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シルバーバレット  作者: 顔のない人間
第一章 廃棄空間地点クラン

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第10話 詰んだかも

「ミア……ここが、敵のボスがいる部屋か?」


 分厚い隔壁の前で、リボルは低く問いかけた。

 無線越しに聞こえるミアの声は、いつになく真剣だった。


『当たりよ。間違いないわ』


「……それにしても、外がやけに騒がしいな」


 遠くから、断続的な衝撃音と振動が伝わってくる。

 床を通して響くそれは、生半可な戦闘ではない。


『ええ。外には大量のグール、それに少し厄介な吸血鬼が混じってるわ。

 今はレオーネが対処してるけど……正直、長くは持たない』


「……今、吸血鬼と言ったか?」


 リボルの表情が、一瞬だけ硬くなる。


「少し待て」


 彼は無線を切り、別回線を開いた。


「ウォズ。頼みがある」


 影の中から、低く愉快そうな声が返ってくる。


『ほう? 珍しいな、盟友よ。用件は?』


「少しの間でいい。セリナのところへ向かってほしい」


『報酬は?』


 間髪入れず、リボルは答えた。


「スイートチェリー、一キロ」


『心得た。今すぐ向かおう』


「くれぐれも、レオーネに見つかるなよ」


『善処しよう』


 通信が切れる。


「……さてと」


 リボルは再び無線を取り出し、スランに繋いだ。


「スラン、ドアのロック解除を頼む」


『もう終わってるよ』


「仕事が早い。助かる」


 深く息を吸い、吐く。

 扉の前に立ち、銃を構える。


 ギィ……

 重々しく扉が開いた。


「――お前が、ここのボスか」


 豪奢なスイートルーム。

 血の跡と酒、女の香りが混じる異様な空間。


 ソファに座る男――リチョーは、驚いたように目を見開き、

 次の瞬間、拍手を始めた。


「素晴らしい……!

 よくぞ、ここまで辿り着いた」


 愉悦に満ちた声。


「部下たちを粉塵に変えてくれた君には感謝したいところだが――」


 笑みが、冷酷に歪む。


「ここで消えてもらうよ。

 ウィスタ、いけ」


 ドンッ!!


 背後から、空気を引き裂くような圧が迫る。


「――っ!」


 リボルは瞬時に首を傾け、紙一重で回避した。

 視界を掠める巨大な残像。


「……で、サプライズはそれだけかい?」


 軽口とは裏腹に、心臓は強く脈打っていた。


 リチョーは肩をすくめ、笑う。


「戦ってみろ。すぐにわかるさ」


 その言葉を残し、

 彼の座っていた椅子が床ごと沈み、下階へと消えていった。


(……逃げたか)


 リボルは舌打ちしつつ、弾倉を確認する。


(銀弾、残り十八発……いける)


 バンッ! バンッ!


 間髪入れず、不意打ち。

 ウィスタの頭、胸、腹――それぞれに二発ずつ叩き込む。


「……よし、これは決まりだな」


 だが。


 ぐちゅりと、不気味な音。


 撃ち抜いたはずの部位が、再生していく。


「……マジかよ確かに核は撃ち抜いた」


 次の瞬間、ウィスタが踏み込んだ。


 ドンッ!!


 床が砕け、近接戦に持ち込まれる。


 巨大な拳が振るわれ、リボルは横転しながら回避。

 壁が粉砕され、破片が飛び散る。


(当たったら、終わりだな)


 喉が、ひくりと鳴る。

 だが、恐怖よりも――奇妙な高揚が勝っていた。


「……まったく」


 銃を構え直し、ニヤリと笑う。


「面白いぞ、こんなのは久方ぶりだ」


 ウィスタが再び踏み込む。

 圧倒的な質量と殺意。


 リボルは後退しながら照準を合わせる。


(――考えろ)


 一瞬の油断が、死に直結する距離。


 生か死か。


 その境界線の上で、

 二人の戦いは、さらに激しさを増していった。


◆◆◆


ビル脇の幹線道路。

アスファルトは砕け、街灯は傾き、夜の空気は血と硝煙の匂いに満ちていた。


その中心で、頭から血を流したレオーネが立っていた。

額を伝う赤が視界を曇らせる。それでも彼女の瞳は、獲物を射抜く刃のような鋭さを失っていない。


「あら――」


乾いた音とともに、

斧が粉々に砕け散った。


名もなき吸血鬼の一撃。

聖生された武具ですら耐え切れず、金属片が夜空に舞う。


だが、レオーネは一瞬たりとも怯まなかった。

砕け散る破片が地面に落ちるより早く、彼女は腰元から二振りの短剣を抜き放つ。


「……ふふ」


血に濡れた唇で、微笑む。


「さあ――エレガントにいきましょう」


次の瞬間、彼女の身体が弾けるように前へ出た。

短剣が閃き、グールの喉、関節、腱を的確に裂いていく。

首を落としても止まらぬ怪物に対し、徹底的に、執拗に――削る戦い。


一方、車内。


モニターの青白い光に照らされながら、ミアとスランは指を走らせ続けていた。

敵内部ネットワークへの侵入。警報、兵力配置、実験体のログ。


「……まだ奥があるわね。最悪だわ」 「愚痴ってる暇はないぞ、来る」


その時――


「うぅ……」


後部座席で、セリーナが頭を抱えて身をよじった。


「頭が……割れそう……」


視界が歪む。

鼓動が、頭の内側から直接響いてくる感覚。


その瞬間、車内の影が不自然に揺れ――

ウォズが、ぬるりと姿を現した。


「――なんだ、こいつ」


反射的に身構えるミア。


「気をつけろ。吸血鬼だ」


だが、セリーナは苦しそうに息をつきながらも首を振った。


「だ、大丈夫……この人……先生のお友達……」


「……そうかリボルのお友達!?」


ウォズは短く応じ、周囲を一瞥する。


「飲み込みが早くて助かる。状況が芳しくないと聞いて来たが……正解のようだ」


低い声で、淡々と告げる。


「まず現状だが――リボルも、お前たちも、かなり追い詰められている。

正直に言おう。援軍が来ても、状況は劇的には変わらん」


車内の空気が、重く沈む。


「そして問題は、今リボルとレオーネが戦っている吸血鬼だ。

奴らは手強い。通常の銀弾では決定打にならない。より上位の銀弾か高威力の魔術が必要だ」


沈黙。


「……リボルに上級銀弾渡せる者はいるか?」


ミアが即答する。


「あるわけないよ高級なんだからボスなら持っているかもしれないけどさっき帰ったし」


「確かにそうだなしかもあの数のグールの中を突破できる者などそうそういない」


その時、ミアが少し考え小さく手を上げた。


「……もしかしたら……クライド兄ちゃんなら……」


ウォズは一瞬考え、肩をすくめる。


「あのクライドか……わかった。

私は影からレオーネの援護に回る。あとは任せた」


そう言って、再び影に溶ける。


———数分後


「セリナちゃん、大丈夫?」


ミアが振り返る。


「……少し、頭が痛いだけ……」


「そう。無理しないで、休みなさい」


「……違うの」


セリーナは、震える声で続けた。


「……嫌な予感がする……」


次の瞬間――

彼女の脳裏に、はっきりとした映像が浮かび上がった。


暗い夜空。

照準。

発射管。


「――対空ミサイル……!」


同時に、ミアが叫ぶ。


「避けて、スラン!!」


「――あいよッ!!」


スランが急ハンドルを切った刹那、

夜空を裂く轟音が、街を揺らした。

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