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破滅転生譚  作者: chalk
第四生 道化の涙
32/33

30転目 異名

かなりややこしくなってしまったので29転目から話数を分けました。

前回に引き続き情報量が多いです。

難しい点も多いと思いますが、読んでいただけると幸いです。

 良太の言葉に圧巻された一同は、次々に言葉を発する。


「いやいやいやバカかぁ? てめぇ! 偽気が死んでんならなんでここにいんだよぉ!!」


「そうですよ! 死んでしまったら魂毎消えるんじゃないんですか?」


「ま、まあまあ落ち着いて…。まだ続きがあるから……」


 朱莉と愛女のツッコミに、良太は苦笑いをしながら宥めていた。


「えっとね、まず僕の能力は魂を見る事が出来るって言うのは分かるよね?」


 一時は言葉が抑えきれなくなった一同も、彼の言葉に鼻息を荒くしながら力強く頷いた。


「まあ、だから僕は皆の魂が意石に宿っている事も薄らぼんやりとだけど見えている訳だ。そして偽気くんにも確かに存在している。だけど1つじゃない」


「それって、俺の魂の他にも誰かがいるってことですか?」


「いや、分からない…。意石の中はよく見えないからね。だけど、その事例は確かにある。能力者は転生を繰り返し経験を積み重ねて行くと、意石にバックアップされた情報や魂が分離する事があるんだ」


「分離…?」


 一同は次々と語られる非現実的な情報に頭を抱える。


「んー、簡単に言うと…自分の化身みたいなものが産まれるんだよね。だけど偽気くんはまだその水準を満たしているようには見えないし…そもそもどちらの魂も随分と弱っているように見える。だから一度死んだ終の使徒がなにかの影響で戻ってきたのかと僕は考えた訳だが......。正直僕にも分からない事は多い。だから僕の考察は必ずしも当たっている訳じゃないって事を念頭に入れて置いてね!」


 頷き続ける一同を眺め、良太は先程の言葉の意味を語り始める。


「さて、ここからが本番だ。まずさっき言った異名『終の使徒』これは本当に偽気くんの物かは分からない。何せ『終の使徒』は、『終人』と共に死は既に死んでいるはずなんだ。過去に起きた大戦争…滅期30年の争いでね」


 滅期30年、それは朱莉が偽気と初めて出会った日に触れていた厄災の年である。

 現在は滅期54年であり、朱莉は30年からループし始めた為、24度のループを経験している。

 しかし、滅期30年の朱莉はまだ能力も知らずただ破滅の日まで息を潜めていた為、詳しい事は知らない。

 滅期30年の事を知らなかった愛女はその年に起きたことを良太に聞くが、彼は「思い出したくもない」「話が逸れてしまう」「いずれ分かる」等といいまともに語ろうとはしなかった。


「それと、君のあの変な構え…。確か……『我流 四転前方の型』だっけ? あれは終の使徒の技なんだよ」


 変な構えというフレーズに偽気は怒りを覚えたが、そんな事に思考を向けている暇などない。

 偽気は疑問を問い掛けた。


「なんでそんな事まで分かるんですか…?」


「まあ、終の使徒はちょっとした有名人だったからね。他にも君が使っていた『空螺旋』なんかも終の使徒の技だ。」

 

「なるほど…だから三波さんは俺の技を使ってたのか……。今度会えたら色々と聞かなくちゃな」


 話を聞いた偽気は、これまでの疑問に答えを導き始める。


「正直魂達ですら死んでしまった意石持ちの記憶は覚えていないから、これまでの話だって確証の持てる話ではないんだけどね…」


 良太は少し申し訳無さげに苦笑いをする。

 

 「そんなこんなで僕や『狂乱の道化師』......つまり狂死郎君は君の事を、死んだはずの終の使徒だと思っている訳だけど......。それにしても君は記憶が一部欠けていると来たものだ……。その記憶が例え終人のものだったとしても、今の君の記憶の穴には多くの矛盾がある。それは自分で作った技や術をすっかり忘れてしまっているという事だ。例えそこに終人が関わっていたとしても、技を生み出す過程なんかは忘れるはずがないからね。」


 魂を通じてあらゆるものが見られる良太なら、狂死郎を知っていても不自然はない。


「あの、1つ気になることがあるんですけど、もし一度意石を手放してしまった人がもう一度その意石を手に入れた場合はどうなるんですか?」


 「いい質問だね! 愛女さん」


 悩ましい顔で偽気が苦しむ中、いち早く話の整理をつけ疑問を投げかける愛女に、良太は指を鳴らし笑みを浮かべた。


「自分で試したわけじゃないけど、一応同じ意石であればそれを手にした瞬間に記憶が蘇るみたいだ。別の意石だとそもそも転生もできないし記憶も戻らない。恐らく魂がリンクできる意石は1つだけなんじゃないかな? 偽気君がそうなのだとしたら、記憶がほとんど戻らない上に滅期30年以前からいる僕や狂死郎君が偽気君を知らないのは聊か不可解だし......。その線は薄いかもしれないね」


 余裕の表情を浮かべながら説明をしていた彼だったが、この話には腕を組み首を傾げていた。


 「この間君に問診をした感じだと、君はまだ多くの事を忘れている。一先ずこの話に着いてより詳しく知りたければ、自分の過去を探ってみるしかないかもしれないね。」


「分かりました…。色々とありがとうございました」


 多くの事を知った一同だったが、それはより謎を呼ぶものばかりである。

 もし彼等が今パンドラの箱に手を掛けていたのだとしても、それを止めるものなどいない。

 彼等がこれから訪れる混沌を知るのは、もう少し先の話である。




 話を終えた良太が退出し、これまでの話を整理した一行はこれからに着いて話し合っていた。


「ねぇ、これからどうする?」


「んな事言われてもなぁ…愛女こそ月詠でなんか見なかったのかぁ?」


「んー、見たには見たんだけど、不明瞭というか…知らない男の子の顔が見えた……的な?」


 月詠はあくまで自身の命に関わる事態がある際に、生き延びる術を授かるものである。

 不明瞭という事は恐らくそこまで危険な出来事が存在しないのだろう。


「んー…俺の記憶って言っても、手がかりも何も無いし……」


 三人は答えが出ないまま窓に映る景色を眺めた。

 そこには美しく燃える赤い太陽がこちらを照らしていた。


「まぁ、考えても仕方ねぇ!もうすぐ時間だ!」


「それもそうだな!生きてさえいればこの先で答えが分かるかもしれないし!」


「そうね…まずは皆で生き残りましょう!」


 こうして偽気、朱莉、愛女の三人は今いる世界に別れを告げ、次の転生に身を任せるのであった。




 







「そういえば三波さん達って元気にしてるのかな?」


 偽気は自身の手がかりとなるかもしれない彼女の事を思い出し、それとなく口にした。

 二人はその質問に暫し考え込む。

 

 そして――。











「三波ぃ…?誰だぁそいつはぁ」


「……あれ?誰だっけ?」


 事態は少しずつ動き出していた。

 彼らにとってのパンドラの箱は、既に開き始めているのかもしれない。

今回の小話は皆がいつから転生し始めたのか紹介します。


・萩原 偽気 → 滅期51年

・勝浦 朱莉 → 滅期30年

・篠尾 愛女 → 滅期42年

・才善 良太 → 滅期18年

・小野寺 京四郎(狂死郎) → ?

(第○生の数字は滅期に50を引いた物と覚えて頂ければ幸いです。)




三波や一輝、二娯郎はいつですかって?

……さあ、誰の事でしょう。

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