お風呂
「うへぇ……庭掃除してたら転んで泥だらけだ…………」
外仕事を終え、汚れた体を洗うために屋敷の風呂へと向かう。
──カチャ……
「あ……!」
「おや……?」
扉を開けると、そこにはメイド服を脱いだばかりのサンシャちゃんがいた…………。
下着姿のサンシャちゃんはいつもに増して(当社比)破壊力が強い。アサヒーナと比べるなら三輪車とタンクローリー程の違いだ。
「あ、あの……扉を…………」
「えっ、あ、ゴメン!」
開けっぱなしの扉を閉めようとすると、不意にサンシャちゃんに手を引かれ、俺は脱衣所へと引き込まれた。
──バタン……
扉が静かに閉まり、サンシャちゃんが俺の手を引いたまま恥ずかしそうに俯く。
「旦那様さえ良ければ……その……一緒にお風呂に…………」
「YES WE CAN!」
俺は全くと行って良いほど躊躇うこと無く泥で汚れたスーツのボタンへ手をかけた。
「その……恥ずかしいから……後ろを向いていて下さい……」
「YES I CAN!」
俺はこの先のパラダイスに期待を大にし、クルリと扉の方を向く………………と、何故かそこには世界一の笑顔が似合う死神さんが居た。
「や、やあアサヒーナ……こんな所で奇遇だね……!!」
「絶命希望の旦那さま。書類がアホ程溜まっておりますが?」
笑顔を崩さず淡々と言葉を吐く辺りにかなりの恐怖を感じられる。しかし俺も男だ。ココで止まってしまってはチャンスは二度と訪れないだろう。ココは突き進むべし……!!
「掃除で汚れてしまったから、風呂へ入ったら行くよ」
「な、ら、ば……お一人でどうぞ!!!!」
──ガシッ!!
──ガラッ!!
──ポイッ!!
──ボチャーン!!!!
手首を捕まれ風呂へ放り込まれる俺。屋敷の主たる俺が酷い扱いだ…………。
「だ、旦那様!?」
「あのアホなら大丈夫。それよりサンシャちゃんあのアホに襲われなかった!? 変なことされなかった!? 妊娠してない!? 大丈夫!?」
「おーい、聞こえてるぞー……」
「あのスケベタラシ大魔王は私が躾けておくから、サンシャちゃんは逃げて!!」
「えっ!? あ、あの……!!」
アサヒーナに促され、サンシャちゃんが着替えて脱衣所を後にした。俺のチャンスは儚くも手から零れ落ち、残されたのは『死』あるのみだった……。
「旦那さま……覚悟は良いですか?」
「ア、アサヒーナさん? 笑顔が怖いんですが…………」
「すみませんねぇ。生まれつきなので…………」
──バギッ!
「うごぉっ!」
──メキョッ!
「はがぁっ!」
──グワシャッ!
「しでぶっ!」
俺は死んだ方がましかもしれない程に痛め付けられ、その日は仕事が手に着かなかった…………。




