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《※休載中》自己完結付与術師三栗傑の受難   作者: 莢山 迷
第1章:平穏な国タイダール王国編
33/44

33.色々と揃えてたら相談された。

1日遅れで申し訳ございません。

「───装備品、食料品、野営用の敷物······こんなとこかな」

「そうですね、ではお値段の方······こちらになります」

 パチパチとそろばんに似たモノを弾き、セルアーキはその面を見せてくる。自慢じゃ無いが俺はそろばんが出来ない、これを見ても値段など分からないのだ。

 値段を聞き返すとセルアーキは慌てたように口頭で伝えてきた、かなり安い。

「そんなに安くて大丈夫ですか」

「いえいえ、スグルさんには命を救われてます。これくらいさせて下さい」

 どうやら特別価格のようだ。


 そう、このセルアーキ・ナインウルズという商人は俺がこの街に来る前に街道で会い、盗賊に襲われそうだった所を助けた人物だ。

 その縁もありセルアーキの店を利用させてもらった訳だ。命の恩人と扱われるのは存外に気分がいい。

 しかも替えの服を選んでいる時、奥からピエリスが着れるような獣人用の服を引っ張り出してきてくれた。この店はまた利用させてもらうとしよう。


「これだけの荷物ですが、荷車でもお貸ししましょうか」

「とりあえず今は魔法の鞄があるんで大丈夫です。この後収納晶石(チェストジュエル)を受け取りに行く予定なんで」

「そうですか。そうですよね、収納晶石便利ですものね」

 どこか寂しげな表情でセルアーキはそう呟く、目が死んでますがセルアーキさん。

(これは······聞いてくれアピールか? )


「えーと、何かあったんですか? 」

「実はですね───」

 恐る恐る聞いてみると、セルアーキは語り出した。


 収納道具として一般的に流通している収納晶石、実はこれを造れる人間は少ないらしい。

 収納晶石を造る過程は、魔石を加工した魔晶石に魔力循環の術式と、魔石が元々持つ空間属性を強化する術式を重ねた魔法式を彫り込む必要があるという。

 この作業が如何せん難しいらしく、収納晶石の寿命や収納容量は造り手の腕に左右される上、僅かでも失敗すれば収納晶石として使い物にならなくなるらしい。つまり、収納晶石の製造は職人技であるそうだ。

 それ故性能の高い収納晶石ほど値段が高い。市井で使用されているものは大した容量も入らない屑品か、通常の鞄を使うのみだと言う。


 また、俺が現在使っている付与魔法による魔法の鞄は魔石そのものの魔力属性に関わらず、理論上全ての魔石で作成可能だそうだ。

 しかし魔石の魔力を消費する事で空間魔術を維持するこの形式は魔力がきれた瞬間収納されていた物が弾けるように現出する事があり歴史の中では爆弾鞄(ボムバッグ)と揶揄されることもあったとか。


 そんな収納の分野において、セルアーキが思い付いた製法があるという。空間属性の魔石を砕いて魔力伝達性の高い清水に溶いたもので鞄を構成する布地に直接術式を書込むというものらしい。

 これなら収納晶石程の高度な技術も必要とせず、術式を刻めば鞄そのもので魔力循環が可能になり爆発する心配もないという。


「───なるほど、その鞄が中々売れ行きが伸びない、と」

「えぇ······恥ずかしながら」


 そんなセルアーキの現状には少なからず同情する。しかしその上でどう返していいか分からなかった。

 素直に『それは残念でしたね』と言うのは軽くあしらっている印象になる。

 だからと言って一緒に解決策を考えようにも、この問題はいわゆる技術チート云々で颯爽と解決出来るものでは無くマーケティング戦略の問題だ、正直どうしようもない。


 短い熟考の末、諦めて無難な言葉を返そうとした時に、後ろから声がかかる。

「──それは収納晶石は装飾品の役割も兼ねているからでは? 」

「なるほど······!」

 ピエリスの提言に、まるで鶴の一声とでも言わんばかりにセルアーキは納得した様子だ。


「そうか、《収納晶石は荷物が入る装飾品》だから人気ってことね」

「そういう事ですね! それなら······どうしようも、無い······!? 」

 俺の呟きに被せるようにそう話すセルアーキの顔色は、一気に青白くなり、膝から崩れ落ちる。どれだけ安定して生産が出来ようとも、どれだけ荷物が入ろうとも、ただの鞄である以上は収納晶石には及ばない、という結論に達したらしい。


 そんな絶望のセルアーキを見て、ピエリスはオロオロとし始める。要らないことを言ってしまったとでも思っているのだろう。


 現在まともな精神状態なのは俺1人である。

(ここは何とかしてこの場を収めなければ······)


「──そ、それなら······鞄をお洒落にすればいいんじゃないすか!? 」

「······どういう事です? 」

「鞄そのものを彩やか見た目にして、装飾品のように身につける物にしてしまえばいいんですよ」

 前世でも、鞄と言うのはファッションの一部として成立していた。世界は違えど同じ人間なのだ、この感性は伝わるはず。


「なるほど、つまり鞄に絵を描いて売ると言う事ですね!? 」

「いや、それでもいいんですけど······。見たところ、このお店には衣料品の品揃えが豊富ですよね」

「はい、服装に気を遣われる方は多いので」

「なら、そう言った業者ともコネがありますよね?

 そこと共同で鞄を造るんですよ。とりあえず分かりやすいコンセプトだと『ドレスのような鞄』とか? 」


 唖然、そう表すのが正しいだろう。天啓の雷に打たれたような表情のセルアーキは目元を潤ませて、静かに俺の手を握る。

「ありがとう······ございます! 」

 割と適当な案だとは思った。だが、まさか泣いて感謝されるとは思っていなかった。

 この世界に来て最初の「異世界知識披露」がこれで良いのだろうか。


 そんなこんなで無事、買い物は終えたのだった。

 収納晶石の受け取りは明日なので、今日の所は魔法の鞄に詰め込んだ。爆発しないよな······?

 ***

 そしてその日の夜、冒険者協会の宿泊部屋を借りる為に協会支部に戻ってきた。協会所有施設の利用は冒険者が持つ権利のひとつだ。ちなみに

 俺は支部長とも良好な関係を築いて居るからか優先的に使えている、実質二人部屋を所有している様なものだ。

 世界は違っても、コネは大事なのだ。


 カウンターで借用願に記入していると、不意に後ろから声を掛けられた。

「スグルくん、ピエリスちゃんやっほー」

「······なんだ、リアスか」

「なんだとは失礼な、みんなの癒し系のリアスクンだよ? 」

 話し掛けてきたのは、冒険者協会ダルーイ支部の専属回復術師リアス・クレレックだった。


「なんか用か?」

「あぁ、うん。お使いで王都に行くって聞いたからさちょっと······っ! ちょっと待って、2人とも同じ部屋で寝泊まりしてんの!? 嘘ピエリスちゃん大丈夫、変な事されてない!? 」

「へ? いや、あの······」

 リアスに肩を激しく揺さぶられ、しどろもどろになるピエリス。と言うか俺への風評被害が酷いんだが。

「あのさァ······別に俺たちは恋人関係って事じゃ無いんだ、流石に手は出さないよ」

(まぁ実際、手を出すだけの度胸が無いだけなんだが。それに仮に誘ったとしても、ピエリスは嫌でも断らなさそうだから何も出来ないんだよな)


「とか言って、スグルくんは手を出したくてウズウズムラムラしてんじゃ無いの? 」

「······して無い」

「ブッ、アッハハハハ! 」

 俺の答えにリアスは吹き出し、腹を抱えて笑い転げる。止めてくれ、俺も分かってる。今は目も泳いでたし顔も赤いと思う、明らかに嘘だってバレる顔してる。

(だからピエリスもそんな引いた目で見ないでくれ。俺は虫ケラでもウサギでも無いんだ)


「──っはぁ、お腹痛い······っとそうだ伝えようと思ってたことがあったんだ」

「早く言ってくれ」

 両手で顔を覆いながら、俺はリアスを急かす。この手は無論、火を吹きそうな顔を隠すためだ。


「王都に行くんだったら、休憩か補給の為にタイマンっていう街に寄ると思う。そこの冒険者協会には僕の兄が居るから、何かあったら頼るといいよ。僕の名を出せば快く手を貸してくれる筈さ」

「······分かった」

 もっと重要な知らせだと思っていただけに、俺はなんとも言えない気持ちになった。まぁ人脈と言うのも大切なのだ、と思う事で自分を支えることにする。


 そんなやり取りをするうちに書類の記入も済み、リアスとはここで一旦お別れだ。

「じゃスグルくんピエリスちゃん、依頼頑張ってねー。あと、協会の備品のベッドはあんまり頑丈じゃないから壊さないよーに」

「だから、そういうんじゃない! 」

 最後の最後まで、リアスに揶揄(からか)われた。


 リアスの兄には、リアス(コイツ)の事を相談しようか。

読んでいただきありがとうございます!

少しでも面白いと感じていただけたなら、ブクマ・評価お待ちしております。

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これからも応援よろしくお願いします。

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