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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、欲にまみれる。




欲“深い”と言うのに、対義語が浅い、ではなく“無い”。

つまりゼロだと表現するのは何故なのだろう。


無我の境地に至るまでは、たった一つの願望を抱くだけで強欲だとか貪欲だとか言われるのは、さすがに酷いのではないか。


マズローの説で言うなら、最低でも人間は五つの欲求を生まれながらにして抱えていると言うのに。

その全てを打ち捨てようものなら、干からびて死んでしまうぞ。



生きていくために必要な基本的・本能的な“生理的欲求”。

動物でも持ち合わせている、生命維持に必要な食欲・睡眠欲・排泄欲がコレに当たる。

欲の土台となる、一番低次に位置する欲求だ。


心身ともに健康的かつ経済的にも安定した、安心安全が確保された暮らしを求める“安心の欲求”。

地雷原でタップダンスを踊りたいと思う人も、標高八〇〇〇mを超える場所に布団敷いて寝るのが夢だと言う人もいないものね。

もしそんな人がいるなら確実に精神を病んでるので即、病院に行くことをお勧めする。


この二つの欲求は、生きていく上で最低限充たされるべきものだろう。

“欲“と定義されることに異を唱えたくなるレベルの、生命として主張するでもなく保証されるべきラインだと思う。


国境を越えて活動するNPO法人なんかが発展途上国に対してしていた支援は、この二つの項目に関することが多かった。

それだけ、人がヒトとして暮らしていく上で大切なものだとされていたからだろう。


友人や家庭、会社のような集団から受け入れられたい、親密な者から愛されたいと願う“社会的欲求”。

“帰属欲求”とも言われる欲求で、人間のように集団で活動する、哺乳類にもよく見られる。

人の役に立ってると実感すると充たされる。

充たされないと孤独感に苛まれ、精神病にかかりやすくなる。

ウサギは寂しくても死なないけど、人間は死んじゃうからね。

独りだと感じた時には病院に行こう。


他者から尊敬されたい、認められたいと渇望する“承認欲求”。

この承認欲求は、この二つに分類される。


他人からの賞賛や注目、尊敬によって満たされる低位の承認欲求。

鼻高さんになりたい欲求だね。


自分自身による評価や意識、自立性を得ることで満たされる高位の承認欲求。

自信に満ち溢れた自己肯定感の塊みたいな人は常にこの部分だけは満たされている訳だけど、実力を伴わない場合は社会的欲求が満たされなくなっていくので、気付いたら突然病んだりする。


低位も高位も、心を満たすベクトルは違うにしても、満たされないと劣等感に苛まれ、無気力感を覚え、やはり精神的な病にかかりやすくなる。

満たされやすくなる考え方の講習を受けられるので、やはり劣等感を必要以上に抱きやすい人は病院に行け。


匿名で意見を書き込めるコミュニケーションサービスで、尊大な態度を取ったり他者を敢えて傷付ける言葉を投げかけるのは、社会的欲求と承認欲求が満たされないのが理由のひとつとされていた。

反応が返って来やすいのって、偽善的な言葉よりも誹謗中傷の類だからね。


自分に投げられたわけでもないのに、批判って心に届きやすいから。

困ったもんだ。


注意ならまだしも、中傷に対して攻撃的な言葉を返されることも多いだろうに。

それでも構ってくれた! と喜んでしまうなんて。

不健全にも程がある。


人間関係って、満たされないとマゾヒストになってしまうのかな。

被虐趣味は理解できないなぁ。

イヤ、加虐趣味ほど悪趣味なことはないと思うけどね。


実際に顔を顔を合わせて取らないと、コミュニケーションは上手くいかないことが多い。

文字だけでは言葉そのものに対する印象や考えかたで、伝わり方が変わる。


真逆の意味に捉えられる場合なんかもある。

誤用されやすい言葉だと余計にだよね。


リモートによる会話なら、まだマシだけれど。

電話だと相手の表情や仕草から読み取れる情報がゴッソリ削られる。


テレビ電話では微妙に生じるタイムラグにより、スムーズな会話が出来ず、沈黙の意味を推し量れず困ることになる。

相手が何か考えごとをしているのか、通信機器の不具合なのか、それとも何かコチラが失言をしてしまったのか。

要らない情報が加算されてしまうために疲れも溜まる。


五感を刺激されながらのコミュニケーションでなければ、本当の意味での会話は出来ないし、意思疎通を図ることはできない。

満たされる割合も少ない。



実際に人間に備わっている感覚の数はもっと多いが、大まかに分類した時は五つとして良いだろう。


握手を交わしたりハグをし合い触覚を感じ、会話により聴覚を刺激し、ボディランゲージや表情の変化で視覚情報を取得し、会合の場のお供のお茶や菓子で味覚を満たし、その場所や相手の体臭、またストレスにより分泌されるホルモンを嗅ぎ分け嗅覚から脳を刺激する。


感覚を通しそれら全てを満たしてようやく対話は成り立ち、有益な時間を過ごしたと言える。


逆に言えば、それら全てを刺激されないと充たされない生き物なのだよ、人間は。


生まれながらにして光を認識できなかったり、音の高低の判断ができずに過ごしてきた人なんかは、それらを補うように他の感覚器官が鋭くなっているので、少々例外的だが。


遠距離恋愛をするカップルが破局しやすいのは、五感が充たされないのも理由のひとつになるのだと思う。



ちなみに、マズローの欲求の最後のひとつは、自分の世界観や人生観に基づいて“あるべき自分“になりたいと願う自己実現の欲求だ。

マズローの欲求五段階説のピラミッド型の頂点に位置するこの自己実現の欲求は、物質的欲求が充足し、思い描いた理想の自分に近付けた時――つまり、他の四つの欲求が満たされた時に実現するとされている。


総合して考えると、欲求とは充たされないと死に直結する。


肉体的なのか精神的なのか。

死因がどちらなのかは、どの欲求が満たされないかにもよるが。


だから、欲望に忠実なのは良いことなのだ。


死から遠ざかるのは長生きの秘訣だし、長生きするってことは、それだけ遺伝子的に優れた生物だという証明になるからね。

まぁ、全ては人に迷惑さえかけなければ、の注釈が付くが。


この世界の人が短命なのって、そういう欲が薄いのが原因じゃなかろうかって思うんだよね。

男女の寿命の差がエグいくらいあるもん。


年配者と言える年齢の人がね、ホントに少ないの。


生理的欲求は男性の方が強いとされているんだよね。

狩りをするにも子孫を残すにも、生存本能が男性の方が強くないと原始人の時代では生き残れなかったから。


女性はその欲は大人しめで、子を孕めば更になりを潜める。

自己主張はなるべくしないで、群れの協調性の輪を乱さないように進化した。


なんだけど、この世界ってその生き残るための土台である生理的欲求ですら希薄なのだよ。


だから調理方法のバリエーションは少ないし、味付けは塩がメインだし。

シュケイから羽毛が取れるのにお布団は基本藁か綿。

トレイ事情はスライムという特殊枠があるからなんとも言えないが……やろうと思えば、火の属性を便座に付与して温座の洋便を作ることも出来るだろうにしない。


いくらでも、生活を向上させようと思えば出来るだろうに。

地球から転移してきた人たちが思い描いた便利な生活、もしくは自分たちが当たり前にしてきた暮らしに近付けるための創意工夫をした功績が、年々廃れていっている気配すらある。

維持の努力すらしようとしなかったのだろう。


だからこそ、精霊石をねだるような視線を浴びた時は心底驚いた。

それで思ったんだよ。


欲を表面に出して良いような状況じゃないから、みんな自分でも知らないうちに押さえつけてしまっているだけなんじゃないかって。

同調圧力みたいなものなのかな。


求めてはいけない空気を伝染させる起源が、この世界には元々存在したのだと思う。


そうじゃなければ、(オルトゥス)に移住したいと申し出る人がいるわけないんだよ。

安心の欲求を抱いたが故の行動でしょ。


移住なんめ、生を渇望しなければ、ただ惰性により息をとめないだけならば、必要のないことだからね。


欲が無さすぎてこの世界は滅びかけた。

それは事実なのだろう。

正しく言うなら、欲を表面に出さなさすぎて、になるが。


地球で人間が辿ってきたような、欲望を持ち、それを実現しようと行動に至るキッカケになるような出来事が、この世界では起こらなかったのかもしれない。

誰かがそれをら阻止したのかもしれない。


さすがにそれは分からないし、別に解明しようとも思わない。

必要なのはそこじゃない。


ならば、そのキッカケさえ与えれば、この世界は独自の発展を遂げ、地球のように滅びに向かう結末にはならないかもしれない。

重要なのはそこだ。

なにせ精霊という調停者のような存在がいるわけだし。


生理的欲求と安心の欲求を充たすことが出来れば、より良く生きるための欲求が湧いてくるはずだ。

地球の素晴らしい文化を取り入れるのもモチロン個人的に大賛成ではある。


だが、ココは全く別の世界なのだ。

是非ともこの世界ならではの魅力をドンドン伸ばしたい。


生理的欲求は環境を整えれば最低ラインはクリア出来るだろう。

だがその質を向上させるため、(オルトゥス)を起点に食糧事情や寝具をより良いものを徐々に広げていこう。

(オルトゥス)では一度体験したら、手放せなくなるようなものを用意する。

その場で入手出来ないなら、どうすれば自分たちの日常にソレを取り入れられるようになるのか、思考するようになる。


そう、無欲とはつまり、思考の停止だ。

そりゃ文化の発展もなければ繁栄も起こりえず、衰退していく一方になるのも当然だ。


(オルトゥス)を起爆剤にしよう。


数日離れただけでスライムのあの感触が恋しくて堪らなくなっているから、ちょうど良い。



早朝からお邪魔しますと、ウヌモ町に移動してゴルカさんに方針の追加指示と計画書の改正案をしたためたものを渡した。

その後(オルトゥス)の宿屋全室に、一度体験したら出られなくなるようなお布団を納品。

簡単には購入出来ないようにかなりの高額に設定するよう、ゴルカさんに渡した計画書には記載しておいた。

万が一でも購入者が現れたら、相手の情報を控えてお知らせ用の霊玉で伝えるように併せてお願いした。

金持ちかつ、このお布団の魅力と可能性に気付ける人がいるならばお近付きになっておくのが吉だからね。


ついでに畑に寄ってお魚料理に合いそうな野菜を見繕って、樹の妖精(ドリュアス)に収穫して貰った。

昨日大根使っちゃったしそれも追加で。

商人のオジサン(トルエバさん)にはバレなきゃ良いんだよ、バレなきゃ。


だって昨日のカジキもどき、気が付いたら酒盛り組が全部食べちゃってしまったんだもん。

どうせまた追加で海の魔物を狩るのなら、今度はしっかり計画的に料理を作りたい。


パッと移動出来るのって超楽チン。

荷物は四次元ポシェットに入れられるし。

クロノス様々だわ。

感謝してやろう。


まぁ、パッと移動は、座標をスライムに設定すると、お食事中だと悲惨なことになるってことが分かった。

なので次からは自室に目印を置いておこう。


朝から血みどろブシャー! はシンドいって。

ジャビルとトニさんが働き者過ぎるのがいかんのだ。


早起きして頑張ってる良い子にはご褒美をあげようと言って、昨晩町長(エルネス)さんの奥さんとその子供に贈ったものと似たような装飾具を渡してきた。


「指も腕もそんな小さいもん付けたら解体してる最中に取れて無くすか、すぐ壊れてしまう」と言われたので、アンクレットにしておいた。

ジャビルのは水の精霊石なので、精霊術の出力結果が上がったり、消費霊力が少なくなったり、何か気付いたことがあったら今度教えてね、とお願いしておいた。

あまり期待はしていない。


だってコイツ、自分の興味を持ったことしか思考しないし。

イヤ、それは誰でもか。

協調性の無さがソレに輪をかけて問題点として浮き彫りになっているだけで。


それこそ、パッと移動は結構霊力を消耗する。

俺が「あ、減ったな」と認識できるくらいに残量が減るのが分かる。

時や光の精霊石もあるのなら、実験してみたいな。


戻る前に最後にスライムを思う存分ぷにぷにしておいた。

精霊石の効果を実験するためにも、このぷにぷにを堪能する機会を増やさなきゃね〜。

移動距離で消耗する霊力の量が変化するのかとかさ。

データはいくらあっても良いんだし。


あ〜、癒される。



地球では拳銃のような誰でも扱える殺傷納涼の高い武器で武装したり、安全を守ることを専門とする人達が巡回したりすることで、安心の欲求を満たしてきた。


この世界では、暴漢の類は町の外に追い出してしまうので、町中で会うことは非常に珍しい。

危害を加えてくるのはいつだって魔物だ。


なので魔物を脅威で無くすか、その脅威に襲われる可能性を低くするか。

最低どちらか、出来れば両方成し遂げられると良いんだよね。


やり過ぎると、人間の敵はニンゲンになりかねないので、程々にするのが良いのだろう。

けど、さすがにそれはやってみないと分からないからねぇ。


少しずつやっていくしかあるまい。


俺の寿命が尽きたとしても、カノンが引き継いでくれるって信じてる!


イヤ、別に押し付けるつもりはないけどね。

彼も方法が手探りなだけで、世界を良くしたいとは思っているのだ。

ある程度、俺が生きている間に効果を立証出来れば死んだ後もやってくれるかな、と思っただけ。


それとも、俺も地球からの移民組と一緒で、この世界の人よりも長寿なのかな。

色々したいことや、やってみたいことが次々出てくるから、時間ならいくらあっても嬉しいもんだ。


さすがにその答えは何年か経過しないと分からないし、普通の寿命だった時のために、人に押し付けられることは丸投げしてしまおう。


戻ったら、朝ごはんを食べる前に精霊石の実験第一弾である、魔物避け効果があるのか貯めさせないとね。

アルベルトに。


俺は離れたところで魔物釣りしてるよ。

襲われてしまった時は自分で対処してくれ。




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