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ぐだぐだです。スランプです。ごめんなさい。
鬼の形相のダグラン。けれど、引くことはできない。
「お前、騎士になる気はねぇって言ってたよな?」
「今も、騎士になる気はないよ」
「なら、大人しくヤマトんとこに・・・」
「まだ帰らない」
訂正、鬼なんてレベルじゃない。肌を刺すくらいの怒気って、殺気と紙一重だ。冷や汗が背中を伝う。
「ソフィを医者に診せるお金は手に入ったけど、どのくらい治療にかかるか分からない。その間の滞在費はどうせ稼ぐつもりでいた」
「・・・・・・・」
「で、騎士見習いでもお給料貰えるのなら、仕事を探す手間が省ける。どうせ用心棒でもやろうと思ってたし、あんまり仕事内容変わらないでしょ?」
ヤマトには、大会が終われば一度戻ると言ってあったが、帰ってまたここに来るのも面倒だ。ならいっそ、このままソフィアの治療に専念したい。私の目的はそれなのだから。
ソフィアが何か言いたそうに手を差し述べてきたが、無視する。
もう12年だ。ソフィアの声を聞いてない。
「それに、ヤマトも騎士だったんでしょ?ダグランさんも」
「・・・・誰に聞いた?」
「リーナさん。騎士だったころの友人たちに片っ端から手紙送ったって。その・・・・私たちが王都に行くから」
理由はものすごく赤面ものだが、あのヤマトが騎士だったという事実には驚いた。反面、あの殺人的な強さにも納得できた。ダグランが騎士だったのは、医者よりは信じられる。あくまで医者よりは。
「ちょっと興味がある。あの世捨て人みたいなヤマトが、騎士なんて」
「・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁ」
急に大きなため息を吐いたダグラン。
「ああ、こう頑固なところがヤマトそっくりだ。人の話なんざ聞きゃあしねぇ。どうせ何言っても気かねぇんだろ?なら好きにしな」
「ふふふっ、そう言うと思った」
結局ダグランも私たちには甘いのだ。ヤマトが親で、ダグランは親戚のおじさんのような存在だから。
「ただし!!」
急に大きくなった声に笑いを引っ込めれば、再び鬼の形相でダグランが言う。
「俺の家にいろ。俺の家から通い、俺の家に帰る。ヤマトのとこに戻るまでは、俺の家がお前たちの家だ」
「そんな!!3ヶ月も世話にはなれない!!なんのために見習いに・・・・」
「拒否権はないと思え。俺はヤマトに殺されたくはないからな」
そんなこと、ないとは言えないのがヤマトのすごいところだ。いや、怖いところか?
「お金のことは心配するな。こうみえて俺は王宮所属の医者だ。食い扶持が二人増えるくらいどってこたぁねぇ」
ダグランの笑顔は、子どもから見れば鬼の笑みに見えるが、私は知っている。ダグランは優しい人だ。
その優しさに、私は救われた。この命は、ヤマトどダグランが助け、守ってくれたものだから。
「ま、おまえらを放り出したとなりゃあ、ヤマトに殺される前にリーナに殺されちまう。だから、分かったな。俺の家にいろ」
「了解」
お互い笑みを浮かべたところで―――――――
「話し合いは終わりましたか?」
腹黒騎士登場。
お前、絶対扉に張り付いて聞き耳たててただろ?その姿、世間に晒してやろうか?
中々話が進みません。主人公の出生の秘密も、少年の騎士になりたかった理由も、早く明らかにします。・・・・たぶん。