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久々更新。ほぼ台詞。
「身を挺して私を助けた君が、騎士の地位を辞退したとなれば、引き留めるのが人として当然のことだと思いまして」
私が身を挺して団長を守った?ものすごいフィルターのかかった瞳をしてらっしゃる。
「そんな・・・、逆に騎士様たちのお邪魔になってしまい申し訳ありませんでした」
「いえいえ、手助けして頂いてとても助かりましたよ」
否定しないのか。
あの場で目の前の腹黒騎士、もといレイ団長の部下らしき騎士数名が観客席を徘徊、もとい偵察している事には気づいていた。いや、途中で気づいた。いやあ、観客席に騎士服着た人間がうろうろしてたら嫌でも気づく。明らかに何かに警戒した雰囲気だったし。
「繰り上げで2位になった少年、アルバートくんでしたか?彼も残念がっていましたよ。自分も辞退すると言い出しそうなくらい」
にっこり。って、何それ。少年関係ないじゃん!!なろうよ騎士に。そのための大会だろ!!
「だから、君を説得しに行くと言っていましたが・・・」
ものすごいタイミング良くノックの音が響いた。計算されていたかのような、いや、計算したのはこの男だ。自分の台詞が切れるちょうど良いタイミング。おそるべし、腹黒騎士。
「アルバート・ディランです。セシル・キリエさんに面会に来ました」
「・・・・・・入れ」
ダグランの返事に、少年がゆっくりと姿を見せる。腹黒騎士の姿を見て目を見開き、続いて私に視線を合わせる。
「体の具合は、もういいんですか?」
「ああ、もう大丈夫」
ものすごく心配そうな表情と声。目的があれじゃなければ素直にその優しさを噛みしめられたのに。
「その、少し話したいことがあって・・・」
ちらりと腹黒騎士を観る少年。
「ああ、私の事は構わないでください。目的は同じですから」
いや、私が構うって!!出てけ!!お前がいない方が断りやすいんだよ!!
もう愛想笑いも引きつってきた。ダグランを見ても、難しい顔をするだけ。どうでもいいけど、その顔で医者って説得力0だよね。いつも思うけど、絶対盗賊の頭って言われた方が納得できる。今の顔をみたら、患者は治療を受けるより先に卒倒するね。
「・・・・どうして、騎士の位を辞退したんですか?」
賞金目当てだったから。それ以外ないでしょう?
「賞金が欲しかったから。こんな動機の僕は、騎士には相応しくないだろ?」
「いいえ!!そんなことありません!!」
急に大きな声になった少年にびっくり。
「セシルさんは、試合の最中でも冷静で、その場で臨機応変に行動出来る。あの試合の時だって、俺は気づかなかったのに、あなたはすぐに暗殺者に気づいた!!しかも、それを利用して試合に勝つことも出来たのに、あなたはそれをしなかった!!」
いや、目の前で人が死ぬのは嫌だし。もう準優勝は確定してたから賞金は手に入るし、勝つことになんにもメリットなかったし。
「あなたのほうが俺よりも何倍も騎士に相応しい。なのに、俺が騎士になって、あなたがならないなんて・・・」
「正確には、騎士見習いからのスタートですけどね」
腹黒の合いの手にも、少年は止まらない。
「初めて追いつきたいと、いや、追い抜きたいと思ったのに。それなのに、あなたは・・・」
や、やめてくれ。そんな捨てられた子犬みたいな瞳。わ、私が悪いのか?そうなのか?
「俺に、あなたを越える機会すらもらえないなんて・・・」
両の手を強く握りしめ、うなだれる少年。え、これ私が悪いの?ソフィアを見れば、悲しそうに少年を見つめている。ダグランは、相変わらず泣く子も大泣きの形相。
「どうでしょう?見習いの間だけでも我が団にいらっしゃいませんか?」
にこやかに提案する腹黒騎士団長。
なるほど、この展開まで読んでいたわけだ。
「正確には、どのくらいの期間ですか?」
「おいっ!!お前、何考えてる!!」
ダグランの声を無視して―――――あとが恐ろしいが――――――団長の言葉を待つ。
「3ヶ月ほどでしょうか?その後一応入団試験を受けて頂きますが、その間にやはり騎士には向いていないと思われれば、辞退可能です。もちろん、見習い期間の中途でも辞退することはいつでも出来ます」
「見習い期間、給料はどうなりますか?」
「もちろん支給されます。見習いとはいえ騎士の職に従事するわけです。それなりの額は支給されます」
「待て!!騎士は寮生活が原則だ。お前にそれが出来るのか?」
・・・・・出来ません。だって、性別女ですから。
あっさり決断変更。口を開きかけた瞬間―――――
「原則はそうですが、例外もあります。何か理由があれば、外部から通って頂いても結構ですよ。現に、第1騎士団は大半が寮以外で生活しておりますし」
「ソフィアと暮らしたいというのは、理由になりますか?」
「ええ、家族がいる騎士は、王宮の外に家を持っていますから。問題ありません」
なら大丈夫。ダグランとヤマトには悪いが、予定変更だ。
「何を考えてる?」
低い、地鳴りのような声に、拒否は認められない。
「すみません、ちょっと席を外していただいてもいいですか?」
「ええ、構いませんよ。アルバートくん、君も来なさい」
二人が出て行くのを確認し、お互いに向き合う。
―――――子どもじゃなくても、この顔は泣きそうになるレベルだった。
ご都合主義万歳!!