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山本君は、年上好き。

作者: 郁嶋稚早

 


 僕と同じクラスの山本君はかっこいい。


 しかも、スポーツも勉強も出来るくせに性格までも良いといった欠点の無い人間だ。


 僕の唯一得意なゲームでさえ勝ち目はない。なんならこんな地味な僕の誕生日を覚えてくれて、今では発売してない入手困難なゲームソフトをわざわざくれるくらい。








 ……しかし、完璧人間山本君は極度の年上好きである。


 この事実を知ったのは昨日の夜のこと。いつものように山本君にゲーム対戦に誘われて、通話をしていたら好きな女性キャラの話になった。ここまではよくある話だった。


 僕は最推しである年下お転婆系の女の子(名前は伏せておく)が好きだと言ったら、山本君は年上全般の女性キャラが好きだと言ったのだ。この時の僕は何も疑問に思わず「へー、年上が好みなんだ」ぐらいだったが、話を聞いているうちに山本君のおかしさに気づいてしまった。





 別に僕は年上好きなのがおかしいと言っているわけではない。


 ただ、山本君がおかしいと言っているだけで。




 年上の女性キャラが好きだと僕に公言してからの山本君は止まらなかった。いかに年上の女性が素晴らしいのかと熱く語り(もはやキャラの話ではなく現実の話で、内容も変態じみていた)俺は年上の彼女を作って結婚すると断言したのだ。いくら同い年や年下で可愛い子がいても興味は無く、自分より5歳以上は恋愛対象外だと言ってのける。……羨ましい限りである。





 しかしながら、僕の勝手なイメージである山本君は爽やかイケメンだったのである。


 爽やかイケメンがとんだ年上好きだったとは、世の中にはいろんな人がいるんだなとしみじみとしてしまった。




 山本君は、決して嘘は付かない。性格は良いのだ。


 よくよく思えば女子の告白は何故かいつも断っていたし(そのせいで僕は被害にあったが)、不思議と山本君が年上好きだと言って納得してしまったぐらいだ。





 まぁ……僕は人の嗜好なんてものには興味はないから昨日は軽く聞き流していた。僕はゲームさえ出来れば良いのである。



 そう、昨日までは(・・・・・)













 ♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢



「それで、林さん。僕を急に呼び出して何の用ですか?」


「少し聞きたいことがあるの」



 今僕の目の前にいるのはクラスメイトの林さんだ。


 林さんは神妙な面持ちで、何か言うのを躊躇っている。


 あぁ、僕を放課後の図書室にわざわざ呼び出すことなんて山本君関連に違いない。


 僕が高校2年生になって山本君と同じクラスになり、よくゲームをするようになった。周りは何を勘違いをしたのか山本君と僕が友達だと思ったらしく、女子たちが山本君の情報を僕から聞き出そうと呼び出しを食らっていたのだ。



 しかも、僕から山本君の情報を聞き出そうとする輩は大抵頭のねじが緩めな人が多いのか、無難に答える僕に対して烈火の如く怒るのだ。そして想像力が凄まじいのか、わざと情報を隠して自分の恋路を邪魔する敵認定をされる。





 良い迷惑である。




 だが、林さんは良い子である。


 クラスの学級委員をしていて、影の薄い僕がプリントを貰っていないのに気付いたり、班活動では1人余っていた僕に声をかけてくれる気遣いの出来る子なのだ。(山本君にも誘われたが班員に嫌な顔をする女子がいた為丁重に断った)



 そして、僕の()()()()()()()()()()


 元々林さんはロングヘアーで顔が似ているなぐらいの認識だったのが、突然髪を切りショートカットになってから激似である。


 いつもと同じく無難に答えて帰ろうと思っていたのが、今までと違っていて今日の僕は山本君が年上好きだと知っていて、なおかつ相手はあの林さんである。



 推しには笑ってもらいたい。




 これは林さんの為にも伝えておくべきなのか?


 しかし、勝手に話してしまうのはいかがなものか?山本君のプライバシーはどうなる。


 何でもかんでも真実を伝えることが良いとは限らないだろう。だからと言って、言わないと林さんは100%振られてしまうだろう。







 ……そうだ、やんわりと林さんが山本君のタイプではないことを伝えよう。僕にしては良い考えだ。




「……ねぇ、ちょっと人の話聞いて「林さんは、(山本君の)タイプじゃないよ!」……えっ?」


「えっ……?」


 あれれ……?僕なんか変なこと言った?


 何でそんなに泣きそうな……あっ、僕が山本君がタイプじゃないって言ったからか。



「えっと……ごめん?」


「……バカ!」





 林さん(推し)にバカって言われた。

















 ♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 結局訳の分からないまま、家に帰った。


 そしていつも通り、山本君と対戦をしている。


 そしていつも通り、僕は山本君に負けた。悔しい。もう一回対戦をしてもらおう。次こそは勝つ。そう覚悟を決めていたら、


「今日、(あおい)と会ったんだろ?」と山本君が言った。


「……葵?誰?」


「……林のことだよ」


「ああ!林さんのこと。会ったけど何で山本君が知ってるの?」


「何で知ってるのって……えっ?何で逆に知ってないの?今日葵に告白されたんじゃないの?俺のことも全部知ってる筈じゃ……」


「林さんが僕に告白!」



 山本君勘違いしてるんだなぁ……。林さんは山本君のことが好きなのに。僕に告白なんてありえないのに。


「その反応は何も知らなさそうだな……。世話の焼ける二人だ」と山本君はこう言って説明をし始めた。





 山本君と林さんは幼馴染で、僕と仲がいい(?)山本君に協力してもらっていたそうだ。林さんが髪を切ったのも僕の最推しがショートカットであることを知った山本君が林さんに言ったからで。(推しだからと言ってタイプだとは言ってない。……タイプだけど)僕に良くしてくれるのも、僕が好きだったからで。(それは、林さんの性格がいいだけでは?)


 まぁ、どうやら林さんが僕に告白したことは本当のようだ。




「それで葵とはどうするんだ?別に葵のこと嫌いじゃないだろ?なんなら好きだろ?」


「べっ別に好きなんかじゃないし。時々目で追っちゃうだけだし。可愛いいなって思うだけだし!」



「……重症だな。はぁ、もう認めてしまえ。それは正真正銘の恋だ!」


「こい……?……恋!うわあああああああああ!」




 この僕が恋!推し以外に恋だと!


 ナンテコッタ!
















 そんなこんなで僕と林さんはギクシャクする様になってしまう。お互い色々あってやっと付き合える所まで辿り着きそうだったのに、年上好き山本君のせいで邪魔が入ったりした。(山本君の初恋とかね)



 今となっては全て山本君のせいなのか、山本君のおかげなのか良く考えないようにしているけど、皆幸せだから良いか。








 結局、山本君は年上好きだ。

読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちなみに私も年上が好きです。頼りになりそうな所が良いですね。残念ながら、お付き合いしてくれる相手が居ないのが悲しい所ですが……。
2020/04/18 18:28 退会済み
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