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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神様、貝を焼く(現実)

更新遅くなりました。

ごめんなさい。




精霊の皆から「コレやって!」と直接お願いされたことは、肉体作りくらいしか思い浮かばない。

逆に率先して「コレやろうか?」と提案を受けたことは、実はない。


テルモが食事を作ってくれていたのも、なんというか、当たり前みたいな流れだったし。


肉体を得たことにより、霊力を大量消費し意識して物質に干渉しようとしなくても、物に触れるし味わうことだって出来るようになった。

そんな状態が嬉しかったのもあるだろうし、施設では日常的に食事を作っていたし。


誰が起きるよりも早く自然と台所に立っていた。

カノンが畏れ多いと言って後々当番制になったが。


しゃしゃり出て来るようなマネは、誰一人としてしてこない。


俺が記憶していない、認識していないもので言うなら、浜辺に気を失って打ち上げられていた俺をルーメンが守っていたり、ウェントスが屋根上で寝落ちした俺をベッドまで運んでくれたりはあったが。

王都(ディルクルム)近くで魔物の大群を相手にした時にサポートをしてくれたこともあったな。


だがそれは、「一人だとちょっと大変だし、どうにかなんないかな〜」と思った、俺の心の声を拾い上げたテルモに「どうする?」と聞かれて「適当に皆でなんとかして」と返事をした上でのサポート入りだったしな。

あそこで「皆」と返さなければ、アクアたちの補助はなかっただろう。


皆、俺が何をしているのか、どこからともなく観察していたにも関わらず、心の中でグチるまでは一切声を掛けてはこなかった。


基本的にはコチラから声を掛けない限り、何かをしようとはしない。

神様みたいなものだし、なにか制約でもあるのかな。



今もそう。

拾った精霊石を鑑定眼で見て思いついたこと。

ソレが可能かどうか尋ねたら答えを返してくれるのに、決して自分から出しゃばるようなことはしない。


この世界の常識に疎いので、出来れば気付いたことをアドバイスしてくれたり、こういうことも出来るよと教えてくれたりしてくれると嬉しいんだけどね。

さすがにソレは、甘えすぎか。



精霊の力が宿っている宝石や、精霊の生命が尽きた時にそのエネルギーが凝縮されたものを精霊石と言うそうだ。

地球の宝石の出来方とは違うらしい。


ただの宝石はこの世界には存在せず、どのような無機物結晶であろうと、少なからず精霊の力が宿っている。

中身を使い切った精霊石は、霊玉とは違い砕け散る。


霊玉は中の霊力を使い切っても、また充電するみたいに力を込めれば繰り返し使えるもんね。


水の精霊石が砕けなくなるまで水を注いだカップに放り込むと、聖水が出来るそうだよ。

アクアマリンでもトルコ石でも、水色の宝石は全部水の精霊石とみなされる。

実際、宿っているのも水の精霊の力だ。


外見の差は微精霊の生命が尽きた時に作られたものか、高度の精霊術を使った残滓が結晶化したものか。

作られる過程の差によるものらしい。

砂粒大のものから、浜辺で拾ったような大きさのものまでその大きさはだいぶ違う。


霊玉のように大きければ大きいほどスゴい、というものではない。

宿っている精霊の力はピンキリだ。


そして俺が拾った翡翠や琥珀は大きさはそこそこ、内包されている霊力は結構多い。


精霊術の属性は火→地→風→水→火の関係だったか。

普段は属性を持たせず霊力をそのままブッ放すか、高出力の属性術をその時の気分で使っているので気にしないが。


海辺の魔物は水の属性を持っていることが多い。

実際、斬るのに難儀した爆弾二枚貝の殻も、風の精霊術の槍ならいとも簡単に穿いた。


属性が関わる耐性――防御力の概念って地球にはなかったものだから、未だに目の当たりにすると驚いてしまう。


霊力が込められた水は聖水になる。

その聖水は瘴気を祓い、地面に吸収させれば魔物を寄せ付けない聖域を作り出す。


ならば聖水を作り出すことが出来る精霊石を使えば、聖域を作り出すことは可能なのではないだろうか。


答えはYESだそうだ。

精霊石の中に宿っている精霊の力が尽きるまでの期間限定だが。


精霊石は精霊の力が宿っているものなので、壊れる前に人間が霊力を注ごうとしても、残念ながら霊玉のように充電は出来ない。

ヘタな干渉をすれば脆く崩れ去ってしまう。


あくまで精霊石は使い切りのものだ。


(オルトゥス)に設置した街灯みたいに、大気中の霊力を使って明かりを灯すような機構を真似て浄化する装置を作っても、この辺でとれる精霊石は充電が出来ないので精霊石が霧散したらそれ以降は使えない。

使い回しできる機構を作って、砕けたらその都度精霊石をはめ込むようなものを作らなければならない。


手間は掛かるし、詰め替えをしなければならない不便さを伴うが、霊力が使えない人達には、それだけでも充分便利な道具になるだろう。

精霊石さえ手に入れられるなら。


それが難しい現状、どうすればエルモ町の生活を向上させることができるのか。



深井戸にしたことで生活用水は今より高水質になる。

水質改善で病気のリスクは格段に減るだろう。


この世界の回復薬は万能薬だ。

傷が塞がれば病気も治る。


だが、その回復薬を作るノウハウはこの町にはない。

万人が使えれば便利だろうにバラ撒かないのは、カノンなりの理由はあるのだろう。

なのでソレを伝授するつもりは俺にはない。


回復薬には効果は劣るが、聖水もなかなかに身体に良い。

疲労回復効果があるということは、代謝を底上げしてくれるのだろう。

結果傷も早く塞がる。


聖水は魔物の忌避効果があるので町の周辺に撒けば安心して暮らせるし、精霊石を取りに海へ足を伸ばすことも出来るだろう。


精霊石さえあれば。



思考が堂々巡りになってしまうので、そのための最初の一手を俺が担おうかな、と思う。


精霊石に紋様を刻むと、効率良く込められた力を使うことが出来るそうだ。

カノンの家にあった紋様具は、霊力を注がなければ水が出たり火がついたりしなかった。


事故防止のためにも必要な安全装置と思えばそんなもんだが、霊力を扱えない人には当然使えない。

使う者を選ぶ道具だった。


だが、精霊石に直接紋様を刻むと、刻み込んだ途端にその効果が得られてしまう。

水が出る紋様を刻めばエネルギーが無くなるまで水が出続ける。

風を起こす紋様を刻めば、そよ風が出続けるか一瞬で暴風を巻き起こすか。


まぁ、ろくな結果にはならなさそうだ。


なので、紋様を刻みこんだ道具を作り、使う時だけ精霊石をはめ込む形にすれば良いかなと。

街灯のような機構の道具作ろうって話にようやく戻れた。


緊急時に手元が覚束無い中でもカチッと簡単にセット出来るようにしないとね。

絶縁体みたいなものを噛ませて、使う時はソレを引き抜くカタチにした方が良いか。


その方が使う時の動作が少なくて済む。

だが電気と違うのだし、ゴムやプラスチックシートでは代用は効かないか。


霊力を通さない、封じ込めるような魔物素材がないかカノンに聞いてみたら、竜の鱗がそれに該当すると言われた。

俺が仕留めた竜の幼体だが、骨は王都(ディルクルム)から(オルトゥス)までの街道に使っちゃったし、肉は食った。

鱗はどうしたかと言えば……そう言えば、カノンが売れるからと言って回収していたな。

全部売ってしまったのだろうか。


ジーッと見上げれば、懐から一枚取り出したものを譲ってくれた。

んじゃ、コレ使って魔物避けの道具作って、明日出発前にアルベルトに実験させれば良いね。


だってアイツついて来たい言うてた割りに、馬車の中で寝てるかダラダラしてるかのどっちかなんだもん。

魔物が出ないなら出ないなりに何か有意義な時間を過ごせよと言いたい。


俺は明日も引き続き街道を作るので忙しいし、カノンは商人のオジサン(トルエバさん)と交代でカーターを務めねばならない。

その間暇を持て余すなら、働ける時に働け。



町長(エルネス)さんのお宅に招かれた俺は、奥さんに許可を貰って台所を貸してもらった。

最悪外でバーベキューのつもりだったが、快諾してもらえて良かった。


カノンの家や(オルトゥス)の自宅と違いコンロではなくかまどが台所に設置されている。

かまどでの煮炊きは慣れていないが、生でも食べられるものだし、焦がさないように注意すれば問題ないだろう。


さすがに、魚も貝も最初から生食するのは勇気がいる。

火を通しても美味しいと言うのだから、段階を踏んでお刺身体験をしようと思ったのだ。


獣肉ですら、まだ半生までしか経験したことがない現状、初めて食べる魚を生で食べるのは、気持ち的にハードルが高い。


羊や馬は、お魚と同様生でも食べられるって言うけれど。

先にそちらで生食を試しておいた方が良いかな。

獣肉はこの世界に来てからよく食べるし、食べなれている。

鎧牛の肉で作ったローストビーフは、完全に火を通した肉とはまた違った食感と味で美味しかったし。


生は生で違った美味しさがあるのだろうな、とは思う。

思うが……まだ、勇気が出ない。


生肉食べることを想像すると、魔物が獲物食べてる所が思い浮かんでしまうんだよ。

俺、あんな野蛮なことすんの?

知恵ある動物なのに??

って考えちゃう。


先入観ってなかなか消えないよね。

美味しいと知識では知っていても、実体験をこの年齢までしていないとさ、受け入れ難いというか。


ちなみに最終目標はTKGだ。

白米、納豆、味噌汁、卵に海苔。

ここに焼き魚やお新香もつくんでしょ。

日本の国民食ってすごい贅沢だよね。

是非とも食べてみたい。

……という希望だけはある。



扇型の大きなシャコガイのような見た目をした爆殻(クラムボム)は、浜辺では元気に飛び跳ね海水をビームのように発射し空を泳いでいた。

すごく身軽そうな動きだったが、絶命したあとは見た目通りの重さで砂浜を抉っていた。


イヤ、もうホント重い。

何kgあるんだろうね。


この重量をかまどに乗せたら、たぶん調理台が割れる。

奥さんに手伝ってもらって大きな貝殻のわりに小さい中身をヘラで削り取る。


うん、見た目がグロい。

貝って女性器に例えられることが多いだけあって、なんか、獣を解体する時とは違うベクトルでグロテスクさを感じるな。


バターがあればサッと焼いてお醤油かけて食べたかったのだけど、残念ながら無いそうだ。


ウロと中腸腺の部分は毒があるので傷つけないように取り除く。

拾ってきた可食と鑑定眼に書いてあった海藻と爆殻(クラムボム)の肝、あと干しキノコで汁物を作る。

味見をしてみたら、調味料を入れなくても充分ダシの旨味が凝縮されているのでコレはヘタに手を加えない方が良さげだ。


奥さんにも味を見てもらったら、麦飯の味付けに使いたいと言われた。

具なしの炊き込みご飯みたいなものだろうか。

それだと物悲しいので、カノンに番紅花(サフラン)を貰い、長細い貝柱と鶏肉も一緒に炊きこんでもらった。


なんちゃってパエリアだね。

実際のパエリア食べたことがないからコレが正解の味かも分からないけど。

まぁ、マズくなることはないだろう。


カノンには、また薬の材料を料理に使いやがってと文句を言われたが。

俺はウコンでも良かったんだけど。

どっちみち生薬だと言われるか。



外套膜は生食が美味と書いてはあるが、見た目的にも気持ち的にも無理なのでサッと火を通して酒と醤油で軽く味付けた。

ちょっとしかないので奥さんと料理をしながらこっそり食べる。


つまみ食いは料理をする人の特権だよね。

コリコリっとした独特の食感で、噛めば噛むほど旨味と塩気が出てきて美味しい。

……だが、なかなか噛み切ることができない。

もうすこし小さく切るべきだったか。


噛むほど美味しいとか噛み切れないとか、ホルモンと近い気もするけど、アッチは独特の獣臭さがある。

コッチはこれが磯臭い、というものなのだろう。

海から運ばれてくるあの匂いが凝縮されて口の中に放り込まれたような感覚に陥る。


汁物はふんわり香る程度だったけど、外套膜はダイレクトに主張してくる。

コレは好き嫌いあるだろうな。


俺は好きだけど。

奥さんは――も、気に入ったのだろう。

料理にも使っていた酒瓶を取り出して飲み、二つ目を口の中に放り込んでいた。



条鰭種(カジキ)はステーキにする。

デッカイ切り身を人数分に切って、軽く表面に小麦粉をはたく。

油はないと言われたが、獣の脂で焼いたらせっかくのお魚の風味が消されてしまう。


携帯食のナッツから油を取り、臭み消し用のニンニクを軽く揚げ焼きして、両面を軽く焼いた。

とても良い匂いがする。

ヨダレ出てきそう。


(オルトゥス)から持ってきた大根をすりおろして醤油で味付けし、フライパンの中に残った魚の油を使ったソースを作り、ステーキの上に回しかける。

サクッとカリッとした部分に大根おろしソースがジュワジュワと染み込んで良い香りがする。


ステーキを焼いているあいだに、別のかまどで奥さんが野菜炒めを作ってくれたので栄養バランスもバッチリだ。


タコがいれば、(オルトゥス)から持ってきたキュウリと海藻で酢の物作れたのに。

この世界にもいるのかな、デビルフィッシュ。


すんごく美味しいって話だから、出会う機会が巡ってくる前に、海産物を生で食べられるようにしておかなくちゃね。

今回の条鰭種(カジキ)が美味しかったら、その勇気メーターが少しは加算されると思うんだ!




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