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破滅転生譚  作者: chalk
第四生 道化の涙
29/33

27転目 恐怖

 深夜の病院にて、不規則な足元を小さく鳴らす朱莉。

 その隣で、軽快なステップを踏む偽気が非常口の明かりだけが照らす廊下を行く。


「なぁ、百歩譲って肝試しは分かるんだがよぉ...」


 朱莉が小さく口を開く。



「乙女の部屋に侵入するってのはどうなんだよ」


 そう。

 二人が今向かっているのは――。


「いいじゃんいいじゃん! 修学旅行?では恒例行事なんだろ?」


「行事じゃねぇし学校でもねぇ...」


「こう...なんかさ......学校っぽい事すんの夢だったんだよな......」


 麗しき乙女の聖域......。

 愛女の部屋である。

 偽気はウキウキで歩みを進めるが、流石に朱莉は抵抗があるようで、あまり乗り気では無いらしい。


「まあ、事前に愛女には言ってあるから大丈夫だろうけどよぉ......お前、デリカシーないと嫌われるぜ?」


「え...? 嫌われるの?」


 朱莉の言葉に心を刺された偽気の表情はみるみる変わり果てた。

 ここまでとは思わなかった朱莉は慌てて擁護する。


 「いや、まあそういうのやり過ぎるとって話だ! 大丈夫だから落ち着けぇ」


「良かった......」


 そんな会話を挟みながらも、二人は愛女の病室の前までやって来た。

 しかし、偽気は扉の前でピタリと動きを止めた。


 「......なああかりん」


「なんだよ」


「...緊張する」


「なんでだよ!」


 先程までなんの躊躇いも無かった偽気だったが、初めての体験故か、はたまた思春期男子の性だろうか。

 これには朱莉もツッコミを隠しきれなかった。


 「んなもん普通にはいりゃあいいだろうがぁ」


 「あ、心の準備が......!」


 朱莉は、偽気の心など否応なしに扉を開けた。

 しかし――。


 「......ん? 誰も居ねぇじゃねぇか」


「あれ、本当だ......」


 室内は閑散としており、開け放たれた窓からの月明かりと穏やかな風が部屋を支配していた。

 風に靡くカーテンを見た一行は何か嫌な予感を覚えてしまう。


「な、なああかりん......。もしかして攫われたとかじゃないよね...?」


「アホ! んな訳あるかぁ!! きっと……あれだ、お手洗いに――」


 朱莉はトイレを指差し後ろを振り返る。

 偽気もそこに便乗し、背後を確認した。

 しかしそこにいたのは、黒く長い前髪で顔を多い、白い着物を身に纏う女性である。

 だが朱莉が言葉を止めた理由はそれだけではなかった。

 その女性の足は透けていたのだ。

 そして、二人がリアクションを取るその前にその女性はその場から姿を消した。


「なああかりん......? 今のって――」


 偽気が堪らず声を漏らしたその時である。

 背後、つまり愛女の病室からひたひたと足音が聞こえて来たのだ。

 その音を鮮明に聞き取ってしまった偽気はもう動けない。

 ただそのまま固まりそこに立ち尽くす事しか出来ないのだ。


 やがてその足音は鳴りやんだ。

 それは偽気の僅か後ろ。

 背中からは苦しげな吐息が聞こえ、偽気の鼓動をより一層早めていった。


 そして――。






 「ばあ!!」


「ぎゃああああああああ!!!!


 


 ......てあれ? 愛女さん!?」


 偽気の背後に立っていたのは、いつもの可愛らしい笑顔を浮かべた愛女であった。


「どう? びっくりしたでしょ!!」


「び、びびびびびびっくりなんてししししてないけど!?!?」


「嘘つき〜!」


 明らかに同様しながらも、必死に虚勢を張る偽気を見た彼女はイタズラな笑みを浮かべていた。

 満足気なその表情にムッとした偽気は仲間に助けを求める。


「こ、こんくらいでビビる訳ないよな! なああかり――」


 朱莉の方を見やり助けを求めた偽気だったが、朱莉が反応を示すことはない。

 しかし朱莉の首筋には汗が伝っており、更によく見ればいつものTシャツから水が滴る程に濡れていた。


「な、なあ……あかりんってもしかして」


「……うん。もしかして……」


「「お化け怖い……?」」


 その言葉に朱莉は一度大きく身体を震わせると、振り向きようやく言葉を発した。


「そ、そそそそそそんな訳ねぇだろぉ?

 俺様がこここ怖がるなんてそんな……」


 彼は虚勢を張っていた……。

 それを見た愛女はほくそ笑み、自身の背後に再び足の透けた女性を映し出した。


 「ぎ ゃ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! !」


「……まじで?」


 初めて聞く朱莉の情けない叫び声に、偽気は驚愕する。

 そのまま腰を抜かした朱莉を眺める愛女は、背後に作っていた羽根のスクリーンを消し大いに笑っていた。


「あははは!!大丈夫だって。さっきのも私が映し出した映像だから」


「て、てめぇ!! よくもびびびびびびびらせやがったなァ!!」


「やっぱりあかりんビビってたんだ」


 自ら墓穴を掘る程に動揺を露わにする朱莉に、最早冷静になった偽気は静かに突っ込んだ。


「ほんとあかりんって絶対前世女の子よね……!」


「ってかなんでそんなにビビりなのに肝試しなんか引き受けたの?」


「ば、馬鹿野郎! 断じてビビっちゃいねぇ!!」


「なるほど、強がってた訳ね!」


「ちげぇよ!!」


 朱莉の言葉が二人には受け入れられるはずも無く、特に腹黒天使こと 篠尾愛女からはこれでもかと言わんばかりに笑われたのであった。




 ――――――――――――――――




 落ち着きを取り戻した後、一行は本格的な肝試しを開始した。

 暗い廊下を歩く中、一人足取りの重い男が口を開いた。


「……なぁ、やっぱやめにしねぇかぁ?」


「おやおや天下のあかりん様も流石のお化けには勝てないんですかねえ!」


「全くね! そんなに厳つい見た目して、私達より小心者だったなんてちょっと幻滅しちゃったかも!」


 朱莉が何を言おうとも、煽られるばかりである。

 特に聞き覚えのある偽気のセリフには嫌な思い出を呼び起こされたのか、朱莉は激昂する。


「ん、んな訳ねェだろ!

 野郎ども! 俺に着いてこい!!」


 そうは言ったものの、彼は依然として前に立とうとはしなかった。

 一行が楽しげ?に探索をする中、偽気はある物を目にした。


「……あれ? 今、そこに誰かいなかった?」


 偽気がそう言って指を指した先は、中庭を囲うガラス張り廊下。

 その曲がり角である。


「ま、まっさかぁ!! 俺たちが反射して映ったとかじゃねぇの?」


「そんなバカな!確かにさっき黒髪の女性がそこにいたんだよ!!」


「で、でも今回は私も何もしてないよ……?」


「……え?」


「じゃあ……」


 一行の背筋が再び凍りつく。

 この世界史上最も恐ろしい肝試しはまだまだ始まったばかりである。

今回の小話では、あかりんの怖いものとその理由を聞いてきたのでそれを赤裸々に暴露してしまいましょう!


・おばけ

なんか怖い。呪い殺されそう。

・日本人形

なんか怖い。家にあったら絶対寝られない。

・怖い話

なんか怖い。雰囲気がもうなんか怖い。

・和風ホラーゲーム

なんか怖い。ていうか怖くてやった事ない。

・親父

怖いというか一生勝てる気がしない。


以上です。

以外にもゾンビなんかは怖くないらしく、あくまで日本のおどろおどろしい物が怖いみたいです。

いやぁ……やっぱあかりんって――


え?どうしたの母さん……誰か来た?

……ヤクザ!?

……勝浦朱莉!?!?


それではみなさんま

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