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ロディと美琴、ファーストフード店前での戦い!

「おいおい。マジかよ」

「困りましたね……」


ファーストフード店からの帰り。ロディと美琴は前方からレーザー銃を構えた無数の半魚人が浮遊式のサーフボードを乗りこなし、人々を襲っている光景を目の当たりにした。


顔はピラニアのようで口には鋭い牙が並んでおり、緑色の鱗に覆われた上半身裸の醜悪な外見をしている。黄色い瞳からは獰猛さしか感じ取ることはできず、対話交渉は難しそうだ。


(せっかくの休日だってのにツイてねぇな)


ロディは舌打ちをして半魚人たちを睨むと左右の腰のホルスターから二挺拳銃を引き抜いて構え、テンガロンハットの唾を持ち上げた。世界の平和を守るスター流は瞬時に臨戦態勢に入ることができる。


青い瞳から鋭い闘志を燃やし、銃口を向けて引き金を引く。


百発百中のロディの放った弾丸は半魚人たちの胸を正確に撃ち抜いていく。


以前ならば旧式の六連発の銃を使用していたロディだが、弾の装填に時間がかかり隙も生まれやすいという理由から弾切れがない銃をスターに開発してもらい、以降それを愛用している。弾数を気にする必要がないというのは戦闘において大きな利点と安心感に繋がる。


ロディはニッと白い歯を見せて笑ってダンスをするように軽快なステップを見せ、二挺拳銃を駆使して次々に謎の半魚人たちを撃破していく。その様を見て美琴は瞼を閉じ、軽く呼吸を整える。


スター流メンバーには各々のやり方があり、それに干渉することは摩擦を生む。


ロディにはロディの美琴には美琴のやり方があるのだ。


(わたしはわたしの道を行きます!)


かっと目を見開いた美琴は撃ち込まれたレーザーを掌で払い、一瞬で間合いを詰めて半魚人のうなじに鋭い手刀を浴びせて気絶させる。彼女は不殺主義なのだ。


強大な力故に本気で能力を発動すればどれほど多くの人が犠牲になるかわからない。だからこそ彼女は自らの力を制御し、可能な限り生命を救う形で争いを収めたいのだ。


向かってくる半魚人のひとりを背負い投げでアスファルトに叩きつけ、ふたり目をアームホイップで失神させ、三人目の喉元にラリアットを食らわせて吹き飛ばす。


撃ち込まれてくるレーザーを回避しつつ接近して掌底を魚人の腹に打ち込んでいく。

美琴の近くにいた半魚人の頭部が爆ぜる。ロディが加勢しているのだ。


「美琴ちゃん。気合を入れないとマズいぜ!」

「はいっ!」


半魚人は浮遊型のサーフボードで滑空して上空からではなく、木々やビル間から次々に群れで現れてくる。ウジャウジャと迫りくる半魚人軍団に対し、ヒーロー側はふたり。


襲い掛かってくる敵を迎え撃つだけでも手一杯なのに逃げ遅れた人々も助けないといけないのだから、体力、気力、集中力を費やしてしまう。


魚人の一体を倒した美琴が視界の端に捉えたのは燃え盛るアパートだった。消防が必死で消化を試みるが半魚人の攻撃に思うように消火活動を行うことができない。


美琴はその場をロディに任せ、現場に急行して半魚人たちを鎮圧。少しの時間稼ぎをおこなったところで、若い女性が泣き叫んだ。


「赤ちゃんが! 赤ちゃんがまだ中にいるの!」

「わたしに任せてください。」


穏やかな口調と微笑みを浮かべて告げてから、美琴は躊躇なく建物の中へと入っていく。

全身の気を高め超高速で動きながら生体反応を感知していく。


時間がないからこそ超スピードが求められる。


赤子がどこにいるかを聞き忘れたのは失策だったが、彼女は優れた生体感知能力を駆使して、アパートの一室で赤ちゃん用のベッドで寝かされている赤ちゃんを発見。


すぐさま抱きかかえ上げ、周囲に息を吹きかけ少しだけ火の勢いを鎮め、窓から飛び降りた。


「お母さん。赤ちゃんはご無事ですよ」


笑顔で赤子を母親に受け渡すと母親は涙を流して感謝した。赤ん坊は眠っているだけだ。


「困っている人を助けるのがヒーローの務めですから」


背中で告げて再びロディの元へ帰還する。


「美琴ちゃん。人助けはうまくいったかい」

「もちろんです」

「良かったじゃねぇか。これで心置きなく半魚人共の相手ができらぁ!」


ロディは半魚人のひとりからサーフボードを奪い取って上に乗ってみる。


初めての運転にもかかわらず足を巧みに動かし操作して自由自在に滑空し、半魚人たちを撃墜していく。ロディは乗り物ならば何でもすぐに乗りこなすことができる。


「ヒーハー!」


ガンマン特有の奇声を発して一気に攻勢に出るロディに美琴も励まされ、素手で応える。

威力を高めた拳や蹴りや衝撃波を発生させ数十体の半魚人を一度に倒していった。


それから十数分後。半魚人たちは形勢不利を確認して撤退を開始。ロディも追撃は危険と判断して留まる決断をして、ようやく戦闘に一区切りがついた。


美琴は両膝からぺたんと腰砕けになり、大きく息を吐きだす。


「つ、疲れましたあ~……」

「まったく大した数だったが、俺たちなかなかいいコンビネーションだったじゃねぇか」

「ですね」


顔を見合わせ笑う。

身体はクタクタだったが、どうにか危機を乗り越えられたのでふたりは安堵した。


夕焼けに照らされてロディの癖のある髪が金色に輝く。彼はテンガロンハットの唾を直し、遠くを見据えて言った。


「それにしても、厄介な奴らが来たもんだねぇ」

「ロディさん。彼らのことをご存じなんですか?」

「かなり昔に戦った。今になってなんで蘇ったんだ? ってことはアイツも……」

「ロディさん?」

「いや。なんでもねぇ。今は何も知らねぇ方がいいな」


軽く笑ったところでロディの腹の音が鳴った。


「美琴ちゃん。何か食いに行かねぇか」

「それなら今度はおにぎりにしましょう」

「ハッハー。いいねえ、和食! 大歓迎!」


そのとき、音もなく金髪の少女エリザベスがふたりの前に出現した。


「ロディ、美琴。傷の手当てをさせてくださいませ」


礼儀正しく一礼して彼らの身体に軽く触れると、ふたりの体力が回復した。

全身から力が漲り、戦闘で受けた傷も回復している。


「さすがはエリザベスちゃんの宇宙最高の治癒能力だぜ。効いたぜ」

「ありがとうございます、エリザベスさん」

「私もお役に立てたみたいで光栄です。それでは失礼しますね」


エリザベスはフッとその場から瞬間移動してしまう。彼女は外出は必要最小限度に留め、もっぱらスター流本部であるスターコンツェルンビルに籠っている。


「傷も治ったことだし飯に行こうぜ」

「ですね! ロディさんもきっと満足できると思いますよ」

「ハッハー! そいつぁ楽しみだ!」


ロディは指笛を吹いて愛馬を呼び出し自らが飛び乗った後に手を貸して美琴を後ろに乗せてから出発する。


「ところでどこ行きゃいいんだ?」

「わたしのお家ですよ」


バカのロディと天然の美琴、ふたりの相性はなかなかに良かった。

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