ドジっ娘マジック
──コン、コン
「どうぞ」
ノックの音でアサヒーナでは無い事を悟る。サンシャちゃんの案内が終わったのだろう。
──ガ……チャ
「失礼……します?」
「おお、中々似合うじゃあないか!」
アサヒーナと同じメイド服に身を包むサンシャちゃんはとても可愛らしく、早速水を被って貰いたい俺がそこには居た。
「キツくないか? アサヒーナは小柄だから」
「胸が……少し」
「―――プッ!」
──ズゴォォォォン!!!!
「…………」
「…………」
ドアの隙間から尋常じゃ無い何かが射出され、俺のデスクに突き刺さる。
「……コホン。冗談はさておき、早速サンシャちゃんには掃除でもして貰おうかな。何か分からない事があれば俺でもアサヒーナでも遠慮無く聞くといい」
「ありがとうございます」
──ガッ……チャ……
ゆっくりと扉が閉められ、タタタと廊下を駆ける足音が聞こえる。転ばなければいいが…………
「あたっ……!」
……心配だなぁ。
(ま、アサヒーナが居るから大丈夫だろう)
俺はクルリとイスを回し一冊の本を手に取った。
――三界の行方――
人類が栄える遥か昔、まだ地上が無く天界しか無かった世界で、神々は栄えた。
とある神は地上を作り、新たなる神の地として君臨した。
人類は疑うこと無く神々を崇め、神々は信仰を手にした。
そして……地上は神々を崇める人類で埋め尽くされ、信仰は限界を迎えた…………
更なる信仰を手にするべく、神々が次に作ったのは……遠い未来に魔界と呼ばれる事となる世界であった。
──パタン……
俺は下らない本を伏せ、机の引き出しを開けた。
「…………」
抜け落ちた一枚の白い羽を手に取り、柔らかい感触に指をなぞらえる。
「熾天使どもめ……」
俺は羽をしまい、遠くの空を見つめた。