第6話 幼児、魔力量の制御に挑む(父さんの混乱が限界突破)
魔力暴走の翌日。
俺は早朝から“魔力を外に逃がす練習”をやっていた。
(……いや幼児に求めるハードル高くない?)
とはいえ、成長ログシステムの言うことは正しい。
昨日みたいに勝手に魔力がぱんぱんに膨らむと、また枕が吹き飛ぶ。
◆ 今日の一歩 ◆
・深呼吸で魔力を安定させましょう
・指先から少しだけ放出してみましょう
※ 過剰出力禁止
(禁止って言われるほどやりたくなるじゃん……いや、やらないけど)
■ 朝の庭で“修行中の赤ちゃん”爆誕
庭で立ち、両手を出し、深呼吸する幼児。
傍から見ると、完全に“なにかに目覚めた子ども”である。
「ふーっ……」
「あーっ……」
指先がじんわりと光る。
(よし……この光が“過剰”になる前に……外に逃がす)
手を前に向け、意識を指先へ――
(ゆっくり……ゆっくり……!)
「ふ〜〜……」
「ユウト……?」
背後から父さんの声がした。
(え、なんで今!?)
振り返ると、父さんは麦わら帽子をかぶり、完全に固まっていた。
「お、お前……なにやってるんだ……?」
(魔力制御の訓練です)
が、幼児の俺が口にできたのは――
「あー……ふー……」
「ま、まさか……呼吸法!?」
(なんでそんなところに着眼するんだ父さん)
父さんは真顔で言う。
「ユウト……お前……武術を始めたのか……?」
(違う!!)
「だって……その構え……ガチの構えじゃねぇか……!」
(違う!! これは魔力の流れを整えるための“幼児版ヨガ”みたいなもんだ!!)
父さんは両手で頭を抱える。
「まだ一歳半だぞ……? なんで……そんな……達観した仙人みたいな呼吸を……」
(父さん、落ち着いてくれ……!)
■ 魔力放出をやってみたが
気を取りなおして続ける。
指先にほんのり集めた魔力を――
(ゆっくり……外に出す……!)
すっ……
光が、消えた。
(よし、成功……!)
この程度でいいらしい。
本当に“余剰分”を抜くレベル。
「……今、光を消した?」
(やべっ)
振り返ると父さんが距離2メートルくらい離れていた。
「ユウト……今の、魔力を……放出したのか?」
(なんで分かるんだ父さん!?)
父さんは震える声で続けた。
「俺……一瞬、風が吹いた気がして……」
(気のせいです。実際ほぼ何も起きてません)
「この歳で……魔力の“呼吸法”と“放出”を……?」
(父さんの脳がショートしてる)
そしてなぜか父さんは膝をついた。
「ユウト……本当に天才なんだな……」
(毎日言ってるけど、その基準ゆるくない?)
■ 村に噂が広まる速度、異常
昼には村全体に噂が広まっていた。
「ユウト、朝から庭で構えを取ってたらしいぞ」
(構えではない)
「光が出て……風が起きて……消えたらしい!」
(そこまで派手じゃない)
「未分類の魔力って、ああいう修行を勝手に始めるのか?」
(システムに言われてるだけだ)
村の子どもたちが寄ってくる。
「ユウト、なにしたの? ぼくたちもやってみたい!」
(いや、これ普通に魔力持ってないと無理だから)
「こうやって、こう?」
子どもが変なポーズを取る。
(それ何の流派だよ)
■ 幼児、正座で魔力を整える
夕方。
俺はまた庭で深呼吸していた。
すると、今度は母さんが横に座った。
「ユウト……ねえ……その光るのって、痛くないの?」
(大丈夫だよ)
「怖くはないの?」
(怖くないよ)
もちろん言葉にはできず、「だいじょぶー」と幼児語でごまかす。
「そっか……ならよかった」
母さんが優しく頭を撫でる。
その瞬間、胸の奥の魔力がふわっと落ち着いた。
(……あ、安定した)
◆ スキルログ ◆
《魔力安定 Lv1 解放》
《魔力操作 Lv3 → Lv4》
(うわ、母さんの安心感……バフ付与してない?)
母親バフ強すぎ問題。
■ 夜、父さんが意味不明な悩みを始める
「リア……俺は悩んでいる……」
母さん「なにを?」
「ユウト……将来、絶対すごいことになるんじゃねぇか……?」
母さん「ええ、そうね」
「でも……もし王都の偉い人にスカウトされたら……どうする……?」
(いや父さん、まだ俺はおむつ履いてるんだって)
「……家族から離れてしまうんじゃ……」
母さんが吹き出す。
「あなた、心配するの早すぎ」
(ほんとそれ)
父さんは真剣だ。
「だって……あんな“修行僧”みたいな朝を迎える一歳児なんて見たことないんだ……!」
(やめてくれ父さん、俺はただのログ奴隷だ)
■ 最後にログが追撃してくる
◆ 成長計画の更新 ◆
・魔力操作:Lv4(順調)
・魔力安定:新規取得
・体力:幼児として良好
▼ 次の一歩
・“魔力量”が少しずつ増えています
・明日から、基礎魔術の準備を始められます
(基礎魔術……!)
ついに来た。
この世界の魔術は、属性持ちは属性ごとの魔法を習う。
でも俺は未分類。
(俺の場合……どうなるんだ?)
未知。
だけど――楽しみだ。
(この成長速度……学園に入る頃には、絶対誰より強いぞ……!)
幼児は小さな拳を握りしめながら眠りについた。
その姿はどう見ても――
「小さな勇者」
──でも中身はただの元社畜である。
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