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《※休載中》自己完結付与術師三栗傑の受難   作者: 莢山 迷
第1章:平穏な国タイダール王国編
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16.胡散臭い奴に絡まれた。

「それでは、冒険者制度について幾つか説明させて貰いますね」

「はーい、お願いします」

 カウンター越しに、俺はアリスから講習を受けていた。

 その内容を要約すると───


 まず、冒険者にはランクがある。これに関してはエイリアスからも聞いていたからすんなりと理解出来た。

 新人はGランクから始まり、依頼をこなしながらポイントを貯め、そのポイントによってランクアップしていく方式らしい。ベタだ。

 そして依頼にもランクがあり、冒険者は自身のランクの1つ上のランクの依頼まで受けることが出来る。これもありがちだ。

 そうしてポイントを貯めることでAランクまで上がる事が出来る。


 しかしエイリアスはGランクから始めて8段階あると言っていた。上がる事が出来るのがAランクまででは計算が合わない。

「アリスさん、Aランクより上とか無いの? 」

「あるにはあるのですが······あれはまた別枠と言うか」

 アリスがごにょごにょと言い淀む。普段ハキハキした印象の彼女には少し珍しく思う。まぁまだ数日しか顔合わせてないけど。


「Aランクより上にはSランクというランク帯が存在しますが、これは大きな功績を残したものに与えられる名誉に近い物ですので」

「大きな功績って? 」

「そうですね······国家存亡の危機を食い止めるとか?」

「ハードル高! 」


 Sランクは別格のようだ。聞けば、Sランクは現状世界に5人しかいないらしい。そんな高いハードルで5人ならむしろ多い方だろう。

 それなら目標はAランクだ。国家規模の災害なんて起こらないに越したことはないからな。


 そして一番大事な収益について。冒険者における収入は大きくわけて二種類ある。それは協会から出される依頼における報酬と、その過程や通常の冒険で生じた現物収入だ。

 前者は依頼を受けて、その成功報酬として適切な金額を協会を通して支払われる。ランクが高いほど勿論依頼を遂行する難易度は上がるが、その分報酬も良いらしい。ちなみに冒険者ランクをあげるポイントも多くなるという。

 なお、稀に名指しで依頼が来る場合もあるようだ。その場合は報酬に色がつくらしい。


 後者は単純に、狩った魔物の素材や鉱物、旧遺跡に稀にある宝箱などから出た財宝などの事だ。むしろ大半の冒険者はこちらをメインにしているらしく、冒険に行くついでに依頼も受けておく、というスタイルが一般らしい。


 他にも一定期間依頼を受けなければ協会から記録抹消される事や、必要最低限の心得など。色々な事を教えられた。

 正直覚えきれていないので、おいおい覚えていく事にしよう。


「───では説明は以上です」

「はい、ありがとうございました」

 アリスに礼をして、俺は依頼の貼られた掲示板へと向かう。


 そして掲示板を見て唖然とする。正確には、掲示板に貼られたF,Gランクの依頼の内容を見てだ。

 端から薬草取り、薬草取り、薬草取り、迷子の猫の捜索があって薬草取り。

 まぁ新人ならこんなものなのだろうか。いわゆる討伐依頼を受けられるのはDランクからの様だ。


(さてどうしたものか。俺こういう地味な作業苦手なんだよな······)

 などと思案していると、突然後ろから肩を組まれる。


「やっほー、新人クン。調子どう? 」

 俺が1番嫌いな絡み方だ。

 睨むように振り向いてみると、それは同い年ぐらいの男だった。

 ワインレッドの髪の青年が面白いものを見る目でこちらを見つめている。


「······誰? 」

「あららご機嫌ナナメ? ごめんねー。そんな事より見てたよ戦闘試験、君強いね! 」


(話聞かないなコイツ······)

「で、どちらさん? 」

 俺は語気を強めてそう言う。どうにもこの男は俺の苦手なタイプだ。俺の言葉には敵意が漏れている。


「俺? 俺はザッコス・ムーンゲインさ。よろしくスグル」

(何その名前······?ネタかよ。と言うか───)

「俺名乗ってないけど? 」

「やだなぁ、スグルってば有名人だよ? あの支部長を打ち負かした謎の新人! ってね」


「あっそう。じゃ」

 俺はザッコスの手を振り払い、冒険者支部から出ようとする。俺の魂は苦手な空気から一刻も早く離脱する事を求めている。


 だが、行く手を塞がれた。

「待て待て待て、俺はお前より冒険者歴が長く、そしてランクも高い、先輩だぞ? もっと敬えよぉ」

「ザッコス先輩どいてください」

「冷たい! いいじゃないか少し話そうぜ? いい話があるんだよ」


 胡散臭すぎる。こういう手合いは信用してはいけない。

「急いでるんで」

「ランク、早く上げたくないかい? 」

「······」

 その言葉に俺は一瞬足を止める。


「とりあえず、話を聞くだけ聞いてさ。聞いた上で判断してよ。互いに損はしないはずさ」

「分かったよ······なんか奢れ」

「ちゃっかりしてるね」

 という訳で、俺とザッコスは協会内に小さな談話室を借り、そこで話す事となった。

 この支部では冒険者は職員に許可を貰えば、あらゆる部屋を借りられるようだ。もちろん、宿泊用にも。


 ***

 誰もいない部屋で茶を啜る音を響かせた後、ザッコスが口を開く。

「スグルは強いよね。まぁ俺の方が強いけどな。君は冒険者ランクで言えばB───······いやCの上位くらいだ」


(なんで言い直したんだろう)

 露骨な立場の調整を感じたが、わざわざ口にする事ではないだろう。

 ザッコスも気にせず続ける。


「けど冒険者協会のルール上、どんなに強くともGから、薬草取りからスタートだ。それが普通」

「要するに、Dランクまではお試し期間みたいなものか? 」

「まぁそんな感じかな。けどね、実際Gランクでも上位ランクの依頼を受ける方法がある。高ランク依頼の方がポイントも高いからな、それを使えば手っ取り早くランクをあげられるのさ」


 うっさんくせぇな。ネットの広告かっての。

「······それ合法? 」

「もちろん。やる人は少ないが協会も認めている正規の抜け道さ」

(正規の方法に抜け道なんて言葉普通使わねぇだろ)


「───それが『同伴制度』だ」

「同伴制度?」

「そう、低ランク冒険者が、高ランク冒険者に随伴するという条件下において、本来受けられない依頼を受注出来るって事だ」


 ───なるほど。確かに違法では無さげだな。

 だがそれって······

「それって高ランク冒険者にメリットあんのか?」

「ほとんど無い。足でまといを連れてくんだ、むしろデメリットだね。だから実際やる人が少ないんだ」

「じゃあなんで俺を?」

 至極真っ当な疑問だろう。ザッコスは、なんの考えがあって俺を誘う?


「······そりゃあ期待できる新人に唾つけとく為だよ。将来スグルがある程度のランクになったら『ザッコス先輩のお陰で今の自分があります』とかなんとか言って俺の株を上げて欲しいのさ。それにスグルの実力なら足でまといって言うデメリットも小さいんじゃないかなって」


(純度100%で下心じゃねぇか)

 ······だが親切とか善意とか、不確定な理由を言われるよりも納得が行く。


「······わかったよ。じゃあよろしく頼む」

「オッケ交渉成立! 」

 と、ザッコスが懐から1枚の紙を取り出す。


「という訳で、今回スグルに一緒に来てもらいたい依頼はこちら! 」

 テーブルに叩きつけられた依頼書を俺は覗き込んだ。


 Bランク依頼───迷宮《スルルクの縦穴》の深部に現れたはぐれ軍隊狼(アーミーウルフ)の討伐


 知らない固有名詞だらけの紙に顔を顰めると、ザッコスが説明を始めた。

「さて、世間知らずなスグルに説明しよう。《スルルクの縦穴》って言うのはダルーイの街から馬車で半日程度南に行った先にある迷宮(ダンジョン)の事さ。そこの深部で、本来居ない筈の軍隊狼が1頭確認された。それを討伐するって依頼だ」


 なるほど、その1頭でBランク依頼か······。

「その軍隊狼ってやっぱり強いのか?」

「そうだねぇ······討伐ランクはAランクの魔物だ。けど、それは基本的な群れにおけるランクだ。はぐれならCランクくらいじゃないかな」


 討伐ランクと言うのは初耳だが、強さの指標だろう。ザッコスの口ぶりから、Aの方がCよりも強いようだ。

「群れと単体だと随分と差のある魔物なんだな」

「奴らは5、6頭の小隊を複数隊編成した特殊な群れ(レギオン)で行動する魔物でね、あれとの戦闘は国との戦争に近い戦略が必要になる。その代わり、単体ならさほど脅威は無いんだ」

「なるほど」


「いやー、Cランク魔物を討伐するBランク依頼なんてお得だろ?ずっと前から狙ってたんだよね」

「そうなのか······」


 なら1人で行けば良かったのに······。

 と言う思いは心の内に留める。


「じゃあ明日の朝、街の門の前に集合な。受注登録は俺がしとくから」

「分かった。じゃあよろしく」

 こうして俺は、ザッコスと別れた。


「ようスグル。無事冒険者になったらしいな」

「エイリアス! 」

 部屋を出てすぐ、近づいてきたエイリアスと俺は固く握手をする。

「エイリアスのお陰だよ」

「何を言う、お前の実力だろう」


 そんな言葉に感銘を受ける中、エイリアスは心配げな顔をして。

「しかし早々にザッコスに目を付けられるとはな······。アイツは変わり者だからな、気をつけろよ」

「······分かった、ありがとう」

 分かっている。まだザッコスは信用しきれていない。

 俺はエイリアスに強く頷く。


 明日はいよいよダンジョンへ向かう。

 欺瞞と陰謀に満ちた迷宮へ······。

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