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破滅転生譚  作者: chalk
第三生 偽りと愛
9/33

8転目 愛女

「...本当に戻ってきた」


 少年が赤い光に覆われたかと思うと、次に気付いた時には再び河川敷へ戻っていた。


(とりあえず、朱莉の所に行かなきゃか)


 向かう先は転生する前に朱莉と集合の約束をしたいつもの堤防、しかし――。


「ねぇきみ! ちょっといいかな?」


 後ろから澄んだ可愛らしい声が聞こえる。


「きみってさ! デートとかしたことある?」


「...はぁ?」


 声の主は、風になびく艶やかなセミロングの髪、そして偽気より少し背の高いとても可愛らしい容姿をした女性だった。




 ~ 8転目 愛女 ~




「いや、えっと、ないですけど。...てか誰ですか?」


「ふふん! そんなのいいからいいから! 一緒にデートしよ?」


 呆気に取られた偽気が聞き返すが、そんなことは聞きもせず彼女は偽気の手を引いて街へと向かう。




「あのぉ...どういう御経緯で?」


「ん?経緯なってないよ? ただ君があんまりにも可愛かったから...ついナンパしちゃった!」


 照れ臭そうに微笑む彼女を見て偽気は、朱莉の言葉を思い出した。



 ――――――――――――――――――

「いいかぁ? 前期で会わなかった人間と不自然に出くわした時は大抵意石持ちだぁ! そして接触してくるってこたぁほぼ敵だ! 気をつけろぉ?」

 ――――――――――――――――――



(まあ、状況からしてこの子が意石持ちなのは間違いない...。 でも、なんで俺なんだ? 俺は力を見せびらかすようなこともしてないし、目立つような事...も......)


 そこまで考えてようやく偽気は、前期のビルから飛び降りた時の事を思い出した。


(あれかあぁぁぁ!)


「ん?どしたの?」


「あ、いや、なんでもないっす! ちょっと緊張しちゃいまして!」


「君、ほんとに可愛いね!」


 危うく怪しまれる所だったが、上手く誤魔化せたのか彼女も笑って理解した。


(でも、仮に俺が意石持ちだと知っているのだとして、ひとつ不可解なことがある……)


 彼女からは足音がしない。


 彼女は転生からそう時間も経っていないにも関わらず接触してきた。

 転生直後は周りに誰もいなかった筈だ。

 しかし彼女は音もなくやってきた。

 明確に自身狙っていると教える様なものだ。

 暗殺目的ならもう殺されているだろうが、彼女はあろうことか今一緒に歩いている。

 そしてそんな今でさえ、全く足音が聞こえない。

 彼女は音を消す能力者なのだろうか。

 そんな問答を数度繰り返すが、偽気は直ぐに考えるのをやめた。


(まあ...デートって気分いいしいっか!)


 偽気は童貞だった。






 ご飯を食べ、店でショッピングを楽しみ、なんだかんだでデートを満喫した偽気は、既に彼女へ釘付けになっていた。

 無理もない。 彼女は容姿もさながら、声も仕草も反応も、全てが可愛らしかった。

 例え彼女が意石持ちであろうと、敵意などは一切感じられぬその態度に偽気も少し気が緩んでいた。

 そして日が落ち初め、空が美しく染まる頃。


「そろそろお別れの時間かな? 今日は付き合ってくれてありがと!」


「あ、うん。こちらこそ! あのさ、1つだけいいかな......。」


 偽気は、顔を紅潮させ尻込みをする。


「君の名前は?」


 恥ずかしそうに問う偽気の姿を見た彼女は、少しの間をあけて答える。

 

「......愛女、篠尾 愛女(しのび あやめ)だよ!」


「愛女さん...! また...会えるかな?」


「もちろんだよ! じゃあね!」


 そうして彼女は去っていった。


 


「...愛女さんか」


 彼女の名前を噛み締めるように呟くと、偽気は居なくなった彼女の残り香を辿るように消えていった先をしばらく見つめていた。


 そして――。


「...あれ? 俺なんか忘れてね?」


 ようやく何かを思い出すが既にそれは遅かった。



「てんめェェェェェェェ!!!! 約束の場所にもこねェでどォこほっつき歩いてやがったんだァァァ!!!!」


「げっ!」


 そう、この声は忘れもしない......。

 バブリングヤンキー朱莉である。


「なァにがげっ! だァ! こっちゃお前が死んじまったのかと思ってめちゃくちゃ焦ったんだぞ!!!!」


「う、うるせえ! そっちこそ、あんな大怪我しやがって! 心配したんだぞ!」


 思わず偽気も声を張り上げる。

 しかし不意な優しさに朱莉は振り下ろす腕を下げ、くすりと笑う。


「...なぁにいってんだぁ! 俺はあんなんじゃ死なねぇよ! さ、さっさと家けぇって飯食うぞ! えぇと...ガキンチョ!」


 心配してくれていたことを知り気分を良くした朱莉が、房州弁混じりに語りかける。

 そんな姿を見た少年も、元気そうなその姿に思わず笑顔をこぼし答えた。


「...萩原 偽気(はぎわら いつき)だ!」


「お?名前あったのか?」


「いや? やっぱ名前ないと不便だからな! 俺が考えたんだ!」


「そぅか! ほんじゃ偽気ぃ! けぇるべ!」


 頭に血が登ったからなのか、涙を流した跡なのか......。

 偽気にはそれが分からなかったが、朱莉の目頭を中心に真っ赤に染まるその顔は、まるで空を染める夕日のように切なく、そして優しく見えた。

今回よりおまけコーナーを開設することにしました!

あとがきでは、裏話や設定こぼれ話を随時ご紹介させていただきます!

重要な情報からくすっと笑える話まで――

沢山の小話を用意しておりますのでお楽しみに!


ということで今回の小話はキャラクター紹介です。

あと波の意石ってなんぞやって質問を頂いたので軽く説明します。


キャラクター紹介① 偽気


名前 萩原 偽気

能力 波

年齢 14歳

身長 138cm

体重 36kg

好きな食べ物 とにかく美味しいものなんでも

嫌いな食べ物 ティッシュ ダンボール 紙

趣味 朱莉の教えてくれたゲーム

座右の銘 今の自分は過去を変えるために来た未来の自分

イメージソング veill (須田景凪様より)


―――――――――――――――――



〈波〉

全ての流れに波紋を起こすことが出来る。

例えばそれは大気であったり磁界であったり。

波紋は、大きさはともかく威力という概念がないので大気に幾ら波紋を起こしても普段は微弱な風を起こすだけです。

しかし、威力の概念がないというのは利点にもなり得ます。


この力は、どんなものに対しても波紋を起こすことが可能です。

例えどんな強い風であっても、どんな強い磁力であっても、波紋を起こすことでそれらの力の流れを強制的に変えることが可能なのです。

自らの攻撃力はあまり無いものの、防衛面から見れば間違えなく最強の能力と言えるでしょう。


初回なのに長くなってしまいました。

申し訳ございません。

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