神速瞬殺(ゴッドキラー)vs激水超刀(アクアスパーダ)
一話 「神速瞬殺」の男
1
4月初頭の春、まだまだ肌寒い福岡県のある白いマンションの2階から一人の男が玄関のドアを開けた。彼は日本人っぽくないような豊かな髪の量と若干長身の男である。服装は黒のTシャツに黒のカッターシャツ、黒のジャケット、黒のグローブ、黒のズボン、黒のハイカットなど黒尽くしである。首には銀色のネックレスをかけている。彼はゆっくりと鍵を閉め、のそのそと外に出てきた。空は雲ひとつない快晴な空で周りに咲いている桜はもうほとんどの花が散っている。彼が歩いていると誰かから電話がかかってくる。彼は何も思わずに電話にでる。
「なんだ?大武?」
『和真君昨日ゆっくり眠れたかな?』
電話越しの男性は気楽そうに喋る。
「そんなことねぇよ。高校卒業したばっかの俺が、何で日本一恐れられている悪の組織を壊滅しなきゃなんねぇんだ。」
彼、日本最高戦力といわれる日の丸十二神の一人、和真 大蛇はダルそうに頭をかきながら喋った。
『そりゃあ簡単な事だよ。日本軍ではあの組織を鎮圧できない。なぜなら君と同じ日の丸十二神の者が二人もいるからねぇ。でも君はその12人の中でも最強だし、二人いてもどうにかなりそうだからねぇ。わかったかい?』
「つーか、俺が一位ってことすぐばれそうじゃねえかよ。」
和真は少しまわりに気を配り、人がいないか確認した。
『まあ発表してからもう2年も経過してるからねぇ、そろそろ一人や二人正体知ってもいいと思うんだが?』
「俺の正体知ってんのは、あんたらの組織(日本自衛最高総司令部)と俺の後輩一人(無の日の丸十二神)だけだぜえ?これを実行すりゃあ、すぐ全国にいや、全世界に日本の総合戦力の値が一気に変わっていくじゃねぇか。」
和真は他の事に専念しようと言わんばかりの言動をとる。
『確かに世間では君の存在が知らされてないが、いずれにせよ最強が誰か、はたまた存在などしていなかった、そのどちらかにしなければならないだろう?』
和真は少し黙りこむ。自分はそんな役目を担っているとなると体がいつもより重たく感じる。
『まぁ、存在しなかったよりも存在したほうが日本の景気も上がりそうだがな。それに日の丸十二神の12人は、できるだけ我々でコントロール出来るようにしたいのだよ。たとえそれが悪の組織の親玉であろうとね?』
「だが日の丸十二神の12人は一人一人が日本軍を凌駕するくらいの戦力は持ってるぜ?俺はどうでもいいが、他の奴らでもざっと日本を軽く落とせる程の戦力の持ち主だしなぁ?それを日本自衛最高総司令部のアンタらが全部独り占めするなんてそうそう欲張りなもんだと思うが?」
和真は自宅の近くにある公園に座りこみ、話を続けた。
「でもまあ、アメリカとかロシアとかになるといくら交際がよくてもいずれは自国の維持のために他国から資源をとるに違いない。奴らにもいるはずだ。日の丸十二神に敵対出来るほどの戦力が…。」
大武は少し不安になりつつも話を進めた。
『で、だ。奴らがそうする内に我々も戦力の向上をするために力を持つものを一刻も早く手玉に収めたいというわけだ?わかるだろ?』
和真はため息しながら聞いた。
『そのためにとりあえず福岡県のどこかにある支部を狙え。ウラトは西日本を中心に陣をはっている。詳細や司令は後で素早く教える。じゃあな!』
ッーッーっと通話が切られた音を少しの間耳にして、携帯電話を尻ポケットに収める。今の時代、携帯電話には以前と想像もつかないほどの長持ちするバッテリーが内蔵されているし、二、三十年前までは容量64GBが当たり前だったのに、今ではTBにまで領域が移動している。ある携帯会社じゃPBにまで出来るように研究を行ってるらしい。和真は現代の科学技術の異常な発達と先進国の資源枯渇が悪化していることを思いながら、しぶしぶとウラト福岡支部の壊滅を企てるのだった。
それから一時するとまた携帯電話が鳴った。通話相手はもちろん大武だ。
「なんだ?」
『さあ任務を実行してもらう。まず福岡の支部から壊滅だな!』
「ちょっとまて、まずってなんだよ?まだ他の支部を、相手にしなきゃいけないのか?」
和真はとっさに顔がダルそうになった。
「まあ全部じゃない。他の支部には君以外の日の丸十二神が行ってるはずだ。」
『日本自衛最高総司令部に協力している日の丸十二神は毒、光、水、炎、無の計5人だ。他の日の丸十二神の7人はいずれ手中におさめてみせる。』
大武は力を欲するゲームのボスみたいな言動をとって、
「計、5人の日の丸十二神が協力してるというわけか、これだけでも世界に対等になれると思うがな。」
『いや、日本の全力はまだ半分もいってない。だから
後7人の協力がほしいのだよ。あ、話がそれたな、場所を詳しく教えるからさっさと任務をこなすんだよ?』
「はいはい」
と言った後、場所を聞いて電話を切った。
「じゃあ…行きますか!」
その言葉を言ったとたんに和真は一瞬で消え去った。この速度は光などとうに超している超絶な速さだった。周りには台風よりも大きく暖かい強風がふいた。
和真は何も音をたてず、一瞬のうちにウラト福岡県支部の前に到着した。和真の体に存在しているはずの、数万℃にもなる風圧による熱はすぐ体内に吸収された上に、発生する爆風も自動的に吸収された。彼は毒の自然術者だがそれはメインであってサブには炎、風の自然術がある程度使える。これによって最高秒速120万kmで移動する時発生する太陽の表面温度を超える熱風が来たり、規格外の台風が起こってもすぐに吸収できるし逆に発生させたりすることは造作もない。しかしそんな地球上はおろか宇宙の世界でも高速な速度が地球の重力を覆してしまうことから最高時速に到達するのはほんのわずかしかない。
「さぁぁて、悪さしてないかなぁ?してなくてもさっさとぶち壊すが…」
支部は周りになにもない田舎の隅にポツンと建っており、三階建ての直方体の形で、表面の素材は大型機関銃でもすぐには壊れないような丈夫な素材でできている。色は真っ黒で真夏には肉が焼けそうなくらい熱くなりそうだ。
「見張りのしたっぱどもがじゃめぇな。さっさと殺すか?」
と呟くと今度は耳に装着した特殊作戦用ワイヤレスイヤホンが鳴った。これは任務を、実行している際には耳につけとけと大武から昨日言われた。
最新の科学技術が搭載されており、外部からの盗聴を遮断し、クリアな音声を実現する。バッテリーはかなり長持ちし、4cm程度の長さの機械に約5000mAhもあるため、1ヶ月持つこともあるそうだ。
『待て、殺そうとするなよ?確かに君達のような協力者には悪の人を殺せる権利がある。しかしどんな悪の人だろうが、同じ国の人間なのだ。ここは気絶程度にしておけ。』
それを聞くと殺そうとするのを辞め、神速の速さで敵の後ろへ移動する。敵の団員は髪形がきちんと整っており、黒いジャケットの左胸にはなにやら不思議なエンブレムが描かれている。恐らくウラトのマークと下にその団員の階級が一目でわかるデザインだと思われる。和真は小学生のころからウラトの存在を知っており、とりあえず自分に絡んだ団員をとっちめた団員達の胸のエンブレムはほとんどが黒くてシンプルなマークだった。見張りの団員らは突然の高熱に思わず叫びそうになったが、和真によって人体を確認する暇もなく首を絞められ、気絶した。
「っかっ!?っぁ…」
「あーあー、こん中には何人位いるんだろうなあ?ざっと二十人程度だろうが……」
しぶしぶ和真は屋内に侵入した、支部だからなのか監視カメラは設置されていない。本部は支部をどう思っているかは不明だが、少なくとも大きく期待していないようだ。
「はぁん。いましたよー敵ぃ~。」
少し楽しそうに呟く。
一瞬で物陰に隠れ、何やらヘラヘラ笑っている団員達に眼を向ける。
ヒュン!!!!!!!と人間の聴覚では聞き取れないくらい速い速度で敵の首をグイグイ力強く押していった。団員達は大脳に命令が伝わらなくなり、自然にスリープした。和真が視認できるときには団員達はバタバタと倒れて行った。
『さすがだ。神速瞬殺お前にとってはしたっぱ程度一秒かからずにけちらせれるな。』
フン!とこんなの朝飯前な余裕をみせる和真。それからどんどんしたっぱを気絶させて、せっせと回収していく。こいつらを後からくる日本軍製の装甲護送車に放り込んで置けば、今度もらえるバイト代が増加するので重たい体をてきぱきと入口付近に移動させた。
「ぃぃっよぉっし!」
パンパンと手を叩いて、大武に回収要請をして次の支度をする。
5分ほどたって、やってきた日本軍の装甲護送車がウラトの団員をせっせと運び
「では回収いたします。」
といって、すぐに去っていった。
和真は支部長のウラト十二官の一角に担う男の潜む場所へとゆっくり足を踏み入れる。
2
「なに!?大蛇がウラト壊滅を実行しているだって!?」
突然福岡県の大都市のざわめきを打ち消すようにある高校生は右手に携帯を掴んで大きな叫びをあげた。
あっ、マズイ。と思ったが大都市特有の耳障りな音の連鎖によってかきけされた。
『おいおい、騒ぐなよ。奴の正体がバレたらどうする?』
電話越しの男は嫌らしそうに言った。この通話相手も日本自衛最高総司令部の一人らしい。
「なあ?俺にもないのか?そういう任務。あと一週間は高校休みだからさ、なんかさせてくれ。」
とりあえず任務を遂行したい気持ちでいっぱいのこの男、和真の存在を知っている数少ない内の一人であり、共に活躍する日の丸十二神無の自然術者、闘神 軍一。今日、学校が休みのくせに青のシャツの上にカッターシャツそして若干赤い学ランとズボンを着用している。学ランの袖を通してはいるがボタンが全開でカッターシャツも、上から3つのボタンは開きっぱなしである。彼の能力は他の自然術の攻撃を打ち消し分解できること、また自然術のオーラを纏うことで戦闘能力を一時的に上昇させることができる他、彼の特殊能力として他の自然術の能力を浴びるとその能力を大幅に、強化することができる。理由としては、単体では何も変化できないが多種多様の変化を遂げる可能性がある無のエネルギーが他の自然術を受けとることで変化して増殖するため、強化に至る。その事から彼の異名は十一支神と呼ばれている。
『そうだな…お前は、佐賀県の支部を叩け。場所は把握済みだろう?期限は明日の夜までだ。』
「まってましたあ!!!了解!」
元気そうに言うと彼は自然術を使って素早く移動した。無の自然術はBBFには到底及ばないが、あらゆる能力を一時的に上昇できるため、彼の足のスピードは最高で一般的な戦闘機並みの速さが期待できる。勿論それで生じる風圧による熱は無のオーラが防ぐためデメリットがない。闘神はマッハ2の速さでウラト佐賀県支部にむかうのだった。
3
和真がのっそりと最上階のドアを蹴飛ばすと和真よりも僅かに長身の男が座っていた。
「おや?よくもまあ、ここまでこれましたね。なにやら外の景色が赤くて眩しいのですが。」
ウラト十二官の一人は冷静に話す。先ほど見た団員とは違い髪が青色をしており、服装が豪華になっている。具体的にどれくらいなのかというと、肩の部分から袖にかけて金色のラインがあったり、制服がまったく別のものとなっている。他の暴力団をほとんど鎮めたこともあるウラト十二官の一人は余裕の表情をうかべ、敬語を話している。
「黒金 厳帥をぶっ叩く前に俺の地元で悪さしてるてめえから半殺ししてやる。」
「私の部下は無事でしょうね?でなければ容赦しませんよ?」
男は定価で一万円は軽くかかりそうな椅子を後ろの壁に尻で飛ばしすぐさま立ち上がると、鋭い眼光を飛ばした。
「私の名前は、御槍 黒刃このウラト福岡県支部の支部長にして、ウラト十二官の一人。私は幹部の者ですから、したっぱ達とは戦力が桁違いですよ?」
和真のワイヤレスイヤホンから声が聞こえた。
『いいか?ウラト十二官の奴らは情報によれば、百万人の戦力ど同等と聞く。その理由としては…』
「BBFだろ?まったく日本じゃ、70人しかいないっていうのにウラト十二官の奴らは全員体得してやがる。まあ日の丸十二神もそうだが。」
『とりあえずこの会話はいくら静かな場所でも盗聴は不可能だ。お前の存在はまだ明かしてはならない!自然術は火を使え。補助として風の使用も許可する。決して毒は使うなよ?』
とりあえず敵が前にいるので黙って通信を切った。
「何か作戦を立てていたようですがね?どんなことをしても無駄ですよ?」
今の戦場は幅が20m長さ40mの細長い部屋で、壁は特殊な素材でできているため多少暴れても大丈夫そうなものだ。
「待ちくたびれましたので…行きますよぉ!!」
御槍が和真に向かって勢いよく飛び出した。約30mの合間を3秒程度で追い詰めた。和真はとりあえず言われたとおりに炎の自然術を、使った。
「どう来ようがこの炎で燃やし尽くしてやろう!」
右手からバスケットボールサイズの炎を発生させ、迫り来る御槍に思い切り殴った。
「おぉぉぉぉぉぅぅるるるらああぁぁ!!」
バン!
「ちっ!?」
焼け焦げた御槍は衝撃で数mぶっ飛んだ。
「まあ、これしきで死ぬほどウラト十二官は甘くありませんよ。」
昨日ジュワ~っと一気に炎が蒸発していく。床にべたっと座っているが全く焦りを表にださない。
「お前、水の自然術者か、炎と相性がわりぃなあ。」
「フフッ。私の生み出す水は並々ならぬものでしてね。広い範囲より狭い範囲に特化したものです。つまり屋内における戦闘では私の方が大幅に有利なのですよ!!しかもあなたは炎の自然術者ですからねえ。そうそう勝ち目ありませんよ。」
余裕で笑う御槍に日の丸十二神最強の男は強く舌打ちする。
御槍がゆっくり立ち上がると、右手から謎の球体が出現した。あれは、超自然玉といい自然術者が自然体になれるようになったことで生まれる熟練者の証といってもいい野球ボールよりも一回り大きな球体である。炎だろうが水だろうが外部の状況によってすぐに状態変化してしまうが、そういう常識を覆し、いろんな法則を打ち破る不可思議な力の象徴ともいっていい。御槍の場合、水の自然術なので球体の真ん中に水とかかれた文字を強力な水が覆っているものだ。
「ハッハッハッハ!今から水の恐ろしさを体で味わうがいいでしょう!!」
御槍はその球体を握り潰し、溢れた部分を左手で力強く握り右手の内から引きはなっていくと、バシャバシャと音のなりながら水でできた鋭利の物体が現れた。
「こりゃ、水でできた剣か。強力な水圧が高速で循環して身にあたると厄介だなあ?」
刀身をすべてだし終わると刃渡り1m程度の剣になり、右手に持ち替えた。水の剣は激しい音を出して刀身の根本から先端部分にそって勢いよく噴射している。
「さあさあ、ここからが本番ですよぉ!!」
激しい水流の音に御槍が和真に迫る!!
和真は体から摂氏1000℃の高熱を発生させた。和真の最高温度は約10万℃に及ぶため、まだほんの1%しか力をだしていない。御槍の体からは少しずつ水蒸気が溢れでてきてはいたが、今は特に問題なかった。
「フフッ!これしきで私を蒸発させるとでも?甘いんですよ!!私は数万℃程度なら長時間の戦闘でも特に心配ありませんね!」
御槍は和真の腹の部分を一刀両断に真っ二つにした。和真の傷口からは血ではなく、炎がメラメラと涌き出てきた。彼もなかなかの熟練者だが、これがメインの力ではないとなると、やはり彼の力は計り知れない。
「まあ、これしきでやられるとは思ってないだろうな?」
「当たり前です。部下を瞬殺できるものは大概自然体になれる奴らばかりですからね。」
御槍のは剣を持っている右手をブラブラさせながら、チェーンソーのように触れただけで物体を引きちぎる刀身をなにも問題なく左手で整えている。
分断された和真の体は一度大きな炎となって、元の姿に戻った。この自然体には持続時間に限界があり、体得者のスタミナが半分を切ると回復するまで変化できない。ただし例外としてあるBBFを体得している者のみは半永久的に自然体になれるという。
「さあ?どうする?俺は今から太陽の表面と同じ温度を出してやろう。」
そう言ったとたんに彼の体温がさっきの6倍に上昇したこれによる高熱により、堅牢な分厚い黒い壁はジージー音をだしながら赤く変色しドロドロと少しずつ液体がこぼれていく。御槍の椅子と机はとっくに焼け焦げている。
「ほっ、ほぉぅ、なかなかの高熱ですね。しかし我が水は蒸発した水分は急速に冷やしてまだまだ持ちこたえますよぉ!!私の保持している水の量は琵琶湖の水量とほぼ同じ。それをさらに超越化した水は一万℃の高熱でもすぐに蒸発しない。」
御槍は自分の体が蒸発しつつも丁寧に話す。
「なかなか鬱陶しい奴だ。100℃の60倍も熱くしてんのに、やはり超人が生成する水はそう簡単には消せないか…」
御槍の水でできた剣は次第に勢いを失いついに全て蒸発してしまった。水の自然術者一人だけでもう水蒸気が充満して溢れでてくるほど大層なものだったが奴の限界も未だにわからない。
「私の水の自然術は他の団員から激水超刀と呼ばれてましてね。高水圧を利用した刃物をつくって戦うことから言われてきました。水の自然術でもさらにそのなかに数百種類の個性が分かれています。そのなかでも最も近距離戦闘に優れているのが激水超刀なんですよ。」
さらにどの種類でも共通することだが自然術がどんどん成長していくと、使える量が増したりあるものでは密度が濃くなってより硬質なものになるものがある。ただし原則として無を除く自然術は速度を常識の速さよりも速くすることはできない。水の場合、使える水の量、そして異常な温度でも液体を維持できることなど。御槍は体からは大量に水蒸気が噴出しているが、体内に秘めている器量が大きいのか、まだまだ戦えそうだ。
「さて、常識では水の方が有利のはずだが、このまま温度を、あげて行けばどうなるだろうなぁ?熱風どころか、この支部の素材がドロッドロの熱い液体になってアンタを襲うぜ?」
「フフッ、これしきでは死にませんよ。まだBBFは使ってなんですからね。」
そうだ。確かにまだ使っていない。和真もまだ本気をだしてないのだが、それは敵も同じ、あのウラトの中枢を担う実力者がここでくたばるほど脆いものではない。
「これなんかどうですかねぇ!!!私の水が熱湯になったところで戦力が大幅に変わることはありませんよ!!」
御槍は天井10m近くまで回転し、彼の右足の膝下から激しい水がでてくる。
「来い!俺が受け止めてやっから。」
「そろそろBBFを使いましょうか?私のBBFは柔。体を液体に近い位まで変化できますが、今はいいでしょう、少し体がしなるくらいがベストですからね。」
御槍の体が体操選手のようにしなやかな動きをする。
それに合わせて足から鋭利の液体がジャバジャバと激しい音を奮い立てて飛び出す
「!?」
一般人では絶対にあり得ない柔軟な体で和真を少し驚きを見せる。
鋭利の液体は和真を狙う前に溶けている壁に放ち、溶けた壁を払っていった。今の場では和真の熱風によって本来の姿にもどることができないと判断したのだろうか。
「さぁ!!次はあなたの番ですよ!!!」
刃渡り6mの大きな熱湯の大剣をかかとおとしのような動きで和真を狙った。
「俺もだすか。超自然玉をなあ!!」
和真の右手には野球ボールよりも大きな炎と刻まれし球体が出現した。それを和真が力強く握りしめ熱湯の大剣を殴りかかった。
「さあ、炎の拳で吹き飛ばしてやらぁ!!」
ジュワァァァァァァ!!!!!
液体であるはずの熱湯の大剣は鋼鉄のようにびくともしない。先ほどのつくった剣も超自然玉から生み出したはずなのに、それよりもこの大剣は断然硬度と耐熱性がちがう。それを和真は右手の炎の力を強めつつ確実に奴の生成した超水の沸点まで到達させていく。
「まだですよ!!!私にはまだ左足が残ってるんですからね!!!」
右足で大剣を操りながら空中に浮いたまま、左足からも同じく大剣を出現させる。御槍は両手にありったけの力をこめ下半身を投げるように天井にあげ、己の体重を操り落ちる勢いをつかって両足を和真にぶちこんだ。
「二つの剣を防げますかね!!??」
「なんなら、こっちも両手ですりゃあいいだろ?」
二つ目の球体を作り出し、強く握りしめて拳に最高級の炎を纏わせる。その拳は摂氏10万℃という福岡県全体の温度を急上昇させるほどだった。
「まあ、周りに被害がでないようにするには事前に自分で防熱壁を作ればいいのさ。炎の熱風を炎の壁が防ぐ。その壁は熱を吸収するためだけにつくっておいたから温度を上げる必要のない一般常識と異なる不明点の多い炎ってわけさ。」
「なるほど、だからさっきから炎の壁がここを取り囲んでるわけですか!!」
ジュオオオオオオオオオオン!!!!!!
激しい熱と剣のぶつかり合い。支部は完全に溶け崩れ壁を溶かしては0℃に近い冷水が冷却を行い、固体に変化したりと温度変化がとても異常な状況だ。
支部が全て崩壊し、今は真昼の空の下で戦っていた。
「この足がボロボロに朽ち果てようが、ウラトに支障はありませんよ!!私はウラト十二官ではありますが、そのなかでも下位の私が減ったところで一体何が変わるというのですか!?」
御槍は首領のためなら己の身分などどうでもいいような言動をとる。
「ほお、まだまだアンタより強い奴らが他にいるのか?」
和真の両手は切り傷を負いながらも話を続ける。御槍の生成する剣はどんどん蒸発していくがそれを感じない位一瞬で補充されていく。御槍の表情がとてもつらくなりつつある。
「ハッ!自慢することではありませんがねぇ!!たくさんいますよ!?……特にウラト十二官の頂点に立つあの方は首領と同じ日の丸十二神の一人、その力は日本よりも巨大な隕石を創造でき、日本よりも大きな大地をつくれる地上最強の岩の自然術者、通称、大地創造!!!」
ウラトには首領たる黒金 厳帥とウラトの最高幹部であるウラト十二官トップの男、二人の日の丸十二神がいる。地球を崩壊させることなど彼らには、全く問題ない。
「いずれそんな奴ら、俺がとっちめてやる。」
「ハァ!?できるですかァ!?貴方など日の丸十二神の11人と全く顔が一致しませんねェ!?他の奴らに勝てるわけありませんよォ!?たとえBBFをもっててもねェ!!!」
最強の日の丸十二神とその称号を持つ御槍の目の前の人物の台詞を全く信用していない。当然といえば当然だが、
「とにかくさっさと諦めろぉ!!!」
和真の両手から溢れる炎が大きくなり熱湯の剣を掴む。熱湯の剣は最新鋭のヴァイブロブレード並の切れ味だがその機能自体を停止させる。
「なっ!?」
「さぁ…観念しやがれぇ!!!」
御槍は水を出しすぎたために自然体になることができず無防備のまま和真の燃えたぎる両手によってぶん殴らる。和真は温度を人間が生きれるレベルまで下げていた。
「ぶっっほっっ!!?」
ゴン!!!
「くっ、やってくれましたね…貴方なら他の十二官、倒せるかも、知れま、せん、ねぇ……。」
炎を浴びながら御槍の言葉がパチパチと燃え盛る炎と共に聞こえる。
和真の勢いのあるパンチで10mほどぶっ飛び、御槍はやけどを負いつづけながら気絶した。
バタン!と大の字になって……
「ようやく、終わったか。炎の自然術を最大温度まで出させるとは、ウラト十二官、恐るべき戦力だな。」
リアルタイムで戦闘をワイヤレスイヤホンで聞き流しにしていた大武は戦いが終わったことを確認するとすぐに電話にでる。
『さあ和真君、ウラト十二官の手応えはどうだったかな?』
自分でつくった防熱壁をすぐに解くと深い息を吐きつつ応じた。
「まあ、強かったな。俺の最大パワーのほんの一割にも満たされてないが。」
『お前の戦力を考えればそういう結果になるのも当然のこと。さあ、次に行くぞ!といいたいところだが、今回はもう休め。金は今日中に君の家のポストに入れておく。忘れるなよ?』
和真は了解に冷え固まった支部の前から立ち去った。まだまだ彼にはたくさんの仕事がある。その第一歩である今回の任務を難なく成功したのであった。
この小説の第一歩を踏み出し始めました。これからぼちぼち頑張ります。