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《※休載中》自己完結付与術師三栗傑の受難   作者: 莢山 迷
第1章:平穏な国タイダール王国編
21/44

21.これってデートだよね。

 信じられない物を見た気がする。

 突然現れた青年のその後ろ姿に、私は目を見開いた。


 彼自身、あまり強そうには見えなかった。実際は強かったが、それでもワイヴァーンには及ばなかった。追い詰められていた。

 なのに、突然炎のドラゴンが現れて、彼を守った。


 私はこの一連の流れに既視感を感じていた。いや、既視感と言うよりも、聞き覚えと言うべきか。

 それは、母からよく聞かされていた御伽噺。竜の加護を得た青年が、旅を重ねて賢者になり、世界を救う実話に基づいたお話。

 その物語の一部を切り抜いたような光景が、目の前にはあった。


 仲間と思われる赤髪の青年と話す姿をじっと見つめていると、突然件の青年がこちらを振り向いた。視線に気付かれたようだ。

 私はバツが悪く感じ、馬車の帆布からひょっこり出していた頭を引っ込める。

 勝てない。とハッキリ言ってしまった手前、若干の気まずさを感じ、なんと声を掛ければいいか分からなかった。


 ***

(······どうしたんだろう)

 目が合うなり姿を隠した少女の方を、俺はぼーっと見つめていた。

 視線を感じ、商人どもを縄で縛る手を止めて振り向いてみれば、即座に隠れられた。何か変なことでも言ってしまっただろうか。

 頭の上に獣耳が見えた。多分、先程のケモっ娘だろう。


「どうしたスグル、奴隷の中にカワイイ子でもいた? 」

「いや、そんなんじゃねぇよ」

 商人どもを縛りながら茶化すザッコスを軽くあしらい、俺は馬車の荷台の方に向かう。


 再び荷台に乗り込むと、やはり怯えた様子は変わらない。ここは何か言って安心させるべきか。

「大丈夫、ワイヴァーンも商人も何とかしました。とりあえず安心ですよ」

 そう言うと、奴隷達から僅かに安堵の声が漏れる。

 と、俺は彼女らの首を握する枷に目がいった。

(とりあえず、あれを外さないとな。鍵は······商人が持ってるかな? )

「ザッコス──そいつら枷の鍵とか持ってないか? 」

「鍵? 無いだろそんなもの」

 適当な返事をしながら、のそのそとザッコスも荷台に上がる。


「鍵がないって······!? 」

「うん、やっぱりこれ魔法錠(マジックロック)だね。特定の魔力じゃないと開けられないやつ」

(マジかよ! )

 魔法舐めてた。想像より魔法がハイテクなんだが。


「どうすんだよ、商人の誰かの魔力なら無理やり開けさせるとか? 」

「無理だろうね。解錠の可否を奴らが握っている以上、奴らにさせるのは難しい。手段を選ばなければ或いはってとこだけど、女子供の前でやる事じゃないしなぁ」

 そう気だるげに答えながらも、ザッコスは熱心に件の首枷を観察している。俺も何か方法を考えよう。


 暫くして、ザッコスが口を開いた。

「──この首枷、安物だね。これなら簡単だ」

「安物? 」

 唐突の事に、俺は聞き返す。


「うん、ちゃんとした魔法錠は錠の破壊を条件に、錠掛けされている対象を破壊する。って術式が刻まれてる事が多いんだけど、これにはそれが無い。つまり、物理的にコレぶっ壊せばオッケー」

「······なるほど」


 とりあえず解決法がわかったので、俺とザッコスとで分担し、全員分の枷を壊して回った。無抵抗の人に刃を向けるみたいで気分は良くなかったが、捕まってた人達には大いに感謝された。それはちょっと嬉しかった。


 そして11人の救出者と縛られた4人の小悪党共を連れて、俺たちは街への帰路に着いた。


 ***

「あんた、セルアーキさんと一緒ににいた人だよな。この馬車について、聞いてもいいか? 」

 ダルーイの街の門で止められた。えーとベルモントさんだっけ。


 そう言えば、ザッコスは遠目でこの馬車を違法奴隷の馬車だと断定していた。つまり、この馬車に乗ってる時点で限りなく黒に近いと判断される。

「いや、えっとこれは······」

「中を改めさせて貰うぞ」

 咄嗟のことに慌てる俺を後目に、ベルモントが馬車の荷台を覗こうとする。


 別に何も悪い事はしてないが、不安だ。中にはボロ布を身につけた女性が11人いる。疑いの目で見られるのは明らかだ。

 中で縛ってる本物の悪党共がホラを吹けば、俺が悪と断定される可能性が高い。


 ヤバい······と思っていたが、タイミングよくザッコスが顔を出した。

「お疲れ様でぇすベルモントさん」

「······っ! ザ、ザッコス殿!? 」

 あ、そうだコイツ有名人だった。


「誤解させちゃってゴメンね、帰る途中違法の奴隷馬車見つけたから借りたんだよ。中に縛ってる4人が本物の商人だから牢にでもぶち込んどいてよ。それとこの馬車もここで乗り捨てていい? あ、スグルは一緒に依頼行ってたからね、通して大丈夫だよ」

「あ、え······はい、構いませんよ」

 矢継ぎ早なザッコスの説明にタジタジなベルモントの返事を聞いて、ザッコスは中から11人の女性達を荷台から下ろす。

「この人達は保護もお願いしていいかな」

「はい、もちろん。責任もって対応致しますよ」

「じゃ、よろしくね」

 そう言って、ザッコスは門を潜る。

 俺もその後ろについて行く様に門を潜った。



「さて、スグル。ここで解散だ」

「······」

 こちらを振り向くこと無く、ザッコスはそう言う。


「楽しかったよ。また機会があれば、どっか行こうぜ」

 ザッコスの言葉を聞きながら、俺は思案する。

 このまま一人でいるより、パーティを組めれば良いに決まっている。俺は意を決して勧誘してみると決めた。

「なぁザッコス、お前さえ良ければなんだが······パーティを組んでくれないか? 」

()だ」

(即答かよ!? )

 刹那で断られた。


「別にスグルが嫌って訳じゃ無いんだ。

 ただ······信頼していた仲間が目の前で冷たくなってくあの感覚を、二度と味わいたくないし、誰にも味わって欲しくない。だから俺は、たった一人で強くなるって決めた。

 俺の背中は誰かと支え合うためのものじゃなく、誰かに希望を与える為のものなのさ。目指すは最強、《勝利の象徴(シンボル)》。カッコイイだろ? 」

「······」

 ザッコスは何処か寂しげにそう言った。

 過去に何かあった、それは間違いない。だがそれを深堀りするのは野暮だろう。

 結局ザッコスの事はよく分からずじまいだったが、それでも格好いいと思った。


「あー、別に仲間を作ることを否定してる訳じゃないよ? ただ俺個人のこだわりと言うか······」

「良いよ、気にしてない」

 ザッコスという1人の男が強い理由が、なんとなく分かった気がする。


「──じゃ、俺は依頼に関して協会に報告して来るよ。スグルは······彼女の話を聞いてあげな?」

 ザッコスが指さす方を振り向くと、そこにはケモ耳少女が立っていた。救出者の中の一人だ。


「ザッコス、どういう──って居ねぇし! 」

 向き直ると、ザッコスは既にその場から消えていた。

(あの野郎、やっぱり次あったら1回シバいてやろう、マジで)

 などと下らないことを考えていると、件のケモっ娘が近付いてくる。


「あ、あの······」

「ん、どうした? 」

 もじもじと照れくさそうに目を合わせない。これはもしかするのではないか?


「あの、何処か食事に! 行きませんか? 」

 言葉尻を細めながら、少女は俺にそう問いかけた。


「えーと、お名前を聞いても良いかな? 」

「はい、ピエリスと言います」

 快活な返答が帰ってきた。


 ピエリスと名乗った少女に、俺は諭すように言う。

「そうかピエリス、まず先に······服を買いに行こうか」

 と言うのも、ボロ布を身にまとった少女と一緒にいるのは世間体があまりにも悪いのだ。


 しかしこれは······ティウルに先を越されたお約束展開だろうかっ。


 ***

「いらっしゃいませー」

 店員の快活な挨拶を受け、俺と少女は店に入る。近くにあったオシャレなカフェだ。

 ちなみに服は自分で選ばせた。俺に女性服をコーディネートするセンスは無い。


「ありがとうございます、服まで買って貰っちゃって」

「良いよ別に。捕まってたのならお金無いだろ?これぐらい出すって」

 実際、サバイバル期間中に集めた素材で小金持ち程度には金がある、服一式なら余裕で買えるのだ。


「ご注文はいかが致しましょうか? 」

 テーブルに着くなり店員さんが聞いてくる。まだメニュー表に目を通してもないんだが。


 慌ててメニュー表に目を通す。

 今更だが、この世界の文字は何故か読める。違う言語ではあるが、理解出来るのだ。ありがたい。

 その識字能力をもってして、メニューは水しか分からなかった。

 読めるには読めるのだ。だが、知らない単語は理解出来ない。ファイナルフラペチーノだの、ルフプリンだの、何が出てくるのか想像もつかない。


 店員が無言で早くしろ、という圧を送っている気がするので、とりあえず言葉の意味を捉えられるメニューを慌てて指さした。

「えーと、じゃあコレで」

「私も同じものをお願いします」

「かしこまりました! 」

 俺に重ねるように、ピエリスも同じものを注文する。彼女もどうやら落ち着かない様子だ。

 ちなみに、注文したのは「バブルティー」という物だ。頼んだ後で『炭酸の紅茶じゃ無いだろうな?』と些か後悔を始めている。


「──あの、お名前を伺っても良いですか? 」

「あー、そう言えばまだ自己紹介してなかったな。俺は三栗傑、よろしく」

「ミクリ・スグルさん······珍しい名前ですよね」

「まぁ、遠くから来たからさ」

 そんな自己紹介から、俺たちは取り留めのない話をした。


 ピエリスの父は狼の獣人族で、母が人間族らしい。つまり彼女が獣人族と人間族のハーフだと言う。

 本来の獣人族はもっと獣寄りと聞いた時はショックを受けた。

 その様子を見たピエリスは俺を不思議そうな目で見つめていた。

 聞けば、どっちつかずのその姿は人間からも獣人からも忌避されてきたから、俺のような好意的な反応は珍しいらしい。

 まぁ、獣耳ってファンタジーの代名詞な所あったから不思議と違和感はない。


 しかしいつかは行ってみたいな、と思う。観光として。そう言えば、この世界での異種族の関わり方ってどうなんだろうか。

 エルフやドワーフらしき人物は何度か見かけているが、そう言えば獣人族などは見かけていない気がする。

 一部の異種族とは上手く交流が出来ていないのだろうか。


 とまぁ雑談をしているうちに、注文したドリンクが届いた。

「お待たせ致しました。バブルティー2つです」

 俺とピエリスの前に、コースターとグラスがコトリと置かれる。


 グラスには薄い黄土色の液体が注がれている。「バブルティー」というくらいだ、ミルクティーだろうか。

 それよりも気になるのは、そのグラスに小さな黒い球体が複数個沈んでいる。これって───


「タピオカミルクティーじゃん」

「······? 」


 その外見(ルックス)は、丁度異世界(こちら)に来る少し前に大流行した、あのタピオカミルクティーそのものだった。

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