神さま、世界の成り立ちを知る。
ご覧頂きありがとうございます。
タイトル通り、この物語の世界の成り立ち説明回となっております。
盛り上がり所に欠けますがご了承ください。
“母親“の定義を“自分を産み育ててくれた存在“とするならば、俺に母親はいない。
強い「スキル」を有する子供を作り出すために算出された遺伝子の組み合わせに最も近い精子と卵子を掛け合わせて人工的に生み出されたのだ。
俺が生を受けるのに腹を痛めた人はいない。
その卵子を提供した存在を“母“と定義するならば。
目の前のこの精霊は俺の母親にソックリである。
声も、顔も。
……最期に会った時より若いか? 位なものだ。
『今ナニか、失礼なこと考えなかった?』
表情は笑顔のまま変わらないのに急に空気が重く変わった。
相変わらず勘が鋭い。
こういう所苦手なんだよ、このヒト。
いや、ホントにこのヒトが俺の生物学的母親ならの話だけど……
現実を受け止めきれなくてそんなことを考えるが、多少見た目が変わっても本人だと確信めいたものを感じている。
そして、それにより目を覚ましてから何度も考えた仮説が頭をもたげる。
常用語が日本語だったり、文字がカタカナっぽかったり。
カノンのチラリ見した鑑定結果も含めて、もしかしてココって地球と関わりあんのかな〜? と考えはしたけれど、このヒトも居るってことは、やはり「ココは地球だ」と言うことなのか。
なんということだ!
安全・安心・平和な世界を創ることを目指したのに!!
魔物みたいな危険生物が闊歩しているわ、食料問題が厳しいわ、どうなっているんだ!!?
あ、でも、もしそうなら地球諸共皆爆発四散した最悪な結末にはならなかったってことだよね。
いいことだけど、良くない!!!!!
『なんか混乱してるし、とりあえず腰を落着けられる場所に移動しましょ〜?』
アンタのせいだよ! と言いたいが雨もポツポツ降り続いているし、ここに留まる理由もない。
フワフワ宙に浮く母親似の精霊を伴い、帰路を急ごうとした。
……したのだが。
「俺が落ちてた時って、あんな感じ?」
「……あそこまで色とりどりでは無かったが、まぁ、あんな感じ」
家から立ち上る様々な光の柱に、帰りたくなくなってきた。
今日、野宿で良くない?
後ろについてきている精霊の様子を見るに、その必要はないだろうに。
足取り重く帰った家の扉を開いたら、リビングに置いてある椅子四脚が全て埋まっていた。
そこら辺に漂っていれば良いだろうに、なぜ座っているのか。
『『おっかえり〜』』
『『……おかえりなさい』』
この際は、四者四様とでも言えば良いのだろうか。
テンション高めなのが二人、低めなのが二人。
笑顔で手を振ってきたり敬礼してきたり、頭を下げたりムスッとしていたり。
気配は人間ではないのだが、どれも見覚えのある顔だ。
ホント、一体全体どういうことなのさ。
……とりあえず、扉を開けた格好のまま気絶しているカノンをベッドに寝かすか。
隣を見ると、口から魂でも出てきそうな呆け方をしてカノンが意識を手放していた。
後ろに控える精霊と同等の強さであろう精霊たちの集団だ。
思考放棄したくなるのも、わかる。
イヤ、俺が思考を放棄したいのは別の理由でだが。
『ボク運ぶよ〜』
元気いっぱいに手をブンブン振ってきた精霊が笑顔そのままに、予備動作なしで詰め寄る。
そのまま指先ひとつで優しい風をおこしてカノンを浮かせる。
俺では体格差的にも2階に運ぶのは大変だと思っていたので礼を述べると『2回目だからなれっ子!』と言ってあっという間にカノンの部屋へと消えて行った。
家主不在の状態で許可も取らずに設備を使うのは申し訳ないが、心を落ち着けるためにも茶が飲みたい。
まだ目の前の現実が受け入れ辛く、リビングを素通りして台所へ向かうと、手に持ったティーポットをヒョイと取り上げられる。
『私が淹れるから、座っていなさい』
聞き慣れた声で、もう、無理だった。
ダバッと自分の意思なんて関係なく滂沱と涙が溢れ出た。
慌てて頭を撫でてくれる手はあの時と違うものだけれど、掛けてくれる言葉もとりまく空気も、全てあの頃のままだ。
なにも声はかけてくれずとも、手を取り優しく撫でてくれる手が加わる。
『感情コントロールの訓練、な〜んも役になってないねぇ』なんて笑いながら2階から降りてきた精霊も俺を慰めるのに加わった。
若干1名、机に肘をついたまま不貞腐れている精霊も居るが、出してあったコップに生み出した水を注いでくれた。
「水のスキル」持ちだったもんな。
「ありがとう、ス――……」
『その名を呼ぶな』
何故かは分からないが、生前の名前を呼んではいけないらしい。
ということは、やはり、コイツらは単なるソックリさんではなく、間違いなく俺が殺した「地水火風のスキル」持ちの面々だと言うことか。
ならば、あの時出来なかったことをしたい。
「みんな……ごめん。
誤って済むような、許されるような話じゃないのは分かってるけど。
理由も言わないで、その、スキルも、命も、奪って……」
謝罪の言葉だけで許されるのなら司法や警察なんて不要である、と言った意味合いの言葉が昔あったが、許されたくて言う訳では無い。
申し訳なかったという素直な気持ちを伝えたい。
謝って俺がスッキリしたいとか、そういう自分勝手な理由でもなく、ただただ謝りたかった。
先のない地球を救うため、と言う俺なりの理由はあった。
厳しい上下関係のある社会で一番上から命令されたから拒否のしようが無かったと言う現実もあった。
それでも、殺された側からしてみれば、たまったものじゃない。
そんなの知るかと拒否され抵抗されるのも、命乞いをされるのも、自分の決意が揺らいでしまいそうだから嫌で理由なんて説明せずに奇襲し、問答無用で殺した。
タイムリミットが迫る焦りで視野狭窄していたとは言え、あんなことが出来た当時の俺は――と言っても、感覚的にひと月と経っていないのだけど、頭がおかしくなっていたのだと思う。
言い訳にすらならないが。
『私なんかは、お前が理由なくあんなことをするような子ではないと知っているから。
気にしていないよ』
頭を撫で続けてくれている手の主は、変わらぬ柔和な笑みを浮かべてそう言ってくれた。
『ボクも〜』
『……オレも』
『……ケッ』
だがそれは、形は違えど今こうしてココに生きているから言えることではないのか。
訳も分からず殺されて、その犯人を恨まずにいられるものなのか。
そう落ち込むが、皆が皆、俺が犯人だと分かっていたそうだ。
気配や足音、体格に戦闘時のクセ。
顔を隠し暗闇で起こった突然の出来事だったとは言え、バレバレだったんだって。
上手くやれていると思っていただけに、別の意味で落ち込んでしまう。
悪役に徹しようと思ったのに、なり切れなかったなんて恥ずかしすぎる。
皆は俺に殺されたあと、この世界に精霊として転生させられたそうだ。
させられた、ということは第三者の手によってってことか。
その際に、地球の状態に併せて俺の事情もかいつまんで説明を受けたそうだ。
この世界は、俺が知っている地球とは違うらしい。
だが、半分以上は地球で間違いないそうだ。
なんのナゾナゾ?
俺が「スキル」により世界の再生をはかろうとしたちょうどその時、別次元の神様がその気配を察知した。
ほんの、ほんの少し世界再生を完遂するには力が足りずそのまま滅び行く未来が待っている地球のこと。
また、その世界の神になろうとした幼い存在――俺の事を。
この世界の神様は自分の星が破滅の一途を辿っていくのを、ただただ眺めていた。
最初の設定から間違ってしまった、失敗作の世界。
失敗したとはいえ、神様からしてみれば自分の子のような存在だ。
何かしら救う手立てがあるのなら救いの手を差し伸べたいとは思うが、いつかどうにかなるかもとのんびり構えていたら残念ながら修復が不可能な状態になってしまった。
破壊してしまうことも出来たが、次に活かせるかもしれないしと思い更に様子を見続けた。
地球とは違い、知恵のある人間の欲を少なくしすぎたせいで文明が発達せず、野生動物が幅を利かせそちらの存在ばかりが進化してしまった世界。
人間は蹂躙され極わずかとなり、その人間が滅びれば知能が低い動物だけになる。
知能が低く身体能力が高いだけの本能の赴くままに行動する生物だけになれば、やがて蠱毒のようにただひとつの存在だけが地上に残り、最後に星は滅びるだけだ。
そんな中で見つけた、生物が生きていけない環境に陥った数多の生命体が暮らす地球の存在は渡りに船だった。
コチラは環境は豊かすぎる程にあるが生命が少ない。
足りないものを補い合える。
比較的近い次元なのだから出来るだろうと手繰り寄せ、自分の世界と地球があった世界をえいやっと吸収合体・統合させたのだ。
思ったよりも力を使ってしまったため自分の存在が危うくなってしまった神は、漂っていた強い力を持つ魂を拾い上げ自分の代わりに世界を見届けて欲しいと新たな生命へと生まれ変わらせた。
それが、彼らである、と。
この星の神さま、力は凄まじい位にあったのだろうけど、エラい適当だったのね。
唯一神だった世界に「地」「水」「火」「風」、そして「光」の神様が誕生した、という訳だ。
え? 違う??
『ここにはいないけど、「闇」と「時」の属性もいるわよ』
……心当たりがある「スキル」の持ち主に、頭を抱えたくなる。
会いたくないクソなオッサンまで転生してるとか。
嫌になってしまうね。
生前の性格のままなら、立場上我慢していたあのツラ一発ぶん殴りてぇ。
まぁ、そんなこんなで七柱の神様に準ずる力を持つ精霊が爆誕し、世界の人々に力を貸したり知恵を与えたり、人間に信仰して貰って力を強くしたり、それぞれ生活をしているそうだ。
死んだ皆が転生しているってことは、それじゃあ、俺が転移? 転生? したのもその神様がなにかしらしたからなのか?
と言うか。
地球と超合体したのがこの星だというのなら、地球にいた人達まとめてこの世界に転移しているってことだよな。
全員、生きているのか!
だが、俺の希望虚しく皆の表情が曇る。
何故、俺が今このタイミングで転移したかのように、あの頃の姿形のままこの世界に降り立ったのかは分からないが、少なくとも、皆が転生して既に100年以上が経過しているそうだ。
……つまり、会いたい人には会えない、のか。
そっか……
気落ちはするが、皆のように他の人たちも生まれ変わっているなら、いつか会えるのだし。
俺がいつまで生きられるのかは分からないが、その時を気長に待とう。
せっかく予期せず与えられた第2の人生だ。
楽しまなきゃ損だろう?




