第9話 幼児、多重魔術に挑戦する(村の地形が微妙に変わる)
翌朝。
俺はログを見て普通に固まっていた。
◆ 今日の一歩(※警告つき)◆
・2つの魔術フォームを「弱く」同時に出してみましょう
※ 幼児には危険。絶対に無理しないこと。
(いや絶対に無理しないって言いつつ、挑戦させる気まんまんじゃん)
幼児に出す課題じゃない。
これ大学院レベルの研究テーマだろ。
■ とはいえやる
庭の真ん中で、俺は両手を前に出し――
(右手:放出型 左手:流動型……いけるか?)
まず右手に光をため、
左手からは“ほたる光”を漂わせる。
(よし……ここまでは昨日やった……)
次の瞬間――
右手から――
ピュッ!!
左手から――
ぽよぽよぽよ……
(おお……同時に出た!!)
◆ スキルログ ◆
《原初魔術:多重展開 Lv1 解放》
《魔力操作 Lv5 → Lv6》
(マジで来た、多重展開!)
興奮しすぎて魔力が一瞬だけ跳ね上がり――
ボンッ!!
「うわ!!?」
右手の光がちょっとだけ弾け、
砂埃がふわっと舞った。
(うお、セーフ……?)
いやセーフじゃなかった。
■ 地面が凄くいやな角度でえぐれてる
(あれ? 俺、こんなにやったっけ?)
見ると、右手の方向の地面が、
“スコップでえぐったみたいにちょっとだけ凹んでいた”。
(やっべぇ!!!)
幼児の魔術で凹地形ができるとか聞いたことない。
■ 父さん、また全力ダッシュ
「ユウトーー!! 今度は何した!? 地鳴りがしたぞ!?」
(地鳴りじゃなくて……気のせい……微振動……)
母さんは冷静だ。
「今日は地面ね」
(母さん、地面“ね”じゃない)
父さんは絶望した顔で跪く。
「ユウト……その……なんで……?」
(俺に聞くな)
「昨日は葉っぱで、今日は地面……明日は何が飛ぶんだ……」
(不安にさせてすまん父さん……)
■ 子どもたちがやってくる
「ユウト、地面壊したの?」
(壊したんじゃない、微調整しただけだ……!!)
「すごい!! ぼくにも教えて!!」
(無茶言うな、下手したら死ぬぞ)
しかし“ほたる光”の方は安全らしく、
子どもたちはそれを追いかけて遊び始めた。
「わーー!! きれいーー!!」
「ふよふよしてる!」
その様子を見て、村のおばちゃんは震えていた。
「光の妖精を呼ぶ赤ちゃん……」
(ちがう、魔力だってば!!)
■ その日の夕方、村の長老会議が開かれる
なぜか俺が議題にされたらしい。
長老A「ユウトの魔術、すでに大人以上じゃないか……?」
長老B「いや、あれは大人でもできんぞ」
長老C「未分類……恐ろしい……」
(恐れなくていいのに)
そしてなぜか結論が出た。
長老A「ユウトには……“魔力封印のお守り”を渡すべきだ!」
(封印!?)
長老B「いや、逆に“増幅のお守り”をつけて才能を伸ばすべきだ!」
(やめろ、どっちも危険だ!!)
長老C「……両方でどうだ?」
(両方ってなんだよ!!!)
会議が完全に迷走していた。
■ 夜、父さんがついに決心した
「リア……俺、決めた」
母さん「なにを?」
「ユウト……“師匠”が必要だ」
(は!?)
「このまま自己流で魔術やったら、村が壊れる……!」
母さん「あら、正しいわね」
(母さん、同意しないで!?)
父さんは続けた。
「だから……若いころ修行した“あの人”を呼ぶ……!」
(伏線!?)
「山の奥に住む、魔術師の……」
(魔術師!?)
「“バルド爺さん”だ!!」
(なんか名前だけで強そうなんだが!?)
◆ 特別成長ログ ◆
《外部教師イベント:発生》
→ 数日後、“魔術師バルド”が到着予定です
→ 幼児にとっては高難度イベントです
(た、たしかに……幼児にはハードすぎる……!)
しかしワクワクもする。
ついに“師匠イベント”だ。
学園前にこんな濃いイベントがあるとは思わなかった。
(これは……確実に強くなる……!)
そして何よりも――
(俺……学園に行く前に、どんだけ伸びるんだ……!?)
魔術師バルドの到着を前に、
俺は興奮して眠れなかった。
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