視察も仕事
「アサヒーナ」
「はい。何でしょう旦那さま」
「少し町を視察してくる。留守を頼む」
「行ってらっしゃいませ」
──バタン……
屋敷の扉から一歩外へ出るとそこは自由の世界。俺が何をしようと止められる者は居ない! ビバ自由! ビバフリーダム!
「よう!兄ちゃん今日はお嬢ちゃんは居ないのかい!?」
気分良く町を歩いていると、野菜を売っているオヤジがニヤニヤとしながら俺に声を掛けてくる。
「恐らく後で買い出しに来ると思うが……」
「そうかいそうかい。たまにはデートの一つでもしてやらないと他の男にお嬢ちゃん盗られちまうぜ?」
「別にアイツは唯の従者だ。他の男とくっつこうがイチャつこうが俺には全くもって関係無い」
「けっ、強がりを言うなぁ? じゃあ他の男とブッチュブッチュしても良いんだな?」
その言葉に、俺はアサヒーナがオヤジとブッチュブッチュしている姿を想像してしまった……。
──ゴンッ……
「いだっ! おい、カボチャを俺に投げるな!!何の真似だ!?」
「すまん、想像力が豊かすぎた」
「まったく……!」
オヤジに別れを告げ、俺は町を適当にふらつき始めた。
(さて……古井戸の件の視察とゴミ屋敷と…………)
辺りを見渡した俺の目に飛び込んできたのは凄まじいほど混雑している一件の喫茶店だった。外にも長い行列が出来ており店内からは賑やかな声が聞こえている。
(……?)
気になり中を覗く。すると店内は男ばかりで満たされており、皆の視線が一箇所に集まっていた。
「…………アレか」
視線の先には若い女がミニスカートでウェイトレスをしており、皆が女の尻を舐め回すように凝視している。
──ツンツン
「いかがわしい店なのか?」
近くに居た眼鏡のカメラ青年の肩を突き訪ねる。すると青年は首を大きく振り怒りを露わにした。
「とんでもありませんよ! サンシャちゃんの素晴らしい働きに皆が感動しているだけであります!!」
あまりにも真面目に熱弁するものだから、思わず「お、おう……」とたじろんでしまった。
「サンシャちゃんスペシャルウォーターを一つ!!」
「はーい♪」
「「「うおおお!!!!」」」
突如男共が耳をつんざく程の歓声をあげた。ウェイトレスがトレイにバケツほどの大きさの……て言うかまんまバケツに並々と注がれた水をヨロヨロと運ぶ。
──ガッ!
躓くウェイトレス。倒れるバケツ。水浸しのウェイトレス。透ける服。喜ぶ男共(俺含む)
「うん、健全健全……」
俺は一人頷きながら喫茶店を後にした。
(また明日に来よう)
俺はその後、視察を適当にこなして屋敷へと戻った。
「お帰りなさいませ旦那さま」
「うむ……明日も視察へ行くから」
「かしこまりました」
俺は明日を楽しみに、その日を終えることにした…………