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そんなこんなで2話目・・・。
受付を終えて数日後、まちにまった剣術大会の幕があがった。
開会式なるものがあると聞き、とりあえず足を運んでみたのだが・・・。
むさい・・・・。
右も左も、前も後ろも男・男・男の大群。トーナメント形式とはいえ、自分よりも年上であろう屈強な男たち(ごろつきまがいもいる)を相手にすると思うと、気が滅入る。
まあ、3位以内に入れば賞金はもらえるので(騎士の入団資格ももれなくついてくるが)、なんとか3位に入ることができればいい。
そんなことを考えていると、どうやら会場の奥の壇上に国王自らが姿を現したらしい。群衆の歓声と拍手に目を向ければ、遠くの壇上に初老の男の姿を見つけた。
「我が国を、我が国民を守る、志高く、強く、気高き騎士を目指さんとする者たちが、こんなにも多く集まったことに、私は感動している」
あ、やっぱり皆さん騎士になるために来るのね。
「私は是非にでも、皆を騎士にしたい。が、しかし、国を守り、人を守る騎士たるもの、強靱な肉体と精神を必要とする・・・」
長くなりそうなので、聞き流させてもらう。そうなると手持ちぶさたなので、周囲の観察を再開しようと目を向ければ、一人の少年が飛び込んできた。
明るい栗色の髪に濃い緑の瞳。白い肌は滑らかで、ぱっとみ自分と同じ男装した少女かと見紛いそうになる。しかし、服から伸びる腕には剣を持つための筋肉がついており、少年から青年へと移り変わっているのだと見て取れる。
貴族だろうか。騎士服が似合いそうな美形っぷりである。
「おい、見ろよ。あんなガキまで出るのかよ」
「はっ、すぐに負けちまうに決まってらぁ」
なんて声がちらほら聞こえる。おそらく、この少年や自分に対してだろう。
聞こえているであろうに、少年は動じない。きりりと国王を見つめる視線は、本当に騎士を夢見ている純粋なもので、賞金目当ての自分には些か眩しい。
そろりと視線を外せば、いつのまにか壇上の国王が姿を消し、代わりに騎士服に身を包んだ青年がいた。
「おい、あれが騎士団の団長だとよ」
「ああ?あんな優男が?」
「あんなやつが団長になれるんだ、こんな大会ちょろいもんだ」
周りのささやきにげんなりする。
ネコだって爪を隠せる。強そうに見えるやつが強いとは限らず、まして、弱そうに見えるやつが弱いとは限らない。相手の力量を見た目だけで判断するというだけで、底が知れるというものだ。
実際、壇上に立つ男は騎士というより文官のような顔立ちだった。
サラサラと風に靡く髪は、貴族に多い金髪。眼鏡の奥の瞳は澄んだ海の輝き。すっと通った鼻梁に、笑みの形の薄い唇。白い肌は外の光を知らないかのように透明で、剣を握るより筆を握るのが似合いそうな風貌だ。文句ないまでの美青年。纏うのが軍服なのが、かなり違和感がある。
「王宮騎士団の団長を務めております、レイ・グリンデルと申します」
おそらく、一生縁がないであろう美青年の自己紹介に、興味などあるはずがない。一応開会式に顔を出したのだから、もういいだろう。
開会式が終われば、すぐに大会が始まる。なんとしても、3位に入賞しなければ。
くるりときびすを返した背に、壇上から視線が注がれていたことなど、知るよしもなかった。