊力が削られ、「創造」した盾が消失されるのを防ごうと「再生」スキルが絶え間なく発動する。

時間にして五秒足らずのことではあったが、生きた心地がしないとは、まさにこのこと。

遺跡内の魔物とは全然違うわ。

幼体とはいえ、魔物最強と言われるだけある。


俺のことだし、ここで弱い竜に遭遇していて良かった。

絶対大人を最初に相手にしていたら、調子に乗って油断して舐めプしていただろうしな。


攻撃が止んだのを確認し、辺りを見回したら凄かった。

溶岩が通ったあとみたいに、所々赤く地面が溶けてブスブスと煙を吐いていた。

とんでもないな。




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