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幼児から始めるゆるゆる無双学園生活  作者: 蒼野湊
第3章 アステル魔術学園編

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第54話 最後の干渉――世界から、欠片を切り離す

それは、

戦いと呼ぶには静かすぎた。


だが――

破壊よりも、はるかに残酷な行為だった。


■ 儀式の始まり


夜明け前。


学園の最深部、

封印区画のさらに奥。


誰も立ち入らないはずの場所で、

世界そのものに触れる儀式が始まっていた。


クロウ・リーヴェンは、

円陣の外側に立っている。


位相教団の紋章が、

床に浮かび上がる。


「――開始」


合図と同時に、

空間が“音を失った”。


風も、

魔力の流れも、

概念として薄れる。


(……来た)


ユウトは、

はっきりと感じた。


これは攻撃ではない。

奪取でもない。


切断だ。


■ 世界からの切り離し


「欠片は、

 この世界にとって“ノイズ”だ」


クロウの声は、

どこまでも落ち着いている。


「選択肢が多すぎる世界は、

 必ず破滅する」


「なら――

 選択そのものを、

 弱めればいい」


魔導陣が、

ゆっくりと回転する。


ユウトの胸の奥で、

欠片が――

引き剥がされる感覚を発した。


(……っ)


痛みは、ない。


ただ――

自分の一部が、

存在しなかったことにされていく。


■ 抵抗しない理由


エリスが叫ぶ。


「ユウト!

 干渉しなさい!」


だが、

ユウトは首を振った。


「……壊せない」


力を使えば、

儀式は止まるかもしれない。


でも――

それは“選択を奪う”行為になる。


(……それは、

 俺が拒否した未来と同じだ)


リリアが、

一歩前に出る。


「……ユウト」


声が、

震えている。


「このままだと……」


ユウトは、

彼女を見た。


「……大丈夫」


「これが、

 俺の選択だ」


■ リリアの気づき


その瞬間。


リリアの未来視が、

完全に崩れた。


見えない。

分岐もない。


ただ――

今だけが、ある。


(……ああ)


(この人は、

 本当に――)


リリアは、

歯を食いしばった。


(未来を守るために、

 未来を見る力を捨てるんだ)


■ 欠片の正体


クロウが、

最後の言葉を告げる。


「欠片とは――

 “世界が完全になることを

 拒否する装置”だ」


「本来、

 存在してはならない」


「だが――

 人は、それを“物語”と呼ぶ」


(……物語)


ユウトは、

小さく笑った。


「……なら」


「俺は、

 物語を選ぶ」


■ 切断完了


魔導陣が、

静止する。


光はない。

爆発もない。


ただ――

何かが、終わった。


ユウトの胸の奥から、

欠片の感触が消えた。


(……静かだ)


力もない。

違和感もない。


ただ――

普通だった。


クロウは、

目を閉じた。


「……完了」


「これで、

 世界は少しだけ、

 安定する」


■ 代償


ユウトは、

その場に座り込んだ。


立てないわけじゃない。

ただ――

立つ理由が、一瞬分からなくなった。


リリアが、

駆け寄る。


「……ユウト」


触れる。


今度は、

何も起きない。


共鳴も、

安定も、

ない。


(……それでも)


ユウトは、

彼女の手を握り返した。


「……生きてる」


それだけで、

十分だった。


■ クロウの敗北


クロウは、

静かに言った。


「私は……

 正しかったと思っている」


「それでも」


視線を上げる。


「君たちの選択を、

 否定はしない」


「正しさより、

 意味を取った」


一歩下がる。


「……それが、

 人間か」


■ 夜明け


空が、

白み始める。


世界は、

何も変わらない。


争いも、

不安も、

消えていない。


でも――

選べる。


間違えることも、

後悔することも。


すべて、

自分で。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

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