神さま、家探しをする。
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下ネタを含む話になっております。
苦手な方はご注意ください。
清々しすぎる位に涼しい夜明け。
新しい門出を祝ってくれるはずの太陽はなりを潜め、日の出の時間はとうに過ぎてるのに窓の外は薄暗い。
つまり。
「あ〜。
長旅初日から雨なのは体力的に厳しいので、今日は待機で」
で・す・よ・ね!
アクアにお願いすれば、ここら辺一帯の雨雲程度なら消そうと想えば消せるそうだ。
なにせ水の精霊様ですし。
だが、そうなるとここで発達した雨雲が散り、本来降るはずのない場所で雨が降ったり、逆に振るべきはずの場所が乾燥したりする。
自然が起こす現象には基本的に介入しないのがアクアの信条なので、延期させられるならその方が良いと言われた。
最も影響が出やすいのは、海洋を挟んだ砂漠地帯。
砂漠は雨が降れば大災害になりやすい。
普段雨が降らない乾燥地帯が故に、砂が固まり密度が高くなっている。
乾いた砂は降った雨を吸収してくれず地表をそのまま水が表面を滑っていく。
するとどうなるか。
あっという間に大洪水が発生してしまう。
砂漠地帯の特性上、草木が少なくその水の流れを阻むものは非常に少ない。
丘の勾配程度では、下手をしたら水の流れをより一層早くし凶暴なものへと変えるだけだろう。
つまり、洪水の進路にいる砂漠に住んでいる生物が軒並み溺死することになる。
地球でも、砂漠では遭難による熱中症や脱水ではなく、突発的に起こる大洪水による溺死が一番多い死因だとされていたな。
一番が溺死なだけで、餓死や凍死だって多いけどね。
昼と夜の寒暖差激しいし、日中はただ立っているだけで体力消耗されるし。
もし砂漠地帯を旅する時には水の確保……は、精霊術でなんとかなるか。
食料の確保をしっかりしないとね。
あ、サボテンってあるのかな。
砂漠でも育って数少ない健康食品と言える位に栄養価の高い植物なんだよね。
全く想像がつかないから食べてみたいな。
丸一日暇になってしまったので、何をしよう。
そう考えた時に、思い付いたのが家の探検でまだしていなかった所ツアーだった。
って言っても、カノンの両親の部屋は絶対立ち入り禁止を言い渡されている。
なので地下がメインになる。
……と思わせておいてまだ行っていないカノンの部屋にお邪魔しよう!
許可は取った。
「何も面白いものは無いぞ」と言われたけれども。
それは本人視点の話だろう。
カノンだっていい歳した成人男子だ。
つまり。
えっちブックの一冊や二冊や十冊くらい隠し持っていてもおかしくない! はず!!
エロ本読みたいのか? と聞かれたら別にと返答するのだけれど、相手の趣味嗜好を知ってるか否かで話の盛り上げ方とか変わってくるじゃん。
性癖ってその人のヒトトナリが分かるもんじゃん。
乳派、尻派で戦争が起きるように、いつ相手の癖を踏んでしまうか分からないような地雷原なんて歩きたくない。
しかも人間はややこしいもので、そのふたつが二大勢力と言われるだけで、他にもうなじやら手やら声やら数え切れない程たくさんの派閥があるのだ。
それを知るのに手っ取り早いのは、やはり長年収集されてきたコレクションだろう。
この世界にエロ本があるかは謎だが。
日本なら識字率がかなり昔から高かったし、庶民の間にも文化を受け入れ楽しみ育てる、ある種の寛大さと余裕があった。
キリスト教が入ってくるまでかなり性に奔放だったそうだし。
だからこそ年季の入った春画や張形の類が発見されている訳だ。
欧州諸国は、それこそキリストの教えによりタブー視されているのが性の話題だし。
識字率も高くなかったし金を持ってる一部の人種の楽しみだったんだよな。
性欲は悪魔の仕業って言われるレベルだし、長い間一般人には縁遠い物だったんだよね。
長年ポルノ規制戦争が印刷会社と政府の間でされてた位だし。
そう考えると、カノンは隠し持っている派か。
それとも違法に持っている派なのか。
さぁ、どっち!?
持っていることは前提で話を進める。
だって健康な成人なら持ってて当たり前って先入観があるから。
本専用の棚が作られるくらい蔵書があるのだ。
その中の何パーセントかは人に見られたくない類のジャンルであったとしてもおかしくない。
本がなかったとしてもイラストくらいはあるでしょ。
好奇心いっぱいのウェントスと、そう言うことに興味津々なイグニスのふたりを伴い、いざ、カノンの部屋に突撃〜!
……と、テンション爆アゲで向かったのに、見事なまでの殺風景。
探しがいがない。
せめて、研究者らしくマッドなサイエンティストっぽいおどろおどろしい部屋にしていてくれよ!!
俺が借りてる部屋よりは物があるが。
机、ベッド、ハンガーラック、小さな本棚。
以上!!!
少なっ!!!!!
机の上には何もなく、ハンガーラックには服が上下三着ずつ掛かってるのみ。
小さな本棚も、中身はスッカスカ。
成人男子よ、配給品で生活していた俺よりも持物少ないぞ。
どうなってんだ。
……だが、俺は諦めない!
「本棚よりも枕の下がセオリーかな」
『たいちょー! 引き出しの中はどうでしょー!?』
『引き出しの中より引き出した棚下とか奥に隠した方がバレにくいよね』
データファイルをフェイクのフォルダ名つけて管理するようなヤツもいたけど、流石にこの世界にはその手の電子端末はないしなぁ。
おのおの思い思いの場所に突撃しては「無い無い」言って撃沈する。
ベッドのマットレスなんかも捲ってみたけど、無かったんだよね。
薬草がもはや体臭になっているのか、加齢臭の気配なんて微塵も感じないお布団の香りがなんだか無性に腹が立った。
「おかしい。
使用済みティッシュの一枚すらないって変じゃないか!?
どこで抜いてんだよ!!?」
『たいちょー。
この世界ティッシュないよー』
え!? ないの!!?
あ、でも確かに。
地球で普及したのって二十世紀中頃以降か。
比較的紙の生産が安定して昔から行われていた日本ですら塵紙からティッシュに以降し定着したのは昭和中期。
トイレの落とし紙すら使っていないのだから、紙をそういうことに使うという発想すらないのかもしれない。
精霊術で水出して汚れを落とすならトイレットペーパーが発明されることもないか。
えー。
じゃあどうやって自慰してんの?
おかずなし??
手でするだけ???
……まさかの、性欲なしパターン、あったり、します?????
そんな聖人やだな。
気が合うとは到底思えない。
だけど、この世界って欲が無さすぎて滅びかけたんだっけ。
女性から膣分泌液が出るのも、男性が勃起するのも子作りするための必要最低限の肉体機能としか思ってないなら、なんて面白味のない世界だ。
医学なんてエロスによって大半が発展してきたというのに!
……さすがにそれは言い過ぎか。
でもマッサージ機なんてその最たるものじゃん。
本来あってはならないとされていた女性の性欲を発散させるための医療機器として作られたのが最初なんだぞ。
それこそ、トイレットペーパーだって痔の治療用医薬品として発明されたものだし。
寺の病だよ。
衆道の世界だよ。
芸術の分野だって、パトロン捕まえるために出資者好みの裸体を画家が描いたり彫刻家が掘ったりして栄えてきたと言うのに。
そりゃ文化も社会も育たないよ。
衰える一方だよ。
そういう基盤の中に地球人が放り込まれたら、お互い余りにも価値観が乖離していて驚いただろうな。
施設の人間たちは、欲しがりません勝つまでは、の精神ではないけれど、欲をなるべく抑えられるように育てられてきた。
資源は限りがあるし、社会性が欠落し調和を乱せばすぐにサヨナラ案件。
秩序を乱す人間養えるような余裕がなかったからね。
仕方ない、と思える程度の洗脳めいた教育を施されて来たわけだ。
それでも、赤いボディに横縞模様がついた自慰グッズや、独特な形のハンディマッサージ器もあった。
さすがに漫画を専門で仕事として描く人たちはいなかったけど、趣味の範囲で自由時間や休息の日を利用して制作活動をする人はいたし、そういう人たちの制作物がアップされれば誰でも読んで楽しんでいた。
まぁ、様式美として隠れてではあるが。
性交渉自体は次世代の「スキル」発現のために管理徹底はされていたので、そこの自由はなかったけれど。
婚姻制度がなかったので、抜け穴として上が決めた相手と子作りさえしてしまえば恋愛は自由だった。
装飾品を贈り合うような風習はなかったけどね。
だって金属が貴重だったから。
カノンもエラいストイックな生活をしているみたいだし、生きてる楽しみとかあるのかね。
いっそのこと俺がでっかいメロンな本作っちゃう?
……才能ないからムリだな。
「カバンの中も机の中も探したけれど見つかりませんでした〜」
『た〜』
雑談という名をした研究のための聴取現場に集まっている面々に報告をする。
カノンからの鬼のような怒涛の質問攻撃に辟易していたのだろう。
テルモとアクアが項垂れている。
おつかれさんです。
「探し物なら俺に言えば良かっただろう」
「イヤ、言っても教えてくれないだろうし」
探検と言うから許可を出したのに家探しをしていたのか、と眉を潜められた。
ちゃんと部屋の中のもの触っていいかって許可とったじゃん。
許可くれたじゃん。
「……で、何を探してたって?」
「エロ本」
『『ブッ……ッッ!』』
テルモとアクアが吹き出す。
カバー偽装して本棚に堂々置いていたヤツと鍵付きフェイクフォルダ作っていたヤツは黙ってろ。
因みにアクセスするためのキーワードはyesだ。
ありきたりすぎてつまらん。
カノンは眉を潜めたままで、何を指して言っているのか理解出来ていないようだ。
やはり、この世界には発禁指定される本や絵は無いのだろうか。
裸の女性や男性が描いてある絵や本なんだけど、と説明したら解剖学の本と勘違いされた。
うん、俺の説明の仕方が悪かった。
ただ、驚いたのが治癒術があるのに解剖学と言う医学分野があることだ。
治癒術を使える人が少ないから、外科のお医者さんもいるってことなのかな。
「性的興奮を得るための官能を主題にした淫蕩めいた本全般のことです」
そう説明したらニッコリ笑ってゲンコツ食らった。
そんなモン探すな、と怒られたってことはあるってことですかね。
期待をしたら「ねぇよ、そんなモン」と今度はチョップを食らった。
ツッコミが激しいヤツだ。
紙よりも木簡の方が使われているし、市民の識字率は高いとは言えず絵や書物は紙が高いので特権階級にしか普及していない。
そんな貴重なものを使ってまで、わざわざそんな卑猥な物を残す理由がない。
欲を発散する店なら金額でサービスの質に差そこ出るが、安い所なら小遣い程度のお値段で気軽に利用出来る。
つまり。
やはり性欲がこの世界の住民は薄い!
そして、えっちぶっくはこの世界にはない!!
そんなものに頼るくらいなら生身の相手がいくらでもいる!!!
という結論でした。
なーんだ。
つまんねぇの。
不快な思いをさせたお詫びに風呂場の紋様具の修了をイグニスが申し出た。
俺とウェントスに付きそっただけなのに。
カノンは「長年使えなかったストレスから解放される!」 と若干喰い気味にその申し入れを受け入れた。
台所の紋様具をタイマー付きに改造してたし、まさかとは思ったが。
やはりイグニスは紋様具のメンテナンスや修繕ができるのか。
口下手な上説明するのが苦手。
その上恥ずかしがり屋さんなので、質問含めた口出し厳禁を守れるなら見学しても良いと言うのでカノン含む皆で作業を見学することと相成った。
とは言え、紋様が刻まれている箇所の確認をしたらひとつ頷き手をかざし、ピカっとその場所が光ったと思ったら、ソレでハイ、修了。
何をやったのかチンプンカンプンだ。
よく見てみると、紋様が一部欠けてしまった所が修復されていたり、追加の紋様が刻まれたりしていた。
質問厳禁と言われてしまったので、それぞれがどんな効果をもたらすのかが分からないのが歯がゆい。
それじゃあついでに、と言わんばかりにルーメンが天井、アクアがイグニスと同じ箇所をまたピカっと光らせた。
なんだよ、皆紋様具作れるのかよ。
カノンの父親の研究成果って言ってたから独自のものだと思っていたのに。
ルーメンは照明、アクアは水道に関する紋様をそれぞれ改修したそうだ。
不具合を感じる程酷く壊れているわけではないが、年季が入っているため、やっておくに越したことはないだろうと言うことだった。
つまり、イグニスは温度調節の紋様を直してくれたのかな。
ぶっ壊れてるって話していたもんな。
でもさ、言っていい?
直せるならもっと早く直して貰いたかったな!!
異世界転移してから今日までぬるま湯で身体拭くか、滝のような水にうたれるか。
どちらかでしか身を清めることが出来なかったのが結構シンドかったのだ。
無いなら致し方ないと諦められたけれど、物はあるけど壊れているから使えませんって状況がね。
諦めきれずに悶々としていた訳ですよ。
「スキル」で直そうと思えば直せるけど、なぜ直せるのか不審に思われたら嫌だなって思っていたから手出し出来なかったのに。
そんなアッサリ直せるなら直してよ。
いやいや、でも、まぁ。
コレで今後はお風呂に入れると言う訳だ!
やったね!!
明日から暫くこの家帰らないんだけどさ!!!
タイミングが悪い。
せっかく直してもらったし確認がてら風呂に入ることになった。
ルーメンのおかげで夜でも気軽に快適に入れるようになったからね。
嬉々と風呂掃除をして、浴槽にお湯が溜まる間はついソワソワしてしまう。
ちゃんと定期的に掃除はしていたようで、カビが生えていなくて助かった。
カノンは甲斐甲斐しいとは思っていたが、かなりマメな性格なんだな。
「せっかく広いお風呂なんだし、裸の付き合いでもするか」
「……何を言っているんだ?」
「性癖による趣味嗜好のすり合わせが出来ないなら、一肌脱いで親睦を深めようかと」
「一肌脱ぐの意味が違うだろ……」
肌着をぬぐと言う意味では同じだと思うのだけど。
さすが地球からの移民が定住しただけあって、風呂の概念は一般に普及されているそうだ。
とは言え、水もタダでは無いしお湯を沸かすのだって精霊術がなければ大変だ。
概念はあるが、さすがに各ご家庭一軒一軒に備わっている設備ではなく、貴族や富豪の家なら各ご家庭に、一般人の場合は大衆浴場を利用する程度だそうだ。
カノンも旅先ではそう言う大衆浴場を利用しているので、人前で裸になるのに抵抗がある訳ではない。
だが、俺の裸を見るは抵抗があるそうだ。
なんでや。
俺を保護した時パンツまで脱がして散々見ただろうが。
……傷痕が痛々しいから、とか?
カノンは時々口が悪いが、お兄ちゃん気質で意外と面倒見が良く心配症だ。
別にもう塞がっているし、気にする必要ないと思うんだけど。
土手っ腹にデカいのが残っているから、まぁ、確かに目立つ。
消そうと思えば消せるけど、自分の罪を忘れないためにも残しておきたいからそのまま放置しているんだよね。
「どうしても嫌ならいいけど」
「どうしても、と言う訳ではな「なら入ろっか〜」
食い気味に拒否権を与えず風呂場へ連行した。
イヤ、正直、家主を差し置いて一番風呂貰うわけにいかないじゃん。
でも感覚的にひと月ぶりのお風呂とか我慢できないじゃん。
ならいっそのこと一気に入ってしまえば良いでしょって思ったわけですよ。
しかもここのお風呂大きいんだよ。
泳げるレベルじゃないけど大の大人が三人入ってもまだ余裕があるレベル。
四人家族だったみたいだし、そのせいなのかな。
ちゃんと掛け湯をして、久方ぶりにキチンと頭を洗ってサッパリした所で浴槽にダイブ! ……する気持ちで入った。
さすがにバッシャーンっ! とはしませんよ。
そこまで子供じゃないデス。
液体シャンプーじゃないから勝手は悪いけど、頭がスッキリしたのは心から嬉しいわ。
盥一杯じゃ頭皮までしっかり洗えないし、石鹸の泡を落とし切ることも出来ないと思ったから、水洗いするだけだったし。
固形石鹸があるならシャンプーもボディソープも作るのなんて「スキル」使わなくても難しいもんじゃないんだし、次この家に帰ってきた時には作ろうかな。
洗浄力優先の石鹸だと、乾かした時髪の毛傷んでゴワゴワしそう。
「……で、なんでカノンはこの期に及んでそんな隅にいるわけ?」
コチラに背中を向けて一向に浴槽に浸かろうとはせず洗い場でずーっと身体を洗い続けている。
すみっこが落ち着くキャラクターなの?
家主よりもデカい態度で風呂場を占領するのはさすがに気が引けるぞ。
手足伸ばしてエンジョイさせて貰ってはいるが。
だって久しぶりのお風呂、滅茶苦茶気持ちいいんだもん。
溶けるわ〜。
気は引けるけど、つい満喫してしまう。
「さすがに精霊様と同じ湯船に入るのは畏れ多いと言うか……」
あ、原因俺じゃないのか。
テルモも誘ったら入ると言うからいつものノリで何の疑問も思わずに入ってしまったよ。
目配せして洗い場の隅にいたカノンを抱えて貰い、浴槽に無理矢理入れる。
延々身体を洗っていたため泡が付いたままだが、まぁ些細な問題だよ。
良い子は真似しちゃいけない行為だね。
一度入ってしまえば観念すると思ったのだが、なかなか頑固なヤツだ。
浴槽の中でも前を隠して縮こまっていやがる。
別に他人のイチモツなんざ、珍しいもんでもないんだし注視なんてする趣味もないが、そこまで隠されると見たくなるじゃないか。
この世界の住民って実は蛇みたいに二股になってるとかそう言う特殊構造で俺のとは違うとか言うのだろうか。
だから隠すのだろうか。
あぁ、そうじゃなくても俺が男性とは少し違うか。
「そう言えば精霊の身体ってナニないんだね」
「生殖器を必要としないからね。
生やすことならできるよ」
イヤ、別に見慣れてるからわざわざ生やさんでいいです。
あるはずのないものが無いってことに違和感覚えるだけだから。
肉体はキチンと物質で、飲み食べもするのに、テルモの肉体は排泄機能が不要だ。
内臓がちゃんと機能しているか不安だったので聞いたのだが、最初こそ栄養を消化吸収した後肉体を動かすためのエネルギー変換はされたのだが、人間の身体とは違い、あくまで精霊の器でしかないので動物としての機能は不要と判断されたのか、内臓丸ごと無くなったそうだ。
食べて、飲んだらそのままダイレクトに肉体形成の材料にされる。
その上で自然からエネルギー補給することも出来るので飲み食べしなくても肉体の維持は可能だそうだ。
なのであくまで飲食は単なる嗜好のようなもので生命維持のためにする行為では無くなっているんだって。
睡眠も必要ないし生殖行為も必要ない。
この世界の“普通”に染まったのだと快活に笑った。
一応、消化器官含めた内臓全部、人間と同じように作ったのに。
自然と適応する形に変化したって言うのは面白いな。
心臓もないし、呼吸を必要としないから肺もない。
外側が人の形をしているだけで、中身は全然別のモノだそうだ、
そう考えると、他の精霊たちの肉体はもう少し簡易化出来るかも。
内臓やその機能がどうしても複雑でアレコレ素材を使いまくったのだが、それが要らないなら、精霊の霊力を受け入れられる人間の形をしたモノさえあれば良いのだし。
なんなら、テルモがモグラに変身していたように、逆に少量の素材で作れる。
……そうだな。
鳥とかの形で肉体を作って、その後霊力が馴染んだら人間の姿に変身するって方法も取れるだろう。
次の肉体作りはルーメンを優先させるんだっけ。
それなら多少不便があっても許させるし、試してみても良いだろう。
やはり風呂はいいな。
頭皮が解れて全身温まるから脳の動きも良くなる。
考え事をするなら風呂が一番だね。
「そんな明け透けにすることか……?」
「むしろ風呂場で隠す方がおかしいだろ」
イチモツを生やしたり女体に変身したり、テンション高めにバカやってるのをそんなジト目で見るなよ。
わざとなんだから。
いつまで経っても端から動こうとしないカノンを開放的な気分にさせようとしているんじゃないか。
諦めがついたのか、浴槽内で三角座りしていたカノンもようやく手足を伸ばしてダラけた姿になる。
呆れたため息なのか、リラックスしてつい漏れ出たため息なのか判断がしづらい。
ジーッとコチラを睨んでくるのでイヤンと言いながら胸元を隠すとお湯を掛けられた。
ひどい。
「その傷なんだが……」
「あぁ、もう全然痛みはないですよ」
ペシペシ湯船の中で叩いてみせるが、傷の具合を心配した言葉ではななかったようだ。
「そうではなく」と言ったあと、続きの言葉を言うか言うまいか迷って口をつぐんでしまった。
幾度か口を開いては閉ざし逡巡した後、意を決したように続きの言葉を言った。
「レイムは旅先では風呂に入るな」
「え!? なんで!!?」
傷云々関係ない言葉が出てきたぞ。
「レイムの身体は特殊だから、人目につかない方が良いんじゃない?」
「特殊って言ったって、パッと見はキチンとオトコの身体だろ」
「……何の話だ?」
「ん? 俺、両性具有だから竿も玉もあるけど貝もあるって話」
ペロン、と棒を持ち上げたら「「見せるな!」」と前からお湯の飛沫が、後ろから平手が飛んできた。
ひどい。
「お前、そんなこと言って……俺が襲ったりしたらどうするつもりだよ」
「純粋な男だったとしても襲われる時は襲われるし、慣れてるし。
俺の方が強いから大丈夫」
同性相手の強姦と言うのがイマイチピンと来ないのか首を傾げたが、理解を諦めたようで眉間にシワを寄せながらも「そうか」とだけ返された。
男だらけの風呂場だとふざけ合って長さ比べとかデカさ比較とかしたもんだけど、そうか、この世界は羞恥心がしっかりとあるのか。
そういう所、施設は開けっぴろげだったしなぁ。
一般常識のすり合わせがこんな所まで必要だとは思わなかった。




