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妖狐とゾンビの渋音恋物語  作者: 北風とのう
第四章 紗木子
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「……ところで、さっきから気になっているんですけど、あそこに立てかけてあるさかきはなんですか?」

千古は部屋の隅に立てかけてある枯れた葉のついている枝を指さして言った。

「ああ、よく榊だってわかるなあ。これは昔、丹羽子さんという方がよく僕に憑いた霊を祓ってくれた時に使っていた物なんだ。二年ほど前に亡くなってしまったんだけどね」裕也は部屋の隅まで言ってその枝を取ってきて千古に渡し、ソファの千古の横に腰かけた。

「ああっ、そういう事ですか」

「え?」

「今は水音さんが祓ってくれているんですね」

「そうだけど水音が祓ってくれたのは一回だけ。最近ずっと霊に憑かれていないから」

「そうですね。いつも水音さんが一緒にいらっしゃるから。でも、今は夏休みになったから、ちょっと危ないかもしれませんね」

「えっ?」

千古はすでに何もかもお見通しで、裕也に説明するように言った。

「いいですか、紗木子さんは裕也さんが私にキスした次の日にメアドを聞きに来たんですよね。しかしメールを送ってきたのは夏休みが始まってからです。これはなぜなんでしょうかね」

「…………」

「やっぱり、この事は水音さんに言うべきですよ。それで裕也さんが紗木子さんに会う時に、水音さんにも一緒にいてもらった方がいいですね」

「そんな事できないよ。キスした事ばらされちゃうよ」

「だから、紗木子さんの狙いは水音さんがいないところで裕也さんに会う事にあるのですよ。だからそうしにくいように脅しをかけてきているんです」

「う~ん、そうかなあ。でも水音にばれたら怒るどころじゃすまないよ」

「ははは。大丈夫ですよ。キスの相手が私だってこと紗木子さんも知らないじゃないですか。まさか職員を練習室に連れ込んでキスしたとは思わないでしょう」

「……ところであのドアを代えたのは、やっぱりあれが切っ掛けだったの?」

「きっかけはあの日の事ですが、理由は私がキスされたからではないですよ。部屋の中が覗きにくい事が分かったからです」

「同じ事でしょ」

「ちがいますよ。まあ、そのうち分かると思います」

「で、キスの相手が千古さんだとばれなければ千古さんはOKかもしれないけど、僕はやっぱり水音から追及されるじゃない」

「いや、裕也さんには切り札があります」

「…………」

「いいですか、水音さんは裕也さんの彼女ではないと言っていますよね。それで、私以外なら誰とつきあってもいいと」

「……」

「それなら、誰とキスしたって裕也さんの勝手じゃないですか」

「だけど、絶対水音は怒る」

「それは水音さんが裕也さんの事を好きだからですよ」

「……」

「だからこう言うんです。『水音が誰と付き合ってもいいと言うから、僕も実は他の子とデートしてみたんだけど、やっぱり水音が一番だと言う事に気づいたんだ』」

「……」

「ね、簡単でしょ。これなら裕也さんが他の子とキスをしたことは咎められないし、水音さんも絶対怒らないですよ。」

「いや、だけど…………僕が一番好きなのは……」

「それは分かっていますよ。その次の一言は言わないで胸の内に秘めておいてください。私も自分の気持ちを秘めておきますから」

「千古」

裕也はソファで隣に座っている千古の前まで歩いていき、肩に手をかけて反対の手を握った。千古は何も抵抗するそぶりは見せなかったが、落ち着いて言った。

「だめですよ。裕也さん、紗木子さんが見ています」

「えっ????」

「私の事は彼女には見えてないようですけど。私の方が力が強いから」

「えっ?」

「やっぱり水音さんの助けがいりますよ。今からすぐに水音さんを呼びましょう。水音さんなら突然呼びだされてもすぐに来てくれるでしょう」

「……」

「良くない状況です。水音さんと私がともに協力しなければ、うまく紗木子さんと話す事ができないと思います。私一人だと彼女と正面からぶつかって傷つけてしまうでしょう」

「今、『紗木子さんが見ている』って言った?」

「そうです。この部屋に来ていますよ」

「えっ?」

子供の頃から数々の霊現象に悩まされて、ちょっとやそっとでは驚かない裕也だったが、この時はさすがに裕也の顔に恐怖の表情が浮かぶ。

 そしてすぐに水音にメールを送った。

『水音、今何してる?ちょっと問題があって、家まですぐに来てほしいんだけど。悪いね急に』

『どうしたの?今、渋音だから一時間ぐらいで行くよ』

『ありがとう』

『何があったか言って』

『紗木子から変なメールが来た』

『そう。やっぱり』


 それから千古が笑いながら裕也に言った。

「裕也さん、お母様にもあらかじめ言っておかないと、お母様があせりますよ。『彼女鉢合わせ』だと思って」

「そんな事ないよ。水音は最初に家に来た時に、『同級生でかつ丹羽子さんの昔の弟子』だって言ったから、母さんはその通り受け取っている」

「へえ、そうなんですか。私はガールフレンドなんですよね」

「で、水音にはなんて言おうか、千古さんが先に来ている事」

「それなら当然考えていますよ。私にまかせてください」

「えっ、怖いなあ」

「ははは。霊より怖いですよね」

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