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いきなり水着回『超ド級イカタコ合戦 スプラッタゥーン』

暴力的な表現(※イカ)があります。意識高い系・イカスミなどのブラックな表現もありますので不快な方は閲覧をお控えください。

「おお、タコよ。可哀想なタコよ。こんな無残な姿にされてしもうて…

大いなる海が育んだお前たちの体が、それが陸で生まれ育ったワシの体に染み渡るようだ。

何度も言う、ワシらは仲間だ!いずれワシの血肉に変わり、ワシと共に勇者を倒してくれよう」

「たぶん潮の味が染みわたってるからじゃないですかね」

「ヤマトさん、はしたないですよ」そうメイド長に釘を刺される。

ハムッ…隠すようにして焼きタコをほおばるが、たれた肉汁がメイド長の胸もとを伝う。

艶やかに輝く谷間、見取れていると。

「お前には仲間を弔う気持ちはないのか!」と頭に焼タコの串を刺される。

ムシャムシャとタコを貪る女王、その姿に仲間を弔っている雰囲気など微塵も感じることはできなかった。


あの満載配達の翌日。

ちょうど今日は休日で、この女王から解放されると思っていたが、『勇者を倒す』などと言ってしまった以上、その討伐には参加しなければならない。

「しかし今日は休日だと言っていませんでしたか?」

とメイド長が訊いてくるが、どうしてここに来ているのか?訊いているではなく、どうして制服を着ているのか?ということを訊いているのである。

「一応お客様のところに来ているわけですから、正装でくるのは当然のことかと。さすがに車は自家用車ですが」

そういってアクアブルーのプリウスαを指さす。

「なんだかトゲトゲしてて可愛らしくありませんね。私はいつも乗っている小さい箱型の車の方がかわしらしくて好きですよ」

「はあ、そうですか…」

「しかし、馬車で行かれてはいかがですか。この車の乗り心地はお世辞にも褒められたものではありませんが」

「しかしこの国の馬車よりはるかに良いと思いますが…」

そういって突き返される。その後ろにはビーチパラソル、ビーチボール、クーラーボックスがあるが、当然この世界で売られているものではない。

そして、俺はこれらを配達した覚えもない。

「いつの間にこんなものを頼んでたんですか」

「ちょっとしたサプライズで用意しました。姫がどうしてもというものですから」

「はあ、そうですか…」

今日に向けていろいろ勉強をしていたのだろう。昨日配達したものも恋愛シミュレーション(※R−18指定)であり、海辺のシーンもあった。

自分の部下がレイ○されている隣で、自分はバカンスなのか。

いささか不謹慎な感じがしないでもない。しかしメイド長まですでに水着姿であるのに何も言えなくなった。

「よし、出発じゃ!」

先に築地の魚屋装備の近衛軍団が海で待っている。

どうしてそれと一緒に行かないのか、軍団の士気に関わるとは思わないか、いろいろと言いたいことはあったが、俺の車に乗って行きたいというのだから仕方ない。

保護者と子供が海水浴に出かける、まさしくその様相であり、それだけ年を取ったような感じがして嫌だった。いちおうだが美人の嫁さん万歳!

「なあ、ヤマトよ。この車少し匂わんか。ちゃんと掃除せい」

「他人のことが言えた義理ですか」

「すいません、今日は念のために釣り具を持ってきたんですよ」

その匂いの元となっているタックルボックス。かなり年季が入っていてこの異臭を納得させるほど黄ばんでいる。

「釣り具とな?」

「はい。学生の時分、海によく釣りに行っていたんです。今日はそのころの道具を引っぱり出してきました」

「ほう、マグロなんかを釣ったりするのか。楽しみじゃのう」

『なにゆえマグロ…?』

そうして一時間半。

「女王様着きましたよ」早くもお眠の女王様を起こす。

やはり子供。目的地に着いたとたん、ぱっちり目を開いて、浮き輪片手に全力疾走していった。

その後を追い海岸へ。

マーメイドたちはこの海岸から見える小島の洞窟を住処としているという。

やはり想像通り混沌とした光景が広がっていた。全員で地引網漁をするかのような大軍が規則正しく、女王の到着を待っている。

その中で異彩を放つのがベルガ隊長。もともと褐色の肌が漁師のそれを思い起こさせ、誰に教わったか知らないねじり鉢巻きを額に巻く。

「しかし女王様、こんな色気のない格好でモンスターが襲ってくるなどとよく考えますね」

「ワシが囮じゃからその点は問題ない」

「あ、そうですか…」

「なんじゃその淡泊な反応は?ワシかて自分の民のことを心配して囮役を買っておるのだぞ」

「いやあ、囮としてはいろいろ色気の色が足りていないような」

「何を言うか!ワシの身体を見てセクシーな体だと褒めてくれた者もおるのだぞ」

「ではその殿方と結婚なされてはいかがですか。姫は人間ならばすでに結婚していてもおかしくない年なのですから」

「…い、いやじゃ」失言だったのだろう。そういうとふて腐れてしまった。

「えっと…おいくつなんですか」

「48です」

「コラー!レディの年齢を簡単にしゃべるな」

「女王は火神ゴーダの血を引く半神。500年近く生きる血統なのです。75歳のころ成人を迎えるそうですが」

「はあ…」壮大なファンタジーに食傷気味なのか、それを聞いて苦笑する。

女王の精神年齢の幼さに苦々しいものを感じただけだろうが…

淡い髪色の魚屋さんが箱鏡(※手持ちの水中メガネ)を片手にモリを突き。

ねじりハチマキの大将と真っ赤なビキニの少女がビーチバレーに興じている。あまりに釣り合いが取れていなくて、ファンタジーな感じがする。

かくいう俺も制服の上からウェーダーを着込んで岩場を探っているのだが。

「いやあああああああ!誰か助けてぇ」悲鳴が耳に飛び込んでくる。

水の中で悶え苦しむ女戦士。しかし、想像していたのとはあまりに異なる。

野太い触手に絡みとられ、その起伏が強調されるほどに強く締め上げられているのか、と思いきや…

ただ内股で悶えている。デリケートゾーンのかゆみならお近くのドラッグストアへどうぞ、といった感じだ。

そして下品な高笑いが耳に飛び込んでくる。

「アーハッハッハッハッ!戦争女王じきじきにお出ましとはずい分余裕なことだな」

手漕ぎボートに乗る女が一人。なんだアレはまさか一人で漕いで来たのか?

激しい無能臭に顔をしかめる。まさか敵もこの調子か?

「お、お前は勇者一行の猛獣使い(※チン○に弱い)!」と女王。

「はしたない!」とウリ。

後でスイカ割りしようと置いてあった、代替品のウリが女王の頭でかち割られる。

ここ人間のすべての固有名詞にその注釈がつくんじゃないのか?俺は首をかしげる。

その間も猛獣使い(※チン○に弱い)が一人事情を説明しつづけていた。包み隠さずしゃべり尽くそうとおするあたり、ネット炎上系に近いものを感じた。間違いない、この人も無能だ。

どうもウェーダーの中にイカが入りこんだらしい。

しかしコテコテの漁師装備のままやられているとは…生温かい笑みがこぼれてくる。

仲間に『取って』と助けを求めているが、それを助けにいった戦士がまたイカに侵入されている。もはや泥沼である。

「女王さま、助けに行かなくてもいいんですか?」

すると胸元を隠して、ほおを赤らめ。

「行けって言うんなら…行ってもいいけど。もしワシがイカたちに捕まって○○○されるようなことになったらちゃんと助けてくれる?そして穢れきったワシの体をお前の純白の液体で清め…

「黙らっしゃい、このマセガキが!」

「ぎゃふん!」

メイド長の無礼講の一撃。異文化的スイカ割りだ。

当然といえば当然なのかもしれないが、ここのメイドはこれでいいのか?

「いいんですか、放っておいて」

「大丈夫だ、問題ない」女王が代わりに返事をする。

「あなたが言わなくても問題大アリなセリフですけどね」

パチンッと指を鳴らすと水面から黒い影が飛びだす。

タコだ。そして戦士たちを救出せんと次々にウェーダーの中に飛びこんだ。 

しかしその喘ぎ声は勢いを増した。

イカとタコがくり広げるウェーダー内の一戦。それは戦士たちの顔をまっ赤に染めあげた。

しかしタコが加勢したことも、女戦士にとってみれば恥の上塗りでしかなく、顔は相変わらずの赤一色。

イカの一方的な展開に終始した。マンメンミ。

「余計大事になってるじゃないですか」

「クククッ…バカな奴。タコを連れてきたところで足は8本しかないんだよ。イカは10本。2本すくないのをどう埋めるっていうんだい?」

「たぶんそっちの問題じゃないと思うけどなあ」

実はイカに比べてタコの触手の力は強い。女王がイカではなくタコを味方に引き込んだのはあながち間違いではない。

実際ウェーダーの中からイカを引きずり出している。8対8触手の絡みあいが起こってウェーダーから飛び出しそうになっている。

その支えとなっている、残りの二本がどこに食い込んでいるかは割愛しよう。

混沌とした現状であるが、俺からすれば所詮イカとタコでしかない。

イカタコの吸盤が互いの触手に貼りつき、暴れなくなったのか。ウェーダーの中の動きが見られなくなる。

しかしその苦痛(※快楽)から解放されても、立ち上がってくるものは一人もいなかった。

快楽に弱すぎるだろ、このバカども。

「まったく役に立たないヤツらね!」…それは俺のセリフだと思う。

「ホラ出ておいで、そこの人相の悪い男をやっちまいな」

そうして大量の水しぶきを上げ出てきたのが、デカいイカだ。

おおよそ2mほど。クラーケンを想像していた、俺にはいささか拍子抜けだった。

それでもあんな普通のイカにしてやられている、女戦士たちには十分すぎる相手だとは思うが。

足を天に向かって突き出し、威嚇するように俺と対峙する。

その10本の足、各々にマッサージ器の電極を貼りつけている。実際こうして見てみると無様なものだった。

足は人間の四肢には全然及ばない細いものだし、電気マッサージ器なんぞ最大出力でも筋肉をひくつかせる程度の力しかない。

こちらには銛もある。

「どうだ。驚いたか!コイツがこの海のマーメイドたちを地獄のどん底に陥れたクラーケンさ」

いいとこダイオウイカという感じだが、これがクラーケンなのだろか。

これで張りあおうという姿勢が癪に障った。

「あっ、ふーん(察し)君みたいなのを意識高い系っていうんだ」

「…意識高い系?」

「何?自分で電気一つも起こせないくせに、『出来る人』きどって、毎日毎日女の子をいただいちゃってるんだ?ふーん(察し)」

「馬鹿じゃないの?妖獣でもないただの獣に五代神が魔力を与えるはずないじゃないだろ。魔力なんてなくてもアンタみたいな雑魚っ…

「はあ。強モンスターみたいな雰囲気作っておいて、ただデカいだけのイカ。なんか白けるよね〜キミみたいなのが周りにいるとさあ…」

「はあ?白けるとか関係ないっしょ?!」

「そうかなあ…モチベーションって大事よ。この世界で生きてくためにはさあ」

「いやあお嬢ちゃん、僕はキミと話してんじゃないんだよ、キミのとこのイカ君と話してんの。わかる?」

ガンッ!そばにあったクーラーボックスを八つ当たりで蹴りつける。

「…」

「食べてアンモニアくさかったら殺すからな、イカ」俺は包丁を手に取る。

「「ヒィッ」」

「そもそも…食べるのに殺さないっておかしくない?」獣使いが震えながらも反駁する。

「活け造りだって言ってんだよお!!」両腕の刺身包丁を振り下ろした。

しかし両手で刺身包丁を振るバカなどそうそういない。

足の一本を引き換えに腕に巻きつかれ、上体の自由を奪われる。

「アハハ馬鹿なヤツ。ナイフもまとも使えないくせに戦士気どりとは笑わせる。やっちまいな」

「ヤマト!!」女王の黄色い悲鳴が鼓膜をひっかく。

だが俺にはまだ武器があった。まだ動かせる左腕をウェーダーのポケットにつっ込みそれを取りだす。

「ギジエストライク!!」

説明するまでもないが説明しよう。ギジエストライクとは、イカ釣り用のギジエをフックを向けてイカの口にねじ込む、ただの暴力である。

グチャ、ブチブチ、などと生々しい音を立て、腕がイカの口の中に潜っていく。二の腕のちょうど真ん中あたりまで進んだところで引っかかった。無理に押し込んでもイカの腹が卑猥に膨らむだけだった。

腕に絡んでいた触手の力は抜け、その両目にはすでに生気は感じられなかった。

「さあ、食べましょうか?」

メイド長と女王は腰を抜かしている。

猛獣使い(※チン○に弱い)はいつの間にか姿をくらませた。

ハラワタがすでに潰れており、中はイカスミまみれ。

これだけ量があるならイカスミスパゲッティもいいかと思ったが、通常のイカにはない謎の汁が混ざっていそうな気がして断念した。

「しかし意識高い系とは一体なんなのですか?」

「そうですね…」

「ああ、昔ウチのセンターに『流通にイノベーションが起こる』『アマゾネスなんかの大手サイトがショッピングを支配するようになるからムサシに入った』っていうイタい新卒の子がいたんですよ。彼に似てたんですかねえ」

「なるほど。その時の経験から勝機を見出したというわけですね」

「ええまあ…あの時、俺が砕いたのはアイツの幻想だと思ってたんですけどねえ」

「あっ、ふーん(察し)」

こういう冗談の通じない人って嫌いだな…俺は視線を海に戻した。

醤油とワサビは持参したが、大葉や生姜などの薬味も欲しい。

これでビールがあれば最高なのだが、これから4時間運転しなければならないのだからそう文句も言っていられない。

女王がワサビに悶え苦しんでいる。俺が醤油に溶かして食べるのではなく、お刺身の上に乗せて食べるんですよ、と教えると素直に実行し、辛味の洗礼を受けた。

「そういえばここ数年まともな魚介類食べてなかったなあ」

朝6時半サラリーマンより早く出社し、スーパーのタイムセールが終わった10時前に帰宅する、真性のブラックなのである。

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