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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを堪能する  作者: 可燃物


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神さま、路を通す。




あぁる〜晴れた〜 夜〜明ぁけ方〜

ま〜ち〜へ〜と続〜く道〜

荷ぃ馬ァ車〜が ゴ〜ト〜ゴぉト〜

い〜み〜ん〜 を 乗せ〜てゆく〜


有名なイディッシュ語の替え歌を歌っても、原曲を知らない人からしてみれば何がなにやら分からないだろう。

何だか暗い雰囲気の曲な上、どこからともなく聞こえてくる現状に、不穏な空気を感じているかもしれない。


精霊たちからは不謹慎だから辞めなさいと怒られた。

ヒマだから歌っていたのだが、注意されてしまったなら辞めねばなるまい。


元が荷馬車に詰んだ子牛を売りに行く歌だからいけないのか。

でも童謡や唱歌の類って、大抵暗い雰囲気だし別の歌にしろと言われても、なかなか困るよね。


……ひ〜ま〜。



先頭にトニさんとその護衛。

その後に商人のオジサン(トルエバさん)とカノンが御者台に座った荷馬車。

荷馬車の左右と後続にも護衛の冒険者がついている。


そして上空には、空飛ぶ石板に山盛りに積まれた皮と毛に埋もれた俺とウィーレさん。

その横を並走する精霊一行と、ソレに守られて飛んでいるウィースさん母子。


空飛ぶ組は漏れなく認識阻害を掛けている。

見つかったら面倒臭いし。


カノンたちからはコチラの姿は見えないが、俺からはバッチリつむじまで見えている。

余りにものんびり進むので、いい加減この皮が邪魔に思えてきた。

やっぱり臭うし。


ウィーレさんも本来馬車に乗るべきなんだけどね。

気絶しちゃっていたから、馬車に乗せられなかったんだよ。


移動時横になれる人数には限りがあり、馬車の構造上横になる人は先に乗り込んでいた。

一番最後に到着したウィーレさんは、座るか立つかしなければならなかったのだ。

なのにそれが不可能な状況だったので、気絶させた俺が責任もって運ぶことと相成ったわけだ。


ちゃんと空気抵抗を相殺しながら走ったのに。

まさか気絶するとは思わないじゃん。

そんなGかかったの?

ただ走っただけなのに。


この世界の一般人は、酷く脆いのだなと思う。

まぁ、細い体躯を見れば仕方ないのかとも同時に思うが。

気を失うほどの衝撃が加わったのだから、骨が無事なのか不安になる。


鑑定眼で見る限りでは、体調不良の類は慢性的な栄養失調と睡眠不足、あと骨粗鬆症予備軍位なものだが。

寝不足の理由が育児によるものだとしたら、ソコの解消はしばらく難しいだろう。

ソコは頑張れ、お母さん! ダネ。

それ以外は(オルトゥス)に行けば改善しそうだ。


あぁ、この気絶状態はもしかしたら睡眠負債の積み重ねによるものかもしれない。

ならば今はそっと寝かせて置くべきだろう。

羊毛を被せておけば、良い布団代わりになりそうだ。



しばらく飛んで行くと“喰魔の森“にぶつかった。

地上組は森の手前で立ち止まる。


俺は石板を浮かせ続けるのをウェントスに任せて、この後の話し合いをするために飛び降りた。

認識阻害の範囲が思いのほか広い範囲だったようで、突然現れたように見えた俺に徒歩組が滅茶苦茶ビビっている。

上飛んで着いていくよと、話はしてあったんだけどね。


着地地点が近すぎたようだ。

風の精霊術で足に衝撃が来ないように相殺したので、若干名、風で飛ばされてしまった。

何が起きたのか分からず、尻もちをついたまま目を白黒させている。


謝罪の言葉を口にしながら、詫びも兼ねて聖水の瓶を渡した。

ココで休憩を取ることになっているので、水分補給をしておいた方が良い。


あの程度の風で飛ばされると言うことは、歩き続けて疲れているからなのかもしれないし。

聖水は疲れた身体を癒してくれる効果があるからね。


……足腰の鍛え方が足りなくて踏ん張りが利かずに飛ばされたのなら、この森に残っている魔物が飛び出してきた時、倒せるのか不安になる。

護衛の役割、ちゃんと果たしてね。



エコノミークラス症候群予防のために、馬車に乗っている人達も外に出て休憩を取るように伝えた。

商人のオジサン(トルエバさん)も、座ってばかりでは痔になってしまうと脅して馬車から降りさせた。


カノンも座るし、乗り心地が良くなるように板張りだった御者台をソファ仕様にしたりクッションを置いたり改造はした。

だが、やはり座りっぱなしでは身体に悪い。

心疾患や脂質異常症等のリスクが跳ね上がる。


この世界の人は移動手段に電車や車があるわけでも、エレベーターやエスカレーターの類があるわけでもない。

自然と運動量はかなり多くなるだろう。


だが、連続して座っている時間が長くなると、どれだけ運動をしていようが病気のリスクはついてまわる。

下肢の筋肉を動かさない時間が長く続くのが良くないのだから。


それを考えると直立不動を維持し続けるのも良くないよね。

門番さんとか大変だ。



そういうリスクを説明しても理解納得をなかなかして貰えないのは分かっている。

カノンにどれ位の濃度に薄めた回復薬を飲ませるべきかを聞き、馬車から少し離れた位置でそれを配る準備をする。


大きな水風船を出し、そこに回復薬を混ぜるパフォーマンスをしたら、好奇心旺盛な子供たちはすぐに駆け寄ってきた。

その子供たちに他の人たちも呼んできて、とお願いすれば、馬車の中でまごまごしていた人たちを引っ張って連れてきてくれた。

こういう時は子どもを味方にするととても楽だね。


朝食を食べずに移動してきているので、休憩ついでに軽く食事もする。

冒険者はこの後も歩き続けなければならないし、馬車に乗っている人たちは消化器官が弱っている。

必然的にスープになるが、まぁ、手軽だし良いだろう。


昨日買ったシュケイと乾燥させた野菜を、形が無くなるまで煮込んで味噌で味をつけた味噌汁だ。

味噌は良いぞ。

塩分の補給にもなるし、免疫力を高めたり疲労回復の効果もある。

旅の必需品と言っても良いと思う。

発酵食品だから腐りにくいし。


NINJAが兵糧丸の味付けを味噌にしたのは理にかなっているよね。

さすがNINJA。


あとは豆乳も入れてあるから、味噌の風味が苦手でも食べやすかろう。

美味しいと言ってオカワリを子供からせがまれるが、コレからまた馬車で長時間揺られるのだ。

お腹一杯になって馬車の中で吐かれても困る。


幼子を説得させられる自信が無かったので、親御さんに訳を話して引き取ってもらった。

こういう時は親の方を味方に付けるが吉だ。

泣き喚く子供の世話なんて俺には出来ない。



時短のため、周囲に防護壁を展開し食事とトイレを一気に済ませてもらう。

森の、ほんの入口ならば目に付かないし魔物もいない。


ここから先は立ち入り禁止の目印に赤い塗料を木に塗って、その手前に穴を掘って柔らかい土を山にしておいた。

スコップ付きなので、穴の中に排泄したら自分で埋めてくれ。


街道を通す時は、トイレも設置するべきかな。

(オルトゥス)まで馬車で半日以上かかる予定だし。

サービスエリアみたいな食事所までは、さすがに作らなくても良いだろうが、道を汚されるのは困る。


それ以上に街道内は安全に留意するが、森の中は魔物の生息域のままだ。

ちょっとトイレ、と中にヒョイと入られて惨殺死体が出来上がったとなると大問題である。

(オルトゥス)来るべき財布がひとつ減ってしまうではないか……!


……と言うのはさすがに冗談だが、問題なのには変わりない。


地図を作り、ダンジョンへの道も含めどう通すかの話し合いだ。

道幅に野営地の設置場所。

森は丘程度の勾配があるが、(オルトゥス)に向かって直線で通して坂道にするか、多少弓なりの道にしてなるべく傾斜を避けるかも決めなければ。


単純に短距離の方が良いんじゃないかと冒険者が言うので、坂道にするなら道に滑り止めの溝が必要になると言うと、馬車の車輪が傷んでしまうと商人のオジサン(トルエバさん)からは苦言が漏らされた。

坂道って意外と体力削られるし、多少遠回りになったとしても、今のルートよりはだいぶ短縮されるのだ。

道は物流を担う人の意見を優先させるべきだろう。


その代わり、野営地の要望は冒険者の意見を優先的に取り入れる。

馬車が快適に王都(ディルクルム)(オルトゥス)を行き来するためには、冒険者が護衛任務を放棄することなく、責任を持って遂行してもらわなければならない。

快適な護衛ライフを送るために必要なものはなるべく用意したい。


そうじゃないと、冒険者たちが増えないじゃん。

分かりやすい利は多ければ多いほど良い。


護衛の依頼ばかり増えて受注人がいなければ、それは冒険者ギルドへの不平不満に繋がり評価が下がる。

評判が悪くなれば、今度は受注人が確保出来た時に依頼が少なくて冒険者たちの暴動が起きてしまう。

それは避けなければならない。


トイレの設置箇所や水場もあると嬉しいとか、そこまでする必要はあるのか? と疑問に思う物でも、取り入れられる要望は一通り聞いた。

野宿する時に、持ち運ぶ食料を減らすために、食べられる野草が生えてると道中楽だと言われたので、畑まで立派なものは用意しなくても、何かしら用意すべきかもなとは思った。


意外や、トイレの設置箇所は野営地のみで大丈夫だそうだ。

お腹下してる時のことを考えれば、二、三時間経過地点ごとに設置すれば良いんじゃないのかと思ったのだけど。


だが、そんな体調の時に町から町への移動なんて自殺行為だからしないと言われ、なるほど、納得した。

どうしても町に留まれない理由があるなら、腹痛も含めた体調不良は、大抵回復薬でどうにかなる。

先を急ぐ時は回復薬を使うから、(オルトゥス)でも質の良い回復薬を取り扱う店があると嬉しいと言われた。


それは、もう。

カノン直伝の回復薬を販売する予定なのでそこの所はバッチリだ。

ご安心召されよ。


街道の守りはトウガラシ(カプシカム)の他に何か良いかと相談したら、魔物は自分よりも格が上すぎる魔物の生息域には近付かない習性があるから、ここら辺にはどんな魔物が住んでいるのか。

またそれよりも強い魔物の臭い袋を持っていないか“賢者“に聞いてみると良いと言われた。


臭い袋とは、つまり臭腺。

ということは肛門腺。

分かってはいるが、そんなものを同行者が持ち歩いていたら嫌だなぁ。


「かくかくしかじかというわけなのだけど」


「……それで通じると思っているのなら凄いな」


風の精霊の力借りて耳をそばだてるのが通常仕様になっているのだから、通じるでしょ。

そう返したら言葉を濁しながら、前に仕留めた竜の骨の鱗でも骨でもなんでも良いし撒いておけと言われた。

村に置きっぱなしになっているヤツだね。


それじゃあ道中視覚的に楽しませる目的も兼ねて、あとで頭とか持ってくるか。

とりあえず、今はトウガラシ(カプシカム)を植えなかったとしても、精霊たちの残滓で充分すぎるくらいの忌避効果が得られると言われた。


へぇ、皆ってヒトデと同じなのか。

感心していたら、不敬が過ぎるとヒトデ嫌いなカノンから頭部を思いっ切り締め付けられた。

過去一の痛さである。



せっかく俺が、俺の作った街の街興しのために改造したダンジョンである。

王都側の森の出入口からも通さないのかと聞かれましたけどね。

王都側から直接向かってダンジョンで荒稼ぎしたら、そのままササッと王都にトンボ帰りなんてさせてたまるか。


そう主張しカノンの意見はベッキベキに叩き折らせてもらい、ダンジョンへ続く道は、(オルトゥス)側からと、街道の途中から分岐するように通す二本を作ることになった。


話し合いも終わり、皆充分に食事もとり、ストレッチをし、トイレにも行き。

休憩はバッチリ取れたと確認した。

点呼はしなくて良いのだろうか。


まぁ、大丈夫だと言うのだ。

早速行動に移そう。



上から見た方が分かりやすいから。

そう言って石板へと戻った。


伐採した樹木は、時の精霊術を使って創った収納バッグに自動で入るように設定する。


ふっふっふっ。

創っちゃったのだよ、ポケットじゃないけど四次元収納!


カバンのフタを境に、クロノスが創り出した、時空も空間も全く別の次元に繋がるようにしてあるので、収納出来る量はほぼ無限。

入れるのは俺の意思だけで出来るが、取り出す時はクロノスの権能にアクセスして「コレ出して〜」とお願いをしなければならない。

少々手間はかかるが、ヘタに俺が勝手に出そうとすると、次元を繋ぐのが不慣れな現状では、フタを開けた瞬間、カバンが超吸引の掃除機状態になってしまう。


簡易ブラックホールみたいなものだね。

厄介なこと、この上ない。


なのでカバンを開けただけでは物が収納してある空間には繋がないようにしてある。

事故防止には必要だが、何が入っているか覚えていないと申請が出来ず取り出せない。


「知識」に書き込みのアクセスも出来ればメモ帳代わりに出来るのに。

どこにあるか分からないから、情報開示請求しか出来ないのがもどかしい。

旅の道中、見付けられると良いな。



(オルトゥス)を創った時と同じ。

街道を通す設計図を頭の中で作成して、具現化するだけ。


時の精霊の力で街道を通すべき箇所の樹木は全て収納。

火の精霊の力で邪魔な根や雑草の類は焼却。

それと時間差で、延焼しないよう水の精霊の力を借りて鎮火。

風の精霊の力で地表を均し、平らにした先から地の精霊の力で道を整備していく。

作られた石畳路の表面を「創造」で加工し、整備不要の頑丈かつ柔軟性も兼ね備えた素材に変える。


大量に放出した霊力と「スキル」を使う時のエネルギーが、稲光のように弾けながら、花火のように火花を散らしながら、山を切り開いていく。

見た目がとっても派手だ。


他の同行者に認識されていなかった影の薄い冒険者の一人が、まだ用を足している最中だったようだ。

その光の奔流に触れそうになり、尻丸出しの状態で土の上に尻もちを付いていた。


あらま、大変。

立ち上がった瞬間を見計らい、水を出して洗い流してやった。

初めて経験するウォッシュレットに冒険者は左右を見渡すが、残念、俺は上です。


ケラケラ内心笑いながら、通した街道の左右二箇所に広場を造る。

野宿をする推奨スペースだ。

王都と街からそれぞれ五時間ほど進んだ距離の所に設置した。


地下水を汲み上げるポンプを作り、その機構の中に汲み上げた水を浄化する霊玉を仕込む。

その周辺にはニラやシソのような野生化しても勝手に増えていってくれる、食べても安全な野菜を植える。

魔物を狩りさえすれば、香草を使って腹を満たせる。

……獲物がとれなかった人用に、イモも植えるべきかな。


(オルトゥス)側のダンジョンへの分かれ道になっている道にはガゼボも建てた。

休息所として使ったり、ダンジョン内部へ行く前の作戦会議場として使うも良し。

ココには(オルトゥス)に瘴気の漂うダンジョンの戦利品を持ち込まれないように水場は多く設けておこう。


時間にして五分弱。

規模の割には結構早く作れたんじゃない?


「カノン出来たよ〜

 先進もうぜ〜」


どうせ聞き耳を立てているんだし、と思ってどこへ向かって言うでもなく、少し大きめの独り言を言えば、地上でカノンが頭を抱えていた。


何を今更そんな大袈裟なリアクションを取っているのかと疑問に思っていると、ウェントスが地上の会話を運んでくれた。


どうやら預言者が聖書の中で海を割ってみせたように、“賢者様“が凶悪な魔物がはびこる森を拓いたのだと沸いているようだ。

一気に工事を終わらせるとはカノンも思っていなかったようで、目の前の光景に呆気にとられていたら、否定するタイミングを逸してしまい、頭を抱えている真っ最中らしい。


伝説、また増えちゃったのか〜。

大変だネ〜。

二つ名も増えちゃうかね。

モーセって今度から呼んでやろうか。




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