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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、ズブ濡れる。

いつもご覧頂きありがとうございます。

ブックマーク登録も感謝です(*・ω・)*_ _)ペコリ




穏やかに砂浜を撫でては引いていくその波は、雲のように白く泡立つ。

海の蒼さも相まって、まるで空が落ちてきたかのように錯覚させる。

それでも遠く見える水平線が、そのふたつは全く違うものだと境界を引いていた。

時折不規則に光るのは、魚型の魔物の鱗に太陽の光が反射しているからだろうか。


コレは年頃のカップル――この際は敢えてアベックと表現をするべきだろうか――がキャッキャウフフ、まて〜と追いかけっこをしたくなるのも頷ける。


暑い日差しに変化を伴う波の様子。

それは一時(ひととき)の恋模様を表現しているかのような、儚さを孕んだとても美しい景色だ。


……そんな中!

なぜ!?

俺が!!?

半裸で佇まねばならんのか!!!??

声を大にして文句を言いたい!!!!!



海の魔物は総じて強い。

……らしい。


俺からしてみれば“水晶球の白滝“付近の魔物の方が大きいし一撃は重いし広範囲だし。

様々な要素で強いと思うのだけれど。

まぁ、(オルトゥス)付近の魔物が強いと評価する人たちからしてみれば、海の魔物も確かに強いのだろう。


陸の魔物と違って予備動作に特長がない。

なにせ、魚だし。

筋肉の作りは四足獣と違い単調で、水中に潜られては攻撃もしにくい。

表情も見て取れないから予測が出来ない。


水中を泳いでついた勢いそのままに、弾丸のように飛んでくるので喰らったらダメージがデカい。

時速一〇〇kmは余裕で出ている。


陸の魔物と同様、海の魔物も地球の生物よりも大きい作りをしている。

体長五〇〇cm、重さ一tを超える物量が、遠慮なく減速もせずぶち当たって来るのだ。

生身なら死ねる。


減速しないようになのかな。

精霊術のようなものを使って、自分が飛んでいく方向に向かって水路を引きながら飛んでくる魔物がいるんだよ。


条鰭種(カジキ)はその上スピンをかましながらあの吻で突き刺してくるから、喰らったら一撃で胴体引きちぎれるよね。

恐っ!


なにせ岩に突き刺さる位だし。

場合によっては砕けてたし、岩。


……精霊術が使えない、魔物素材の防具もない人には、確かに脅威だな、うん。



そんな魔物がウジャウジャいる海の中、精霊石の装飾品に魔物の忌避効果がしっかりあるのか、アルベルトに試させようと思ったのだよ。


なんだけど、コイツ、泳げないとか言い出しやがって。

正確に言えば、装備品もそのままに、ザブザブ海の中に入っていって溺れたの。


最初、何コイツ着衣水泳の上級者版なんてしようとしてんの?

と思った訳だよ。


薄手の長袖長ズボンですら、水着着用時の何倍も動きにくく重く感じてまともに泳げなくなると言うのに。

魔物素材の厚手の服着て鎧まで着けているんだよ?

剣も腰にさしたままだし。


え?

|アルベルト+三バカの冒険者グループ《ディヴィティアエ》は漏れなくバカでしか構成されていなかったの??


そう半分冗談のように笑って見ていたら、砂底に足を取られたのだろう。

転んで溺れた。


最初、何してるのか分からなかったよね。

だって、あんな元気ハツラツで気持ちの良い返事をし、勢いよく腕を振って海に向かっていったんだよ?


この世界の海って地球と違うのかな。

それとも特有の泳ぎ方があるのかな。

装備に特殊な付与をしてあるのかな。


そんな風に考えたんだよ。

まさか、溺れるだなんて思わないじゃん。


海面に顔をつけたまま、起き上がりもしない。

ふざけてるのかな? と思ったんだけど、アルベルトの尻だけ海に浮かんだままの状態になったあと、数秒数えてコレはヤバいやつだと気が付いた。

慌てて咄嗟に脱げるもの脱いで救助に当たったのだ。


溺れた人を助けようとして、救助に向かった人が溺れる事故は多いと聞くからね。

なるべく軽装になるのは、最低限度必要な行動だったのだよ。


おかげでカノンに痴漢呼ばわりされた。

人命救助をしたのに、まるで汚物でも見るかのような目で見られた。

思わず一瞬魂抜けたわ。


なんでだよ。

性器を晒すまではしていないし、この状況でアルベルトにセクハラなんてしていないぞ。


必要なら人工呼吸くらいはしたかもしれないけど。


腹パンしたら飲んでいた海水を吐いてくれた。

意識は少々混濁しているようだが、呼吸もしっかりしている。

する必要がないから、無闇矢鱈と口付けするようなマネはしていない。


痴女だとか痴漢呼ばわりをされる言われはないぞ。



だがまたしても文化の違いや常識の齟齬が生じた悲しいすれ違いが起きた。


この世界では、海は地球以上の危険地帯である。

魔物がウジャウジャいるし、潮の満ち干きが激しい。

レジャー目的で訪れる人は皆無。


そのため、娼婦や男娼でもない限り、公共の場で過度に肌を露出することはないそうだ。

そしてそういう性的なサービスを提供するようなお店でも、基本店内でしか脱がない。


そりゃ変態呼ばわりもされて当然か。

イヤ、でもコイツ。

俺が異世界で暮らしていたってことを知っているんだぞ。

文化の違いがあることくらいは想像つくだろ。

突然HENTAI呼びするのは酷すぎる。



コレだけ魅力的な広い海があるのに、何も利用していないのか。

そう問えば、夏場、あせもが酷い子供のために、比較的安全な河口付近で海水を汲んで利用することはあるそうだ。

黄色ブドウ球菌の洗浄消毒に良いんだっけ。

医療知識はなくても、日常の生活の知恵として、そういう対処はしているのか。


でも本来、あせもに海水浴が良いって言われるのは、消毒の他にも紫外線を浴びることで皮膚の免疫反応が抑えられるからって理由があるのだけど。


日々の生活に介助が必要な幼子でもなければ、家族でもない人間が他者に裸を晒すのは、この世界では有り得ないと言うのなら、日光浴はしていないよね。

ただ海水を塗ったくるだけだと、効果は薄いぞ。

回復薬を塗布した方が治るんじゃないのか。


……あぁ、その回復薬がお高いのか。

なるほど。



家で親睦を深めるため、と言って一緒に風呂に入った時は、さぞかし驚いたのだろうな。

本来風呂は親しくなるためではなく、親しくなったあとに連れ立って入るものだというなら、混乱させただろう。


んじゃ、その風呂の問題が出てくるよな。

今朝戻ったばかりだけど、なんらかの策を講じるべきか?


(オルトゥス)に設置したの、大衆浴場だぞ。

赤の他人の前で皆スッポンポンになるのに抵抗があるのなら、作った意味無くない?


浴槽にお湯を張った状態を見ていないから勘違いをさせたようなのだが、どうやら、この世界の大衆浴場とは蒸し風呂のような、蒸気を浴びるものをさすそうだ。


風呂に浸かることが出来る設備がカノンの家にはあったんだもの。

あれが普通だと思ってたんだよ。

銭湯や温泉みたいなものが当たり前にあるんだと思ったんだよ。


あんな規模で浴槽にお湯を入れ満たすには、清潔な水と大量の薪、もしくは、火の精霊術が使える術師が必要になる。

カノンは自分の常識に囚われて、俺がトンデモないことをしでかす余地がそこにあることに気付かなかった。


もう、村の人達に使い方説明したけど、蛇口捻るだけでお湯が出るように紋様具が設置してあります……

シャワーも完備してあります…………


イヤ、だってさ。

タライで身体拭いてたのは紋様具が壊れてる間だけだったじゃん。

浴槽が普通にあったじゃん。

テルモと三人で風呂入った時、コレは普通ではないとは言ってなかったじゃん。


村はないない尽くしだったから風呂の概念自体が無かっただけ。

ウヌモ町は外見パッと見ただけだったし、王都(ディルクルム)の宿はコッソリ泊まったから風呂の確認をしなかった。


まさかよもや、風呂の概念が全く違うとは。


ここは平安時代か!?

モヘンジョダロにすら公衆浴場があったんだぞ!!


この世界の文明、遅れているにも程がある。

あぁ、まぁ、大衆浴場ってキリスト教の布教によって廃れてしまった文化だし、精霊信仰の教えによっては致し方ないのか。


湯治の効果を考えると、この世界こそ風呂って普及すべき文化だと思うんだけどな。


石灰やケイ素が採掘出来るからと言って、温泉が湧いているとも言いきれないのがこの世界だし。

なにせ俺の、地球の常識が当てはまらない世界だからね。


紋様具を一般利用出来るようにするのは段階を踏んで、とクギをさされている。

どうしようかな。

実験大好き、お薬大好きなカノンに入浴の効果・効能を説いたら、風呂に限り許可を出してくれやしないだろうか。



しばしの言葉による攻防戦の後、久しぶりに全身丸洗いと乾燥をしたよ。

さすが塩化ナトリウムを多量に含むだけある。

そのまま放置して乾いたら、特に髪の毛はバサバサ、全身がベタついた。


今更だが、俺を保護してくれた時、カノンはしっかり海水を洗い流してくれていたんだな。

ありがたや。

とりあえず拝んでおく。


アクアやウェントスのように、他人を丸洗いするのは少々不慣れなため、アルベルトを再び溺れさせてしまった。

申し訳ない。


アルベルトは不遇続きだが、おかげで収穫はあった。

精霊石の装飾品を着けて以降、魔物が一切寄ってきていない。

モチロン、俺の気配察知の霊力は完全に切ってある。


その状態にも関わらず、そして被食者が溺れているという絶好のチャンスだろうに、捕食者である魔物が向かって来ようとすらしない。

精霊石を使った簡易結界作成は成功したと言えるのではなかろうか。


コレは大量生産出来たら、なかなか良いものになる予感。


今のところ、精霊石の仕組みや特性が把握しきれていないので、ひとつの装飾品にひとつの属性しか結界の効果を付けられない。

だが、海に限っては風の精霊石による結界さえ張っておけば、魚介系の魔物が襲ってくる危険性が無くなるのだ。


魔物に襲われないなら砂浜で土壌改善用の貝殻を拾い集めることが出来る。

精霊石も集められる。

自分で使うでも、今後装飾具を流通させた時に市場に回すでも、いくらでも活用出来る。


自分で言うのも何だが、精霊術が使えない人にはかなり便利じゃない?


「ここら辺に出没しやすい魔物って、水の属性だけ?」


「海に棲む魔物は基本水属性。

 だがそれを狙う空飛ぶ魔物は、風属性のものや、火属性のものもいる。

 勿論、水属性のもいるぞ」


あぁ〜、そっか。

海鳥がいるのか。

ん? ここらへんに棲んでるなら水鳥か??


やはり一番良いのは、オールマイティに魔物を全て寄せつけないお守りを作ることだよね。

腕輪やら指輪やら、ジャラジャラ幾つも付けてたら主くて大変そうだ。


万能お守り……出来なくはないけど、単価的にたぶん、べらぼう高くなる。

なにせ精霊石ではなく霊玉を使うことになるから。


(オルトゥス)には自分の手持ちをふんだんに使ったが、基本霊玉って滅多に手に入らないから高いんだって。


精霊術師じゃなくても、精霊様の奇跡を呼び起こせるからと、大半が精霊教会が秘密裏に買い取っているとかいないとか。

だから市場には流れないのだ。


そんなウワサがあるくらいには市場に出回らない。


そしてその霊玉は、精霊術師になれるか否かの試金石としても用いられる。

術師が一人、町に居るかいないかで生活の質が向上するのだから、もしなんらかの好運により小さいものでも手に入れたら、誰も手放そうとはしない。


中に込められた霊力を水を浄化させるのに使うにしても、精霊術を使うキッカケになるかもしれないからと取っておくにしても、誰もが欲しがるから隠すんだって。


作ったとしても、霊玉にエネルギーチャージ出来る人が常駐するなり、代わりの霊玉を誰もが魔物を狩って用意出来るような状況にならない限りは、紋様を刻んだ外側だけ作っても意味がないな。


まぁ、鳥型の魔物は多くてもツガイでしか群れないため、逃げるか追い払うかの対処なら、何人かで徒党を組めば対処のしようがあるというし。


町で過ごしていても、やはり空からは魔物に襲われることがあるので慣れているそうだ。

その度に子供が攫われそうになったら、対処の仕方もそりゃ学ぶか。



施しは与えすぎてはいけない。


水の改善と、特産物の提案。

エルモ町に提供するのは、そのふたつで充分か。

本来、寄るはずもなかった町なのだし。

これ以上はやり過ぎになるだろう。


町長(エルネス)さんの体調不良がキッカケにで滞在することになった。

そのおかげで俺は念願のお魚と貝を食べることが出来た。

奥さんと子供に渡した腕輪は、そのキッカケへのお礼ってことで。


……施し過ぎてないよね?

大丈夫だよね??


恐る恐るカノンにお伺いを立てたら、彼的には回復役を無償で追加で渡した時点で施しすぎだったそうだ。

俺とカノンのハードルの高さが全然合わない。

コレでもやり過ぎないように遠慮しているのに!


地域格差を生じさせない程度の生活向上活動って、加減が難しいね。




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