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夜桜のメモ3  作者: 夜桜
短編
3/8

騎士団団長は齢9歳のツインテール少女です

とある森の中。

今、目の前には赤色の巨大なドラゴンがいます。それはそれはもうおとぎ話に出てくるようなドラゴンでして、えぇ、もちろん口から炎をアホみたいに吐いておりますよ。

ゴーゴーゴーゴー、熱くてうるさいしもう帰りたいのが本音。


「オレらは援護しますのでリオン団長はいつも通りに遊撃を!」


そう言って先陣を切ったのは騎士団の副隊長であるアーノルドさん。身長は180センチを越えているのは当たり前。そして、明るいサラサラの茶髪にエメラルド色の瞳。顔立ちは整っていて私のお兄ちゃんと少し似ているかも。


アーノルドさんに続くのは騎士団の仲間達。剣や銃や魔法の杖を持ってドラゴンに立ち向かいます!


「はい!」


私は走っていく仲間たちを見送りながらアーノルドさんに返事をしました。そして、私は手に持っていた竹刀を素早く錬金術でいつも使っている武器へと変えます。


一方、アーノルドさんが腰からRPGに出てくるような大きな剣を鞘から抜くと刃が勢い良く燃え上がりました。

これは、何度見てもかっこいいのですよ〜、私も自分の武器を燃やしてアーノルドさんみたいにカッコ良くしたいけど熱いのは苦手だからダメなんだ。

なんて、そんなことを思っている場合じゃなくて今はこのドラゴンを討伐するのが先ですよね。


「避けてください!」


ドラゴンがくるっとその場で一回転しました。だから、ドラゴンの馬鹿でかい尻尾が森の木をなぎ倒し、右側からこちらに向かって来るので当然、当たります。

でも流石、騎士団の副隊長アーノルドさん。燃え盛る炎の剣で巨大なドラゴンの尻尾を止めました。その真剣な眼差しに齢9歳の私の純粋なハートは見事に撃ち抜かれます。


「うぉおおお」

「アーノルドさんかっこいい」

「リオン団長、ぼやいている場合じゃなくて」

「は、はい。ごめんなさい」


アーノルドさんが頑張っている間、仲間たちは大小様々な剣で攻撃したり、魔法の杖で怪我をした仲間を回復中。そして、騎士団隊長の私は武器をしっかりと持ちドラゴン目掛けて突っ込みます。


齢9歳の脚の速さは戦闘に不向きだけど魔法で私の脚を強化してあるのでスピードはもの凄く速い。その証拠としてドラゴンとは500メートルくらいあったのに辿り着くまで3秒も掛かりませんでした。


「よっと」


ドラゴンにあと、数メートルと言うところで地面を強く踏みジャンプ。さっきの通り私の脚は魔法で強化してあるのでこれくらいは簡単に出来ます。

ふわりと宙に上がった私の体はドラゴンの頭よりも遥か高くに位置しまるで、私がドラゴンを従わせているような感じ。


「ギャォーッス」


ドラゴンが変な鳴き声を上げると、それまでは地面にいる仲間たちを見ていたのに急に上を向いたかと思うと口を大きく開けました。

うわ、嫌な予感。喉の奥の方では赤い何かがじわじわと這い上がって来て火炎放射のように大きな炎が私を襲います。


「リオン団長!」


アーノルドさんの声が脳内に響く。きっと私が炎に焼かれてしまうと考えたのでしょう。

だかしかーし!私はこれでもリスファリア国、第3部隊の騎士団団長だ、これくらいのピンチを乗り切れないわけがない。


「私を甘く見ないでね、ドラゴンさん!」


左手に武器を持ち、右手で空中に魔力で文字を書きます。ここは日本じゃなくて異世界のリスファリア国だからリスファリア文字でさらさらっとな。

そして、炎が直撃する前に私が書いた文字が水色に光り、巨大な鉄砲水が炎とドラゴン目掛けて発射されました。


チュッドーーーーン


もちろん、炎は消化されドラゴンは鉄砲水を浴びて気が緩んでいる。叩くなら今だ。私は自分の武器、そうピコピコハンマーを魔法で巨大化してドラゴンの頭に振り落としました。


「当たってくださーい」


ピコっ!


大きいのにも関わらず、音はピコっと可愛い音が出るのが私の武器(あいぼう)の特徴。見た目は絶対にそんな武器でドラゴンを倒せるわけがないだと突っ込まれるかもしれないけれど、このピコピコハンマーは違う。


このピコピコハンマーは最強なのだ!


その証拠にリスファリア国王に命じられた南にあるカルヴァ森に住み着き悪さをするドラゴンを討伐出来たからね。

あっ、討伐と言っても内容はドラゴンを気絶させてドラゴン使いの人に渡すんだよ。そのあとは確か、ドラゴン使いの人に調教されて悪いドラゴンから良いドラゴンになって森に放されるとか?

私もまだ日本からリスファリア国って言う異世界に来たばかりだからそこんところはまだ、詳しく知らないんだよね。


「フィオナさん!ドラゴン、ちゃんと気絶していますか?」


ドラゴンの体の上に降り立った私は回復系の魔法を専門に使う魔導師のフィオナさんに声をかけました。もちろんフィオナさんはちょこっと頭がお花畑だけど、優しいお姉さん。


「えぇ、大丈夫よ」

「良かった」

「それではこのドラゴンはどうしましょうか?」

「魔導師たち全員でドラゴン使いの人が来るまで動かないように動きを封じてもらっても良いかな」


私が指示すると部隊にいる魔導師たち全員がドラゴンを囲み何やら難しい呪文を唱え始めました。

すると、全員の魔法の杖から金色に輝く鎖がニョキニョキと出て来てあっという間にドラゴンを動けなくしていきます。


「なぁリオン隊長ってあんな小さいのになんで騎士団団長なんかやっているんだ?」


私から斜め後ろの方でまだ新しく入団して来たばかりの剣士が隣にいる仲間に小声で声をかけていました。


「しかも、噂では異世界から来たとか」

「お前、知らないのか?」


新人だから知らなくて当たり前だよ。それに、この歳で騎士団団長とか私自身が驚いているもん。


「あぁ、私のこと?」

「リオン隊長!」

「いーよいーよ、そんなに気を遣わなくてさ」


私はピコピコハンマーを元の竹刀に戻して新人剣士に自分のことを簡単に話しました。


実は私、楠原(くすはら) 莉音(りおん)は日本と言う国で小学5年生でした。背は低くて見た目は童顔、黒髪ツインテール、自分はいかにも妹属性だなーと思う。でも、年の割りには大人びた考えの持ち主だと親や友達や先生から言われます。


それもそのはず、実は私には3つ年上のお兄ちゃんがいます。お兄ちゃんは中学2年生、名前は漆黒の覇者アレース。と言うのは芸名みたいなもので。


お兄ちゃんの本当の名前は楠原 リヒト。現在、邪気目系の中二病を患っております。だから、まともな私は大人びた考え方を持っていると言われるんだ。


そしてある日、私は小学生の剣道クラブから家に帰ってきてお兄ちゃんの部屋に用事があったから行くと、部屋の真ん中に超複雑で変な魔法陣と一枚の紙があったの。


その紙が気になって読んで見ると『我は異世界に行ってくる!しばしの別れだが寂しく思うなよ』とな。


はぁ、またお兄ちゃんの中二病かとその場では流したんだけど、魔法陣の上にもまた1つのメモ用紙がありました。


今度はなんだよ〜とか思いながら見るとかなり、いったーい呪文が書いてあったんだ。今でもその呪文を覚えているよ。

それはね……。


『ぴっぴるぴ〜!異世界に繋がる魔法の扉ちゃんよぉ。我の目の前にあ・ら・わ・れ・て!』

(元気良く、高らかに、語尾はキュート)


おえぇぇぇ〜、吐き気がするでしょう。

でもね、そんな呪文を不覚にも私は魔法陣の上で声に出して読んでしまったのです。あっ、もちろん冷めた声で棒読みだよ。

すると、あーら不思議。視界がお兄ちゃんの部屋からジャングルに変わりました。


はい、そこからはジャングルで怖い猛獣に襲われたり、巨大な虫と遭遇して、手持ちにあった竹刀で撃退して行くうちに魔法が使えたり、森の番人に出会ったり、そこで元の世界に戻る方法を教えてもらったの。


と言うことをまとめて剣士に話すと剣士は眉毛を八の字にしました。


「えっでも帰る方法を教えてもらったのに帰っていないと言うことは」

「ここからが重要なの」


帰る方法は来た時の魔法陣を地面に書いてもう一回、あの呪文を言えば良いらしい。でも、呪文は覚えているけど魔法陣がどんなやつだったのか覚えていなくて。

だから、元の世界に帰るためにはこの、世界に来たお兄ちゃんにあって魔法陣を書いてもらわないといけない。

そのために私は騎士団団長を勤めながらお兄ちゃん捜しをしているんだ。


一旦ここでまで話して少し休憩。


「うーん、それと騎士団団長を勤めている理由が繋がりません」

「そうだよね」


全てを話した私はその森の番人さんにこれからどうしようと相談しました。すると、森の番人さんはリスファリア国の王様と友達らしく、その人に協力してもらいなさいと言われましたが、なぜかその前に私を強く立派な魔導師兼、剣士にすると言い出し。


「今の実力になりました」

「異世界の人間をここまで強く鍛えることのできる森の番人って、もしかしてその名前って、あの偉大な魔導師のユーリス⁉︎」

「私は詳しくないけれど、そうらしいね」


はい、短時間で最強になった私はユーリスの手紙を持ち、森を出てリスファリア国を目指しました。

王国に到着しユーリスに言われた通りに城に向かっていると黒い服を着た、いかにも悪そうな奴らに追われている女の子を見つけて助けたの。


そこまでは別に良いんだけど、なんと実はその女の子はリスファリア国の王様の娘さんで、勉強が嫌で城から逃げたしてきたところ悪い奴らに見つかり、追われていたらしい。

そして、どうも私の強さが気に入ったみたいで、お兄ちゃん捜しを手伝ってくれるのと引き換えにお兄ちゃんが見つかるまでの間、騎士団に入団してこの国に手を出してくる他国から守ってと頼まれたんだ。


「そこで、入団したんですね」

「うん一応、入団試験はして合格をもらったんだ」


あれは凄かったよ。なんせ騎士団第3部隊の実力派の人たち5人と連続でお手合わせをしたんだからね。まぁ、それが入団試験なんだけど。


「その後は実績を積んで今みたいに騎士団第3部隊の団長になったの」


それが、私のこれまで。未だにお兄ちゃんの手がかりは掴めていなくて少し、いや、かなり元の世界に帰れるか不安なんだ。

そう思っていると新人剣士が私の両手を握って来て思わず伏せていた顔を上げる。


「リオン隊長!」

「は、はい!」

「俺に出来ることがあったら何でも言って下さい。だから、そんな悲しそうな顔をしないで」

「ありがとうございます」


私が笑いかけると新人剣士は頬を赤く染めました。


「こら、新人!リオン隊長を独り占めするな!」

「そうですよ、リオン隊長は私たちのリオン隊長です」


アーノルドさんとフィオナさんが駆け寄ってきて私と新人剣士の間に入りました。


「それに、私たちもリオン隊長のお兄さん捜しを手伝っていますもんね」


そうなのです!みなさんとても優しくていつも私のお兄ちゃんについて情報収集をしてくれているの。


「俺もだ!」

「私もですよ」

「忘れないで下さいッス」

「僕もです。新人剣士には負けないですよ」

「ついでにワシらもな」

「ふほほほほ、若いって良いのぉ」


みんな、ありがとうだよ。


「あっ!リオン隊長!ドラゴンが動き出しそうです」

「俺らの力じゃ」

「了解!」


おっと今はそれどころじゃない。さて、感謝するのはこの仕事が帰ってから。

よーし、いつか絶対にお兄ちゃんを見つけて元の世界に帰るんだからね!


私は、そんな決意を胸にもう一度、手持ちの竹刀をピコピコハンマーに変えました。


「痛くないようにするからね」


ごめんよ〜。






ジャンルはファンタジーで、小さな女の子が頑張る姿と魔法が出るお話を執筆したかったかな?


元は、連載を考えていて、主人公が騎士団団長になるまでのお話を執筆しようと思っていましたが断念してこのような形となりました。



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