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シルバーバレット  作者: 顔のない人間
第一章 廃棄空間地点クラン

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第11話 援軍

車はギリギリミサイルをかわし大事には至らなかった。


「……レオーネさん、大丈夫なのかな……」


車内で、セリーナが不安そうに呟いた。

小さな手を胸元で握りしめ、フロントガラスの向こう――血煙が立ちのぼる戦場を見つめている。


「あいつは大丈夫だ」


スランはモニターから目を離さず、淡々と答えた。


「それより問題はリボルだ。さっきからSOS信号を出しっぱなしでな。

とりあえずクライドが着くまで耐えろって送っておいた」


「それ、だいぶヤバくない?」


ミアが即座にツッコミを入れる。


「ひど……」


セリーナも思わず苦笑しかけた、その瞬間――


「……っ仕方ないだろ!」


急にセリーナが頭を押さえ、息を詰めた。


「え、なに……? また……」


こめかみが脈打つ。

視界の奥に、強烈な像が割り込んでくる。


「……大きな……剣……空から……

あの吸血鬼に……落ちて……」


「――クライドよね」


ミアが即座に察する。


「ああ、間違いない」


スランの声が低くなる。


「……このままじゃ、レオーネが先に潰される」


その頃、道路上。


レオーネは、もはや満身創痍だった。

額から流れる血が頬を伝い、顎から滴り落ちる。

息は荒く、足元はふらついている――それでも、彼女は一歩も引かなかった。


短剣を握る手に、力を込め直す。


「はぁ……はぁ……」


目の前の吸血鬼は、なおも笑っている。

再生を繰り返し、肉がうねり、骨が軋む音を立てながら、ゆっくりと距離を詰めてくる。


スランが、車内で口パクをした。

(来るぞクライドが)


レオーネは、その合図を見逃さなかった。


「あら……」


血に染まった唇で、妖艶に笑う。


「……ついに、このときが来たのね」


吸血鬼が腕を振り上げ、決定打を放とうとした瞬間――


「残念だけど」


レオーネは車のトランクの影へと滑り込む。


「――あなた、もう終わりよ」


吸血鬼が追撃に踏み込んだ、その刹那レオーネが高速で走り車のトランクに隠れた。


――ズンッ!!


空気そのものが裂けるような衝撃。

天から降り注いだ光の剣が、一直線に地面へ突き立った。


次の瞬間――


吸血鬼の身体は、縦に真っ二つに断たれた。

断面から露出した核が、光に焼かれ、悲鳴を上げる間もなく砕け散る。


爆風と閃光が夜を塗り潰し、

粉塵が舞い、アスファルトが抉れた。


そこへ、軽やかな声が響く。


「――おまたせさん」


そこには、異様な光景が広がっていた。


夜の都市を切り裂くように並ぶ、数十台の装甲車。

重厚な車体が円陣を組み、ヘッドライトが白く地面を照らしている。

その中心に、ボスとクライド、そして見知らぬ男と女が立っていた。


硝煙と血の匂いがまだ空気に残る中、

クライドは頭をかきながら、どこか気まずそうに口を開く。


「……悪いな、我が妹」


その言葉に、少女――ミアが腕を組んで応じた。


「今それどころじゃないでしょ、お兄ちゃん。

あの銃バカ……リボルが、弾切れ寸前なんだから」


そう言って、彼女は腰のホルスターから弾薬ケースを軽く持ち上げる。


「だからさ、この弾――届けてくれない?」


クライドが返事をする前に、背後から一人の女が歩み出た。

長い髪を揺らし、迷いのない足取りで。


「それなら、私が行くわ」


「ソフィア……」


名を呼ばれ、彼女はわずかに微笑む。


「私の方がクライド隊長よりも足も速いし――

なにより、一番リボル先輩を尊敬してる」


その言葉に、クライドの表情が一瞬だけ険しくなる。


「待て待て。最高速度なら俺の方が上だろ」


「一時的でしょ、それ」


即座に返され、クライドは言葉に詰まった。

妹を危険な最前線へ行かせたくない――

だが同時に、彼女の覚悟が本物であることも、痛いほどわかっていた。


そこへ、低く落ち着いた声が割って入る。


「……すまないが、今回はクライドに任せる」


全員の視線が、ボスへと集まった。


「ソフィアとクリッドは、上位グールの撃破に回ってくれ。

ミアとスランは引き続き、敵本拠地内部の制圧と情報回収を」


一瞬の沈黙。


だが、次の瞬間――


「イエス、マム」


四人の声が、揃って夜に響いた。


「――それと、クライド」


ボスはそう言って一歩前に出ると、無言のまま小さな木箱を取り出した。

装甲車のライトに照らされ、古びた木肌に刻まれた紋章が浮かび上がる。


次の瞬間。


「受け取れ」


放り投げられた箱を、クライドは反射的に掴み取った。

ずしり、と重い。


「これは……」


「上級銀弾だ」


ボスの声は淡々としていたが、その奥に殺気が滲んでいた。


「ハズしたら――殺すと、リボルに伝えてくれ」


一瞬の沈黙。

クライドは木箱を握り締め、深く息を吸う。


「はいはい」


その瞳には、迷いはなかった。

友を救うためなら、自分が雷になる覚悟はできている。


「やりますか」


クライドは小さく呟くと、地面に片膝をついた。

次の瞬間、低く、しかし確かな声音で詠唱を始める。


「――雷光よ、我に従え。

その身を我に宿し、雷のごとく駆け抜けろ」


空気が、震えた。


雷走光(クイック・スパーク)


その言葉と同時に、クライドの全身を眩い稲妻が包み込む。

轟音とともに、周囲のグールが一斉に弾け飛んだ。


地面を蹴る音すら、もはや聞こえない。


雷そのものとなったクライドは、

稲光を引き裂くようにして夜の都市を一直線に駆け抜ける。


装甲車の列を、瓦礫を、闇を置き去りに――

敵の本拠地へ。


その胸にはただ一つの想いだけがあった。


――間に合え。リボル。


雷鳴が、都市の中心へと消えていった。

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