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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、捕食される。


コレがマイナスイオンというものか!

滝から絶え間なく流れ落ちてくる水が叩きつけられ飛沫となって周囲を白く霞ませている。

木漏れ日を受けたその流水にはアチコチに虹が出来ていた。

涼やかでとても幻想的な風景である。

ここに至るまでの道中を振り返ると、より一層心地好い。


……なのだけど、この滝、どこから落ちてきているの?

そして、その滝の落下地点にある透明な玉は、どういう原理で浮いているの??



どう考えてもその細い脚じゃ自分の体重支えられないよね? って疑問に思うレベルに華奢な四肢が超重量級の身体にくっついて走っていたり、カルシウム不足で万年骨粗鬆症予備軍だったりしない? って位立派な角を何本もこさえて振り回していたり。

生物として有り得ない進化をしている生物がこの世界には多すぎる。

霊力と言う不思議エネルギーの影響によるものなのだろうか。


死者が生前の記憶をそのまま持って霊体のような実体を持たないモノに転生しているような世界だ。

地球の常識をココに持ち込んではいけないと、非常識な生物を見るたびに何度も思ったのだが。

生物のみならず自然界までその不思議現象が起きているのだ。

呆けてしまうのも、まぁ、致し方がない事だと思おう。

慣れるまでにまだまだ時間がかかりそうだ。



俺が両手を目一杯伸ばしても半径にすらならない位大きな透明度の高い、真ん丸な水晶。

それが湖のド真ん中に浮いているのだ。

釣り糸やピアノ戦の類は当然見当たらない。

上から大量の滝水が落ちてきているのに、ブレることもなくそこに浮いている。


その滝の水も、崖から流れ落ちて来る訳でもなく、どこからともなく、その水晶の上から落ちてきている。

木の影になっていて始発点は見えないが、ホント、真上から。

垂直に。

この水晶の上空限定で雨雲でも発達しているのだろうか。

見事に晴れ渡った空しか俺には見えないが。

……う〜ん、慣れない。



珠獅子を倒して手に入れた宝石と、剣貓と呼ばれる魔物を倒して手に入れた眼球をその湖に沈める。

合計四つ。

家に居る精霊の分はとりあえず確保出来た。


剣貓も珠玉種に分類される魔物だ。

眼球が宝石になっている。

時間こそ掛かるが、聖水に漬けておけば珠獅子の額の宝石よりも良質な霊玉になるそうだ。


俊敏な動きで敵を翻弄し二双の剣のように立派な牙で攻撃してくる。

なかなかの強敵だった……と言いたい所だが、「試しにやってみようぜ〜」ってことで実験の犠牲になってもらったのだがコレが大当たり!

この森に巣食う魔物全般が精霊術自体が効きにくくても、精霊術で切り倒した巨木の下敷きになったら?

隆起させた土壁に激突させたら??

そういう実験をしたら見事にヒットしてくれたので難なく倒すことが出来た。


今まで罠を張ったり物理攻撃のみで倒していたカノンは目から鱗だったようでいたく感激していた。

あの勢いで壁に突っ込んだのに、ミンチにならず両眼ともに無事回収出来たのは不幸中の幸いと言うべきなのか。

実はこの森の住民は皆漏れなく強いというし、当然の結果だと思うべきなのか。


牙が短剣の材料になるから自分の武器にしろと牙の回収を命令する間に、カノンはオスの臭腺が薬の材料になるからと玉をもぎ取っていた。

ヒュんッてなるから見たくなかったよ。

思わずテルモと一緒に股間を押さえてしまった。


ジャコウなんかも臭腺が漢方に使われてたって話があるけど、アレって玉じゃなかったよな。

香嚢って別の器官のはず。

見てて痛々しいから、剣貓はその臭腺を別の器官にさっさと進化させてくれ。



宝石を聖水に漬け込んでいる間に俺の杖の材料を取りに聖木の生えているエリアに移動する。

時間は有限だ。

日帰りにするならボサっとしている暇は無い。


滝から流れ落ちる聖水を水源とした渓流を下っていくと聖木が生えている。

他にも回復薬に使えそうな薬草やキノコなんかもここら辺一帯に生えているのだと言ってカノンが担いできたカゴを渡してきた。

俺はなんちゃらの木の枝を拾うんじゃなかったのかな。


「パロサントとトネリコ、な。

薬草採集してたらどうせ呼ばれる。

ここら辺は聖水の影響で魔物も出ないし、一人になっても平気だ。

適当に行って来い」


なんだよその、前も言ってたけどスピリチュアルなふわっとした回答は。

呼ばれるって何にだよ。

こんな不思議世界だし木が「こっちゃこ〜い」って手招きして喋ったりするのか。

……うん、しそうだな。

カノンとテルモは下手に付いて行って邪魔になるといけないから、と滝で他の素材の加工をしたり、周辺で素材採集をすると言い見送られた。


テルモは付いて来たかったみたいだけどね。

なんか、一度に大勢で押し寄せると聖木が混乱するからダメなんだってさ。

やっぱ、喋るのだろうか。



渓流と言うには勢いがない、穏やかに流れる細い川沿いを下ると、次第に足元に生える植物の種類が増えてきた。

オレが採集するのは、傘が開いていないほんのり光るキノコと、あればカンゾウ。

前者は霊力回復効果のある薬の材料。

キノコのくせに収穫が大変だから、カマで刈るか根元に霊力を流して脆くしてからもぎ取るように言われた。

カンゾウはサトウキビやサトウダイコンは育てていないようで、甘味料にすると言っていた。

薬草にもなるから茎の根っこからゴッソリ持ってくるように言われている。

この森の土はなるべく外部に出したくないから、聖水の川ででも落としてこいとも言われた。

土って微生物が結構住んでいるから、違う土地から持ち込んだ土によって汚染されて植物が病気になりやすくなるって話があるもんな。


聞いていた特徴の植物を尻もちをつきながらも引っこ抜き、泥を落としながら、ほんの数日の間に、カマとカゴの農家スタイルが似合うようになった気がする。

そんなことを考えた。

ロハスとか縁遠いと思っていたんだけどな。

人生、何が起こるか分からんもんだ。



蓄光インクのような薄緑色に光るキノコを見つけたのは歩いて五分もしないうちだった。

だがソコに生えているキノコは軒並みカサが開いてしまっていた。

残念。

コレは収穫しないように言われている。


キノコは成長するとカサが開いて胞子を飛ばすんだっけ。

成長した大きさでコレって、結構小さいのだけど。

カゴいっぱいになるくらい収穫しようとしたら帰る時間無くなるんじゃなかろうか。


霊力を流さないとどれくらい固いものなのか、流すとしたらどれくらいの量を流せばいいのか。

収穫対象で実験して失敗したら嫌なので、せっかくだから目の前にあるカサの開いているキノコで試してみよう。


しゃがんで柄の部分を持ってみる。

その瞬間。

喰われた。

手を。


……はい?

キノコって肉食なの!?

そんな馬鹿な!!!


先程まで開いていたカサが閉じて俺の指先を飲み込んでしまっている様は、どこをどう見ても食べられてるようにしか見えないんですけど。

カサの内部で何が行われているのかは不明だが、なんか、こう、チクチクするんですけれども大丈夫です? コレ??

咀嚼音こそしないが、血を吸い出されている感覚がする。

イヤ、完全にアウトでしょ。


森の中では火気厳禁! と怒られそうだから目一杯霊力を流して砂にした。

意外とアッサリ霊力の飽和所になってくれて良かった。


喰われた指先を見ると、所々赤い点とその周りに丸い跡が付いている。

何だこれ?

痺れたり目眩がしたり、そういう身体の不具合は感じられないが、自分の身に何が起こったのか分からないままなのは気味が悪い。


食べられないように柄のなるべく下を持って見るか。

そう思い別のキノコに手を伸ばしたら、今度は勢いよくカサがめくれ上がって指を喰われた。

なんなの、このキノコ!?


そう思ったら発動させ忘れていた鑑定眼の説明書きが現れる。


シバタケ

成長段階で七色に色味を変え、それぞれ効能が替わる万能薬の原料。

カサが開いている間は捕食期間のため収穫非推奨。

捕獲した獲物に、傘の内側、ヒダの間にある針で微細な無数の穴を開け孔口から血液を摂取する。


バッチリ肉食やんけ。

冬虫夏草みたいな寄生するタイプではなく、ガチでガッツリ肉食系だった。

この世界ならではの進化の仕方をした不思議きのこってことか。

成長段階で色が違うって、カノンからは色の指定は無かったよな。

万能薬って書いてあるし、どの段階を収穫しても良いってことなのか。


俺の指を咥えて離さないキノコをよくよく見ると、確かに丸見えのヒダの間から針が伸びていた。

俺の指まで届いてないけど。

触れたものを問答無用で手当り次第捕獲する本能なのかな。

最初にしたようにカサの内側で捕獲しないと意味ないのにね。

キノコだから脳は無いだろうし、食虫植物みたいな、あくまで習性なのだろう。

とりあえず、カサが開いているヤツは危ないから手出し厳禁ね。

了解。



淡く赤く光っていたり、紫色に光っていたり、アチコチ様々な色に光ったキノコによりなかなか賑やかな視界になる頃。

幅が広がり始めた川を挟んで二本、巨木が立っていた。

樹齢何千年規模の、大きく太く、幹の一部が剥がれそれでもなお新芽が伸びている、生命力を感じる大きな木。


ひと目で「コレが聖木だ」と分かる。

水晶球の白滝も幻想的な光景だったが、コチラもなかなかのものだ。

川の上部で互いの木の枝が絡まりあってアーチを作っているのだが、そこから一本、不自然な形に丁度良さげな枝がぶら下がっている。


呼ばれるって言うには少々、イヤ、だいぶ自己主張激しくないか?

思いながらも川の中に入りその枝に手を伸ばす。

触れた瞬間、音もなく木から離れ俺の手の中におさまった。

思っていた以上に軽い。

手に馴染むというか、しっくりくる。


聖木二本のどちらの枝になるのかな〜、なんて思っていたのだが。

まさかの二本入り乱れ。

綺麗に捻れていれば見栄えも良かっただろうに。

まぁ、この後加工するのだし見た目はどうとでもなるか。


コレが、俺専用の杖になるんだな。

ちょっとワクワクする。

どんな見た目にしようか、どんな加工をしようか。


コレからの楽しみを増やしてくれたお礼に一礼すると、巨木の葉がザワリと音を立て、挨拶を返してくれたように思えた。

言葉こそ喋らないが、確かに、意思があるように思えてしまう。

それなら、今度来る時はお供えでも持ってきた方が良いかな。


そんなことを考えながら、巨木に手を振り、杖を抱えてカノン達の元へ小走りで戻った。


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