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妖狐とゾンビの渋音恋物語  作者: 北風とのう
第六章 京都
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-3

 三人のホテルは右京区にある目立たない建物だったが、中に入ると驚くほどゆったりとした贅沢な造りで、客室数わずか十部屋というホテルだった。三人は従業員に丁寧に迎えられ、最上階の隣り合った二つの部屋に案内された。

「コネクティング・ルームになっておりますので、中で行き来ができます。そのドアの鍵は閉めておきましょうか?」

水音が答える。

「いいよ。空けておいて」

「あと、専用の露天風呂がありまして、ここにはどちらの部屋からも来る事ができます」

案内の従業員が部屋を出ていくと、三人は片方の部屋に集まって、ソファーに座って置いてあるお菓子をつまんだ。懐石料理で完全に満腹なのだが、お菓子が置いてあれば食べてしまう。

 そして水音は「コーヒーが飲みたいね」と言ってさっとフロントに電話をし、コーヒーのルームサービスを頼んだ。その姿を見て裕也が笑う。

「水音、お前の行動は『裕福とは言えない』ご家庭の娘さんの行動じゃないよ」

「あっ、ごめん」

「だから、千古さんが言うように、お前はたまたま現世はお金がないだけなんだよ。だから今後はお金の事を気にするなよ。僕が払うと言った時はそのまま素直に従えよ。全部割り勘にしていたらデートしてもどこにも行けないだろ」

千古が二人を見て言う。

「仲が良くてうらやましいですね。ところで今回の旅行はせっかく三人で来ていますから、三人で同じ部屋で寝ましょうか」

それを聞いて水音がうろたえる。

「ええ~っ。だめでしょそれは」

しかし裕也は

「じゃあ、そうしようよ」と平然と言った。「別に、お風呂に一緒に入るわけじゃないんだから」


 しかし千古は、少し申し訳けなさそうに言いだした。

「あのう、ここでお話があります。三人で寝ましょうと言ったのは冗談で、実は私は、これから出かけなければなりません。ちょっと探し物をする必要があるんです」

「えっ?昼間からずっと探してる物?」裕也が聞く。

「そうなんですが、昼は下見で、本番はこれからです。私が眠りに入る前に神泉苑に隠した物があるんですが、それを取りに行きます。しかし神泉苑の敷地が二条城になってしまっていて、ちょっと手間取るかもしれません」

「僕も行く」裕也が言うと即座に水音が言い放った。

「だめだよ」

「お前、保護者目線やめるって言っただろ」

「彼女としてだめだよ」

千古も裕也をなだめるように言う。

「裕也さんを危険な目に合わせたら怒られてしまいますからね。お二人はこの部屋で先に寝ていてください。」

「えっ?」水音は横目で裕也をちらっと見たが裕也はそれを無視して聞く。

「で、千古さんはいつ帰って来るの?」

「二~三時間で帰ってくると思います」

「一人で行くの?」

「いいえ、先ほどの女将と行きます」

「……ああ、そういう事。」水音が納得したような顔をする。

「見つけた物を彼女に上げる事になっているんです」

裕也が言う。

「そういう事なら僕らの出番はないな。で、このホテルの従業員はみんな狐だったりするの?」

「ははは。そんな事はないですよ。狐はそんなサラリーマンのような事はしません。私ぐらいですよ」千古が笑う。しかし水音は真剣な顔でなおも問い続けた。

「ここは安全なの?」

「絶対安全です」

「本当?女将の手下が裕也を狙ったりしない?」

「いや、それは絶対ありません」

「絶対なんて言えないでしょ」

「水音さんならご存知だと思いますが、京都は守られています。この街の中でおかしな真似をすると、それをした者の方が時空のかなたに飛ばされてしまいます」

「でも、さっきの救急車。あれ子鬼でしょ?」

「水音さん、本当によくわかりますね。そうです。まだ聞き分けのない子供の鬼たちです。人間の遺体を欲しがるんですよ」

「へっ?まだぜんぜん死んでないじゃない」

「そうですね……あそこは京都市街ではありませんからああいうのがいるんですね。しかしここは大丈夫ですよ」

「で女将は信用できるの?」

「さっきも言ったとおり、彼女は裕也さんには興味を持たないと思います。それに、少なくとも私が探した物を彼女が手にするまでは絶対に何も行動をおこしません」

「それは何?」

「秘密です」

「あっ、そう。別にいいけど。そんなに貴重な物?」

「現在の日本でそれを手に入れるのは非常に難しいでしょう。たった一つでも。外国でも難しいと思います。それが五百八十三ほどあるんです。彼女がそれを手に入れたら伏見を除いて西日本全部を治める事ができるんじゃないですかね」

「へっ!」

「何それ?」

「それは秘密です」

「で、女将は私たちを歓待してくれてるわけ?」

「まあ、そういう事です。ちゃんと皆さんの事は私の手下とか言わないで、大切な友人と言いましたよ」

「……そう。ありがと」

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