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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、鶏を解体する。




今夜は俺の杖完成のお祝いだそうだ。


成長具合を鑑みると少し早いが、シュケイを一羽潰してくれることになった。

まだ新しい個体は卵が孵ってから6ヶ月は経っていないのでギリギリ若鶏と呼べる月齢だし、肉が柔らかくて美味しいから夕飯を楽しみにしてろと言われた。


俺にはどのシュケイも同じように見えるが、目付きやトサカの形、あとは性格で見分けがつくそうで、若い奴の中でも卵を産む頻度が比較的低い個体はアイツだと指さされた。

うん、分からん。

採卵鶏としては拙劣な個体を選ぶことで、日々のタンパク源確保はしっかりと抜かりなくする所がエラいね。


ニワトリと違って成体になるまでが短く卵を産む回数も一日多いと三回。

寿命は十年程度と短いが、産卵停止期間はないので家畜としてはかなり優秀だと言えるだろう。

今回屠殺する個体だって、ニワトリと比較したら随分よく産んでくれていると思うのだけど。

まぁ、この世界にニワトリがいないなら、比較対象はあくまで同じシュケイになるのだし仕方ないか。


せいぜい美味しくいただこう。



施設では、肉は稀に出る培養品。

タンパク源は植物性のものがメインだった。

ニワトリは卵の利用価値が多岐にわたるためいたが、たま〜に稀に潰して出る肉は上層部のお腹の中に入るのが常だったので俺は肉を食べたことがない。

当然、捌いたこともない。


後学のために見学をさせて貰ったのだが、なかなかに野蛮だ。

鶏舎にズカズカ入り込み逃げ惑うシュケイの嘴と脚を問答無用でひん掴み、他のシュケイに蹴られても涼しい顔をしているカノン。

何だかとてもタチの悪い人に見えてしまったのはナイショだ。

家族を連れ去ろうとしているのだから、シュケイの主観で言えば間違いなく悪人だよな。

しかもこの後捌いて食うのだから、尚タチが悪い。

弱肉強食ってこういうことを言うんだな。


森の中で出た魔物は、襲ってきたから殺すとか、素材を剥ぎ取るために殺すとか、そんな感じだったし。

肉も荷物になるから、結局全部埋めてしまったんだよね。

なのでこう言う、食べるために他の生物を屠殺するという行為は新鮮だ。


この世界では当たり前に行われている営みなのだろうけど。


ぼんやり考えている間に、カノンは捕まえたシュケイを切り株の方に連れていく。

断面がくすんでいるソコにシュケイの首を置き、身体を自分の足で固定し近くに置いてあった刃物で一振でズドン、と。

流れるような手つきであっという間にシュケイの首を落としてしまった。


わぉ。


カノンが立ち上がると、既に頭と胴体がバイバイしているのに、シュケイはそれに気付いていないのか、首から下はあちこち走り回り、地面に落ちた目玉はギョロギョロ辺りを見回し嘴を頻繁に鳴らしている。

ちょっとしたホラー映像でも見ている気分だ。


だって! 首!!

結構良い勢いで血が吹き出しているんだよ!!?

バサバサ羽ばたかせている薄茶色の羽がドンドン首から噴き出す血によって染められていく。


昨日の森では命のやり取りだったし、油断したらコッチが怪我するかもしれないと思ったから、怖いとかグロいとか思わなかったんだけど、こう言う日常の、リラックスしている状況でこんな血みどろ見ることになるとは思わなかった。


そりゃそうだよね。

生き物なんだから血が通っているし、斬れば出血だってするよね。

目の当たりにするまで考えに至らなかった。


あ。

倒れた。


シュケイは次第に首から噴き出す血の量が減っていき、最終的にはその場に倒れ込んだ。

倒れてもなお、その場でピクピクと痙攣しながら血が流れ出てくるのだから、動物の生命力って凄いんだな。

人間はこんな元気に動き回らないぞ。


「シュケイは蛇鶏種の魔物を小型・無害化し家畜化したものだから、その名残で生命の危機を感じると毒を吐く。

屠殺する時は真っ先に首を落とせ。

生命力が強いから首を落としたあと、万が一でも心臓が動いているうちに首を繋げたらくっつくから気を付けろ。

凶暴化して周囲一帯毒の沼になる 」


大人しいけど見た目がデカくてちょっと怖いニワトリさん、くらいのイメージでいたのに、脳内であっという間に魔物にカテゴライズされたわ。

シュケイ怖い。


無害化って言っておきながら毒吐くとか嘘言わんでよ。

「無害化した」と言えるレベルで脅威が薄れて、コレだそうだ。

マジか。


毒に対する対処の方法が分かってるから、それさえ気を付ければ良いんだって。

耳朶周辺に毒腺があるから首をはねた後も決して触らないように、だそうだ。

了解です。


カノンが水の精霊術でシュケイを浄化しようとしたら、その前にアクアがシュケイの肉体を丸ごと水の中に閉じ込めて羽根に付着した血や土ごと綺麗にしてくれた。

まじまじ見たことがなかったけど、浄化前後で肉の色が変わるんだな。

浄化前は、コレそのまま食べたら絶対腹壊すよね? と言いたくなるようなまだら模様のどどめ色をしていたのだが、浄化したらプリっと色艶の良いピンク色になった。

匠もビックリなひふぉーあふたーである。


頭部や一面に散っている血液の浄化もしてくれたアクアにお礼を言って、シュケイを持って家に戻ったカノンを追いかける。

テルモたちは耕した畑に何を植えるか考えたり、今の畑に何が植えてあるか確認したりしたいと外に残った。


俺なんかは畑見たり空や太陽見るだけでいちいち感動していたけど、皆はそうじゃないんだな。

そりゃそうか。

この世界で長い時間生きているんだもんな。

そんな感じが全然しないけど。



魔物の解体も覚えた方が良いし、構造も食肉に必要な部位も基本的にどの魔物も同じだから解体も見学させてくれるらしい。


中に残ってる血液も浄化されているが、手指に怪我がある時は絶対に解体はしないように。

微量に残っている瘴気が傷口から体内に入ったら非常に危険だから。

羽を毟りながらそんな注意を受ける。


浄化をしても、病原体は無くならないって認識で良いのかな。

血液感染は怖いって言うもんね。

しかも俺にとってはこの世界の病原体は未知のウイルスだ。

原因が分からなければ対処のしようもない。

それは確かに気を付けねば。


クリスマスの七面鳥の丸焼きみたいに丸々一羽食べるのではなく、解体して何日かに分けて食べるそうだ。

長期保存用に塩漬けされたり燻製されたりしていない生肉は貴重だと言うことで、そんな勿体ないことはしないと怒られた。


今日はモモ肉。


「解体する時最も注意するべき点は、腹を押すな。

このひとつに限る」


ト体をまな板の上に乗せ神妙な顔で何を言うのかと思えば。

中抜きすればいいんじゃないのか、と思ったが……そうだよな。

流石にゴム手袋がないのに糞を素手で触りたくないよね。

腹を押すな、と言うのも総排泄孔から糞尿を出さないためだろう。

肉が汚染されてしまう。

なにより臭いという話だし。


糞尿の臭いがついたお肉なんて食べたくない。

はじめてのお肉がそんなのなんてあんまりだ。


力加減が慣れないうちは難しいという話だが、見た目さえ気にしなければ多少骨に肉が残っていても後から切り離せば良いのだから深く考える必要はない。

そう言いながら脚を持ち、雄なら鈎爪と(けづめ)が毒針を作る素材になると教えてくれた。

解体の仕方覚えるのでいっぱいいっぱいだから、いらん知識増やさんでくれ。


鱗に覆われた脚は鱗に逆らって撫でると怪我をする。

脚に生えてる毛は浄化しない内に触ると手に刺さる。

そんな注意を時々受けながら解体を進めた。


包丁をどこから入れるか。

関節は本来曲がるべき方向と逆に捻じれば外れるとか。

関節外したら引っ張って肉を引きちぎっても問題ないとか。


もも肉が一番分かりやすいと、筋肉で盛りがっている所の付け根に包丁をグルっと差込み皮に切れ目を入れて脚を持ちべキッと関節を外す。

そのまま指を肉に差込み筋に沿っておおよその肉を本体から剥がしてからブチブチっと引きちぎった。

意外と大ざっぱでワイルドな捌き方を教えてくれるんだな。


成長した個体の場合は関節が硬いから包丁を関節の間に入れれば外しやすいそうだよ。

テコの原理使えってことね。


鳥類や竜種は筋繊維がシッカリしていて、筋に沿って解体すれば、刃物がなくても骨からはぎ取れるので比較的楽なのだそうだ。

どちらも皮に柔軟性があるので、皮はどうしても刃物がいるそうだが。


なので面倒臭い時は皮を最初にベロンと剥がしてしまってから肉を骨から外していくそうだ。

今回やるのは基本の捌き方。

基本を知らなきゃ応用は出来ないだろうと言うことで。

全くもってその通りだね。


両脚のもも肉外して背中から首までに切り込み入れて肩甲骨外して手をモニョモニョ中に入れたあと、首の皮を外して引っ張って一気にむね肉と手羽と外してしまった。


わ〜、わいるど〜。

思わず拍手した。


普段カノンは内臓は臭くて好きじゃないし、捌くのも面倒だからと全てスライム行きにしているそうなのだが、内臓を食べたことがないので興味があると言ったら、文句を言いながらも解体してくれた。


胃や腸、あと胆嚢は内容物で肉が汚染されるから絶対破るなよ、と言いながら食道を引っ張ったら千切れてしまった。

コレはツッコミ待ちの行動ですかね。

無言で証拠隠滅を計ったので多分違う。


千切れた所から胃の内容物が漏れ出て、このシュケイがお亡くなりになる直前何を食べていたのかがよく分かった。

生きるために食べていたのに、ゴメンよ!

なんか、罪悪感が一気に押し寄せてくる。


鶏と同様、思ってた以上に小さい心臓の横。

小さい塊を見つけた。


「ナニ? コレ??」

「普段は捌かないからな。

分からん」


言ってつまみ上げれば、すぐ砂になって消えてしまった。

つまり、霊力を通す素材になるもの?


「気にしたことは無かったが、シュケイも霊玉があると言うことか」


小さすぎて何にも使えないが、とカノンはため息をこぼすが、シュケイは珠玉種ではなく蛇鶏種だと言っていた。

全く別の魔物だ。

なのにも関わらず霊玉を持っている、と言う事実はなかなかの発見なのではなかろうか。


実際、魔物の内臓は基本的に食べないそうだし。

腐りやすいから持ち運ぶのも不便だし、血なまぐさいから携帯食にも向いていない。

薬の材料として鎧牛の胆石や、稀に遭遇する鋼熊の胆嚢が使われることはあるが、その他の部位は燃やされるだけだ。

心臓やその付近の臓器も。


今回は捌き方を教えて貰ってたからよく注視して見ていたから気付けた。

もしかして、珠玉種と呼ばれている魔物以外も霊玉を持っているのではないだろうか。



家畜は基本年老いて搾乳出来なくなった牛や紡錘用に毛が取れなくなった羊を潰した時に、その肉も食用に回されるが、硬いし臭いし余り好んでは食べられない。

病気や怪我で若くして屠殺された牛の肉なんかは貴族が食べるそうだけど。


いるんだ、お貴族様。

王政のようだし特権階級の人間がいるのは不思議じゃないか。

うん。


だから魔物のお肉が街では人気ってお話なのね。

魔物は元気に森の中走り回ってから身のしまりが良いし、ナニをかは考えたくないけど沢山食べてるし、家畜みたいに毛や乳を搾り取られていないから肉付きも良いし。


地球では肉食動物の肉って、アンモニア臭かったり硬かったりしてとてもじゃないけど食べられないって話だけど、この世界は強い魔物であればあるほど美味しいとされているそうだ。

その頂点と言われる竜種の肉は格別だそうだよ。


竜って言うと、イメージでは恐竜が出てくるんだよね。

マンガ肉できるかな。



シュケイの解体が終わり、骨をスライム行きにしようとしたカノンを慌てて止める。

ダシの概念がないのか、この世界は!?


デカイ鍋が無いのでテルモと即席で寸胴鍋を作って、甘みが出そうな野菜も一緒に鍋にぶち込んで鶏ガラをとる。

鶏ガラあると料理の幅が広がるよね。



お祝いごとのメニューと言えばコレ、とカノンがローストチキンを。

茹で卵とブロッコリーのサラダと、早速鶏ガラを使ってオニオンスープをテルモが作ってくれた。


わーい、豪勢だ!


骨付きもも肉は二つしかないからと食べるのを遠慮したカノンの皿にテルモと二人で切り分けた肉を押し付ける。

皆で食べるのが良いんだからね。


骨付き肉なんて初めてだ。

かぶりつくと、皮はほんのり付いた焦げ目で香ばしくパリッとしていて、その後閉じ込められた肉汁がジュワッと溢れてきた。


うわっ! スッゴイ!!

一口で満足度滅茶苦茶高いぞ、コレ!!!


ベーコンの時みたいに凝縮されたのものとはまた違う。

旨味がくどくない。

この肉汁、幾らでも飲めそうな気がする。


歯触り、で良いのかな。

よく運動している肉だからなのか噛みごたえが抜群だ。

口の中で肉と歯が格闘しないと噛みきれない。

硬い訳ではなく。

しっかり咀嚼しないと肉の弾力に押し戻されて噛めないのよ。

噛むのが面倒臭く感じてしまわないかと思えばそんなことはなく。

噛めば噛むほど肉自体の味が出てくるし、ちょっと濃い目のあまじょっぱい味付けが程よくなってくるし幾らでも噛んでられる気持ちにさせられる。


そこにサッパリ味付けのオニオンスープを頂くわけだ。

玉ねぎが丸ごと入っているからスプーンで崩し甘味を堪能する。

キチンと下処理をしてアクを取ってあるからか、鶏ガラの臭さは微塵も感じられない。

元が同じシュケイだからかスープとローストチキンの相性滅茶苦茶いいな。


つまり。

そのシュケイが産んだ卵が使われたサラダも美味しいと言うこと。

固めにサッと茹でた、小房に分けられたブロッコリーと大小適当に崩されたゆで卵にドレッシングが合えてあるサラダだ。

マヨネーズは時間がなくて作れなかったということなので今度使ってもらう。

イヤ、なんなら自分で作る。

材料はあるのだ。

「スキル」を使うでも風の精霊術を使うでも、幾らでも作る方法ならある。

ご飯にかけるレベルでマヨネーズが滅茶苦茶好きな訳ではないのだが、お野菜にはマヨネーズが合うよね。


そんなこと考えてたらポテトサラダ食べたくなった!

地下にある芋使って明日はポテサラ作ろう。


お祝いメニューでテンションがダダ上がりしていた俺は、気付けなかった。


カノンがブロッコリーを奇っ怪な目で見ていることに。

失態である。




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