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破滅転生譚  作者: chalk
第二生 孤独な少年は世界に叫ぶ
5/33

5転目 道化

 少年が絶叫を続ける中、ついにシャボン玉が地面と接触し掛けたその時。


『エアロドロップ』


 少年たちを包むシャボン玉の中は、車のエアバックのように大量の小さなシャボン玉で埋め尽くされた。

 地面との激突により、次々割れていくシャボン玉は、割れた先から新たに生み出されていく。

 朱莉のバッグから吹き出す大量の液体が次々にシャボンとなり、足りない分は朱莉自身の汗などで代用する。

 そして衝撃は徐々に減衰し、やがて二人は緩やかに地面へたどり着く。


「ぐへっ!」

「ぶほぉっ!」


「「......」」


 間一髪シャボン玉のクッションで2人とも無事地上へ降りれば、周りを取り巻いていたシャボン玉は全て破裂して消えてしまった。


「いっててて...」


「ほぉらな? 助かっただろ?」


「ほぉらな? じゃねーわ! 助かるなら先に――」


 その刹那、鈍く光る刃が少年の首元へ飛びかかる。


「のわっ!」


 少年は間一髪で身体を逸らしその刃を避けるが、その背後には道化のような男が忍び寄っていた。

 道化師の持つ黒い小刀が少年の背に触れようとしたその時――。


「うちのに何か用かァ?」


 道化師の背中にピタリと張り付けられた手のひらによって、刃は届くことなく風を切った。

 彼はその刃先を確認し、背中の違和感へ目を向けた。

 そこには季節に見合わぬスカジャンを身にまといサングラスをかけた男が立っている。


「悪いが、そいつにはまだタダ食い分の仕事が残ってんだ。さっさとそのナイフを下ろせ」


 しかし道化師は、すぐさまナイフの先を朱莉へと移す。


「あはぁ〜! やっぱりまだ生きてたんだ〜!」


「まだ生きてたとはずぅいぶんと御挨拶なこったな! お前が取り逃したんだろぉ!?」


「違うよ?僕から逃げ出すような弱虫がまだ生き残ってるんだー! って――」


 お互い一切笑顔を崩さず不気味な空気を漂わせていたが、遂に道化師の笑みは消えた。

 背に触れて離れなかった手の隙間には、極端に潰れたシャボン玉が形成されていた。

 それは空間に爆発的な力を生み――。


「だぁれが弱いだって?」

『バブルショットォ!!』


 次の瞬間、190cmはあろう道化師の身体が凄まじい速度で吹き飛ばされていた。

 だが――。


『ウォンド』

 

 建物へ衝突するかと思われた道化師の身体は、あまりに不自然な減速を始める。

 朱莉の起こした風圧により壁一面のガラスは全て粉々に砕けて行くが、ついに道化師が触れたのは、壁ではなく地面であった。

 その様は、まるで道化師の身体とビルの壁が互いに反発し合うように。


「おーいてて...背中折れちゃうってば〜思ったより強いじゃん〜」

「チッ、化け物かよ」


 緊張が走る朱莉、しかし道化師は一切顔色を変えることなく朱莉へ肉迫する。

 それは駆け寄るようなそれでは無い。

 先程の出来事を逆再生したかのように、道化師は不自然な加速し、宙を舞い、30mはあったであろう距離をあっという間に詰め寄るのだ。

 そして再び彼のナイフが朱莉へと襲いかかる。朱莉はそれを直前で躱したが――。


「ぐッッ...!」


 先程少年の元へ投げられたはずのナイフが、朱莉の背中に深々と刺さっていた。


「だめだよ〜、後ろががら空きだよ〜! これは〜、さっきの〜、お返しだよ〜!」

 

「こりゃァまた随分とご挨拶な...!」


 してやったりと顔を綻ばす道化師を前に、痛みに怯むことなく朱莉はニヤリと笑ってみせる。


「キミのそういう所が嫌いなんだよな〜」


「奇遇だなァ!俺もお前のでけェ癖にガキみてェな喋り方クソ嫌いだぜェ!」


「張り合うつもりかい?バカだね〜、もう勝負は決まった様なものなのに...」


 何か引き寄せられるような力を受け、朱莉に刺さっていたナイフは1人でに更に深く刺さる。


「カハッ......!!」


「ほら...ね?」


 深々と、それも医師がメスを入れるようにあっさりと突き刺さるナイフに、朱莉は堪らず吐血する。

 だが、彼はそれに屈する男ではなかった。

 ひとりでに動くナイフ。不自然な加減速。建物の倒壊、揺れ......。 それらから思考を巡らせ冷静に分析した朱莉は、1つの答えを導き出す。


「...なるほどォ? やっと、お前の能力が見えたぜ。 『磁力』それがお前の力か!」


「逆に今まで気付いてなかったんだ...やっぱりキミはバカだね〜」


 道化師の能力、それは磁力である。

 この力を持つ者は、自身と空間、更に生命の宿っていない物に1つずつ磁力を付与する事ができる。

 つまり、最大で一度に3つの磁力を生み出す事が可能なのだ。

 そして磁力の強さは自由に操作、遮断する事ができる。

 先程の地震は恐らくビルの中に強力な磁力を発生させた結果であろう。

 道化師が吹っ飛ばされた際に見せた 不規則な減速や反撃も磁力による物であろう。


「だが腑に落ちねェ...お前、何故俺らの場所が分かったァ」


「わかった訳じゃないよ? でもキミの事だからね〜! 適当に居そうなビルを揺らしまくってれば出てくると思ってさ!」


 この一帯は完全なビル街、手当り次第となると一体どれほどの被害が及んだかなど見当もつかない。


「適当だァ?まさかてめェ俺らのいたビル以外でも大量の人間を巻き込んだのかァ...!!」


 朱莉達のいたビルは遠目から見ても分かるほどに激しい損傷を受けており、その様は悲惨極まりない。

 磁力の発生元の被害など以ての外だろう。


「てめェはァ!自分のやったことが分かってんのか!!」


「どうせ生き返るんだからいいじゃん!」


「...貴様ァ!!」

 怒りが限界に達した朱莉を道化師は更に逆撫でる。


「あれ〜?そう言えばキミの弟も――」


「やめろォォォォ!!」


『バブリングボ――』


 朱莉は特大のシャボン玉を構えるが、道化師の懐から飛び出した1本のナイフが、朱莉へ軌道を描き襲いかかる。


「なッ!!」


 慌てて後ろへ飛び退く朱莉だが、自ら生み出したシャボン玉にナイフが突き刺さり、炸裂する。

 その風圧は、当然ながら逃げ遅れた朱莉にも襲いかかるだろう。


「ぐおあああああ...!!!!」


「だから言ったじゃ〜ん、キミはボクには勝てない」


 壁に打ち付けられ地面に突っ伏すように倒れた朱莉に対し、道化師は笑顔と言うにはあまりにも邪悪な笑みを浮かべ上げた。


「くッッそォォ......!」

 

「そんな所で休んでていいのかな?」

 

「なッ!」


 やっとの事で起き上がる朱莉だったが、ターゲットを見据えた無数のナイフ群が既に発射されていた。


「マジかよ...!」


 間一髪で足元にシャボン玉を作り出し、トランポリンの様に跳躍しナイフ群を去なすが、それらは壁にぶつかって尚、目標を失うことなく飛んでいく。


(背中のナイフか!)


 しかしそれを抜こうにも手は届かず、下手に抜けば出血多量になる事は明らかであった。


「なら...」


 道化師に目掛け小さなシャボン群を作り出すが、道化師は嘲笑うように更にナイフを取り出した。


「ナイフならまだあるよ〜」

 

「ぐああああ! めんどくせェ!!」


 近づけばナイフを投げられる。

 シャボン玉は刃物に対して無力。

 朱莉はただ避け続けることしか出来なかった。

 そしてその場にいる1人の傍観者にも、その親友を、憎き道化師を、それをただ見ていることしか出来なかった。

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