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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、マントを作る。




シースター種やパグルス種の浜蟹のように海に住む魔物は基本水属性。

その上で浜蟹は防御力が高いので、その甲羅の性質を利用した防御力向上の付与の素材に出来る。


ボスタウルス種は地属性。

その中の鎧牛も地属性で、名前の通り非常に堅牢な外皮をしているので防御力に優れた素材である。


水属性と地属性は相性が良い。

なので、鎧牛の外皮に浜蟹の防御力向上の性質を付与すると、防御力が非常に高い革が出来上がる。

その状態では加工がしにくいので、付与は形成と微調整をしっかりしてから行うこと。


また、珠玉種は基本属性が無いのでどの素材とも合わせられる。

その性質を利用して、どうしても相反する属性同士を付与でかけあわせたい時は、間に属性のない魔物素材を挟むことで、性質を損なうことなく付与をすることが可能になる。


……――全く未知の知識を一から勉強するのに書き取り用の紙もペンも無いとか、どんな拷問だよ。

記憶力良いからって全部は覚えられないぞ。


教科書をよこせ。

ノートをよこせ。

イヤ、教科書があったとしても文字が読めないので意味が無いか。



旅の支度は今日も続く。


朝のラジオ体操から組手三本、朝ごはん用の卵と野菜の収穫を終え、家の出入口前でアクアに水をぶっかけられウェントスとイグニスによって乾かされる。


それが日常となりつつなったある日。


「そう言えばレイムの母衣と腰布を用意していなかったな」


カノンのそんな一言で付与講座が再び開かれることと相成った訳である。


マントなんていらないよ。

重くて動きにくくなるし。

なにより、厨二っぽいし。


腰布だって必要ないよ。

パンツ履いてるし。

スカートを履く趣味もない。


しかし、王都までの道中は野宿をすることになるから防寒着は必須だ。

それに森の中で小休止をとるとき引敷がなければ虫が寄ってくるぞと言われる。


マントが防寒具になるのは分かるとして、ヒッシキ?


……あぁ、山伏がお遍路参りする時に腰に巻いている、アレか。

修験者がファッションのために身に付けているとは思っちゃいないが、アレって理由あるんだ。


引敷は吸血虫の予防と、石に腰を下ろした時の冷え防止がメインの目的だそうだ。

足腰の冷えは道中の疲労を大きく左右する。

マントを羽織らない人なら、防水効果も高いから簡易の雨具にもなるし、毛皮なので腹や背中に巻く防寒具にもなる。

丈夫だから複数人で旅をしている人だと担架の代わりにも出来る。

用途の広い旅の必需品だそうだ。


なら、引敷の上位互換がマントになるんだろ?

マントだけでも良くない?


虫に血吸われる程度なら……って、ダメか。

ヒルやダニの類だとそこから感染症の危険性が出てくる。

下手したら死ぬ。


虫の脅威は、それこそ「知識」でしか知らないから、正直ピンとは来ないんだよね。

俺がいた施設では無職が居なかったから。


なんで小さな虫にちょっと血を吸われたくらいで、とは思うが、蚊のマラリア原虫やデングウイルスによる被害は甚大だ。

世界で最も人間を殺しているのは蚊だと言う時期もあった位だし。

この世界では用心しなければならない相手なのだろう。


地球が無くなる直前は、人間を最も多く殺した相手は蚊ではなく、人間が上位に躍り出たけどね。


そう考えると、警戒するに越したことはないのか。

この間森に入った時は日帰りだったし特に言われなかったが、何日もかかる長旅ならそう言う細かな所から気を付けないといけないのだろうな。

当日はアルコールで足の裏の消毒もしよ〜っと。



精霊の皆は俺がこうであることは当たり前だと分かっているし、カノンも最初から受け入れてくれていた。


なので俺の外見がアルビノでもないのに滅茶苦茶薄い色素をしているのも、異世界ならば緑や紫みたいな地球では毛髪を染めない限り見られないような奇抜な色をしている人が割とありふれているからなのだろう。

そう思っていた。


だが、異世界でも人間の髪色は基本的に金・栗・赤・黒・白の五色が通常で、俺の髪色はかなり目立つそうだ。

それこそ、いつぞや言われた精霊の転生体と言われるようなヒトの髪色はその限りではないそうだが。

それでも、俺のような光の加減で見える色が変わるような不思議な色合いは初めて見ると言われた。


奇遇だな。

俺もこんな髪色自分以外で見たことないよ。

地球では染めていたんだけど、この世界にも毛髪の染料剤ってあるのかな。

悪目立ちするのは避けたい。


元精霊は見目が美しく霊力が高いから、悪質な輩に狙われやすいし、なるべく隠した方が良いんだって。

拐かされたり、通り魔に髪を切られたり。

旅の人間がフード付きのマントをしているのなんて珍しいことじゃないから、自衛のためにも作ろうと。


旅に出るための大体の準備は終えたから、あとは俺のマントの完成を待っている間に細々としたことを片付けるし、俺はマント作りに専念しろ。

そう言われた。


布も素材もいつも通り好きなように使っていいそうだが、テルモの身体作った時みたいに後から文句言わない?

あの時「こんな希少素材何に使ったんだ!?」って怒られたんだよね。


言われたのは地竜の鱗やら骨やらなんだけど。

テルモの肉体になりましたって言ったらそのお怒りは鎮められた。

精霊様への捧げ物なら享受できるようだ。

この世界の皆は地位が高いね。


だが、今回使う先は俺の装備。

下手なものを使ったらまた怒られそうである。

鑑定眼って用途は表示されるけど、金銭的な価値がどんなもんかとか、採集する難易度とかは書かれていないんだよね。


……なんて思いながら、どの素材使うか眺めていたら現在の市場価格レートや王都での末端価格が数字で、採集難易度五段階で星いくつに該当するかの項目が生えてきた。

鑑定眼って進化するんだ。

俺の希望によって表示項目が変更出来るってことか。


そりゃそうだよな。

「万物創造」で作り出してるんだし。

相変わらず、この説明文の情報がどこから提供されているのかは不明だが、さらに便利になって俺としては有難い。


……この倉庫にある素材の大半が、採取難易度星四以上が表示されていることに身震いしてしまうけどね。

なんなの、この希少素材の山は。


星五つで表示されている他の素材は特に何も言われなかったのに、その中で使って怒られたのが地竜の素材だけなのだから、余程なんだろうな。

申し訳ないことをした。


って言っても、地竜の素材とデカい霊玉を使わなければテルモの肉体は作れなかっただろうしな。

諦めてくれて良かったよ。



竜種とはちょっと違う、竜弓種と呼ばれる小型の竜のような外見をしている魔物の外皮が認識阻害の付与が出来ると書いてあるので、コレをマントへの付与のメインにしよう。

ココには皮と鱗しかないので全貌が掴めないが、鑑定眼によるとカメレオンみたいな魔物だそうだ。


なるほど。

そのお陰で断熱の付与も同時にできるのね。

お得感があって良いな。


この竜弓種が地属性なので、同じ属性で他にも幾つか付与したいな。

せっかく教えて貰ったのだし、相反する属性同士の付与もしてみたいけど、こんな身長くらいある大きい布地に希少素材をアレコレ付与して、けっきょく失敗しました、使い物になりませんでした、なんて言ったら勿体ないでは済まない。


価格レートの表示はされているが、俺はこの世界の貨幣の価値が分からない。

数字で表示されているからどの素材も高いんだろうな、という予測くらいは出来るが……

その予測だって、あてにはならない。


ハイパーインフレで価値が限りなくゼロになった通貨が過去にあったように、物の価値は数字だけでははかれないのだ。

インフレ率二億パーセント越えしてたら、そこの国の二億ドルがどこかの国の一ドルとイコールで繋げられるってことなんだぞ。

経済破綻、怖い。


まぁ、このマントさえ完成すれば街に行けるわけだし。

街に行ったら貨幣の価値も素材の価値も分かるわけだ。

そこまで高度な経済成長も衰退も、余程のことがない限り起きるものでは無い。


高濃度のアルコール500mLが2,000と表示されているし。

この数字が示す大きさは、そのまま自分の金銭の価値観と同じだと考えておこう。


人生長いのだ。

気楽にいこう。

異世界に来てまで金勘定なんぞしたくない。



地属性で付与を固めると、自然と火と水属性に対する抵抗値も上がる。

そして相反する風属性の抵抗値がガッツリ下がる。

なので表側を地属性の付与で固めるなら裏側に薄くでも風属性を付与するか、裏地を縫い付けて、その布にしっかり風属性を付与するように。


昼飯だからと呼ばれたついでにアドバイスを求めたらそう言われた。

昼食はナッツや穀類の入ったサラダボウルが出された。

長期保存の効く食材メインの食事が出されるのは珍しい。


テルモの姿が見えないなと思っていたら、カノンと兵糧丸を作っていたそうだ。

なるべく重くなく、でもカロリーと栄養がとれるようにと色々口を出していたらしい。


兵糧丸は不味くて当然、という考えでいたカノンも、先日森で食べたサンドロールのように、食べやすく美味しい携帯食が作れるのなら、と張り切っている。

それで色んなナッツやら穀類やらを混ぜて固めてとするのに大量に台所に持ち込んだから、昼ごはんはその延長でこういう形になったんだって。


ナッツバーとかグラノーラバーみたいな甘いヤツ以外にもしょっぱいのがあると良いな。



食事自体は魔物さえ倒せば現地調達出来るが、俺が想定よりかなり動けることから、なるべく休憩地点を普段と変えたくないとカノンは考えているそうだ。

出発一日目は歩き通しで森を抜け、抜けた先の遺跡で休息。

次の日は町と言うには小規模な集落が道中あるのでそこで休息。

翌日同じ規模の集落で昼休憩をする。

そこで仮眠をとり、夜歩き通して王都まで向かってしまうか、夜は野宿し夜明けから行動して昼頃王都に着くか。


そんな感じだそうだ。

ハードだねぇ。


……そんなハードスケジュールを、この大荷物抱えてするの?

マジで??


リュックサックと言うには小さい袋が山と積まれているのだけれど。

当然、俺も持つんだよな、コレ。


「安心しろ。

立ち寄った町や集落で1つずつ減っていく」


安心材料がどこにもない!

それって一番面倒臭い森の中を一番重装備で歩かなきゃいけないってことじゃん!!


打ちひしがれたくなるが、皆の肉体作りをしたいと思っているのは俺で、カノンはあくまでその手伝いを買ってでてくれたのだ。

文句は言うまい。


森の案内をしてくれるだけでも有難い話だもんね。

俺1一人だと迷う自信しかない。

胸を張って言える。


精霊達は森の中だとうまく力を振るえなくなるし疲れるからと言って、森を抜けた先で待機することになる。

もしくは、暫く自分たちの塒に戻っていないから顔を出そうかな、なんて話してる。


別に、いつ解散しても構わないんだけど。

当分肉体は完成しないのだし。


テルモは肉体があるから徒歩で着いてきてくれると申し出てくれたが、先日森に出かけた時、俺の肉体疲労とは別の感じで疲弊していた。

肉体が馴染んでいなかったせいもあるのだろうから、今はまだマシなのかもしれない。

だが、シンドい思いはして欲しくない。


テルモがいれば荷物持ってもらえるし、その分俺の負担が減るって言うのは分かってるんだけどね。

皆と一緒に森の外で待機するか、一度自分の過ごしていた場所に帰って欲しいとお願いした。


森を抜ける途中で「迷いの森」と合流する。

そこを避けて通ると旅程が最低プラス二日は伸びるので突っ切る形になるそうなのだが、なんで迷いの森と言うか。

聖木があった区域に該当するのだが、聖木が拒否する人間が立ち入らないようにするため、通る度に地形や草木の位置が変わるそうだ。

術による幻覚の類ではなく、実際に変わるんだって。


不思議な森だな。

根っことかどうやって移動しているんだよ。


幸い、俺も杖を無事手に入れられたし、聖木に拒否されていることはないから、聖木にたどり着かないよう木々が移動することはないので。

コンパスで方角は分かるし、方向さえ見失わなければ問題ないと言われた。


聖木周辺は魔物が出ないのは、聖木が魔物を拒否していて周辺に立ち入らないように、拒否された人間たちにするように森の木々が通せんぼをしているからだと考えられているそうだ。

木に意思があるわけないじゃん、と前なら考えただろうが、あの聖木を実際に見ると、そうなんだろうなと自然と受け入れてしまう。

俺もこの世界の考え方に染まってきたらしい。


「森を抜けさえすれば、特に問題視するようなことはない。

遺跡で次の日以降の予定を詳しく話そう」


とりあえず、問題が起こるとすれば魔物が多くいる森の中だ。

森での注意点を山のように教わりながらの昼ごはんは、少し味がしなかった。

覚えること山程ありすぎ。



裏地を縫い付けるのはカノンに手伝ってもらった。

流石に裁縫初心者には無理ですって。


その後マントの端止め金具や紐にも付与を施し、ルーメンに習ってフード部分に透けて見えるようになる紋様を教えて貰って刺繍した。

この家の便利紋様具よりも複雑な形だが、なんとか刺すことができた。


試しに被ってみると、髪の毛が見えないようにと、かなり目深に作って顔の半分は隠れてしまう布地の向こうが透けて見える。

完全に透明に見えるのではなく、透過のパーセンテージを調節した感じ。


朧気にものがあるかどうか、人が歩いてきているかどうかが判断できる位の透け具合なので、顔の判別や文字の読み上げは余程近付かないと無理そうだ。

だが、人がいるところではフードは常に被っていた方が良いと言われていた。

はぐれないようにと子供のように手を引かれたり、付き合いたてのウブな恋人同士のように服の裾を掴まなくても良いのはとても、とても有難い。


他の便利な紋様も今度教えて貰おう。




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