足繁く喫茶店へ
「サンシャちゃん! スペシャルウォーター増し増しで一つね!!」
指を鳴らし得意顔でサンシャちゃんを呼ぶ。お待ちかねのスペシャルウォーターの味は誰一人飲んだことが無いので知る良しも無い。因みにスペシャルウォーター一杯5000Gもする。
「キャッ!!」
──ビシャァァァァ!!!!
今日も健全にサンシャちゃんが水浸しになり男達は御満悦の様子。
「サンシャちゃんこっちにもスペシャルウォーター一つ!」
「す、すみません着替えてきますので少々お待ちをー!!」
パタパタと足音を立て更衣室へと走るサンシャちゃん。どうせまた濡れるんだから着替えなくても……いや、濡れるためには着替えて貰わないとな♪
「風邪を引いてしまうから着替えるのでござるよ?」
「…………」
隣で眼鏡のカメラ青年が何やら俺に説明をしてきた。確かにその通りだがそこまで健全を通さなくても良いのでは……?
──ビシャァァァァ!!!!
「おおおおおおお!!!!」
「ひえーっ! すみませんすみません!!」
サンシャちゃんが水浸しのまま客に謝っているが、当然誰一人怒っている者は居ない。寧ろ感謝している。
──カランカラン……
「!?」
「!?」
「!?」
「!?」
「!?」
「!?」
「!?」
「!?」
「!?」
「!?」
「!?」
「!?」
何やら男共がザワつき壁際へと逃げ戸惑い始めた。見るとそこには茶色のウェーブのメイド服姿の……
「―――ってアサヒーナ!?」
「見つけました旦那さま。最近の視察の『飲食代 5000G』の領収書について説明を願いたいのですが……♡」
世界一要らない♡マークを送りつけられ、俺は額から汗が一つ零れ落ちた。
(何故バレた……!?)
「後で納得のいく説明をお願いします―――」
と、アサヒーナはビショビショに濡れきったサンシャちゃんへと近付き一枚の書類を見せた。
「この店のオーナーより貴女について当屋敷での雇用願いが出されています。これより貴女には当屋敷にて従事して頂きますのでご承知の程を」
「へ?」
「…………はい」
サンシャちゃんは何故かアサヒーナに連れられ店を後にした。
「旦那さまも帰りますよ?」
世界一恐ろしい笑顔が窓の外で俺に声を掛ける。俺の足は死地へ赴く兵士の如く重く屋敷への道程が果てしなく遠く感じられた…………。