天と魔の猛襲
後三話くらいです。
もう少しだけお付き合い下さい
窓の外に人影を見た。
「──!!」
慌てて飛び出し、その、見覚えのある、待ちわびた姿、形、顔、仕草に、声が詰まる。
「あ、ア、アサ、アササ──」
ギュッと抱き付いてきたその柔らかい髪は、あくる日のままであり、あの夜の続きのように、優しい香りが俺を包み込んだ。
「旦那さま……お許しを…………」
か細い声が、許しを請う。何も怒ることは無い。今は彼女が居てくれる。それだけで俺は幸せだ。改めてそう思う。
しかし、招かれざる客──いや、熾天使が感動の再会に水を差しに来た。
「さて、要件は分かっているだろう?」
天より派手に白い羽を羽ばたかせ、白く冷たい瞳が俺を睨みつけた。
アサヒーナに優しく声を掛け、後ろに匿う。
「さてさて、貴方様の返答次第では我々も歓迎の宴を催す事になるでしょう」
ミカエルの後方より、へカーテがじわりと滲み寄る。
どうやら役者は揃ったようだ。
やる事は一つ。
──誰も生きては帰さない!!
ポケットから天叢雲剣を取り出す!
桜の枝が大きく育ち、逞しい幹へと成長する。それを握り締め俺は二人へと向けた──!
「……ほう」
「あらら……」
二人は期待が外れたかのような面持ちで、ため息をついた。
そして先に動き出したのへカーテだった。
「弾けてしまえ!!」
へカーテの身体中から大蛇が溢れ出し、俺を襲わんと向かってくる。
「ふんっ!」
天叢雲剣を振るうと、大蛇がまるでティッシュを裂くかの如く、何ら抵抗もなくすんなりと分断され、地面へとボタボタと落ちた。
「クッ……小癪な!!」
飛び退くへカーテの足下を瞬時に氷結させるが、威力は弱い。しかし奴の気を一瞬でも引ければそれで良い。
「くたばれゴミ共がぁぁぁぁ!!!!」
飛び掛かる様に天叢雲剣をへカーテの頭上から振り下ろす!
濃縮された信仰エネルギーが、奴の体を構築する霊体を悉く分解し、霧散させる──!
「ギェェェェエ!!!!」
そのままへカーテは塵のように消え果て、最後には何も残らなかった…………。
「地母神共め、そんな玩具を人間に渡したところで、我々天上人に敵うとでも……?」
ミカエルの足が一歩静かに前へ出た。
もう後には引けない。ココで全てを終わらせる──!!




