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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、霊力を制御する。


精霊術を扱うにあたって、本来ならば杖があった方が良いそうだ。

見栄えや精霊術師のベーシックスタイルだからという理由ではなく、杖を持つのはキチンとした意味があるらしい。


杖を作るのに使用される木は、聖水で育ったパロサントやトネリコと呼ばれる木材が適している。

聖木と呼ばれるそれらは、自生区域が非常に狭く成長が遅いため、むやみやたらに傷つけてはならないとされている。

折るなり切り落とすなりすると傷から瘴気に汚染されてしまい木に住む精霊の怒りを買い、二度とその者は精霊術を使えなくなると言う逸話があるそうだ。

元々精霊術が使えない人間にも土砂災害や森から帰れなくなるといった、語り部によって違う相応の罰が下るとのことなので、自然物を私利私欲のために傷つけてはならないですよ、と言う寓話の類かな。


たかが木の一本、と思うが地球でも木には神が宿るとされ大切にされてきた。

樹齢何千年という、写真からでも神々しさを感じずには居られない佇まいの巨木を人は崇め奉っていた。

それと同じだろう。

相応の罰とやらに被害が大規模になりやすい土砂災害が挙げられるあたり、大切にされている木なのだということは理解した。


この2種の聖木は霊力の通りが良く、霊力の制御が容易になる上、精霊が住む木なだけあって、精霊も喚びだしやすくなる。

精霊術師になくてはならないものだそうだ。


なので需要はそこそこあるのだが、先述した通り生息地も数も限られている上、剪定すらしてはいけないので基本的には下に落ちている枝を拾って集めて作るしかない。

精霊術の基礎を師から学び、ある程度使えるようになったころ、その師匠から杖を貰うのが通例だそうだ。

師匠から弟子に贈られる杖は初心者用でそれ程大きいものは必要ないが、行けば必ず枝が落ちているとは限らない。

時間も労力もかかる代物だとか。


カノンは扱い方を教えてくれるが、師匠にはなれないそうだ。

なので俺には師匠が居ないことになる。


何故かと言えば、精霊術は学問としてはまだ確立されておらず、

・自分の中にある霊力を自覚すること

・霊力を動かし外に出せるようになること

・霊力によって精霊を呼び出すこと

・呼び出した精霊に術を使ってもらうこと

現状その4つが出来れば精霊術師を名乗って良いとされている。

ロウソクに火が灯せる程度の火力の精霊術しか扱えなくても術士と名乗る人もいれば、先程の海底を削り海を蒸発させるレベルの精霊術を使って術師を名乗る人もいる。

ピンキリにも程がある。

精霊術を使える人が少なく力量の差を見抜けない人が多いのだから仕方がない、のかもしれないが。

そして師匠の役目はその4つが出来るようになるまで素養のある弟子の面倒を見ることである。


精霊術師を名乗れるようになるまで、何年、下手したら十数年も時間がかかる。

素養がある者ならなん年何十年と掛かろうが術師になれるが、素養がなければどれだけ望んでもなることは叶わない。

素質は血で受け継がれると言っていたから、親から遺伝されなければ詰んだことになる。


霊力の有無は、ここでは紋様具が使えるか否かで判断できるが街には無い。

師匠になった人が教えを乞うた弟子に時間をかけて霊力を少しづつ流すことにより、有無を見極めることになる。

弟子は霊力を溜め込んでいる器があれば、師匠から流された霊力に反応し自覚することができ器の蓋を開くことができる。

蓋が開かれれば霊力の反発が起き、師匠は素養があるか否かをここで判断できる。


その際流す霊力の量を誤れば、弟子の手がカノンの腕のように吹き飛ぶ。

手が飛ぶだけならまだマシで、突如大量に流し込まれた霊力に弟子の器が壊れて精霊術が使えなくなることがある。

その壊れた器の中から溜められていた霊力が一気に溢れ出し、師匠に被害が及ぶこともある。

ヘタをすると互いの命を奪いかねない。

だから師匠は慎重にならざるを得ないのだ。

精霊術を使えるようになるために1番時間が掛かるのが、この蓋を開けることだそうだ。

師匠役が慎重になりすぎて素養があるかどうかの判断を下すのに年単位かかる場合もあるとか。


何年もかかって「やっぱアンタ使えないわ」って放り出されてしまう人がいる事実に震えてしまう。

若い間ならまだ次の目標を立てやすいし良いかもしれないが、中年になってから素養がないと判断されたらかなり辛い。

まぁ、結局は遺伝による部分が大きいから「親が精霊術師だったからオレもなる〜」みたいなノリの子供が多く、年取ってから一念発起するような人は滅多に居ないそうだけど。


一度開かれた器は鍛錬を積むことによって大きくしていくことが出来る。

器が大きくなればあつかえる精霊術が増えたり、霊力の質が良くなり同じ精霊術に使う霊力量が少なくなったりするので、自己鍛錬はとても重要だ。

その鍛錬の方法も師匠から弟子へ代々伝わっていくものになる。


自己流で器の覚醒から精霊術の行使まで出来る人も中にはいるが、精霊術師になるなら弟子入りするのが最も手っ取り早く確実な方法なのだ。


俺の場合は最初から霊力が有り余るくらいにあって常に垂れ流し状態。

と言うことは既に蓋は開いている。

他の人より多いという認識こそないが霊力が内側にあると自覚もできている。

加減は出来ないが体内で動かすこともできるし外に放出することも、カノンのおかげで出来るようになった。

あとは精霊を呼び出すこと、実際に精霊術を使うことが出来れば術師を名乗れると言うわけだ。



んで、素養がありました、と無事証明できたあと。

霊力を動かせるようになるまでに何年もかかる人が多いから、師匠はその間に次のステップである精霊を呼び出す行為をやりやすくするための杖を作る。

杖が出来上がる頃にちょうど霊力の放出ができるようになるから、その放出した霊力に集まった精霊と契約して精霊術が使えるようになる。

というのが通常の師弟パターンとなっている。


カノンが教える隙を殆ど与えず、ほぼ自力で出来てしまっている。

しかも1番重要なとっかかりの部分は無意識のうちに。

俺の師匠と名乗って良いものなのか、考えた時にそれは違うだろうと真面目な彼は思ってしまった。

鍛錬も大事ならその方法教えて貰えたら嬉しいし、それだけで充分師匠っぽいと思うんだけどね。


師匠と言う立場になれる程何かした訳ではないし、唯一師弟関係を証明出来る品である杖も当然、こんな短期間で用意出来ているはずもなく。

だから、師匠と言うよりはちょっとアドバイスをする人程度の位置だと考え、俺には自力で杖を作らせようと考えているそうだ。

少しでも早く作れるようになるため、材料集めを一緒に行けるようにと防具を拵えてくれた、という思惑があったんだって。


なるほどね。


実はパロサントもトネリコも近くの聖水が湧く森の中に生えている。

自分で1から作った方が霊力の馴染みも良くなるし、初心者用の杖を経由せず自分の唯一無二の杖を最初から作ればいい。

精霊の逆鱗に触れてはいけないから手折ることも切り落とすことも許可は出来ないが、それぞれの聖木に触れてみて手に馴染むものを選べばいい。


そう言われた。

木の種類なんて分からないよ。

手に取れば分かるもんなのかね?


カノンの今使っている杖も、自作で森から取ってきた聖木で作られている。

どちらが良いか分からず悩みながら木に触れたら、杖にちょうど良さそうな長さの枝が上から降ってきたとか。

だから、俺が赴いた際も聖木に直接問いかければ応えてくれるだろうって。


その長さと太さだと結構な重量物だよね。

降ってきたというか、落ちてきたんだよね?

当たって怪我しなくて良かったね。

そういう話じゃないか。

木が応える、ねぇ……

その位の不思議話じゃ驚かなくなってきているな、俺。



とりあえず今は間に合わせでカノンの杖を借りられないのか聞いてみたら、カノンの杖は既にカノンの霊力に染まりきっているから他者には逆に扱い辛くなっているのだと拒否られた。

霊力を込めすぎると物質は形を保てなくなり崩れ落ちる。

素材に霊力込めすぎて塵になった、あの現象か。

物質は霊力で繋がっているから霊力を込めすぎてしまうとその繋がりが切れて崩れるんだと考えられているんだって。

魔物素材は霊力とは違う力で繋がっていると考えられているから、同じように崩れ落ちる現象が起きたのには滅茶苦茶驚いたそうだ。

従来の考え方に一石を投じる大発見だと興奮していた。

さすが研究者。


それで、込めにくくはなるが更にその崩れた物質に霊力を込め続けると、崩れた砂は消え去り、身に纏うことが出来るようになる。


「ん? どゆことです??」

「こういうこと」


差し出された左手が淡く光ると、いつの間にかカノンの杖が出現していた。

ホントにどゆこと!?


同一の霊力が飽和状態まで込められた物質は、固体と気体を霊力の持ち主の意思に合わせて自由に行き来出来るようになる、という認識だそうだ。


木が昇華するってこと?

そんなバカな。


バカな、とは思うが、実際杖は何も無い所から出現したし、こんな思考をしている間にも杖はカノンの手の中から消えてしまった。

身に纏うの言葉通り、身体の表面を常に覆っている状態になっているそうだ。

触ってもイマイチ分からなかったが。

左腕に纏っているのだと再び杖を出して見せてくれた。

凝視をしたが、左腕が淡く光って光の粒子が集まったと思ったら、いつの間にか物質化していた。

フシギ現象だ。


防具に関しても、見に見えなくても身につけているような状態だから、一見身軽そうに見えても、カノンの現在の防御力はかなり高い状態だそうだ。

重さはないが防御力だけはある。


なんだよ、それじゃあさっき作って貰った防具も霊力込めまくれば軽量化の付与付けてもらわなくて良かったんじゃん。

そう不貞腐れたら、いくら俺の霊力が桁外れに多いと言っても、カノンが何年もかけてようやく身に纏えるようになった代物だそうで、一朝一夕でどうにかなるような物じゃないから、杖の素材を取りに行く間に合わせとしてなら重要な付与だと小突かれた。

暴力ハンタイ!



精霊を呼び出す方法を教えて貰おうと、それじゃあ改めてヨロシクお願いします、と教えを乞うたら首を傾げられた。

大抵は霊力が放出出来るようになると、精霊は勝手に寄ってくるものなんだって。

誘蛾灯に吸い寄せられる虫かよ。


俺は制御ができず常に垂れ流し状態なので、いくら可視化出来る量の霊力を放出していないと言っても、低級の精霊すら寄ってこないのはおかしいらしい。


放出する量を増やせばいいのか?

万が一があるといけないのでカノンから距離を置き、引っ張りだされた感覚を思い出しながら意識して霊力が自分の外側に出て行くようにしてみる。


全身から出すのは、難しいな。

流れをイメージ出来た方がいい。

掌からならカノンに犠牲になって貰った時を思い出せば良いもんな。


可視化されるレベル……うぉ、出過ぎた。

弱まれ〜、よわまれ〜……


霊力の出過ぎで砂が舞ったりカノンが更に距離を取ったりと、苦戦はしたが先程よりも扱いが上手くなったのではなかろうか。

少々イメージした量に持っていくまで時間は掛かったが、カノンが精霊術を放った時に見えた杖の先に集まっていた霊力程度までは抑えられたぞ。

まだ、一度外に出し始めると集中していなければ際限なく外にドバドバ出て行ってしまうが。


うーむ。

イメージする力が大事なようだし、水道の蛇口を想像したのだけど、蛇口のイメージだとダメなのかな。

うまく細かい調節が出来ない。


ON/OFFをしっかり切り替えられるもの、他にあるかな。

電気だと目に見えるものじゃないからダメかなって思ったんだけど。

あ、俺自身を電力調整器だと仮定したイメージをしてみるとか。

俺はコンバータだ〜って念じながら霊力調節してみるか?

仕組みが複雑なものだと意識しすぎて「創造」が発動してしまいかねないから却下だな。


あぁ、でも、自分に電圧調整ダイヤルがくっついているイメージは分かりやすそうだ。

早速やってみよう。目盛りがついてるものだし、ゼロから任意の数字にダイヤルを合わせて出力する。

そんなイメージで……

……なんか、出てきた霊力がスパークしてて嫌な予感しかしないし、コレはダメだな。


あ。

水道の蛇口って、手をかざせば自動で設定された水量が出てくるタイプか、上下する水量がイマイチ調節しにくいレバータイプかしか見たことないけど、大昔はクロスハンドルとか3角ハンドルとか、回転させて水量を調節できるタイプがあったんだよな。

それをイメージすれば微調整がし易いかも。


……うんうん。

体外に出す霊力を調整するのはこの方法でもイケそうだ。

ただ、この方法だと精霊術を使うにあたって精霊と霊力のやり取りをするのにどれだけの量の取引が必要になるとか、精霊の顔色を伺いながらすることになりそうだな。

少ないと怒られたらじゃ愚痴を右にひねるイメージをして追加で渡す感じ?

そんなんでいいのか??


もっと賢い方法があれば良いのだけれど。

とりあえずはカノンの言う「1の霊力」の力がどんなものか掴んで、そこから頭の中に計量カップを用意しよう。

霊力が流れ出てくる水道の蛇口を右にひねる。

使う術に必要な霊力に適した計量カップに注いで、それを体外へと持ってくるイメージだ。


大中小のカップに溜めた霊力を順番に掌に出すイメージ……「創造」で創り出してしまったカップごと霊力を体外に出してしまったのはご愛嬌。

中身だけ、中身だけ……

よし、出来た。

これならなんとかなりそうだ。


心の中のクロスハンドルを全力で左に回しても、地味に霊力が漏れる感覚は消えない。

まぁ、それでもさっきより微量になっている気がするし今は良しとしておこう。


感覚を掴むまで小一時間は経過したと思うのだが、コレだけの時間霊力を放出しても精霊は一向に現れる気配がない。


俺、精霊に嫌われてんのかな?


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