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幼児から始めるゆるゆる無双学園生活  作者: 蒼野湊
第3章 アステル魔術学園編

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第52話 固定案――選ばなくていい未来の、正しさ

会議室の空気は、冷静だった。


怒号もない。

対立もない。


ただ、

正しさが並んでいるだけだった。


■ クロウの提示


クロウ・リーヴェンは、

机の上に一枚の魔導図を投影した。


複雑だが、整然としている。


「これが、固定案の全貌です」


淡々と、感情を挟まずに続ける。


「欠片と鍵――

 ミナト・ユウトと、アークライト・リリアの関係を

 現在の安定状態で恒久固定する」


俺は、図を見る。


線は、揺れていない。

分岐もない。


「これにより」


クロウは言った。


「暴走の可能性はゼロ」

「未来視による精神摩耗も消失」

「位相教団は、

 あなた方を狙う理由を失う」


学園長が、静かに頷く。


「犠牲は?」


クロウ「ありません」


即答だった。


■ 正しすぎる案


研究官の一人が言う。


「理論的には、

 これ以上ない解決策だ」


別の者も続く。


「世界の安定性は上がる」

「予測不能な未来も減る」

「学園の安全も保証される」


誰も、

「間違っている」とは言わない。


(……そりゃそうだ)


俺自身、

否定できない。


■ リリアの未来


クロウが、

リリアを見る。


「あなたの未来視も、

 不要になります」


リリア「……」


「見なくていい未来」

「悩まなくていい未来」

「選ばなくていい未来」


クロウは、

穏やかに微笑んだ。


「苦しまなくていい」


その言葉は、

優しかった。


(……本当に)


■ ユウトの違和感


でも。


胸の奥で、

欠片が――

沈黙したまま、拒絶している。


(……違う)


俺は、

ゆっくり息を吸った。


「……クロウさん」


クロウ「はい」


俺「この未来で――

 誰が、責任を取るんですか」


一瞬、

間が空いた。


クロウは、

少し考えてから答える。


「責任?」


「不要になります」


「誰も選ばない。

 だから、誰も背負わない」


(……やっぱり)


■ 選ばなくていい未来


俺は、

図から目を離した。


「……それって」


言葉を探す。


「誰かが間違えても、

 誰も間違ってないって言える世界ですよね」


会議室が、静まる。


俺は、

続けた。


「守れなかった命も」

「救えなかった人も」

「全部、“仕方なかった”で済む」


クロウは、

否定しない。


「それが、

 合理的というものです」


■ リリアの一言


その時。


リリアが、

小さく口を開いた。


「……その未来」


視線は、

魔導図ではなく、

床に向けられている。


「……私が見た限り」


声が、

少し震えた。


「誰も泣かない代わりに、

 誰も、前に進んでいません」


顔を上げる。


「……静かで、

 優しくて」


「でも――

 置いていかれた人が、

 見えません」


(……リリア)


■ ユウトの沈黙


まだ、

答えは出さない。


出せない。


この案は、

正しい。


でも――

正しさだけで、

選んでいいものじゃない。


クロウは、

立ち上がった。


「結論は急ぎません」


「ただし」


視線が、

俺に向く。


「固定案を拒否するなら、

 最後の衝突は避けられない」


「それでも、

 選びますか」


俺は、

何も答えなかった。


■ ラスト


会議室を出た後。


廊下で、

リリアと並ぶ。


距離は、

昨日と同じ。


リリア「……ね」


俺「うん」


「もし……

 全部終わったら」


少し間を置いて。


「……普通になっても、

 一緒に考えてくれる?」


俺は、

即答した。


「……それしか、

 できない」


リリアは、

小さく笑った。


その笑顔が――

この世界で、

まだ“選ばれていない未来”に見えた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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