神さま、新技を取得する。
祝☆100話達成です!
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蝶や蛾のような外見をしているパピリカ(仮)の戦い方は基本、ヒットアンドアウェイ。
景色に溶け込み獲物が近くに来るのを待つ。
攻撃範囲内に来たら風属性の攻撃を無数四方に放ってくる。
このダンジョンに限っての話だが、周囲の水晶に反射されたその攻撃は、どこから飛んでくるのかが分からない。
その攻撃をさばいている間に、パピリカは逃亡。
もしくはまた景色に擬態してしまうので、俺たちにはどこにいるのかも分からなくなる。
獲物が攻撃により死んでいるのを、どうやってなのかは分からないが確認したら、どこからともなく戻ってきてその屍を喰らう。
花の蜜を吸う姿は優美だが、死骸を食むその姿から、別名で屍食蝶と呼ばれている。
視界が悪いため、地下三階のように三人背中合わせでジリジリ移動することも出来ない。
魔物の数を減らすことも容易ではない。
しかもその魔物があとどれだけいるのかも分からない状況は、かなりストレスが掛る。
このダンジョンの奥にいるのがクロノスだとしたら、図星をつかれた腹いせにこんな七面倒臭いフロアを用意したのだろうか。
魔物なのだから地球の生物と比較しても意味はないのかもしれない。
だが、似た形なのだから、似た進化をしていてもおかしくない。
そう仮定するならば、蝶の視細胞は一五〇Hzまで処理することが出来るとされている。
その処理速度を俺たち人間が上回ることは出来ない。
動体視力は鍛えることは出来るが、フレームレートの変化は認識できても、人間にはそれが何回明滅したのかは分からない。
なにせ、十六Hzあれば動画だと人間の脳ミソは認識してしまうくらいなのだから。
ならば向こうがコチラに気付いた時点で、先手を取ることは出来なくなる。
蝶なら偽瞳孔がある可能性がある。
その小さな点を向こうがコチラを認識する前に見つけられれば、先手を取ることも可能だろうか。
だが、ヤツらは人以上に視力も良い。
視力というか、色の見分けが人間よりもつく。
なにせ紫外線まで見えてしまうのだから。
そのおかげで、この厄介な通路にぶつかることなく移動出来るのかもしれない。
触れれば温度で水晶かガラスかくらいは人間でも分かるけれど。
見ただけではその道のプロでもない限り流石に分からない。
あ、あ〜……ココの階層の意図がわかった。
俺の能力向上か。
鑑定眼で見れば、確かに鏡か、ガラスか、水晶か。
触れずとも分かる。
今現在、鑑定眼を発動すると、意識を向けた物の鑑定結果だけを表示するようになっている。
それ以上になると、情報過多により脳ミソが沸騰しそうになるから。
だが、その範囲を広げることが出来れば。
説明文は省略して、鉱物か否かだけの表示にとりあえずしよう。
鉱物じゃないなら魔物である。
そう判断しても良いだろう。
その脳が認識する情報を、順に増やしていって慣れれば良い。
カノンとアルベルトに少し待って貰うようお願いをして、杖を具現化させる。
鑑定眼はウソの結果を示さない。
パピリカと水晶を誤射することは有り得ない。
起こり得るとしたら、俺が狙って打ち出した攻撃をパピリカが避けて、その先が精霊術を反射する水晶だった、というパターン。
水晶は鏡と違い、全反射ではなく乱反射を起こす。
反射された攻撃は威力こそ落ちるが、どこに向かって襲ってくるかが分からない。
全方向に防御結界を展開し続けるのはかなり大変になるが……
「カノン、任せた」
「了解」
「俺は? 俺は?」とまとわりついてきたウルサイのには「俺が気絶したら殴ってでも起こせ」と言っておく。
ホント、脳の処理がパンクしたら倒れるし。
そうならないように頑張りはするけどね。
非難の声は聞こえないフリして無視する。
目をつぶり呼吸を整え、鑑定眼の設定を結果表示視界全方向に切替。
表示内容は――電気電動率の違いだとか、無機物か有機物かとかで魔物か否か判断しようと思ったけど……辞めた。
判別方法は、鑑定眼に任せる。
だって俺が指示なんてしなくても、勝手に判断してくれるんだし。
一番最初、何も設定していなかった時の情報量はエグかった。
瞬時にそれだけの情報を開示してくれるだけの能力があるのだ。
頼れば良い。
目を開くと鑑定結果の情報の嵐。
視線を動かせばその分結果の表示がブレて辛くなるので定めた目標から視線を迷わせず、一点に集中する。
一度表示させれば、どの情報を取捨選択すべきか分かる。
反射する水晶と、パピリカ含め魔物は全部表示。
パピリカだけだと油断して表示範囲をミスれば、それ以外の魔物がいた時に見落としてしまう。
水晶と魔物で表示色を変化。
赤目掛けて霊力放出。
捕捉……撃破。
追尾…………撃破。
なんか、俺、自分が追尾方式ミサイルの砲台にでもなった気分だ。
でも、おかげで魔物か否かの区別がなんとなくつくようになった。
情報の処理はまだ少し慣れるのに時間が必要だけど。
あ”〜……景色も相まって目がチカチカする。
「終わったか?」
「あ、もうちょい待って」
鑑定眼と気配察知、あと空間把握の合わせ技が出来ないか試してみたいんだよね。
鑑定眼はあくまで視野におさめた物の情報を開示する機能だけど、さっき逃げたパピリカの気配を追った時に、そのパピリカを追跡したのは当然、俺の目ではない。
眼球がブーンと羽根つけて飛んだら怖いだろ。
気配察知と空間把握、両方の機能を同時に使うことが出来るのは分かっていたが、無意識にパピリカを逃してたまるかと思ったら、視界が……こう、パッと移動したというか。
目を開けていたら、実際目の前にある景色と魔物を追っている精霊術付近の景色がダブって見えた。
ドローンで撮影された映像を見ている感覚に近いかな。
目を開けたまますると、重なった景色で悪酔いして脳ミソ爆発しそうだ。
かといって目を閉じただけでは、俯瞰して見下ろし移動し続ける景色に足元が覚束なくなって転んでしまいそうだし。
その場に腰を下ろしたら、アルベルトに心配そうな顔をしてのぞき込まれた。
顔色が悪いと言われたが、多分一気に色んな情報を詰め込んだ上に処理までしてたから、エネルギー不足だ。
終わったらなんか食おう。
休憩を入れてからの方が良いのでは、と言われたが、あの感覚を忘れないうちにモノにしておきたい。
空間把握のついでに、魔物がどれだけいるか分かる上にワナの有無とかも分かるなんて、滅茶苦茶便利だし。
先手を打つのに、また逃げるのにこれ以上の情報はない。
コレを身につけられるかどうかで、今後の旅の難易度は随分変わるだろう。
ダンジョンだと、ワナも魔物もダンジョンの一部のようで、今までの方法だと気配察知すらまともな精度が得られない。
壁や地中に潜んでいたら見付けられなかったのは、魔物がダンジョンから生み出されたもので、纏っている気配がダンジョンとほぼ同じだったから。
霊力、ではないんだよな。
魔物が纏っている瘴気を伴うオーラや力のようなものだし、魔力とでもいえば良いのかね。
その質が同じだから、空間に露出した状態で動いていないと、別物だと認識出来なかった。
鑑定眼と同等の能力を同時に使えるようになれば、壁の中にどれだけ魔物が潜んでいるのかも、その魔物の弱点が何なのかも、ゆくゆくは遠くに離れた状態で分かるようになる。
俺はどれだけ早く、この脳の負荷に慣れられるかな。
まぁ、今はまだ、目を開けた状態では無理だし、座らないと安心して出来ない。
なにごとも一足飛びに習得できる技術なんてないのだ。
地道に行く。
瞑想をするように、呼吸を整える。
八秒吐いて、四秒吸う。
十秒吐いて、五秒吸う。
吸う秒数と吐く秒数を一:二で安定させて呼吸をし続けることが出来たら、自分から滲み出している霊力の膜を、手足の先から更に感覚を延ばす。
3Dのように脳内に図面を引くことが出来たら、その感覚を視覚に置き換え……る。
うん、集中力は必要だが、出来ている。
溶けて、ダンジョンの一部を取り込んでいるのか、取り込まれているのか、よく分からない錯覚を覚える。
意識を持っていかれそうになる。
そのたびに耳が痛くなるレベルで大丈夫かと騒ぎ立てるアルベルトの声を頼りに意識を元に戻す。
うるさいから感謝なんてしてやらないが、おかげですぐに戻って来られる。
とっても便利だね。
深いため息をついて、再度挑戦。
幾度か繰り返し、脂汗と冷や汗が混ざったものが額から流れ落ちて来る頃。
姿勢をだらしなく崩し、聖水を取り出して一気にあおる。
あ”〜。
五臓六腑に染み渡る。
少し落ち着いた所で、おもむろに二発。
霊力を打ち出し遠く離れた場所に潜んでいたパピリカを屠る。
「コレでこの階にはもう、魔物いないよ」
自由自在に、いつでも意識さえ向ければ、任意の場所の状態を手に取るように分かるようになった。
いやはや。
見張りを任されてくれる人がいるって良いね。
おかげで集中して短期習得できた。
カノンに物事を教える、という状況がかなり珍しいが、彼もコレを期にスキルアップを図りたいらしい。
感覚的なものだから、上手く説明できる自身がないが、可能な限り伝えた。
安全だし、警戒以外していないから余力が有り余りまくっていると言ってその場に腰を下ろしたカノンは、暫く目を瞑っていた。
息をし忘れる程に没頭し、ぜぃぜぃと肩で息をし、再度目を瞑り眉間にシワを寄せる。
ソレを幾度が繰り返したが手を振り「無理だ」と言ってふらつきながら立ち上がった。
続けてポツリと「今は、まだ」と付け加えるあたり、コイツもなかなかの負けず嫌い嫌いだな。
その次元にまだ到達できていない、空間把握もろくに出来ていないアルベルトは、同じ立ち位置に並べる気がしないと、肩を落とした。
魔物が居ないと分かれば単なる綺麗な空間だ。
景色を楽しみながら、そして時折確認に意識を向け、問題がないか確認しながら、観光気分で歩いた。
カノンはたまに意識を遠くへ向けるように数秒目を閉じ、首を振りまたココに戻ってくる。
アルベルトは歩きながらも空間把握が使えないか、眉間に皺を寄せ時折グヌヌと唸り声を上げワナワナと震えている。
二人とも、まだ暫くは無理そうだな。
年長者二人に勝るものがある。
しかも自力で取得した能力だ。
ちょっとした優越感を覚えるな。
ふふん。
地下四階の宝箱に入っていたのは、両の掌を広げないと乗せられない程大きな、大きな霊玉だ。
もちろん、今までの宝箱の中身と同様、瘴気をズモモ……と振りまいている。
その滲み出た瘴気が形を成して魔物に変化する位には、酷く濃い瘴気だ。
今回その魔物を倒したのはアルベルト。
剣を抜く速度が、どんどん早くなっている。
伸び代がまだまだあるようでなによりだ。
聖水で浄化しようとすると量が必用になる。
なので霊力を込めた水を、精霊術で生み出す。
ジワジワと、徐々に浄化されていくのは感覚として分かるが……遅遅として進まない。
内包されている魔力が多すぎるのだ。
「これは、元々このダンジョンの主だった宝石だろうな。
これ程の大きさの宝石は初めて見る」
カノンにも手伝って貰い浄化を続ける。
多少スピードは増したが、一体、どれだけ時間が掛かるかな。
片手間でも出来るので、カロリー補給をしながら続けよう。
精霊術で急速乾燥させた干し肉をアグアグしながら、水に込める霊力の濃度を上げていく。
発光するレベルで込めるが、それでもなかなか浄化の終わりが見えない。
コレもう、水袋作ってそこにぶち込んで、持ち歩いた方がいいんじゃないだろうか。
霊力は定期的に込め直してさ。
それか、置いてく。
重いし。
「それは流石にもったいない」
「要らないなら俺が貰う。
責任は持つから置いていくのは辞めてくれ」
圧! 圧がスゴい。
オッサンに迫られても嬉しくないから、ヤメテ。
鼻息荒いから。
研究オタクってコレだから嫌だ。
まぁ、コレが宝箱に入ってたってことは、次が最深部だろうし。
その最深部にいるのがクロノスならば、カノンたちの出番はないだろう。
あっても、あの日と相手なら、平和的なお話し合いで終わるだろうし。
持ってくれるならなんでもいいよ。
俺はこんな重たい漬物石みたいなの持ちたくないってだけだから。
実は今日、誕生日なのです。
自分の誕生日記念に100話を更新出来て、感無量。
明日の更新分は1文字すら書いていないし考えてすらいないので、今度こそ更新できないと思います。
ご了承ください。




