サンドイッチ
「旦那さま。お昼は如何なさいますか?」
廊下から見える青空はいつになく輝いており、草花のユラユラとた柔らかい風の踊りがとても気持ち良さそうだった。
「今日は庭で食べようかな。アサヒーナもどうだい?」
「ではサンドイッチをお持ち致しますね」
「ああ。宜しく頼むよ」
俺は廊下からテラスを抜け、楓の木の下へ腰を掛けた。ポカポカ陽気が実に眠気を誘う。ガラにも無く小さな花を一つ撫で、アサヒーナを待った。
「ふぁぁぁぁ…………眠い」
欠伸を一つ。ため息を二つ。そして庭を掃除していたサンシャちゃんの姿が目に入った。隅っこで屈み込み何かを拾っている。俺は立ち上がりサンシャちゃんの後ろへと近付いた。
「何か有ったかな?」
「あ、旦那様。蝶が居ました♪」
掌にそれをサンシャちゃんは嬉しそうに笑顔を振りまいている。
「……サンシャちゃん」
「はい?」
「それ……蛾だよ」
「…………」
それに再び目を落とすサンシャちゃん。次第に顔色が悪くなり―――
「ギャーーーーーッ!!!!」
とんでもない声を張り上げそれを放り投げた!
蛾はパタパタと何処かへと飛び去り、サンシャちゃんはあたふたと取り乱している。
「旦那様助けてーー!!」
──ガシッ!
半分パニックになり俺に抱き付くサンシャちゃん。シャンプーの良い香りがしたのは内緒だぞ!
「お、落ち着こうか……」
まるで自分に言い聞かせるように言葉を発したが、サンシャちゃんはガッシリと抱き付き離れる気配が無い。
「……旦 那 さ ま?」
「!?」
何とタイミングの悪い事だろう。トレイにサンドイッチを乗せたアサヒーナに見付かってしまったぞ!!
「これは何事ですか?」
世界一恐ろしい笑顔で語りかけるアサヒーナ。笑顔とは裏腹に何故かトレイが少しずつ歪んでいる。サンシャちゃんを引き離そうとするが未だにパニックでしがみついている。
「いや、こっこれは別に深い意味は……!!」
「どうぞお二人でお召し上がり下さい!!!!」
「ま、待ってくれ……!!」
──ガタッ!
荒々しくトレイをテラスのテーブルへと置くと、アサヒーナは屋敷へと戻ってしまった。
何を怒っているのか知らないが、何故俺が弁明しなければならんのか…………何故か心がモヤモヤとした。
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(*´д`*)