伝説の三頭犬-4
「あなた!!しっかりして!!」
声をかけているのは、カ・キオーかっこよめだ。
「メザメノキスヲ、シテ、ク、ダサイ」
メカメカしい声でブルくんが言った。
「----早く起きないと、今月のお小遣い減らすわよ。」
バシュン
上官に一喝入れられた新兵の如く、ものすごい勢いで立ち上がった。
ちなみに、その目は泳いでいた。
「死ぬかと思ったっす」
「俺ら今、一度死んだぜ」
ちゃめしとぱち公が、やれやれという感じで起き上がった。
「みなさん、本当にすみませんでした。」
「大丈夫っす!嫁さんのリザレクトがあったっすから」
「気にすることではないのである。」
「サクリュウさんの、驚きようも面白かったですし♪」
頭を下げて謝っているサクリュウに、皆が楽しそうに、まるで遠足に来ている子供達のような雰囲気で言葉をかける。
「それじゃあ!探検の続きをするっす!!」
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「結構深くまで来たであるな。」
あれから約30分。
何体かのガルムとは戦ったが、それ以外にモンスターやトラップはなかった。
「というか、ここさっきも通りませんでした?」
不思議そうにカ・キオーかっこよめが言う。
「なんか似たようなとこばっかりであるな。」
「でもっすね、あそこ見てくださいっす。」
指をさしたのは壁に垂れ下がる何かの蔓だ。
「あれしっかり覚えといてくださいっす。じゃあ次の部屋行くっすよー。」
この洞窟はいくつもの部屋に分かれている。
一つの部屋は四角い箱のようになっており、壁からは蔓や苔が生えている。
四つの壁のうち、一つは入って来た扉、残り三つの壁には、それそれ同じ扉が付いている。
その三つのうち、一つを開けて次の部屋に進むのだが、その先の部屋も同じような部屋なのだ。
普通のプレイヤーなら迷ってしまうトラップだが----ちゃめしは、冒険系のコンテンツにかけてだけはプロだ。リアルでも頭の良さ、回転の速さだけは常人ではない。
「さっきのとこにあった蔓を見てくださいっす。」
「蔓から生えてる葉っぱの枚数が増えてるわ。」
「そうなんですっす!!」
自慢げにちゃめしが答える。
「推測ですけど、多分あの蔓の葉っぱが一定数行くと、このトラップを抜けられると思うっす。」
その言葉に、一同は改めてちゃめしの能力に感心する。
「じゃあ、今は右の扉に入ったであるから、今度はまっすぐ行ってみるであるか?」
「そうしてみるっす。」
目の前の扉を開け、次の部屋へと進んだ。
「今度は、蔓の葉っぱがなくなっていますね。」
「多分ハズレだったんっす。」
「葉っぱがない時は右で次の部屋に行けたっすから、ここは右っす。」
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ギルド・テルミット一行は、ちゃめし論を使い、無事にトラップを抜けた。
「ふぅー...やっと終わったっす...」
「結局、葉っぱの枚数10枚になってたわね...」
「こんなトラップはもうこりごりだz...である」
一行は疲れ切った様子であった。
「でも、やっと出口みたいですよ!」
「もう出口なんすか?宝箱とかまだ何も見つけてないっすよ!!!」
洞窟の奥の方から光がこちらに差し込んできている。
「でもここは洞窟...光なんてないはずなのに」
ターシャが不思議そうにしているが、皆は光に吸い寄せられるように進んだ。
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光の先には沢山の花が咲く平原が広がっていた。
天井には光り輝く無数のクリスタルで埋め尽くされていた。
「あのクリスタル見たことあるっす!」
「よく見ると何か別の光で輝いているというより、クリスタル自体が光っているように見えますね」
「あのクリスタルは<シャイム>というアイテムだったと思うっす。採取なんかもできるみたいっすけど、ある程度のスキル熟練度がないと取れないっすから今は誰も採取できないっすね」
テルミットのギルドメンバーは主に、戦闘に特化した者しかいない。それ故に、生活系のスキルを取っている者などもいない。
取っていても、上位ポーションを作るスキルぐらいだ。
「先もあるみたいですし、気を取り直して探索を続けましょうか!」
ターシャの一言で皆気づいたように動き出した。
「よし!それではみなさん行きましょう!」
「「おぉー!」」
「ところで、ちゃめし殿はどこに行ったであるか」
気づいた時にはちゃめしだけが洞窟の奥へと進んでいた。
ターシャはクスクスっと笑いながらご主人と一緒に奥へ進むのであった。
わぉー、半年もかけて全く進んでないー