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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、散策をたのしむ。




エレベーターで一気に最下層まで落ちていく時に憶える、ある種の浮遊感。

アレ、内臓が浮いた感じがして気持ち悪いよね。

三半規管も揺さぶられるし。

更に吐き気が増すと言うものですよ。


確かに便利ではある。

だけど、誰だよ。

こんなモン作ったの。

もっと身体に優しい仕様には出来なかったのか。


そんな文句が脳裏を横切るが、機械文明のないこの世界では当然エレベーターもエスカレーターもない。

この身体を突如襲った目眩は、あくまで、似たような感覚でしかない。


目隠しされているから、もしかしたら本当にエレベーターに乗っている可能性もゼロではないけどね。

知られたら国家転覆レベルだとか言っていたし。


地球にあった便利家電の類いは、この世界にはオーパーツ的存在にもなるだろう。

精霊の力を借りずに人間が持つ以上の力を振るえる技術が世に知られれば、力関係の均衡が崩れる。


地球とこの世界がどのように合体したのかは分からないが、地球に元々あった建造物がコチラの世界に招かれていても不思議ではない。

何百年も経過していたら遺跡と言われてても不思議じゃないしな。



「もう、外していいぞ」


言われて目の部分に巻かれた布と、マントに付けられたフードを外した。


酷いよね。

目隠しをしただけだと布の隙間から覗き見ることもできるからって言って、鼻下まで隠れるフードを思いっきり引っ張って被せて、その上から更に黒い布でグルグル巻きにしたんだよ。


お陰で頭が蒸れて仕方なかった。

付与を防御力に全振りしたせいで、通気性が悪くなってしまったようだ。

最初に作ったものに抜けがないとは思っていなかったが、まさかの方向で欠陥が見つかった。

残念だが、要改良だな。


汗で顔に張り付いた髪の毛をかきあげ周囲を見渡すと、目隠しする前の風景とはだいぶ違った景色が広がっていた。


聖木周辺は、何と言うか。

澄んだ空気でマイナスイオンたっぷりの小鳥がさえずるような癒し空間だったんだけど、目の前の景色はThe・森! って感じで鬱蒼としている。

自殺の名所として有名な国立公園を彷彿とさせる雰囲気だ。


手入れがされていないため日があまり差さない空間はジメッとしていて、石にとどまらず倒れた木々にも苔がむしている。

岩と一体化した巨木があったり、不気味な甲高い鳴き声が遠くから響いたり。

オバケでもでそうな不気味さがある。


コンパスが狂うのは俗説だそうだけど。

右を見ても左を見ても同じように見えてしまうと、迷い込んだら出られなくなる、と言われるのも理解出来てしまうらくらいの樹海っぷりだ。


「しばらく歩くと森を抜けられる。

進むぞ」


慣れのせいなのか、特別な道具でもあるのか、はたまた俺には分からないような道標でもあるのか。

躊躇いもせずカノンはまっすぐ歩き出した。



森の薄暗さに慣れてくると、なかなか面白いものが目につくようになる。

魔物が全然出ないので警戒する必要がなく、観光気分で散策できるから余計にだ。


コチラの方が魔物が出ると言われても納得の様相をしているのに、本当に、全く微塵も出ないのだ。

遠くで魔物の鳴き声が聞こえる分、不気味である。


何故こうなっているのか、理解が出来ないのでどうしても不気味だと感じてしまうのだが、森に飲み込まれた遺跡が随所に見られ、それがとても興味深い。


世界遺産に登録され写真が残っていた遺跡は、観光名所になっていることが多く、森が整備されていた。

なので目の前のコレらとは少し趣が異なる。


同じ世界遺産でも、整備があまりされていなかった、サンボー・プレイ・クック遺跡群の、樹木に飲み込まれる寺院や、アンコール遺跡群のベン・メリア遺跡のような風景に近い。


遠い過去、人の営みがあったであろう遺跡が、森に飲み込まれ森と同化している。


これだけの巨木が育つのも、木々が家屋を飲み込むのにも、随分長い年月がかかるだろう。

百年程度では足りない。

地球とこの世界が合体する前の文明だろうか。


堅牢で重厚感のある石造りを見ると、決して文化が微塵も育たなかった訳ではないのだと推測できた。

ただ日々の暮らしを確保するだけならば、こんなレリーフは刻まれないだろう。

それとも神への信仰は根強くあったが故、なのだろうか。



正面が徐々に明るくなってきた。

ようやく、森の端へと辿り着いたのだろう。


ヘリコプターのプロペラが動く音や落雷のような音が徐々に爆音へと変化していく。

森から抜けると、視界が一気に開けた。


正面には遠くに沈み行くオレンジ色に輝く太陽が、視界の端にはその光を受けて染まる直瀑が映る。

下を覗き込むが、飛沫で霧がかかったように何も見えない。

さっきから聞こえていた音はコレか。


まさか、水晶球の白滝を源流としたものだろうか。

コレだけの川の幅と水量を見ると、どう考えても俺が歩いてきた距離では説明が出来ないレベルなんですけど。


雄大にカーブを描いて流れていく川の先には、所々、集落だろうか。

影が固まって見える。


文明は川沿いに栄えると言うけれど、本当なんだな。


「こっちだ。

落ちるなよ」


圧巻の景色に惚けていると、現実に引き戻された。

確かに、落差がゆうに百メートル以上はありそうなこの高さから落ちたらひとたまりもないだろう。


地表に出ている木の根に脚を引っ掛けないよう気を付けながら、手招きされるままに進んだ。



今日はここで寝ると指定されたのは、森に飲み込まれていた遺跡と同じような作りの空間だった。

屋根もあるし風取り窓もある。

石造りだから火事の心配もしなくて良いし、確かに野宿に適している。


荷物を置いてもう一度森の中に入り、手頃な薪がわりになりそうな木の枝を拾う。

精霊術を使って火をつけるので、風が通りやすいようにとか、別に考えなくても良いのだろうけど。

煮炊きもするし程よい太さの枝が拾えたので火床が安定しやすい形に枝を置く。

焚き火らしい形と言えばティピ型なのだろうけれど、アレは薪を組むのにコツがいるから。


引敷に腰を下ろし、少し早いが夕飯の準備をする。

俺がいると狩の邪魔だと言われたので、肉の確保はカノンに任せた。


不慣れな素人だからって、邪魔呼ばわりは酷くない?

足でまといにならない程度には頑張れるのにさ。


まぁ、役割分担した方が良いのは事実だし良いけどね。

半端な獲物取ってきたら文句は言ってやるつもりでいるけど。


ジャガイモもどきの岩芋と、トウモロコシもどきの玉黍を蒸かして練って塩気の強いチーズと一緒に固めた携帯食。

そのまま齧っても良いけど、お湯で溶かしても美味しいよとテルモから言われたので、今夜はポタージュスープです。

沸騰しないように、鍋の縁がフツフツしてきたら焚き火から遠ざけて保温状態にする。


小型の蹄脚種を仕留められたと言って後ろ足二本と塊肉と、何やらツノを持ってカノンが戻ってきた。

塊肉は肩の部分で一番美味しいところだそうだ。

後ろ足は、つまりモモ肉だね。

脂身が少なく身がしっかりしているから、運動してしっかり汗かいた後に濃い味で食べると絶品だろうね。


うん。

絶対汁物チョイス間違えた。

醤油ベースの味が合いそうなお肉だ。

それなら味噌玉溶いて味噌汁にしたのに。


ツノは薬の材料になるからついでに持ってきたそうなんだけど、荷物増やすの辞めようよ。

明日には初の町? 村? に着くとは言っても、まだまだ長距離を移動しなければならないのに。


袋角の季節は過ぎてしまったが、この色と大きさなら数ある分には困らないからと言うが、本当だろうか。

元の場所に戻してらっしゃい! とか言うべきか。

俺はお前のオカンじゃねぇぞ。


明日のために早く寝た方が良いと思ったが、角をそのまま持ち歩いては邪魔になるとまだ温かみのある角を加工することになった。


予想に反して思ったより弾力がある角を血液を全て出すために熱湯に潜らせる。

風をおこして乾かしたら、今度は表面の産毛を焼く。

角なのになんで毛が生えているんだと言いたくなるが、鹿っぽい魔物の角だから仕方ない。


シカなだけに。

やかましぃわ。


セルフノリツッコミをしながら無心に毛を焙る。

鹿に似ていると言うことはつまり、この角の持ち主の肉ならきっと美味しい。

頑張れ、俺。

負けるな、俺。

この処理が終われば夕飯だ。


粉砕しやすいよう適当な大きさに切断し荒く砕いては冷却しさらに細かく砕く。

それを何度も繰り返して完成〜。


森に近い位置なのに精霊術が使えて良かった。

粉砕するのは力技でどうにかなるが、冷やすのだけは精霊術が使えないと無理だからね。

火にくべて角の細胞を脆くして砕く方法もあるが、熱を加えると薬としては一段落ちる品質になると言われたら、どうせ面倒臭いことしなきゃいけないならクオリティの高いものに仕上げたいじゃない。


まぁ、その間に焚き火を使ってカノンに夕飯準備して貰いたかったのが一番の理由だが。

携帯食は腹は脹れるし栄養価も高いのだろうが、満足度が低いんだよね。

やはり肉を食わねば充たされない。

ずーっと歩き通しだったし、お腹空いた。


肩ロースはシンプルに塩で焼いたものが出てきた。

ずっと煮込んでるそっちのお鍋はなんなのさ。

いい匂いがしてるから気になってるんだけどな。


鍋の中身は明日の朝ごはんは温めるだけで良いようにと今のうちに作った朝食だそうだ。

だが、こんな暴力的な匂いを漂わせておきながらお預けされるなんて拷問だ。


そうブーイングをしたら、俺が作ったコーンスープと汁物が被ると不満返しをされた。

別に俺は気にならないけど。

美味けりゃなんでもいいじゃん。

それに、育ち盛りの前に肉料理を用意したら、翌日までもつだなんて愚かなことを考えてはいけない。

足りなかったら遺跡の石を食い出すぞ。


あっけらかんと、本心で言ったら「まだ肉が硬いと思うのだが」と言いながらもよそってくれた。

よっしゃ。


確かに肉は野味あふれる硬い肉質だが、噛みきれないことはない。

歯応えがしっかりある。

その程度のものだ。


チャツネのような色んな野菜や果物のペーストが入っているから味わい深くて美味しい。

塩を振っただけに見えたお肉も、ちゃんと薬草で臭みを取る下処理をしてくれていたようで、クセが想像していたよりも少なく、なのに肉を食べている! と言う満足感が非常に高くて素晴らしい。

二品がどちらかと言うとしょっぱい系なので、俺が作ったコーンスープは甘みが前面に出ているし舌休めにちょうど良い。

砂糖は入っていないので、ホッとする自然の優しい甘さだ。


「このお肉にかかってるの、美味しいね」


「テルモ様が持たせてくれた」


あぁ、つまりはクレイジ〇ソルト的なハーブ塩か。

手軽に肉の臭み消してくれるし美味しくなるから便利だよね。


あのヒト、地の精霊が天職だと言わんばかりに好き放題しているよね。

今世が楽しいのであれば、それに越したことはないか。





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