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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、呪いを分析する。




「これは呪いではなく、‘’祝福‘’だ」


人の力を超越する存在からの恩恵や恩寵。

‘’ソレ‘’は、対象の望みを愚直なまでに叶えるが故に、他方から見た際に‘’呪い‘’と間違えられやすい。


単に災いしか振り撒かないものを呪い。

誰かが何かしら得をするものを祝福と勝手にカノンが定義している。


だが誰かしらが得をすれば、他の誰かが損をするのは世の理だ。

特定の個人にとって祝福とかなるものは、大抵多数の呪いとなる。


呪いに限らず、win-winの関係が成り立つ場合でも、その関係の外側に目を向けた時に、マイナスの被害が多く出る。

その現象は避けて通りようがない。



精霊の皆はこの世界の神様的存在で、真摯に祈る者や世界平和に貢献してくれそうな人に文字通りの‘’祝福‘’を与え、世界をより良いものに導く手助けをして貰う。


それは単純にその人個人の能力を底上げするものであり、誰かが損をすることはない。

もし精霊の祝福で得た力を個人的な欲のために使おうとすれば、即座に剥奪されるので損をする人はいない。


損したと勝手に考える輩は居るだろうが。


精霊が直接、現世に干渉することは余りない。

俺に関することは特殊な事例なので横に置いておく。


その真摯な祈りっていうのには、霊力を込めて祈ることが最低条件なので、どれたけ神仏像にお祈りしても、霊力を持たない人の祈りは届かないと言うのだから、世の中ままならないものである。

そういう人を多く見ていると、思っちゃうよね。


精霊術も結局は、霊力を込めて精霊を崇め祈り願う言葉を紡ぐことで、思ったことを現実に引き起こす祝福や奇跡のようなものだ。

詠唱の言葉を形骸化して学業として教えちゃえば良いじゃん、なんて軽々しく扱って良いものではなかったようだ。


カノンが頭を抱えた理由が分かったよ。

まぁ、教科書を既に作ってしまったので、今更な話だけど。



屋敷の玄関に飾ってあるアレは、魔羊(アルヴィス)から刈り取った羊毛を紡いで作った糸を、魔羊(アルヴィス)の血液で染めて織られたタペストリーだそうだ。


童話なんかでは度々描かれるが、沢山の魔羊(アルヴィス)の血を吸った織物なんて、呪物としか言いようがない。

呪いって人の体液好きだよね。


村正なんかは血を好んだと言われて妖刀だなんて呼ばれていたし。

ひとつ、人の世の生き血をすすり……って、コレは違うか。


その魔羊(アルヴィス)の血を何代にも渡り吸い続けているタペストリー。

制作方法を聞いたら呪物としか言いようがない。


だがその習わしの興りを聞いたら、そうも言えなくなってしまった。


繁殖した魔羊(アルヴィス)はメスの割合が多いのだが、年に一度は必ず日々の恵に感謝し供物として基調なオスを神々と先祖へ生贄として捧げる燔祭のようなものが執り行われるそうだ。

その供物の血を染み込ませた糸を玄関飾りにすることで、日々の感謝と祈りを忘れず捧げることが出来るのだと言う。


町とはまだ言えないような、少数民族だった頃から行われてきたそうだ。

その頃は、長のテントに常に飾られていたとか。


幾度か他部族に襲われ絶滅しかけた時もあったが、そのタペストリーを害そうとした途端、その侵略者たちは次々と不審死を遂げて、自分たちの祖先は生きながらえてきたとされているそうだ。


ガッツリ呪いが発動していやがる!


産まれたオスを、繁殖用として確保し、その年に他のオスが生まれなかったためメス魔羊(アルヴィス)を奉納したら、謎の病で同胞が次々と倒れ、慌てて確保していたオス魔羊(アルヴィス)を供物としてお焚き上げした途端、その疫病はパタリと止んだ、とされる言い伝えもあるそうだ。


ガッツリ呪いが発動していやがるぞ!!


それでも、出かける前と帰った後に玄関で一礼する日々の祈りと、年に一度オス魔羊(アルヴィス)を捧げることさえ守れば、本当に穏やかな日常が送れるのだと熱弁をする商人のオジサン(トルエバさん)

行商をしていても、ここ数年は野盗や魔物に襲われることはなかったし、放牧の旅に出た者たちも怪我くらいはするが、生命の危険にさらされるようなことは殆どなく。

産まれたばかりの赤ん坊が死ぬことは避けて通れないことではあるが、それでも他の村や町に比べれば、かなり生存率は高いのだと言う。


お守り的な意味も含めて、あのタペストリーを処分するようなことはしないでくれ、と言っているのだけれど……アレ、かなりタチが悪いぞ。


話を聞いているだけても、恩寵の見返りを求めるようなことをしているわけだろ。

しかも、その見返りを一度サボっただけでかなり手酷い仕打ちを与えている。


謎の病気で、トルモ町の住民は半分以下に減ったそうだし。

かなりの被害だ。


たかがオス一匹の対価としてはかなり悲惨である。

そのオス一匹を捧げなかった罰、と言うよりも、今まで与えてきた恩寵と相殺し切れなかった、町の人達へ施してきた恵みへの対価の請求が一気になだれ込んだ上での、一族の大量死なのだろう。


コレだけしっかりした作りの御屋敷の中で、食べるものにすら困っていないのに、産まれてきた赤ん坊がそんな何人も死ぬのは正直、おかしい。

聞けば男児ばかりだと言うし。


医療設備が整っていないから母子共にダメだったとか、生まれて間もなく亡くなったと言うなら分かるが。

しかも、赤ん坊が産まれてくるのは夏か秋が多いんだろ。

冬子なら風邪をひく確率が高くなるし理解も出来る。


年の瀬に死ぬ子どもが多いとなると、まだ現世にしっかりと魂が留まれていない、連れて行きやすい赤ん坊を、その日一年の恵みに対して足りなかった祈りの分の対価として頂いていっている可能性がある。


はるか昔のトルモ町の住民が、その恵みへの対価に等価交換を願い出たのならば、被害はその子孫の範囲内で収まる。

現場で満足しているから手出しをしないでくれと言われれば、そのままスルーして俺たちは旅を続ければ良い。


だが、俺たちの嘔吐反応がその被害の一端であるのなら話は別だ。


危害を加えようとしているわけでもない。

ただ町に訪れただけの人を無差別に攻撃するようなモノは放置できない。


魔犛(ムータス)も死にかけていたしな。

そういえばあの子、大丈夫かな。



過去、外部の人間が町を訪れた際はどうだったのか聞けば、ここ数年、嫁に来る者以外で外部から屋敷に人を招くことはなかったし、冒険者や旅人の類が訪問することもなかったから分からないと言われた。


どの町も村も、魔物の脅威により疲弊していて町から町へ移動するようなことが困難なのだろうと思っていたそうだ。

実際、行商をするための家畜を所有している町村はほぼなかった。


ウルメ村くらいか。

あそこは農耕に利用している輓馬っぽい巨大な妖馬(エクス)をそのまま馬車馬として利用していると言っていた。

食糧難で年老いた妖馬(エクス)から潰したそうだし、過去には沢山の家畜がいたのだろうね。


他の町でも家畜化した魔物を飼っていたのかな。


トルモ町へと続くあぜ道の途中でこと切れている人を幾度か埋葬したことがあり、他の町は余程困窮しているのだろうと考え、商人のオジサン(トルエバさん)は長の座を息子に引き継ぎ、余生である現在、社会貢献活動として、自分の利益はほぼナシで奉仕活動に荷馬車を走らせているんだとか。


その献身的な活動はとても素晴らしいと思うよ。

持っている者は与えよというものね。

貴族でもないのに、立派な心構えだ。


「……たださ。

 その、ココに続く道の途中で死んでたって人。

 呪い? 祝福?? で死んだ可能性ない?」


その言葉にハッ!と口を押さえて青い顔をするトルエバさん。

言われて初めて気付いたようだ。

そう思わせる余地があったのだろう。

視線をアチコチうろうろさせた後「確かに、血を吐いていました」と、血の気が失せた顔で言った。


勿論、旅の道中誤って毒を口にしてしまったり、持病が突如悪化して吐血して倒れることもあるだろう。

だが、そういう遺体が自分の町の敷地近くに度々ゴロゴロ転がることに、おかしいと一度も思わなかったのだろうか。


この世界だと、そういうことが当たり前に起きるの?


人里から拐われたり、旅の途中で襲われて、魔物に食い散らかされ野ざらしになっている遺体なら、結構な頻度で見ると言うのはアルベルトだ。

特にその土地の知識がないと、安易にそこら辺に生えている野草を食べて食中毒になることも、実体験としてあるそうだ。


特にこの辺は開墾されてて人の手が入っているから、毒草等の人間に危害がある草花の類は刈り取られているだろうと勘違いして口にして、死んでしまうような人がいても、まぁ、おかしくないと言った。

そんなもんなのか。


……カノンが首を傾げているので、冒険者と彼の普通の感覚は相容れないようだ。


流石に今から遺体を掘り返しても、その死因が呪いによるものなのかなんて分かるわけがない。

何かコレ!と分かりやすい目印でもあれば良いのに。



呪いなのか祝福なのかは不明だが、犠牲がこれ以上でる前にサッサと解呪してしまうか尋ねる。

だが、トルモ町への恩恵がどれだけもたらされているのかも不明な状態だし、町全体の問題になるのでトルエバさん一人では決めかねると言われた。


まぁ、長の任を譲っているのだし、元長が独断で行動するのは良くないよね。

無駄な争いを起こしてはいけない。


物理的な距離が近ければ近いほど、呪物の影響は受けやすいとされると言われたので、とりあえず町の様子を見がてら、今日は畜舎のひとつに泊まらせてもらうことになった。


心尽くしのおもてなし予定から一変、まさか納屋で一泊することになろうとは。



あぜ道沿いにあると言われたので周囲を見渡しながら歩く。

ダンジョンのように高密度の瘴気が漂っているわけでもない。

魔物が闊歩しているわけでもない。


なのに、なんだか肌にまとわりつくような気配を常に感じるのは、呪物の影響によるものなのか。


視認しても耐えられるのなら、鑑定眼であのタペストリーがなんなのかとか、解呪する方法だとか視ることが出来ただろうに。

見なきゃ視えないところは不便だねぇ。


「このままとんずらするのも手だと思うぞ」


アルベルトが無責任なことを言い始めた。

実際、彼は国王(アリア)から直接依頼を受けていないし、責任なんてものはない。

だからと言って、何日も行動を共にしたというのに。

人情的にそれはどうなのだ。


イヤ、人に構っていたら自分の生命が危ない世界で生きているのだから、アルベルトの感覚が正常なのか。


「俺たち他人に危害が及んでいるから直ぐに解呪したい、とは言われなかったしな」


「……あぁ、まぁ、確かに」


呪いと言う言葉と、自分たちへの影響にばかり目がいってしまっていた。

気さくで他の町の人たちを手助けしている事実への先入観もあったかもしれない。


確かに、トルエバさんは死者が出ている可能性を孕んだ現状がこの先も続くか、下手をすればどんどん悪化していくことすら示唆されていたのにも関わらず、即答をしなかった。

俺たちの体調不良の状態も見ている。


それにも関わらず、自分たちの利と、他者への不利益を天秤に掛けた問いかけに、「自分が全ての責任を負うから解呪してくれ」とは返事しなかった。


話し合いをしている最中に、俺たちが死ぬ可能性だってあると言うのに。

イヤ、死ぬつもりはないけどさ。

それを言い出したら、他の倒れていた人たちだって死ぬ予定は無かっただろう。


「呪物の解呪方法は知っている?」


「ああ言う代物は、掛けられた年月、想念の強さ、供物の質と量。

 全ての要素が絡み合って強さが変わる。

 強ければ強い程、解呪は当然、難しいものになる。

 あれは……視界に入るだけで俺達の結界も何もかもを無視して影響を及ぼしてきたからな。

 正直、関わりたくない」


関わりたくはないけど、解呪の方法は知っているのね。

勿体ぶらずに教えろやぁ。


詰め寄れば、解呪までは別にしても良いけれど、あの手の呪具は呪い返しが怖いのだと眉を寄せた。


なんだっけ。

呪った相手からその呪いを返却されたら倍返しで呪いの力が襲ってくるんだっけ。


別に呪いじゃなく、精霊術でも出来るそうだが。

その上、そのまま本人に返す場合と、俺が想像していた通り力を上乗せして返すパターンもあると言う。


トルモ町の先祖が何かしらと契約をして、供物として貴重な魔羊(アルヴィス)のオスを捧げる代わりに一族の繁栄を願ったのだろうと、カノンは予測しているそうだ。


外部からちょっかいを出されてその契約を存続が難しくなったり、反故にされたりしないために、町の者以外を寄せ付けないようにしていると考えている。

だが、それにしてはやり過ぎな気もするし、魔犛(ムータス)に危害が及ぶ説明がつけられない。


呪いは効果の範囲や性質を見誤ると解呪が出来ないし、不利益が全て解呪しようとする者に集中して襲いかかる、かなり厄介な代物だ。

だから、本人たちがコレで良いと思っているなら関わらず、ゆっくり他者に迷惑をかけず破滅していって欲しいと思ってしまうんだって。

酷いことを言う。


確かに自分本位なところはあるが、目に見えて被害が及んだ俺たちを心配したその心に嘘や偽りは無かった。

性根が腐っているのなら、その判断に異を唱えようとは思わない。


だが、トルエバさんは他の村や町の手助けを自発的にしようとした優しさがある。

商人らしい交渉をして、自分の利益を多くしようとする部分もあるけれど。

それで獲た利益も、結局はエルモ町とかに配っていたしねぇ。

悪人ではないなら、自滅する前に助けたいよ。


カノンにはお人好しだと言われたが、似たような活動を何百年と続けているヤツに言われたくないです〜。


「あんたら誰よ」


ふいに、前方から声を掛けられた。

その手には、魔犛(ムータス)を引きずるための綱を握っている。

トルエバさんの客だと言うと警戒を解かれた。


警戒心がなさすぎる。

俺が嘘をついていたらどうするんだ。


俺たちが連れてきた子魔犛(ムータス)の他にも脱走してしまった子たちがいたようで、放牧に出ず屋敷に留まった若い女性を中心に、怪我をした若い男性や老いて放牧をリタイヤした男性は皆、同じように脱走をした魔犛(ムータス)の捕獲に出ているそうだ。

あぁ、だから屋敷には年のいった女性しかいなかったのね。


魔羊(アルヴィス)は逃げなかったのか聞けば、普通にいつも通り大人しく森の木を食べたり畜舎で寝たり、ノンビリと過ごしているそうだ。


「さっきトルエバさんに聞きそびれたんだけど、突然死した魔羊(アルヴィス)って、オス?」


「そうだよ。

 オスだけかかる病気でもあるんかね。

 さっき魔犛(ムータス)も一匹、向こうで死んでたんだ」


死んでる巨体を持ち運ぶのはムリだと判断してその場に置いてきたと言うので、詳しい場所を聞いて向かうことにした。




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