第8話 幼児、魔術の『形』を学ぶ(まさかの多重展開?)
基礎魔術の暴発から一日。
俺は家の裏の畑のすみっこで、また修行していた。
(いや……修行って言っていいのか? まだ1歳半だぞ俺)
でも今日の成長ログはいつもと違った。
◆ 今日の一歩 ◆
・魔術には“形”があります
・自分に合う魔術形態を1つ探してみましょう
▼ 例
① 放出型(手から出す)
② 集束型(球状にまとめる)
③ 展開型(空間に薄く広げる)
④ 流動型(ふわふわ漂わせる)
※ 幼児は「小さく、弱く」が基本です
(おお……“魔術のフォーム”ってなんか格好いい……!!)
どうやら魔術は“出力”だけじゃなくて、“形”によって効果が違ってくるらしい。
属性がない未分類の俺は、どのフォームも扱える“可能性がある”とのこと。
(可能性だけは最強なんだよな……実力が追いつかないけど)
■ とりあえず「放出型」に挑戦する
前に暴発したときは、おそらく放出型だった。
(じゃあ今日は……ちゃんと1%でやる)
指に魔力をためて……
(ちょっとだけ……ちょっとだけだぞ……)
ぴょん。
小さな光の粒が飛んだ。
(おおお!? 成功!!)
今日は暴発もせず、落ち葉も吹き飛ばない。
控えめで、幼児の魔法らしい。
すると――
「ユウト!? 今の見た!!?」
(……見られてたか)
父さんが遠くから全力疾走してくる。
「な、なんだその“完璧な魔術”は……!? 昨日の暴発とは違う……!」
(昨日が異常だっただけです)
「み、見ろリア!! ユウトが……ユウトが……!!」
母さんは麦茶を飲みながら、
「よかったじゃない。暴れなくて済んで」
(母さん落ち着きすぎ)
■ 次は「集束型」
(球にする……球に……)
手のひらに魔力を集めると――
ポワ……と丸い光が浮かぶ。
(いける……!)
しかしその瞬間、
魔力が勝手に増幅し始め――
(やば!?)
ボフッッ!!
光の球が「突然ふくらんで」消えた。
(また勝手に増えたーーー!!)
そして葉っぱがまた飛ぶ。
「ユウトーー!! まただ!!」
(ちがう、これは……その……未分類の仕様です)
父さんは両膝をつく。
「ユウト……お前……何者なんだ……」
(息子です)
■ 展開型にチャレンジ
(空間に薄く広げる……?)
指をひらき、魔力を薄く伸ばしていく。
すると――
しゅわわわ……と手の前に透明な膜のようなものが現れた。
(え、これ……盾っぽくない?)
小さな“魔力の幕”がピンと張られる。
「ユウト、それ……バリア……?」
母さんが目を丸くする。
(そう、たぶんバリアです)
「なんで……バリア張れるの……?」
(さっきログに“展開型”の説明あったからです)
父さんが震えながら言う。
「お前……防御魔術までできるのか……?」
(いや、たぶん俺はまだ何も分かっていない)
魔力の膜を消すと――
◆ スキルログ ◆
《原初魔術:展開型 Lv1》
《魔力操作 Lv4 → Lv5》
(また上がるなぁぁ!!)
■ 最後に「流動型」に挑戦
(これは……魔力を空中に漂わせる……ってこと?)
ふわ……と魔力を外に出すと、
光の粒が小さく浮かび、ぽよぽよ揺れる。
(かわいい……!)
これは完全に“ほたる”だ。
魔力ほたるみたいにきれい。
「ユウト……!? それ……妖精……?」
(さすがに妖精は出してない)
村の子どもたちが寄ってくる。
「わぁ……ユウトが光の粒出してる……!」
「すごい!!」
「なんでそんなことできるの!?」
(俺も知りたい)
光粒がふよふよ飛び、子どもたちが追いかけて遊びだす。
(おーい、これ魔力だから危ないぞ……!)
◆ スキルログ ◆
《原初魔術:流動型 Lv1》
《魔力親和性:未分類 → 伸長》
(……伸長? また新しい言葉が……)
■ 家族会議が開かれる
夜。
父さんと母さんが真剣に話していた。
「ユウト……今日だけで4種類も魔術を習得してたわよね?」
「未分類って……こんなに伸びやすいのか……?」
母さんは言う。
「まだ一歳半よ? 普通は“光る”だけで称賛されるのに……」
父さんはうなる。
「こいつ……学園に入ったら……絶対……化け物扱いされる……」
(父さんやめろその表現)
母さんが微笑む。
「でも、すごく誇らしいわ。うちの子……すごいもの」
(あ、嬉しい……)
その瞬間、胸の魔力がまたふわっと温かくなった。
◆ 特別ログ ◆
《精神リンク:親の安心を感知》
→ 魔力がさらに安定しやすくなります
(母さん、それバフです……)
■ そして、ついに
◆ 重要ログ ◆
《基礎魔術の4形態を確認しました》
《“多重展開”の資質があります》
▼ 明日から
・2つのフォームを同時に扱う練習ができます
※ ただし幼児には推奨しません(本当に危険)
(“本当に危険”とか言ってるけど絶対やらせる気あるだろ!!)
こうして俺は――
まだ言葉も片言の幼児のまま、
魔術の“多重展開”を目指すことになったのである。
(これ……学園行く前に完成したら……俺、やばくね?)
ワクワクしすぎて眠れなかった。
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