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チーターみたいになりたいって言ったけど、ネコになるのは聞いてませんッ!  作者: 鍵宮ファング
第3章 勇気の魔法

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第22話 強く、清い心で。

 かくしてゴロツキ集団はアルミの勇気ある行動によって撃退され、店に一時の平穏が訪れた。


 現場には誰かが呼んだであろう騎士団がやって来てくれて、事件は一気に収束へと向かった。


「ふむ。それで、そのゴロツキの親分を、このアルミが撃退したと」


 リーベとアルミは、駆けつけたクロム団長に事の顛末を語る。


 しかしまさか、こんな気弱そうな少女がゴロツキを撃退したなんて信じてくれる筈もないか。


 クロムは訝しんだ表情を浮かべながらも、


「ま、リーベちゃんが嘘を吐くワケがない。事実として捉えよう」


 リーベの証言という大きな信頼から、すんなりと受け入れられた。


 我ながら、弟子の純真パワーには恐れ入った。


「してどうだアルミ、よかったら我らエルメス騎士団に入ってみないか?」


 更にアルミの馬鹿力を買って、勧誘までしてくる始末。


 そりゃあ、ミルク缶を軽々と持ち上げるような怪力娘、軍隊なら欲しいだろうな。


 アルミは突然の勧誘に驚き、オロオロとしながら答える。


「え、えっと……私なんかにそんなこと――」


「できるさ! この私が言うのだから、間違いない! キミはヒーローになれる!」


 何やらどこかのスーパーヒーローみたいなことまで言ってるけど、クロムこんな熱血キャラだったっけ……?


 アルミもこの熱烈なスカウトにどう対応すればいいか分からず、重たい首がゆっくりと縦に動く……


 だが、


「クロムさん、その辺にして!」


 アルミが肯こうとした直前、リーベが割って入った。


「アルミちゃん押しに弱いんだから、何でも勢いに任せてスカウトしたらダメですよ!」


「し、しかしミルク缶を投げたんだろ? ゴロツキ倒したんだろ? こんな貴重な人材――」


「そもそも、私たちまだ未成年なんだから、入団できるのはまだ先でしょ!」


 リーベの猛烈な反撃に、流石のクロム団長も「クゥン」と子犬のような声を漏らして萎縮した。


 カルファといい、リーベが1番の常識人な気がしてきた。


「それとアルミちゃんも、嫌ならちゃんと嫌だって言わなきゃ、流されっぱなしは良くないよ?」


「う、うん。ありがとう、リーベちゃん」


 続けてアルミにも一喝言って、優しく彼女の肩に手を乗せる。


「けどさっきの一撃、とてもスカッとした! アルミちゃんが凄い子なのに、変わりは無いよ!」


 リーベの一言に、アルミの表情はぱぁっと明るくなり、眩しい笑顔で元気よく肯いた。


 何はともあれ、調査も一通り終わったクロムは気を取り直し、


「とにかく、今回の一件でゴロツキ共も暫くは大人しくする筈だ」


「ほ、本当ですか……? 報復みたいなこと、されないですか……?」


「その危険もあるにはあるが、その時は遠慮せず私を呼べ。すぐに駆けつけてやる」


 目に真っ赤な炎を滾らせて、約束した。


 きっと心の中では、「未来の愛弟子のためなら、何だってする!」と意気込んでいるに違いない。


 けれど1日にして目をかけてくれる人もできたことだし、めでたしってことでいいのかな?


「はい! クロムさん、ありがとうございます!」


「では我々は引き続きゴロツキ共の調査に出る。達者でな」


 そう言い残して、クロム達は店を後にした。


 彼女が出て行く間、アルミはその大きな背中と、風に靡く赤い髪が見えなくなるまで、じっと見つめていた。


「クロムさんか……リーベちゃん、凄い人とも知り合いなのね」


「ま、まあ。カルファの腐れ縁、みたいな感じでね」


 しかし、アルミには本当に驚かされた。正直、ここまで強いとは思わなかった。


 親分達に臆すること無く言い返した時もそうだが、アルミの中には強い心がある。


 普段は臆病で穏便派だが、少しの勇気があれば、爆発するように強くなる。


 しかも一度心に火が点けば、段階的に勇気のボルテージが上がっていく。


 段階的に速度のギアが上がっていく車のように、一度勇気の炎が着火した彼女は強くなる。


 アルミは、俺達や彼女自身が想像する以上に、とても強い子なのだ。


「それじゃあ、私達はそろそろ帰るね。カルファも心配してるだろうし」


「それじゃあ、またねリーベちゃん」


 友人同士の会話もその辺に、リーベは鞄を持って店を後にした。


 アルミは去って行くリーベに手を振り、優しい笑顔で見送ってくれた。


「先生も、ありがと~! お陰で助かった~!」


 おまけに俺にまで、見送りの言葉もかけてくれた。


 やっぱり、いい友達を持っているな、リーベも。


 なんとなく、リーベが皆の役に立ちたいと思うのも、納得が行く。


「……ねえナゴ助、アルミちゃんと何かお話したの?」


 帰りの道すがら、リーベは訊いた。


「ちょっとな。勇気が出る魔法を教えてあげただけだ」


「勇気が出る魔法? いいなぁ、それ私にも教えて!」


「い、いやいや。魔法ったって、ただのおまじないだぜ? 効果があるかどうかは、人次第だし……」


「おまじないも魔法だよ! ねえ、教えてよ師匠~!」


「しょうがねえなぁ。後で効果が出なかったからって、文句言うなよ?」


 とはいえ、実の愛弟子に教えないってのも不公平か。


 俺は壁の向こうへ沈んでいく夕陽を眺めながら、リーベにも勇気が出る魔法を教えた。


 ただの深呼吸と言えばそれまでだが、コイツもれっきとした魔法なんだろうな。


 現にアルミは、俺が教えた魔法の力でゴロツキをやっつけたんだから。


 一体いつになるのか、アルミが俺の愛弟子第二号になる日が来るのを心待ちにしながら、俺達はカルファのカフェへと戻った……。


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