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新月からその後の満月まで

Q.「昨日完結してなかった?」

A.「4月1日、何の日か知ってる?」


続きです


人物表

ソラ

旅人 魔法使い?


奈々

旅人 剣士?


エウナ

吸血鬼 他作品の主人公


来夢

人間 くらげって可愛いですよね!のヒロイン?


メリーさん

幽霊 エウナの親友

「ソ…ラ…?」


 ソラにナイフを刺されたとき、驚きの中で納得している自分が居た。


「おやすみなさい、奈々」


 彼女は倒れる私に向かって最後にそう言うと外へと行ってしまう。

 着いて行きたいのに…どうも傷が深いのかそれとも他に理由があるのか、私の体はぴくりとも動かない。ああ…私このまま死ぬんだろうな…。


「あー…生きてる?」

「エウナさん、ホントに助けるんですか?私としては少し遠慮したい気分なんですけど…」

「五月蝿いわよメリー、いいからさっさと治療しなさい」

「…エウナさんがそういうなら仕方ないですか」


 薄れていく意識の中で、誰かと誰かが言い合うような声が聞こえた気がした。


 □ □ □ □



「今日は…新月だっけ…」


 飴は、まだ見つからない。


「ボクのでよければ飴をプレゼントフォーユー?」

「…」


 落ちてしまった飴を探していると、私の目の前に小さな手が差し出された。…今の声は、忘れもしない…。

 ゆっくりと顔を上げると、そこにはいつか一緒に過ごした少女の姿。サイドだけが長い黒い髪に私と同じ赤いコート、そしてコートの下には同じく赤いワンピース。生きてたのね…来夢。


「…あにゃた、生きてたのね」

「…」

「…」


 お互いに沈黙する。


「…お姉さん、あの薬使ったんですか…」

「…」


 私は彼女の言葉を最後まで聴かずに頭を抱えれば、頭にはアレからもうおなじみとにゃったふさふさの耳の感覚。油断してた…完全ににゃおってにゃいの忘れてた…


「えっと…お姉さん?解呪の方法は…?」

「…失敗した」

「ありゃー」


 どこか生暖かい視線で微笑んでくる来夢へと返事をする。

 春のにゃにゃ草を集めたところまではよかった!そこまではよかったのだが…問題はその後に起こった。

 要は誰も作り方をしらにゃかったのである。その結果として驚くと未だに猫耳とにゃがにゃににゃるのは変わらずに…。

 どうせ死ねば戻ると思って放置してたのが仇とにゃったにゃー…。

 おまけに半端に解呪したせいで手が付けられにゃくにゃった。

 幸いというかにゃんというか、時間が経てば戻るのだけれど。


「それはそれは、ご愁傷様です」


 その顔をやめにゃさい、微笑むにゃ。


「…君はどうにかできにゃいの?」

「出来なくはないと思いますけど…」


 彼女はそこでちょっと悩むと、笑顔で両手を上げて招き猫みたいなポーズを取った。…にゃにそのポーズ?私に対するあてつけ?喧嘩売ってるの?


「にゃんにゃん♪」

「っ…二度と喋れにゃくしてやる…」


 その言葉を聞いた瞬間、強化符を発動させて彼女へと駆け出す。今更ながら武器をにゃにゃに壊されたのが痛い…。

 彼女も彼女で向かってくる私を少し避けると山道へと逃げていった。

 譲れにゃい戦いが、ここにはある。


 □ □


「ぜぇ…ぜぇ…」

「はぁ…はぁ…」


 力尽きた私たちは何処かの広場で二人、肩で息をしにゃがら寝転がる。


「さっさと…捕まりにゃさいよ…」

「い…嫌…ですよー…」


 もう息も絶え絶えな上に呪いはまだ解けてない、もしも今襲われたら無抵抗で殺される自信があるね。


「それにしても…あなた…まだその魔法使ってたのね…」

「アレ…やっぱりばれちゃいましたか…」

「当然よ…君が…私から逃げれるわけ…にゃいじゃにゃい…」

「それも…そうですか…」


 体力を回復させるまで暇にゃので、彼女とおしゃべりを始める。凍らせる魔法、彼女が使うとリスクとメリットがバカににゃってにゃいバカみたいにゃ魔法。


「これは…氷華ちゃんの…形見みたいな物ですからね…簡単には忘れないですよ…」

「そう…」


 狐のお面を軽くにゃでながら返事をする。気持ちは…わからにゃくもにゃいわね。


「それで?私をわざわざにゃにゃから離したのにはどんな意図があるわけ?」

「むむ…そこまでばれてましたか」


 もう息も落ち着いたので普通に喋る。普通に…喋りたい…。


「当然じゃにゃい。だって私はあにゃたの師匠よ」

「それもそうですかー。まぁ、ばれていたなら隠す必要もないですね。彼女には生きて貰います」

「そう…勝手にしにゃさい」


 別ににゃにゃが生きていようが死んでいようが、もう私には関係はにゃいのだから。


「ねぇ、お姉さん?」

「…にゃに?」


 突然、彼女は真剣にゃ顔で私の方を向いたので、私もおにゃじく彼女のほうを見る。

 やがてその視線は上へとそれていき…。


「…何処を、見てるの?」

「…にゃんにゃん♪」


 鬼ごっこの第2回戦が始まった。


 □ □


「ぜぇ…ぜぇ…」

「はぁ…はぁ…」


 2回目も決着は着かずに、力尽きた私たちはさっきと同じ広場に居た。


「あにゃた…いい加減諦めなさいよ…」

「嫌…ですよー…」


 体が冷え切って動けにゃい彼女のために焚き火を起こしにゃがらそういう。今度の回復は私のが早いわね。


「はい、飴スープ。どうせ焚き火程度じゃ暖まらにゃいんでしょう?」

「…これはこれはどうもありがとうございます」


 彼女へと飴と水を入れて暖めたコップを渡してあげる。

 それにしても使いすぎると動けにゃくにゃるって…相変わらずにゃんぎな魔法ねぇ。ちにゃみに飴は彼女持参のもの。私も口に入れて転がしてる。


「で?にゃんでわざわざ私のところに来たわけ?にゃにゃを助けるだけにゃら私のとこまで来る必要はにゃいでしょう?」

「師匠と弟子の感動の再会…ってことじゃダメですか?」

「ダウト。つくならもっとマシにゃ嘘にしにゃさい」

「それは残念」


 それきり彼女は黙ってしまったので、私も黙って火を見つめる。


「死ぬ方法、知りたいですか?」


 彼女がそう言った瞬間、私は彼女を押し倒してその細い首を片手で締め上げていた。

 カランカラン、と彼女の持ったコップが落ちる音がする。


「痛いですって!首絞まってます!色々絞まってる!」

「早く、教えにゃさい」


 絞めてにゃい方の手で拳を作りにゃがら嬉しそうに騒ぐ彼女へと問いただす。死ぬ方法…それがわかればもう、私は…!

 彼女は首が絞められているのにも関わらず笑顔で私のほうを見つめ返すと…。


「にゃんにゃん♪」


 …っ!こいつはこの期に及んで…!


 新月の夜に、打撃音が響いた。


 □ □ □ □


 ソラが何処かへと行ってから意識を失った後、私は誰かが話す声で少しだけ意識が戻った。


「それにしてもエウナさん、私の方に付いてていいんですかー?あ、ソレ取ってください」

「はい。どういう意味?」

「んー…明らかにこの子よりもあっちの彼女のほうが危ないじゃないですかー。そんな人と来夢ちゃんを二人っきりにさせるんだ何て…あ、今度はそこの包帯」

「あの子が言うんだからしょうがないでしょ…包帯ってどの包帯よ。多すぎ」

「へー…意外と放任主義なんですねー。右から3番目の奴です」

「はい。過保護になってもしょうがないでしょ…それにしても何時終わるの?」

「それもそうですかー…治療はそろそろですね。打撃の後とかは浅いんですが…ナイフの刺し傷が酷くて…どうやったらこの子をこんな風にできるんでしょうねー?」


 その先は何を言っていたのかわからなくなり、私の意識はもう一度闇に閉ざされた。


 □ □ □ □


「…当てないんですね」


 彼女の頭の横に私の拳がめり込んでいる。


「…当てたら死んじゃうでしょ」


 本気で打ちすぎたのか、私の手からは血が流れており。さらに激痛を訴えてくる。どうやら猫耳も元へと戻ったようだ。


「で?死ぬ方法っていうのは?」


 彼女の首から手を離しながら笑顔で聞く。


「その前に手、見せてください。折れてますよ」

「ん…?」


 見ると私の手首から先はどこか変な方向を向いていた。


「死ぬ方法ですが…」


 私の手に即席の包帯を巻きながら来夢が言う。お互いにコートは譲らなかったので、仕方なく私の着物の裾を切り取って代用している。


「簡単に言えば生きることですね」

「…もっと詳しく」

「つまり、お姉さんはもう死んでいるから死ねないんです」

「…だから、生きればいいと?」


 何だ…そんなことか…。


「それは無理ね」


 包帯を巻いている彼女へと静かに告げる。


「私はもう元には戻れない」


 壊れたものは戻らない。それはあなたもわかっているでしょう?来夢。


「だから私には…あなたの言うことは出来ないわよ」


 最後に彼女へと告げると、立ち上がる。その際に巻き途中の包帯が解けたが気にしない。その程度の情報しかないなら、もうここに居る意味は無い。


「それじゃね、来夢。久しぶりに会えて楽しかったわ」


 来夢から背を向けると歩き始める。もう、あなたとは会わないことを祈ってるわ。


「お姉さん、一人なら無理ですが…二人ならどうなんですか?」


 去り際に彼女が声を掛けてきたので立ち止まる。


「少なくともお姉さんには一人だけお姉さんのことを覚えていて、一緒にいてくれる人が居るんじゃないですか?」


 なるほど…ね。彼女がここに居て奈々を助けた理由がわかった。


「その人と、一緒に生きてみる気はないですか?」


 彼女は…来夢は一緒に生きる人を見つけたのか…。

 私は彼女の視線を背中に受けながら空を見上げる。ああもう、本当に…。


「変わったわね…君は」

「そういうお姉さんは変わらないですね」


 やっぱり、君と私は似ているだけで違う。優しすぎるのよ、君は。


「…大切にしなさい?」

「言われなくても、死んでも手放しませんよ」


 だから、私は君じゃなくて奈々を選んだのよ。


「やっぱり私はあなたが嫌いよ。○○」

「そうですか、やっぱりボクはお姉さんが好きですよ」


 だって、お姉さんはボクの名前を覚えてくれてる唯一の人ですから。

 歩き始めた私の背中へと、彼女の呟くような言葉が聞こえてきた。


 □ □ □ □


「ホントに行くの?」

「うん、やっぱり私にはソラを放っておけないから…」

「そう…」


 何処かのお屋敷の前で私は、お世話になった人たち?へとお辞儀をする。

 いまいち意識がはっきりしていなかったのだけれど、どうやら私は彼女たちに助けられたらしい。

 しかし助けられるだけではなく、彼女たちは私のリハビリやら今まで住む場所まで提供してくれた。

 どうしてそこまでするのかと理由を聞くと、途中で投げ出すのは気が引けるそうだ。

 その言葉を聞いたとき、何となく…本当に何となくだけど彼女が他の人たちに好かれてる理由がわかったような気がする。

 そんなわけで今日は新しい旅立ちの日。ソラとは何としても一度会って話さないと私の気が治まらない!

 幸い、旅の仕方はソラに教えて貰っている。つまり探すための準備は万全。


「まぁ、長い道のりになるかも知れないけど、気をつけていってらっしゃい」

「諦めたら何時帰ってきてもいいですからねー」

「メリー!縁起でもないこと言うんじゃないの」

「大丈夫!何としても見つけてみせるから!」

「愛ですね…素敵です…ところでエウナさん、私への愛が足りないと思うんですがどうでしょう?」

「そう、がんばってね」

「…スルーですか?で、でもそんなエウナさんも…」

「成仏しろ」

「…エウナさんが冷たい」


 私は二人で騒ぎ始める彼女たちへと笑いかけてから歩き始める。

 屋敷にはもう一人、ソラに似た子が居たのだけれど…最初に少しだけ話したっきりあんまし話さなかった。

 今でも彼女はエウナさんの背中ですやすやと眠っている様子。

 それにしても…あの子はいったい何なんだろう?

 ソラが掛けた魔法をあっさり解いてたし…すごい不思議な子だったなー。


 □ □ □ □


「あちゃー…またか」


 どこかの森の中で私は一人呟く。

 私の体には全身にツタのようなものが絡まっており、身動きが出来ずに運ばれていくことまであの時と一緒。違うのはここに奈々は居ない、ということと私には生きる意志がほとんどないということかしらねぇ?


「どなどなどーなーどーな…」


 相変わらずすることもないので一人呟く。さぁ、あの時は食べられてあげなかったけれど、今度はおいしく食べられてあげちゃうぞ!

 私がぼけーっと運ばれていると、突然ツタの動きが止まった。むむー?

 見るとツタに糸のようなものが絡み付いて動きを止めている様子。あー…そう。

 そして、駆け込んで来てツタを切る小さな影。悪いな!おいしく食べられるって言ったけれど、ソレは無理だったみたいだ!無かったことにして頂戴。

 何と、なすすべなく私が地面に落ちるところまであの時と一緒。…痛いからここは一緒じゃなくてもよかったんだけどなー。


「助けるなら捕まってる人のことも考慮した方法で、って言わなかったっけ?」


 大剣で植物にとどめを刺している彼女へと声をかける。幸い、あんまし驚かなかったので猫耳は出なかった。よかった…。


「あんなのに捕まるのが悪いのよ…」


 するとどこか飽きれながら返事をされた。あんなのとは何だ、植物をバカにしちゃいけないんだぞ!


「久しぶりね、奈々。傷はどう?」

「久しぶり、ソラ。見事に完治したからご心配なく」


 あの子、ホントのこといってたのねぇ…。それにしてもアレを治せるとは驚き。

 彼女は私に振り向くと、大剣を向けた。


「今からあなたに選ばせてあげる」


 どこか楽しそうに、どこか嬉しそうに彼女は言う。


「私と一緒に生きるか、それともずっとどこかで監禁状態になるか」

「それはまた、すごい2択ね…」


 …選択肢ないじゃない。


「死のうとしても、私が助けるから無意味だからね?今となってはソラより私のが強い、つまりあなたに選択肢は用意されてない!」

「わお…」


 嬉しそうにそう言う彼女の様子に、空を見上げて少し悩む。思い出されるのは新月の夜の彼女の言葉。


「それなら、一緒に行きましょうか」

「ホント!?」

「あ、それと」


 喜ぶ奈々へと視線を戻しながら言う。


「君は少し身の程を知ってればいいと思うよ」


 まだ、あなたが私より強いわけないじゃない。


「…それじゃ、ソラはまだ私に教える必要があるってことだよね!?」

「あー…」


 そういえばそういう約束だっけ。


「いいわよ。色々教えてあげる。面白いものもつまらないことも…色々、ね」


 いいでしょう。成功したら儲けもんだし…もし失敗したらまた繰り返せばいいだけなんだし。

 それなら、彼女に付き合うのも悪くないわねぇ。

 そう結論付けると奈々と一緒に歩き始める。


「ねぇソラー?」

「んー?んぐっ?」


 突然、彼女は私の名前を呼ぶと口を塞いできた。そしてゆっくりと飴玉がゆそーされる。当然、驚いた私にひょこんと生えてくる猫の耳。にゃ…にゃー!?


「にゃ…にゃにを!?」

「ふふ、助けた後のご褒美。確か飴もだよね?」


 にゃにゃは真っ赤な顔でそう言うと嬉しそうに手をつにゃいで来た。

 さてさて、この手が離されるのは何時ににゃるのやら…。

と、いうことで無事完結となりました~


釣られた方もつられなかった方も

最後までお付き合いいただきありがとうございます

少しでも楽しんでいただけたら幸いです


さて、次は何を書こうかな~

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